ボイトレの順番で迷う人は、何を練習するかより先に、どの順番で声を出すかでつまずいていることが多いです。腹式呼吸、高音、滑舌のどれから始めるか迷ったまま練習を重ねると、土台がそろわないまま声だけを追いかけることになります。
第一段階、声を出さずに息だけを整えます
順番の一段階目は、声を一切出さない準備です。短く息を吐き、その吐く息が前に流れていく感覚をつかみます。大きく吸う必要はありません。むしろ吸いすぎると体が固まり、次の段階で喉に力が入りやすくなります。息のスピードをまだつかめない人には、一度吸ってから強制的に速く吐き切ってみることをすすめています。ゆっくり吐こうとすると途中で止まりやすいのですが、速く吐くと息のほうが勝手に前へ流れていく感覚がつかめます。
次の一文を、この段階ではまだ声に出さず、口の中でだけ動かしてみてください。
「息、楽な声、一文録音の順番で練習します。」
息の流れを確認する段階で急いでしまうと、次の段階に進んでも喉から声が始まりやすくなります。
第二段階、負荷をかけずに楽な声を出します
一段階目の息が整ったら、次はようやく声を出します。ただし、大きくも高くもしません。喉が押されていないかを確認するための、いちばん楽な音量です。
「楽な声」の部分をこの段階で確認します。喉に力が入っていないか。息が声に変わる瞬間に、力みが混ざっていないか。ここで無理をすると、次の段階の録音にその無理がそのまま残ります。
第三段階、一文を録音してはじめて声として確認します
三段階目で、はじめて一文を録音します。発声練習だけで終わらせず、実際の言葉に変換する段階です。声は歌や音階のためだけにあるものではありません。言葉になった時にどう届くかを、ここで初めて確認します。
「息、楽な声、一文録音の順番で練習します。」を通しで録音してください。見る場所は三つです。「息」の入りで喉が硬くなっていないか。「楽な声」の途中で息が止まっていないか。「一文録音の順番で練習します」の語尾まで声が残っているか。
順番を飛ばして好きな練習から始めるとどうなるか
好きな練習、得意な練習から始めたくなるのは自然なことです。ただ、声を出す前の息の準備を飛ばしたまま高い声や大きい声に挑むと、その動きを繰り返すほど喉で押す癖が定着していきます。
「この順番を体に入れるには、最低でも半年は続けないと効果が出ない」と思われがちですが、実際にはそうとも限りません。順番さえ守っていれば、30分の体験だけでも声の出方が変わったと感じる方は多くいます。時間の長さより、どの段階を踏んだかのほうが、順番の効き目としては大きいです。
高さや大きさを狙う前に、まず楽に出せる声があるかどうかを確認する順番が必要です。順番を飛ばして得た「大きい声」や「高い声」は、喉に負担をかけているだけのことが多く、日常の会話には移しにくいです。
順番が崩れる原因は、一つではありません
順番通りに進めているつもりでも崩れる時は、原因を一つに決めつけないでください。息、喉、体という三つの要素が絡み合っています。
息は、強すぎれば声を押し、弱すぎれば声が届きません。量ではなく、声にどう乗っているかを見ます。
喉は、結果を急いで出そうとするほど硬くなります。響きも高さも滑舌も、喉だけで作ろうとすると不安定になります。
体は、肩が上がる、胸が固まる、顎が上がるといった小さな変化で息の流れが変わります。体が固まれば、喉がその分を補おうとします。
順番通りにいかない時は、音量から下げます
声が出づらいと感じるほど、音量を上げて乗り切ろうとしがちです。ただ、喉で押している状態のまま音量だけ上げると、負担が積み重なります。
先に音量を下げてください。下げると、息が止まっている場所、喉で押している場所、語尾が消えている場所が見えやすくなります。小さい声で崩れるものは、大きな声にしても同じ場所で崩れます。
「息」を小さな声で出せるか。「楽な声」で息が止まらないか。「一文録音の順番で練習します」の語尾に息が残るか。この三点を小さな声で確認してから、少しずつ音量を戻します。
喉を休ませる判断も、順番の一部として組み込みます
喉に痛みや強いかすれがある、休んでも違和感が戻らないという時は、練習で無理に押し切らず、専門家に相談する判断も必要です。順番の途中であっても、その日はそこで止めてかまいません。
喉を守ることは練習をサボることではありません。声を長く使い続けるための技術です。一度だけ強い声を出すことより、必要な声を毎回安定して出せることの方が大切です。
録音で確かめるのは、うまさではなく再現性です
録音した自分の声に、嫌な感じを持つ人は多いです。ただ、録音で確認したいのは好き嫌いではなく、同じ声をもう一度出せるかです。
「息」が昨日より楽に入ったか。「楽な声」で止まらなかったか。「一文録音の順番で練習します」の語尾まで声が残ったか。この三点だけを聞きます。
自分の中で聞こえている声と、外に届いている声は違うものです。その差を埋めるために録音を使います。
一週間は、同じ順番だけを繰り返します
毎日違う練習を試すと、何が効いたのか分からなくなります。最初の一週間は、この三段階の順番だけを繰り返してください。
一日目は第一段階の息だけを丁寧に見る。二日目は第二段階の喉の力みだけを見る。三日目は第三段階の語尾の残り方だけを見る。テーマを分けて一週間繰り返すと、自分がどこで崩れやすいかが見えてきます。
崩れた時は、声ではなく順番の一段階前に戻ります
声がうまく出ない時、多くの人はいきなり声そのものを変えようとします。もっと大きく、もっと高く、もっとはっきり。ただ、声を触る前に、順番を一段階前に戻す方が早く安定します。
第三段階で崩れたなら、第二段階の楽な声に戻ります。第二段階で崩れたなら、第一段階の息だけに戻ります。この順番を守るだけで、練習の効果は変わります。
録音で聞く場所は三つに絞ります
録音を聞く時、全体の上手さで判断しようとすると、好き嫌いに引っ張られます。見る場所は三つです。
最初の音が、喉から押し出されていないか。
途中の息が、止まったり急に強くなったりしていないか。
最後の音、つまり語尾に、息が残っているか。
このどこか一つでも変化があれば、練習は前に進んでいます。声は、小さな再現性の積み重ねで変わっていきます。
三段階を一度に仕上げようとしないほうが早いです
強い手応えを一回の練習で求めるほど、喉で頑張る癖がつきやすくなります。最初は、楽に出せる範囲だけで十分です。高さも大きさも、順番通りに楽な声を確認してから広げます。
一日目は第一段階、二日目は第二段階、三日目は第三段階。このくらい細かく分けるほど、何が変わったのかがはっきりします。
違和感がある日は、順番の後半を削ります
喉に違和感がある日は、練習を続けるかどうかを先に判断してください。痛みや強いかすれ、休んでも戻らない違和感があるなら、発声で乗り切ろうとしないことが大切です。
削る日は、第一段階の息だけで終えて構いません。声量を上げない、高い音を攻めない、長く伸ばさない。この範囲にとどめます。
仕上げは、同じ順番・同じ一文で比べます
練習の締めくくりは、毎回違う文章ではなく、同じ一文で比べます。同じ一文なら、息、喉、語尾のわずかな違いも聞き取りやすくなります。
昨日より楽に出せたか。昨日より喉が押されていないか。昨日より語尾が残っているか。この三つで十分です。声を変えることは、今の自分の声を、狙った順番で再現できるようにすることです。
まとめ
ボイトレの順番で迷う時は、好きな練習から始める前に、息、楽な声、一文録音という三段階の順番で見てください。この順番を飛ばさずに繰り返すだけでも、練習の質は変わります。
声を変えるとは、頑張って出すことではありません。決まった順番を毎回たどることで、同じ声を安定して再現できるようにすることです。
よくある質問
- Q. ボイトレ 順番では何から始めるべきですか
- 最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
- Q. 毎日練習した方がいいですか
- 短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
- Q. 録音は必要ですか
- 必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
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