声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
声が小さい、通らない、聞き返される悩みを、性格や気合いではなく息のスピード・喉の力み・第一声から整理します。会議やプレゼンで使える具体的な練習も紹介します。
奥津ユキ
「また聞き返された」と落ち込む前に、その一文の直前と直後で体に何が起きていたかを確かめてください。声質や性格のせいにする前に、息が固まる、喉が締まる、語尾で息が尽きる——崩れているのは、たいていこのどれかです。会議での発言でも、電話の第一声でも、見る場所は同じです。
今日いちばん緊張する一言を、録って・変えて・比べます
スマホのボイスメモを用意し、今日いちばん緊張する一言を録音してください。電話の名乗りでも、会議で最初に発言する一言でも構いません。「お忙しいところ恐れ入ります。少しだけお時間をいただけますでしょうか」のような一文です。一度そのまま録ったら、声の大きさは変えずに、話し出す前だけ短く息を吐いてから同じ一文をもう一度録ります。二つを聞き比べると、声量を足していないのに最初の音の届き方が変わっているのが分かるはずです。外回りの玄関先の一言でも、同じ実験がそのまま使えます。
声の大きさより先に、息の入口と語尾を見ます
声が小さいと言われた人が最初にやりがちなのが、とにかく声量を上げようとすることです。急に「大きく出そう」とすると、力の入れ先はほぼ喉になります。本人の感覚では頑張って出しているのに、相手の耳には硬くて余裕のない声として届いてしまいます。
聞き返される人にまず見るべきなのは、口がきちんと開いているかと、声のトーンです。声質そのものより、この二点のほうが先に印象を決めています。会議で発言する時も、資料や画面に気を取られて口の開きが浅くなっている人は多く、声量そのものより先にこの浅さが聞き取りにくさの原因になっています。
そのうえで確かめたいのが、第一声・語尾・息・間の四か所です。声を出す前に息が止まって固まっていないか。最初の一音を、息ではなく喉の力で作っていないか。重要語の手前で、慌てて吸い直していないか。文の終わりに入る前、すでに息が尽きかけていないか。崩れがあるとすれば、この四か所のどれかです。息が先に流れて、その上に声が乗る——この順番さえ守れれば、声量を無理に足す必要はありません。
先ほどの一文のどこで声が落ちるかを、相手の耳で聞きます
忙しい相手との短いやり取りは、聞き手が受け取れる時間そのものが短い場面です。だからこそ、崩れている場所を先に決めておくと聞き分けやすくなります。
最初の音。名乗りの一音が欠けて入ると、相手はそこで話の頭を取りこぼし、途中から耳に入ったような印象になります。
重要語の手前。「少しだけ」に入る手前にわずかな間があるかを聞きます。ここを駆け抜けると、いちばん届けたい言葉ほど素通りしていきます。
語尾。「よろしいでしょうか」の最後の一音が痩せていないかを確認します。叩いて強調するのではなく、息を最後まで残すだけで足ります。
三つとも、喉で押して声を大きくしても解決しません。声全体を責める前に、この三か所のどこで落ちたのかだけを、録音を巻き戻して一つずつ特定してください。
声の「見た目」だけを加工する直し方は、短いやり取りほど見抜かれます
避けたいのは、声の見た目だけを加工することです。低めの声色を喉で作る、無理に明るいトーンをかぶせる、張り上げる、極端にゆっくり読む。どれも練習中は変わった気がしますが、息と体の準備が同じままなら、実際の場に立った瞬間に元へ戻ります。姿が半分しか見えない相手には、声の作り込みほど不自然な硬さとして伝わりやすいものです。
目指すのは加工された声ではなく、聞き返されない声です。相手に届くべき言葉が、届くべき順番で、最後まで息に乗っている状態と言い換えてもいいです。やることは三つ。一文を短く区切る。重要語の手前で一拍待つ。最後の音まで息を切らさない。これだけで印象が動きます。
しかも、喉で作った低音や押し出した大声、遠慮がちに絞った小声は、いずれも語尾から先に消えていきます。声のボリュームを足そうとする前に、まず語尾まで息が保たれているかを、録音で聞き直してください。
訪問直前の30秒で声を整えます
インターホンの前で念入りに練習しようとすると、かえって緊張が増えます。準備は30秒あれば足ります。唇を閉じたまま、いま肺にある息をゆっくり吐き切ります。吐き切ったぶんだけ、肩を動かさずに自然に入ってくる息を受け取ります。そのまま先ほどの一文を、無音の口パクでなぞります。仕上げに、ささやくくらいの音量で一度だけ声に出します。
確かめるのは音量ではありません。最初の音が欠けなかったか、喉で押さなかったか、文末まで息が続いたか。この三点が通れば、準備は終わりです。会議の発言前や電話を取る前も、同じ30秒で足ります。長い準備時間を確保できない場面ほど、この短い手順が効いてきます。
声のチェックは喉より先に、足元から見ていきます
声が頼りない時、手を入れたくなるのは喉です。ところが喉は、力を足すほど不安定になる場所です。見る順番を、喉より下から始めます。
一つ目は足裏です。かかとが浮いていたり、体重が片足に逃げていたりすると、息の支えも一緒に浮きます。立ち話で中腰気味になっている時ほど、ここが崩れています。立ったまま話す場面では、両足に均等に体重が乗っているかを、話し出す前に一度だけ確かめてください。座って発言する場面でも、足裏が床から浮いていないかは同じように効いてきます。
二つ目は胸の向きです。相手の反応や資料に意識が向くと、胸は自然と閉じていきます。閉じた胸からは、声が前に出ていきません。画面越しの相手にほど、この閉じ方が強く出やすいので、意識して肩越しに胸を開いておいてください。
三つ目が顎と首です。顎が突き出る、首の前側が固まる——この姿勢は、第一声を喉の力で作ってしまう条件がそろった状態です。会議室の椅子に浅く座って画面をのぞき込む姿勢も、同じように首が前へ出て顎が固まりやすい状態を作ります。声を安定させるには、喉だけでなく、体の向きと息の入り口を一緒に戻す必要があります。
断られ続けても、声の初期値を上げておきます
私は声の出しやすさを10段階でたとえることがあります。持っている声の最大値が10だとして、普段は2くらいの力加減で話している人がとても多いということです。これは性格の弱さではなく、初期値そのものを上げる筋力の問題です。一日に何件も声をかけて、そのたびに断られる仕事ほど、声は自然と守りに入り、力加減が2のまま固定されやすくなります。
初期値を上げるといっても、次からずっと大きな声を出し続けるという意味ではありません。次の一件に入る前、先ほどの30秒の手順で息を通しておくだけで、力加減の基準が元に戻ります。断られた直後ほど、この立て直しを飛ばさないでください。
会議やプレゼンでも同じことが起きます。一度発言が流れてしまうと、次の発言はさらに小さくなりがちです。声が萎んだと感じた瞬間こそ、次の発言の前に短い息を一つ通しておく。この立て直しを持っているかどうかで、一日の終わりの声の疲れ方もはっきり変わってきます。
次のインターホンを押す前に、その一文を思い出してください
必要なのは会場の後ろまで響く大声ではなく、目の前の相手が「え?」と聞き返さずに済む声です。「お忙しいところ恐れ入ります。少しだけお時間をいただけますでしょうか」を、最初に録った音と、直前に息を整えてから録った音とで、もう一度聞き比べてみてください。違いが耳で分かれば、次の一件からその声を持ち込めます。
この設計ができていれば、声そのものを加工しなくても安定します。同じ言葉でも、届き方が変われば伝わり方は別物になります。会議室の発言でも、電話の第一声でも、整える手順は変わりません。
関連して読む記事
同じ悩みを、息のスピードや録音の使い方という別の角度から掘り下げたい人は、こちらもどうぞ。
よくある質問
- Q. 声が小さい人は大きな声を出す練習をすればいいですか
- 最初から大きく出そうとすると喉で押しやすくなります。まず息を前に出し、言葉の頭と語尾を整えることが大切です。
- Q. 声が通らない原因は性格ですか
- 性格だけではありません。息のスピード、喉の力み、語尾落ち、姿勢など体の使い方が関係します。
- Q. 声を通す練習は毎日必要ですか
- 短時間で構いません。仕事で使う一文を録音し、息が前に出ているかを確認するだけでも変化をつかみやすくなります。
声が変わると、人生が変わる。
通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。
登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →声が通らない原因。大声ではなく息で届く声をつくる
普通に話しているのに声が通らない人へ。声が通らない原因は、音量不足だけではありません。息のスピード、口の前への出方、語尾、喉の力みが関係します。 会議や日常の発言で聞かれる声を、第一声・息・区切り・語尾・録音チェックから整える方法を解説します。
声の録音チェック完全ガイド。相手に届く声を客観的に整える
声を録音しても何を聞けばいいか分からない人へ。自分の声を責めずに、第一声・語尾・息・こもり・早口をチェックし、仕事で届く声へ整える方法を解説します。
第一声の出し方。話し始めで印象を変える声の準備
第一声が弱い、話し始めで声が小さくなる、第一印象で損をする人へ。挨拶・会議・商談・プレゼンで使える第一声の出し方を、姿勢・息・録音チェックから解説します。

声は、生まれつきの性格だけで決まるものではありません。声を出す前の息、喉の力み、語尾に残る息の量——これらが変わるだけで、相手に届く印象は変わります。