声の録音チェック完全ガイド。相手に届く声を客観的に整える

声を録音しても何を聞けばいいか分からない人へ。自分の声を責めずに、第一声・語尾・息・こもり・早口をチェックし、仕事で届く声へ整える方法を解説します。

奥津ユキ

録音した自分の声に落ち込む前に、確かめたいことがあります。声が悪いのではなく、話し出す直前の息の止まり、喉の力み、語尾の抜けだけが崩れていることがほとんどです。まず一文で体感してから、理由を見ていきます。

受話器を取る前に、30秒だけ録ってみます

スマホのボイスメモを開き、今日いちばん多く口にする一言を録音してください。電話を受ける仕事なら、たとえば「本日はお問い合わせいただき、誠にありがとうございます」のような一文です。そのまま一度録ったら、話し出す前に短く息を吐いてから、同じ一文をもう一度録ります。声の高さやトーンは変えなくて構いません。変えるのは息を吐くタイミングだけです。二回を聞き比べると、最初の音の入り方だけで届き方が変わっていることに気づくはずです。理屈はこのあとで十分なので、まずこの違いを耳で確かめてください。

好き嫌いではなく、四か所の崩れを聞き分けます

再生した瞬間、変な声だと感じる人は多いです。ふだん自分の耳に届く声は骨を伝った音も混ざっているため、スピーカーから流れる声とは届き方が違うからです。声が悪いのではなく、自分には低く聞こえているだけで、実際は思っている以上に高い声が出ています。誰にでも起きることなので、間抜けに聞こえても気にする必要はありません。

聞き分けたいのは、第一声・語尾・息・間の四か所です。声を出す前に息が止まっていないか。最初の一音を喉の奥で押していないか。重要語の手前で慌てて吸い直していないか。語尾に入る前、すでに息が終わっていないか。録音で弱く聞こえる声は、たいていこの四か所のどれかで崩れています。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声は生まれつきや性格だけで決まるわけではありません。録音を聞き直すと分かるとおり、息・喉・語尾・間の使い方ひとつで、相手に届く印象は変わります。

先ほどの一文のどこで声が落ちるかを、応対中の耳で聞きます

コールセンターや受付のように、一日に何十件も似た一言を口にする仕事では、聞き分ける場所を先に決めておくと録音の意味が変わります。見るのは三つです。

出だしの音。電話に出た瞬間の一音が小さいと、相手はそこで最初の言葉を取りこぼします。次の着信がすぐ続く現場ほど、ここが省略されやすい場所です。

重要語の手前の間。社名や要件に入る直前にわずかな間があるかを聞きます。急いでつなげると、いちばん正確に届けたい言葉ほど流れて消えます。

語尾です。文末の「ます」「した」の最後の一音が、再生して聞き取れないほど痩せていないかを確認してください。強く言い切る必要はなく、最後まで息が保たれていれば十分です。

同じ説明を一日に何度も繰り返す仕事では、慣れるほど言葉が早くなりがちです。本人は丁寧に話しているつもりでも、聞き手には要点が流れて消えたように届いていることがあります。案内の途中、番号や日付、金額など聞き間違えられたら困る言葉の前後に、わずかでも間があるかを聞き直してください。間がまったくないまま次の言葉へ滑り込んでいたら、それが早口の合図です。区切りたい場所に印をつけ、そこだけ一拍長く取る。それだけで、同じ説明でも聞き手が受け取れる速さに変わります。

声だけを作り込む直し方は、電話でこそ裏目に出ます

避けたいのは、声の見た目だけを加工することです。低めの声を喉で作る、明るいトーンを無理にかぶせる、張り上げる、ゆっくり読んで間を持たせようとする。対面ならごまかせても、声しか情報のない電話では、体の準備が変わっていない作った声はすぐに硬さとして伝わります。とくに一日に何十件も応対が続くと、作った声のぶんだけ喉の負担も重なっていきます。

必要なのは加工した声ではなく、相手が受け取るべき順番で言葉が届く声です。一文を短く切る。重要語の手前で一拍だけ置く。最後の音まで息を残す。応対の合間にできることは、これだけで足ります。

作り込んだ声は、録音した直後は変わった気になれます。ですが体の準備そのものが変わっていなければ、次の一本が鳴った瞬間に元の声へ戻ってしまいます。とくに低く作った声や押し出した声は、聞き返すと語尾から先に消えていることが多いのです。

次の着信までの30秒で整えます

架電や来客の合間に、長く練習する時間はありません。直前にやることはごくわずかです。口を閉じたまま息をひとつ吐きます。肩を上げずに短く息を入れます。声には出さず、先ほどの一文を口の形だけでなぞります。最後に、小さな声のまま一度だけ実際に言ってみます。

確かめたいのは声量ではありません。出だしの音が欠けていないか、喉で押した硬さになっていないか、語尾まで息の余裕が残っているか。この三点だけに絞って聞きます。

喉だけでは足りません。足・胸・顎まで見ます

声が弱いと感じると、まず喉を直したくなります。ですが喉にだけ力を込めても、声は安定しません。

最初に見るのは足裏です。座ったまま応対する仕事でも、足の裏が床につき体重が乗っているかを確かめてください。体が浮いた状態だと、息も一緒に浮きます。

次に胸の向きです。画面や資料、次の着信ランプに意識が引っ張られると、胸は自然に閉じていきます。胸が閉じれば声は前に出にくくなり、録音でも音がこもって聞こえます。

仕上げに顎と首です。第一声が硬く聞こえる時は、顎が前に出ているか首の前側に力が入っているかのどちらかが多く、その姿勢のまま声を出すと、出だしの一音を喉で押す形になりやすいのです。

デスクで長時間座ったまま話す仕事ほど、この三か所は崩れたままになりやすい場所です。画面に向かう姿勢が固定される分、体は意識しないと元の位置へ戻りません。録音を聞いて硬さを感じたら、声そのものより先に座り方を疑ってみてください。椅子の高さや画面までの距離を変えるだけで、次に録った声が変わることもあります。

一日に何十件応対しても、枯れない声の使い方があります

声を使う仕事で長時間話すと枯れるのは、たいてい喉の締めすぎが原因です。私が伝えているのは、横隔膜のあたりを前へそっとつまみ出すような感覚を、話している間ずっと保っておくことです。吐くときだけでなく、次の言葉を吸うときにもその感覚を抜かないでいると、同じ声量でも喉にかかる負担がだいぶ変わります。応対の本数が多い日ほど、この感覚を保てているかを録音で確かめる価値があります。

言葉に迷いながら話す瞬間も、喉に負担が集まりやすい場所です。次に何を言うか探している間は息が止まりやすく、止まった分だけ声が喉のあたりに寄ってしまいます。よく使う応対の一言をあらかじめ耳で確認しておくと、探しながら話す時間そのものが減っていきます。

枯れやすい日と、枯れない日の違いを録音で比べてみるのもおすすめです。忙しい日ほど応対のペースが速くなり、間を取らないまま声を出し続けている自分に気づくことがあります。ペースそのものを落とさなくても、重要語の手前だけ一拍取り戻せれば、喉にかかる負担は変わってきます。

受話器を置くたびに、今の一本を聞き直してください

録音チェックの目的は、別人のような声を手に入れることではありません。今日実際に口にする一言を録り、出だしの音・重要語の手前・語尾の三か所を聞き分ける。それだけで十分です。「本日はお問い合わせいただき、誠にありがとうございます」を最初に録った音と、直前に短く息を整えてから録った音を、もう一度並べて聞いてみてください。違いが耳で分かれば、次の一本からその声をそのまま使えます。

毎日すべての応対を録音する必要はありません。忙しさが落ち着いた休憩の前後に一本だけ選んで聞き直す。それだけの積み重ねでも、一週間後には出だしの音の入り方が変わってきます。声を評価するのではなく、体のどこが整ってきたかを確かめる材料として、録音を使い続けてください。今日の一本が、いちばん聞き取りやすい一本になれば十分です。

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よくある質問

Q. 声を録音したら何をチェックすればいいですか
最初の一音、語尾、息の止まり、こもり、早口、喉の力みを順番に確認してください。一度に全部を判断せず、項目を分けて聞くことが大切です。
Q. 録音した自分の声が嫌いでも練習できますか
できます。好き嫌いで聞くのではなく、相手にどう届いているかを観察する材料として使うと、改善点が見えやすくなります。
Q. 録音チェックは毎日必要ですか
長時間やる必要はありません。1日1分、仕事で使う一文を録音して、前日と比べるだけでも変化を確認しやすくなります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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