声が変わらないと感じたら、練習量を増やす前に、まず一つだけ試してください。「まずは小さく息を流して、楽に出る声を録音して確認します。」を、今のいつも通りの出し方で一度録音します。次に、声を出す前に一度だけ短く息を吐いてから、同じ一文をもう一度録音します。二つを聞き比べると、変わるのは声の大きさではなく、入り方と息の流れだと分かります。
入り・力み・語尾の三点だけを、まず知っておきます
「まずは小さく息を流して」の入りが硬いままだと、声は喉から出発してしまいます。「楽に出る声を」に急いでたどり着こうとすると、息と声が別々に動きます。「録音して確認します」を省略すると、変化があったかどうかが感覚だけの判断になります。
さきほどの録音を聞き返すときは、この三点だけを順番に確認してください。入りが硬くないか、途中で喉に力が入っていないか、語尾まで息が残っているか。うまいか下手かを採点する必要はありません。三つとも一度に整えようとせず、今日は一番気になった一か所だけに絞って構いません。
ボイトレは才能がある人だけが効果を感じられるもの、と思われがちですが、実際はその逆だと感じています。むしろ今の自分には才能がないと思っている人ほど、伸びしろがまだ丸ごと残っています。今出せている声を土台だと思い込む必要はありません。
最初から大声や高音を狙うと、変わりにくくなります
声を変えたいという気持ちが強いほど、いきなり難しい練習に手を伸ばしたくなります。ですが、声は強く押し出すほど良くなるわけではありません。喉に力を入れて出した声を繰り返すほど、その出し方が体に定着していきます。
大きな声や高い声を出す、腹式呼吸だけを繰り返す、録音せず感覚だけで良し悪しを決める。この三つのどれかがあると、練習の回数を重ねても今のやり方の癖がそのまま固定されていきます。声は使えば使うほど良くなるとは限らず、どう使うかによって固まっていく面もあるからです。まずは高さも大きさも欲張らず、楽に出せる声がどこにあるかを探すところから始めます。
腹式呼吸という言葉だけを覚えて、お腹を膨らませる動きだけを繰り返す人もいますが、それ単体では声は変わりません。大事なのは、膨らませたお腹をどう使って息を前へ送り出すかのほうです。動きを覚えることと、その動きを声にのせることは、別の練習だと考えてください。
基本練習は、息、声、録音の三段階です
最初から長い時間の練習を組む必要はありません。むしろ短く区切った方が、声の変化に気づきやすくなります。
| 順番 | 練習 | 見る場所 |
|---|---|---|
| 1 | 息だけを短く吐く | 体、とくに肩や首が固まっていないか |
| 2 | 楽な声を出す | 喉に力が入っていないか |
| 3 | 一文を録音する | 入り、息の流れ、語尾まで残るか |
一つ目は、声を出さず短く吐くだけです。吸うことよりも、吐く息を前に流すことを意識します。二つ目は、大きくしない、高くしないままで、喉が力んでいない状態の声を短く出します。手のひらで顎の下を軽く押さえて、顎が上に逃げないようにしておくと分かりやすいです。顎が上がった状態は喉が締まりやすい姿勢なので、押さえて止めるだけで力みに気づきやすくなります。三つ目は、先ほどの一文をそのまま実際に録音します。うまいか下手かではなく、入り方、息の流れ、語尾の三つを聞きます。
同じ一文で、一週間かけて見る場所を変えます
毎日違う練習を試すと、何が効いたのか分かりにくくなります。最初の一週間は、さきほどの一文だけで十分です。日ごとに見るテーマだけを変えます。1日目は息だけを見る日、2日目は喉の力みだけを見る日、3日目は語尾だけを見る日というように、その日に見る場所を一つに絞ります。テーマを一つにしたほうが、昨日との差がはっきり聞き取れます。
一週間続けると、自分がどこで崩れやすいかが見えてきます。そこが分かれば、新しい練習メニューを足す必要はありません。ボイトレは、たくさんのメニューをこなすこと自体が目的ではなく、自分の声がどこで崩れ、どこを整えると変わるのかを知ることが目的です。それが分かれば、短い練習だけでも十分に意味があります。
途中で飽きてしまいそうな日は、一文を数字の練習に置き換えても構いません。「1、2、3」と短く数えるだけでも、入り、力み、語尾の三点は同じように確認できます。一文にこだわりすぎず、その日いちばん続けやすい形で試してください。
うまくいかない時は、文を短くするか、音量を下げます
声が安定しない時は、練習そのものを難しくする必要はありません。まず一文を短くしてください。文が長くなるほど息は足りなくなり、途中から喉で補おうとする動きが出やすくなります。短い言葉で楽に声が出せる場面が増えていくと、そこから少しずつ長い文にも広げていけます。
もう一つの対処が音量です。初心者ほど「もっと大きく出せば通るはず」と声量で解決しようとしますが、喉が力んだまま声量だけを足しても、疲れが増えるばかりで声は整いません。順番は逆で、まず声量を落とします。小さな声に落とすと、隠れていた癖が表に出てきます。息が途中で止まっていないか、喉に力が入っていないか、語尾で声が消えていないか。小さい声で崩れる出し方は、大きくしても崩れたままなので、この三つは小さな声のうちに確認しておく必要があります。
文を短くする対処と音量を下げる対処は、同時に試さなくて構いません。今日は文を短くする日、明日は音量を下げる日、というように一つずつ試したほうが、どちらが自分に効くかが見えやすくなります。
喉に違和感がある日は、練習量ではなく判断を変えます
声を変えたいと思っているときほど、毎日でも強く練習したくなるものです。ただ、喉に違和感がある日にそのまま続けると、良い練習ではなく負担を重ねるだけになります。
喉の痛み、強いかすれ、一晩休んでも戻らない違和感がある日は、練習を止める判断も必要です。迷ったら耳鼻咽喉科など専門家に相談してください。喉を守ることは、練習量を減らす後ろ向きの判断ではなく、声を長く使い続けるための技術です。一度だけ強い声を出せることよりも、必要な声を安定して出せることの方が、この先ずっと役に立ちます。練習を軽くする日は、声量を上げなくて構いません。息をゆっくり流して、入りの部分だけを小さな声で録音してください。
違和感がある日にまで完璧を求めると、声への苦手意識のほうが先に育ってしまいます。今日は休む、今日は小さく確認するだけ、という選択肢を自分に許しておくことも、練習の続けやすさにつながります。
録音で見るのは、声の好き嫌いではなく再現性です
ボイトレで大事なのは、一度だけ良い声が出ることではありません。同じ状態をもう一度出せるかどうかです。自分の声を録音で聞くと、違和感を覚えるかもしれません。ですが、その違和感自体が練習の入り口です。
録音で感じる違和感の多くは、自分の骨伝導で聞いている声と、空気を通して外に届く声とで、聞こえてくる経路が違うために起きるだけで、声そのものが悪いという意味ではありません。相手に届く方の声を整えるには、録音を挟んで確認する作業が欠かせません。好き嫌いを判定し始めた瞬間、練習の手は止まってしまいます。ここで確かめたいのは声の印象ではなく、体がどこまで使えているかだけです。慣れないうちは、聞き返すたびに落ち込む必要はありません。
「まずは小さく」の一文が、次の練習の基準になります
もう一度、「まずは小さく息を流して、楽に出る声を録音して確認します。」を録音してみてください。今日は、入りの硬さ、途中の力み、語尾の残り方のうち、一番気になった一か所だけを直してみます。全部を一度に良くしようとせず、まず一か所です。
初心者の練習で目指すのは、喉の頑張りを増やすことではありません。楽に出せる声を見つけて、それを少しずつ本番で使える声へ広げていくことです。今日の録音は、明日の練習の基準になります。今日うまくいかなくても、それは才能の有無ではなく、順番のどこかがまだ整っていないだけです。
よくある質問
- Q. ボイトレ 初心者では何から始めるべきですか
- 最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
- Q. 毎日練習した方がいいですか
- 短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
- Q. 録音は必要ですか
- 必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
声が変わると、人生が変わる。
通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。
登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
声が小さい、通らない、聞き返される悩みを、性格や気合いではなく息のスピード・喉の力み・第一声から整理します。会議やプレゼンで使える具体的な練習も紹介します。
大人のボイトレは何をするのか。話し方の印象を変える声の整え方
大人になってから声を変えたい人へ。歌ではなく仕事の話し方、第一声、息、語尾、録音チェックで印象を変えるボイトレを解説します。
第一声の出し方。話し始めで印象を変える声の準備
第一声が弱い、話し始めで声が小さくなる、第一印象で損をする人へ。挨拶・会議・商談・プレゼンで使える第一声の出し方を、姿勢・息・録音チェックから解説します。

声は生まれつきの性格だけで固定されているものではありません。ボイトレを始めたばかりでも、息、喉、体、録音の順で見直せば、出し方は変えられます。