ボイトレを続けても声が変わらないと感じる時、多くの人はまず練習量を疑います。ただ実際に足を引っ張っているのは、量ではなくやり方の癖であることがほとんどです。喉で押す、一度にあれこれ詰め込む、録音を残さない。この三つの間違いがそろうと、練習した分だけ今の癖が固定されてしまいます。
間違い1、うまく出ない時ほど音量と回数で押し切ろうとする
声がうまく出ない時、多くの人は音量を上げたり回数を増やしたりして乗り切ろうとします。ですが、喉で押している状態のまま音量や回数だけ増やすと、負担が積み重なるだけで出し方そのものは変わりません。喉の締まりに自分で気づきにくい人には、手で顎の下を軽く押さえて顎が上がらないようにしたまま、お腹に圧をかけて声を出してみることをすすめています。押さえた状態で出すと、これまで喉だけで頑張っていた分がどれくらいあったか、はっきり分かります。
次の一文で試してみてください。
「練習を増やす前に、息、喉、録音の順番を確認します。」
「練習を増やす前に」の出だしで喉に力が入っていないか。「息、喉、録音の順番を」の途中で息が止まっていないか。「確認します」の語尾まで声が残っているか。回数を増やす前に、この三か所を録音で確認してください。
間違い2、発声・高音・滑舌を一日で全部やろうとする
声を変えたい気持ちが強いほど、一日のうちに高音も滑舌も響きも腹式呼吸も全部やろうとしがちです。ただ、やることを増やすほど、どの練習が効いたのか分からなくなります。
まず見るべき基本は、息、喉、体、録音の四つです。息が途中で止まっていないか。喉で音を押し出していないか。肩や顎が固まっていないか。録音で同じ声をもう一度出せるか。この四つを一度に全部直そうとせず、今日はどれかひとつだけに絞ります。
「本気で変えるなら、まず3ヶ月くらいは根を詰めて集中するべき」と思われがちですが、そこまで最初から気合を入れてコミットしなくても大丈夫です。むしろ力の入れすぎが、喉で結果を急ぐという別の間違いを呼び込みます。
間違い3、感覚だけで「今日はよかった」と判断してしまう
練習のあとに、なんとなく良かった気がする、で終わらせてしまう人は多いです。ただ、自分の中で聞こえている声と、外に届いている声はしばしば違います。感覚だけの判断では、同じ癖を繰り返していても気づけません。
録音を使うと、感覚ではなく音で確認できます。「練習を増やす前に」が昨日より楽に入ったか。「息、喉、録音の順番を」で息が途切れなかったか。「確認します」の語尾まで声が残ったか。この三点だけを聞けば十分です。
声を出す前の準備を飛ばすことも、よくある間違いです
最初にやりたいのは、声を伴わない呼吸の準備です。息を出さずに、吐く動作だけを短く行います。勢いよく吸い込むのではなく、吐いた息が体の前方向へ抜けていく感覚をつかみます。
次に置きたいのは、負担の小さい声です。音量を上げず、高さも欲張らず、喉が余計な圧をかけられていないかを確かめるための、楽に出せる声を選びます。
最後に必要なのが、言葉にした状態での録音です。発声のためだけの練習で終わらせず、実際に使う言葉へつないでみます。声は音階を上下させるための道具ではなく、言葉として相手に届いた時にどう聞こえるかを確かめる対象です。
この三段階を飛ばして、いきなり難易度の高い練習へ進んでしまうことが、遠回りの原因になりやすいです。
うまくいかない時は、まず音量を落としてみます
思うように声が出ない時、多くの人はまず音量を上げて対処しようとします。しかし喉で押している状態のまま音量だけを増やすのは、負担を上乗せしているだけで根本的な解決にはなりません。まず音量を落としてください。
音量を落とすと、自分の癖に気づきやすくなります。息が止まっているか。喉で押しているか。語尾が消えているか。小さい声で安定しない部分は、大きな声にしても安定しません。
小さい声で「練習を増やす前に」を出せるか。「息、喉、録音の順番を」までつなげられるか。「確認します」まで息が残るか。小さい声で確認してから、少しずつ音量を戻します。
喉の違和感を我慢して押し切ることも、避けたい間違いです
練習を続けるかどうかの判断を怠るのも、間違いのひとつです。痛みが出ている、いつもより強くかすれている、休んでも元に戻らない。こうした状態が続くなら、その日の練習で乗り切ろうとせず、専門家に相談する選択を取ってください。
我慢を評価しないでください。喉を守る判断ができることは、練習をサボることとは違います。一回だけ強い声を出せることより、必要な声を毎回同じように出せることの方が、仕事でも生活でも役に立ちます。
メニューを毎日変えることも、変化を見えにくくします
やる練習を日替わりで変えてしまうのも、間違いのひとつです。何が効いたのかを判定できなくなるからです。最初の一週間だけは、練習の中身を増やさず、次の一文だけに絞ってください。
「練習を増やす前に、息、喉、録音の順番を確認します。」
録音するテーマは毎日変えず、今日は息だけ、明日は喉の力みだけ、その次は語尾だけというように、一つずつ順番に見ていきます。
一週間分の録音を並べれば、自分がどこで崩れやすいかの傾向がつかめます。傾向が分かってから練習を広げれば、遠回りせずに済みます。
声そのものをいきなり作り変えようとすることも、間違いです
うまくいかない時に、いきなり声そのものを作り変えようとするのも典型的な間違いです。大きくしよう、高くしよう、響かせようと結果だけを追いかけると、たいてい喉に力を入れることで数字上のつじつまを合わせにいってしまいます。声を触る前に、順番を戻した方が安定します。
戻す順番は決まっています。まず息を確認します。止まったまま声を出そうとすれば、喉が代わりに働いてしまうからです。次に体を確認します。肩や顎に力みが残っていれば、息はうまく流れません。声そのものに触るのは、この二つが整ったあとで十分です。
録音を全体の印象だけで採点することも、間違いです
録音を再生する時、全体としての上手い下手を採点しないでください。全体を漠然と聞くと、恥ずかしさや好みの問題に意識が持っていかれます。確認するポイントは三か所に絞ります。
ひとつは冒頭の音です。声が喉の奥から無理やり押し出されて始まっていないかを聞き取ります。
ひとつは発声の途中経過です。声の勢いが不意に止まったり、逆に急に強まったりしていないかを追いかけます。
ひとつは終わりの部分です。語尾や音の切れ目まで、息の支えが残っているかを聞きます。
このどれかひとつにでも小さな変化があれば、練習は前進しています。劇的な変化だけを成果だと思い込まないでください。
一回の練習で結果を求めすぎることも、間違いのもとです
結果を急ぐ気持ちが強いほど、一回の練習で分かりやすい手応えを求めたくなるものです。ただ、その手応えを強く求めるほど、喉に力を入れて無理やり結果を出そうとする間違いにつながります。
まずは、無理なく出せる範囲にとどめてください。高さも大きさも、楽に出せる声を確認できてから少しずつ広げていくものです。楽な範囲を飛び越えて難しいところへ進むと、余計に声が不安定になります。
見る対象は一日ひとつに絞ります。一日目は息の流れ、二日目は喉の力み、三日目は録音での最後の音。ここまで細かく分けて初めて、何が変わったのかがはっきり見えてきます。
違和感がある日にメニューを減らさないことも、間違いです
喉に違和感がある日は、その日の練習を続けるかどうかをまず決めてください。痛みが出ている、いつもより強くかすれている、休んでも治まらない。この状態なら、発声で無理に押し切ろうとしないことです。
軽くする日と決めたら、声量も高さも欲張らないでください。伸ばす練習もしません。息を流して、短い一文を一度だけ録音する。それだけにとどめます。
締めの録音を毎回違う文でやることも、変化を見えにくくします
締めくくりの録音は、毎回違う文を選ぶという間違いをやめて、同じ一文で比べてください。文が同じであるほど、息、喉、語尾のわずかな差に気づけます。
比べる基準は三つに絞ります。前回より楽に出せたか。前回より喉に力が入っていないか。前回より最後の音が残っているか。
練習後に何を残すか決めていないことも、間違いです
練習を終える基準は、力強く出せたかどうかではありません。喉に軽さが残り、同じ一文をもう一度同じように出せる状態になっているかどうかで判断します。声の大きさや高さだけを基準にすると、喉に負担をかけた声まで手応えとして受け止めてしまいます。
録音でどう届いているかを確認しつつ、体にどんな感覚が残っているかも合わせて覚えておきます。声が前方向に届いているか。呼吸の流れが途中で止まっていないか。語尾の処理が雑になっていないか。この三点が揃った状態で練習を終えると、翌日も同じ声を呼び戻しやすくなります。
まとめ
ボイトレで声が変わらない時は、練習量が足りないと考える前に、この記事で挙げた三つの間違いに心当たりがないかを確認してください。息、喉、体、録音の順番で見直すだけでも、練習の質は変わります。
声を変えるとは、喉に無理をさせることではありません。間違った力の入れ方をやめて、体が再現できる状態を増やしていくことです。
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よくある質問
- Q. ボイトレ 間違いでは何から始めるべきですか
- 最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
- Q. 毎日練習した方がいいですか
- 短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
- Q. 録音は必要ですか
- 必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
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声は生まれつきの音域や性格だけで固定されているわけではありません。息の流れ、喉の力み、体の使い方、そして録音での聞き方を変えると、同じ人でも出し方は変わります。