自宅でできるボイトレ。大声を出さずに声を整える練習

自宅でボイトレしたい人へ。大きな声を出せない環境でも、息、ハミング、録音で声を整える方法をまとめます。

奥津ユキ

自宅で声を練習していても、なかなか変わらないと感じることがあります。多くの場合、それは声量を出せない環境のせいではなく、息、喉、体、録音を見る順番が整っていないだけです。近所や家族の気配を気にして喉だけで小さく出す、録音せずに感覚だけで終える、毎回ちがう練習を試す。この三つが重なると、練習を重ねても声は安定した方向へ進みません。

自宅で声を出す前に、まず息の通り道を整えます

自宅の練習というと、発声練習の音階や声量にまず意識が向きます。ただ、声を出す前の息と体がこわばったままだと、どれだけ練習しても負担は喉に集まります。声を出す前に、息だけを短く吐く時間を先につくってください。

この記事で使う練習文は、次の一文です。

「今日は息を流して、ハミングで響きを確認し、最後に一文だけ録音します。」

この一文には三つの区切りがあります。「息を流して」の部分は入りが硬くなっていないか、「ハミングで響きを確認し」の部分は途中で息が止まっていないか、「一文だけ録音します」の部分は録音で聞いたときに変化が音として残っているかを見るためのものです。三つをまとめて評価せず、一か所ずつ確認してください。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

自宅で声を練習する時ほど、生まれつきの声質のせいだと思いたくなります。でも声は、息の流れ方・喉の力み・体の姿勢を見直すだけで、家の中でも変えていけるものです。

練習する時間と場所を先に決めておきます

自宅で練習する場所は、結果に影響します。洗面所やお風呂場のような反響のある場所では自分の声が聞き取りやすくなりますが、そのぶん隣室や外に音が伝わりやすい時間帯でもあります。家族が就寝している夜や、壁の薄い集合住宅では、声を張るのではなく、息とハミングだけで確認する時間に切り替えてください。

練習する時間帯と場所をあらかじめ決めておくと、声を出すたびに音量で悩まずに済みます。テレビの音量ほどの小さな声でも、喉が力んでいなければ十分に練習になります。声の大きさで練習の質を測る必要はありません。

「大きな声が出せないから練習にならない」ということはありません

自宅にいると、大きな声を出せないから十分な練習にならないと感じがちです。声を変えたい気持ちが強いほど、最初から声量や高さに挑みたくなります。ただ、声は勢いよく出すほど育つわけではありません。むしろ喉に力を込めた出し方を繰り返すほど、その出し方が体に染みついてしまいます。

考え方を変えると、自宅は楽に出る声を確認するのに向いた場所です。高い声・低い声・大きい声・響く声をつくる前に、まずは喉が力んでいない声を小さく短く確認してください。

確認する順番は、息のあと喉、そのあと体、最後に録音という並びです。息が途中で止まっていないか。喉が力んでいないか。肩や首、あごがこわばっていないか。録音で聞いたときに同じ声を再現できるか。この並びで見ていけば、声量が出せない環境でも練習の方向はぶれません。

声を出す前から始める、三つの短い練習

自宅の練習は、最初から長く続ける必要はありません。短く区切ったほうが、声の変化はかえって見えやすくなります。

一つ目は、息だけの練習です。声を出さず、短く吐きます。吸う量よりも、吐く息が前へ流れていく感覚をつくることを優先します。

二つ目は、楽に出る声の練習です。大きくしない、高くしない。喉が力まない範囲で、短く声を置くだけにします。第一声は勢いよく出すよりも、息が流れた状態のまま短く置くほうが、あとの言葉につながりやすくなります。

三つ目は、一文の録音です。発声だけで終わらせず、実際の言葉につなげます。声は音階や母音だけで使うものではなく、言葉になったときにどう届くかまで確認してはじめて練習が完成します。

自宅で時間を区切る目安は、次の三つです。

  • 息だけを短く吐く時間(体の力みを見る)
  • 楽な声を短く置く時間(喉の力みを見る)
  • 一文を録音する時間(入り・息・語尾が残っているかを見る)

一つの練習は、30秒から1分ほどで十分です。スマホのタイマーを使うと、声量ではなく時間で区切る感覚がつかみやすくなります。

顎を固定して横に「い」の形で開けたまま言う練習も、自宅向きです

声を張らずにできる練習として、五十音を顎を動かさず横に「い」の形で開けたまま言ってみるものもあります。顎を固定したまま「あいうえお」から始め、慣れてきたら短い言葉に広げていきます。声量を必要としないので、隣の部屋や家族の気配を気にする時間帯でも試せます。マイクのりや声のこもりにも効いてくる練習です。

録音は、声の良し悪しではなく再現できているかを確認するために使います

自宅練習で大切なのは、一回だけたまたま良い声が出ることではありません。同じ状態をもう一度つくれるかどうかです。そのために録音を使います。

録音では、「息を流して」の入りが硬くなっていないかをまず聞きます。次に、「ハミングで響きを確認し」のあいだで息が止まっていないかを聞きます。最後に、「一文だけ録音します」の語尾まで息が残っているかを聞きます。強く言い切れているかではなく、最後の一音まで息が続いているかを見てください。

自宅で録音した自分の声には違和感を持つかもしれません。これは自分の中で聞こえる声(骨伝導が混じった聞こえ方)と、相手に届いている声が違うために起きるもので、責められている感覚とは別物です。相手に届く声を整えるには、この違いを録音で確認する作業がどうしても必要になります。

録音にはスマホのボイスメモで十分です。再生するときはスピーカーよりイヤホンで聞くと、語尾まで息が残っているかどうかが分かりやすくなります。

喉に違和感がある日は、声量ではなく確認の丁寧さを上げます

自宅で声を変えたいと思うほど、毎日しっかり練習したくなります。ただ、喉に違和感がある日に量で押し切ると、練習ではなく負担の積み重ねになってしまいます。

痛みがある、かすれが強い、休んでも戻らない。こうした状態が続くときは、練習で乗り切ろうとせず、専門家に相談する判断も必要です。喉を守ることは練習をさぼることではなく、声を長く使い続けるための技術です。一回だけ大きな声を出せることより、必要な声を安定して出せることのほうが自宅練習では価値があります。

軽くする日は、声量を上げず、「息を流して」「一文だけ録音します」の二か所だけを小さな声で確認します。量を減らしても、確認する場所さえ合っていれば練習は続けられます。

毎日同じ一文で比べると、変化の場所が見えてきます

自宅練習を続けるなら、毎回ちがうことを試しすぎないほうがうまくいきます。同じ一文を使うと、何が変わったかが分かりやすくなるからです。

「今日は息を流して、ハミングで響きを確認し、最後に一文だけ録音します。」

この一文を、日によってテーマを一つだけ決めて聞き直します。ある日は息が流れて入れたか。別の日は喉が力まなかったか。また別の日は語尾まで音として残ったか。一週間ほど同じ一文で続けると、自分がどこで崩れやすいかが自然と見えてきます。そこが分かってから練習を足せば、無駄に長く続けずに済みます。

録音した日付を簡単にメモしておくと、数日後に聞き比べたときに、どこが変わってどこがまだ残っているかが分かりやすくなります。

声が安定しない時は、一文を短くするか、音量を一段下げます

自宅で声が安定しない時、練習そのものを難しくする必要はありません。まずは一文を短くしてください。一文が長いほど息は途中で足りなくなり、喉で無理に補いやすくなります。短い一文で楽に出せる範囲が増えてから、少しずつ長い文に広げていきます。

それでも変わらない時は、音量を一段下げてください。声が出ない時ほど音量を上げたくなりますが、喉が力んだまま音量だけ上げると負担が増えるだけです。音量を下げると、息が止まっているか、喉が力んでいるか、語尾が消えているかといった自分の癖がかえって見えやすくなります。小さい声で安定しないものは、大きい声にしても安定しません。

練習を増やしたくなった時ほど、逆に一つ減らしてみてください。今日は息だけを見る、明日は喉の力みだけを見る、というふうに的を絞ったほうが、自宅の限られた時間でも変化がはっきり分かります。

自宅で大きな声が出せない時は、タオルを口に当てて練習すればいいと言われることがあります。ですが、これは避けた方が無難です。タオル越しの声はこもりやすく、出し惜しみで声を出すことに慣れると、その出し方自体が癖になってしまうことがあります。声量を落とすなら、道具でこもらせるのではなく、息と喉の力みだけを小さく確認する練習に切り替えてください。

声が変わらない理由は、練習量だけではありません

自宅練習がうまくいかない時、練習量が足りないからだと考えがちです。もちろん量も関係しますが、近所や家族の気配を気にして喉だけで小さく出す、録音しない、毎回ちがう練習をするという状態のまま量だけ重ねると、声が変わるどころか今の癖を強めてしまうことがあります。

最初に見るのは、息が動いているかどうかです。息が止まったまま声を出すと、声は喉からはじまってしまいます。次に見るのは、喉が力んでいないかどうかです。そのあとに体、特に肩や首がこわばっていないかどうかです。最後に見るのは、録音で同じ状態を再現できるかどうかです。この四つを一度に良くしようとせず、まずは一か所だけ直してください。

まとめ

自宅で声を練習する場面では、大きな声を出せないからできないと考える前に、息、喉、体、録音の順番で確認してください。「息を流して」の入り、「ハミングで響きを確認し」の途中の息、「一文だけ録音します」の語尾まで残る息。この三か所を整えるだけでも、自宅の練習は変わっていきます。

声を変えることは、喉で頑張ることではありません。相手に届く声を、体の使い方として自宅でも再現できるようにすることです。

よくある質問

Q. ボイトレ 自宅では何から始めるべきですか
最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
Q. 毎日練習した方がいいですか
短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
Q. 録音は必要ですか
必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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