仕事の電話で「声が小さい」と言われる原因。受話器越しに届ける整え方

仕事の電話で声が小さいと言われる人へ。周りの目を気にして声を潜める癖と、受話器の持ち方から届く声に変える方法を説明します。

奥津ユキ

自分の席で電話を取ったとき、隣の席の同僚から「電話の声、小さいよ」と言われたことがある。そんな人は少なくありません。取引先からの電話でも聞き返され、上司から折り返しを頼まれたときも自信が持てない。この記事では、仕事の電話という場面に絞って、声が小さくなる理由と整え方を見ていきます。対面の会議室では普通に届くのに、電話越しになった途端に小さいと言われる、という違いに心当たりがある人には、とくに読んでもらいたい内容です。

周りの同僚に聞かれるのが恥ずかしくて、声を潜めてしまう

オフィスで電話を取るとき、多くの人が意識していないのが、周囲に人がいるという状況そのものです。静かな会議室で一人なら普通に出せる声も、隣や後ろの席で同僚が仕事をしていると、無意識のうちに声のボリュームを絞ってしまいます。

「はい、〇〇会社の〇〇でございます」

この名乗りの一言目から、すでに声を抑えてしまっている人は多いはずです。恥ずかしさが先に立つと、口の開きも浅くなり、結果として電話の相手には余計に聞き取りにくい声が届きます。これは性格が内向的だからではなく、周囲の目を気にして体が縮こまることによる、ごく自然な反応です。

在宅勤務でも、同じ癖がそのまま出ることがあります

オフィスの席だけの話ではありません。在宅勤務でクラウド電話やスマホから会社にかかってくる電話を取る人からも、似た悩みを聞きます。リビングやダイニングで家族が近くにいる状態で電話を取ると、内容を家族に聞かれるのが気恥ずかしくて、オフィスにいたとき以上に声を絞ってしまうことがあります。

場所が変わっても、声を潜める原因は同じで、周囲の誰かに聞かれることへの意識です。対策も変わりません。声の大きさそのものを無理に上げようとするより、口の開きと息の流れを整えることで、小さめの声のままでも相手にはっきり届く話し方に近づけます。

受話器の持ち方が、そのまま声の届きにくさになっています

固定電話の受話器を、耳と肩で挟んで持つ人がいます。両手を空けて資料をめくりながら話したい気持ちは分かりますが、この持ち方だと顎が下がり気味になり、送話口(マイクの部分)と口の距離も安定しません。

顎が下がった状態で話すと、口の中の空間が変わり、声がこもって聞こえやすくなります。受話器は指と手のひらでしっかり持ち、送話口を口から一定の距離に保つだけでも、相手に届く声の輪郭がはっきりしてきます。手が塞がることを嫌がる前に、まず持ち方を見直してみてください。

「もっと元気よく」と言われて、余計に空回りすることがあります

電話の声が小さいと指摘されると、「もっと明るく」「ワントーン高く」と助言されることがあります。ですが、無理に高い声や元気な声を作ろうとすると、聞いている相手には不自然に響き、かえって鬱陶しく感じられてしまうことがあります。

大切なのは声の高さや元気さそのものより、伝えたい内容がきちんと相手の耳に届く話し方ができているかどうかです。無理に声を張り上げるより、口の開きと息の流れを整えるほうが、結果として自然に聞き取りやすい声になります。

「暗い声だと思われて電話を切られる」と不安になり、必要以上に高いトーンを作ろうとする人もいますが、作り込んだ明るさは、聞いている側にはかえって不自然な圧として伝わることがあります。目指したいのは、相手が身構えずに聞き取れる、いつも通りの自分の声の範囲で、出だしと語尾がしっかり届いている状態です。

電話は立って話さなくても、届く声は作れます

「電話は立って話すと声が良くなる」と聞いたことがある人もいるかもしれません。実際に営業電話などで立って話す人を見かけますが、座ったままでも特に問題はありません。

大事なのは姿勢そのものより、座っているときに猫背になって喉が詰まっていないか、そして受話器を持つ手や肩に余計な力が入っていないかです。立つか座るかより、この二点のほうが声の届き方に関わってきます。無理に立ち上がる必要はなく、座った姿勢のまま整える方法を覚えておく方が、日々の電話対応では現実的です。

聞き取りにくいのは、マイクや距離のせいだけではありません

「電話でこもって聞こえるのは電話機やマイクの性能のせいだ」と考える人もいますが、性能や口とマイクの距離だけが原因とは限りません。話し方そのもの、とくに声が小さかったり滑舌が曖昧だったりすることも、こもって聞こえる大きな要因になります。

かといって、口をマイクに近づけすぎるのも逆効果です。近すぎると息の音や声の割れが混ざり、余計に聞き取りにくくなることがあります。適切な距離を保ちながら、口の開きと息の流れを整えることの方が、根本的な解決に近づきます。

新しい電話機やヘッドセットに買い替えれば直るはずだと考えて、道具の方から手をつけようとする人もいます。もちろん機材が古すぎて音質そのものが悪い場合は買い替えが有効なこともありますが、多くの場合、電話機を変えても「小さい」「こもる」という指摘は変わりません。まずは今使っている電話機のまま、自分の話し方をチェックしてから、それでも足りない部分があれば機材を見直す、という順番のほうが遠回りになりにくいです。

代表電話を一日に何十件も取ると、夕方には喉が疲れてきます

会社の代表電話を担当していると、一日に何十件もの電話に出て、そのたびに社名と自分の名前を名乗ることになります。朝は元気に出せていた声が、夕方になると掠れてくる、という経験をしている人も多いはずです。

長時間の電話でこの症状が出る人は、ほぼ喉の締めすぎが関係しています。一件ごとに気合いを入れて声を張ろうとするより、横隔膜のあたりを前に軽くつまむような感覚を保ったまま話すと、喉に頼らずに声を出せるようになり、件数をこなしても疲れにくくなります。

とくに「少々お待ちください、担当者に代わります」という取り次ぎの一言は、一日に何度も繰り返す言葉です。この一言を毎回喉で押し出すように言っていると、疲労は加速度的にたまっていきます。取り次ぎの一言だけでも、息を吐き切ってから話し始める習慣に変えると、同じ件数をこなしても喉に残る負担がかなり違ってきます。

今日、机に座ったまま試せる練習

受話器を持つ前に、まず口角をわずかに上げてみてください。意図的に鼻にかけた声を作ろうとしなくても、口角を上げるだけで自然と鼻の奥のほうに声が響きやすくなり、こもりが和らぎます。

次に、顎を動かさずに固定したまま、「はい、よろしくお願いいたします」を言ってみます。顎を上下にパカパカ動かして話す癖がある人ほど、声がこもりがちです。横に「い」の形を保つ意識で、顎は動かさず口の中だけを使う感覚をつかんでください。

もう一つ、電話を取る前の一瞬に、短く息を吐き切ってから吸い直す習慣も効果的です。息が浅いまま声を出すと、出だしの一音が弱くなり、それだけで「聞こえにくい」という印象につながります。

この三つの練習は、電話が鳴ってから受話器を取るまでのわずかな数秒でできる範囲のものです。着信音が鳴った瞬間に慌てて出るのではなく、一呼吸だけ整えてから受話器を持つ習慣をつけると、声を出す前の準備が整った状態で最初の一言を出せるようになります。

録音で確かめる、届く声かどうかの分かれ目

スマホのボイスメモで、実際に仕事で使う「はい、〇〇会社の〇〇でございます」を録音してみてください。

聞き返すときに見るのは二つだけです。出だしの社名の部分がはっきり立っているか、そして名前の後まで声が続いているか。ここが弱くこもっていれば、周囲を気にして声を潜める癖や、受話器の持ち方、顎の動かし方のどこかにまだ改善の余地があります。

まとめ

仕事の電話で声が小さいと言われる原因は、性格の問題ではなく、周囲を気にして声を潜める反応、受話器の持ち方、そして口の開きや息の使い方に分けて考えることができます。無理に元気よく高い声を作ろうとせず、口角を上げる、顎を固定する、電話前に息を整えるという小さな調整から、今日の一件を試してみてください。

一件変えただけで劇的に印象が変わるわけではありませんが、着信のたびに同じ手順を繰り返していくうちに、周りの同僚から「声、聞き取りやすくなったね」と言われる日が来るはずです。焦って全部を直そうとせず、まずは出だしの一音だけでも、今日の電話で試してみてください。

よくある質問

Q. 電話は立って話した方が声は届きやすくなりますか
別に立たなくても問題ありません。座ったままでも、口の開き方と息の使い方が整っていれば届く声は作れます。
Q. 電話で聞き取りにくいと言われるのは、マイクや電話機の性能のせいですか
性能や距離が関わることもありますが、話し方そのものが原因になっていることも多いです。両方を切り分けて見る必要があります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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