電話対応の声。第一声で信頼される話し方の整え方

電話対応で声が暗い、聞き返される、頼りなく聞こえる人へ。第一声、名乗り、聞き返し、語尾まで、電話で信頼される声の整え方を解説します。

奥津ユキ

電話が鳴ってから名乗り終えるまでの数秒間で、相手の受け取り方の大半は決まってしまいます。声が暗い、聞き返される、頼りなく響くと感じるなら、性格ではなく、受話器を取った直後の呼吸と、名乗りの語尾の扱い方を先に見直してください。対面なら表情や姿勢で補える部分も、電話では声だけがすべての手がかりになります。

「お電話ありがとうございます、サポート窓口の奥津です」を録ってみます

コールが鳴っている間、頭の中は保留の操作や取り次ぎ先のことでいっぱいになりがちです。息が整わないまま受話器を取ると、名乗りは小さく、こもった響きになります。まずはスマートフォンで、名乗りの一文だけを録音してみてください。

「お電話ありがとうございます、サポート窓口の奥津です」

聞き返すときは、感じが良いかどうかを判断しないでください。見る場所は三つだけです。最初の音が小さく埋もれていないか。「サポート窓口の」の手前にわずかな間があるか。「奥津です」の語尾まで息が残っているか。

呼び出し音の直後に小さく入ると、相手は最初の言葉を取りこぼし、聞き返しにつながります。急ぐと、名乗りそのものが流れて残りません。焦って早口になるほど、かえって聞き返される回数は増えていきます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声は、生まれつきだけで決まるものではありません。息、喉、体、語尾、間の使い方次第で、電話越しの印象は変わります。

明るさを先に作るより、名乗りの入りと締めを整えます

電話対応でありがちなのは、とにかく声を明るくしようとすることです。声のトーンが無関係というわけではありませんが、明るさから直そうとすると喉で押した声になりがちです。本人は明るく出したつもりでも、相手には急いでいる、あるいは事務的で冷たいという印象で届くことがあります。

私がまず確認するのは、受話器を取る前に息が止まっていないか、最初の一音を喉で押していないか、社名や名前の前で吸い直せているかという点です。人当たりの善し悪しに結び付ける前に、体で起きていることをひとつずつ分けて見てください。聞き返される人にまず見てほしいのは、声質よりも、口がちゃんと開いているかどうかと、声のトーンの二点です。

研修中はハキハキと元気よく名乗るよう教えられることが多いですが、元気さを声量で出そうとすると、かえって早口になり、名前の部分が聞き取りにくくなることがあります。元気さは声の大きさではなく、語尾がきちんと届いているかどうかで伝わります。落ち着いた声量のまま語尾まで言い切るほうが、相手には丁寧で頼れる対応として残ります。声を張ることと、丁寧に届けることは、似ているようでまったく別の技術です。

口だけで話すとこもる。鼻に乗せる感覚を使います

電話の声がこもって聞こえる時、原因は口の中だけで声を作っていることがほとんどです。ハミングのように、少し鼻の方から声を出す意識を持つと、こもりは和らぎます。意図して鼻にかけようとするより、口角をわずかに上げるだけで、声は自然と鼻腔の方に乗ってくれます。名乗りの一文を言う前に、口角を少し上げてから声を出してみてください。

印象を良くするには受話器を持って立って話した方がいいとも言われますが、実際は座ったままでも問題ありません。姿勢で無理に声を張るより、口角の上げ方と息の入り方を整える方が、電話越しの印象は確実に変わります。

マスクをつけたまま電話を受ける人も増えていますが、マスクの有無より効くのは口角の上げ方のほうです。マスク越しでも口角さえ上げておけば、鼻腔に声が乗る感覚はそれほど変わりません。逆に口角を下げたまま声だけを張ろうとすると、マスクの内側にこもった響きがそのまま相手に届いてしまいます。

一日に何十件と対応しても、喉を締めなければ枯れません

コールセンターや受付のように一日に何十件も電話を受ける仕事では、夕方になると声が枯れてくる人が少なくありません。私の見立てでは、長時間で枯れる人はほぼ喉の締めすぎです。横隔膜のあたりを前へそっとつまむような感覚を、吸うときも吐くときも保っておくと、件数が増えても声が保ちやすくなります。

保留にする前の一文や、担当者へ取り次ぐ前の一文は、急いで用件だけを伝えようとして語尾が投げやりになりやすい場面です。「少々お待ちください」「担当の者に代わります」は、内容自体は短いぶん、語尾が雑になっても本人は気づきにくいものです。折り返しの案内も同じで、日時や連絡方法を伝える前に一拍置き、最後まで言い切ることで、相手は安心して待てるようになります。

一件ごとに区切りをつけずに次々と対応していると、声の疲れは少しずつ積み重なります。件数が増えてきたと感じたら、通話と通話の合間にほんの数秒でいいので、肩を落として息を吐き切る時間を作ってください。声を張り直すのではなく、いったん圧を抜いてから次の一件で同じだけの圧をかけ直す。この切り替えができると、午前中と夕方とで声の印象がほとんど変わらなくなります。

保留から戻った一声で、待たせた時間の印象が決まります

保留にしている間、担当者を探したり、資料を確認したりで頭がいっぱいになります。そのまま保留を解除すると、名乗りのときと同じように、最初の一音が息を止めたまま出てしまいがちです。

保留から戻る直前も、電話を取る前と同じように、ひとつ短く息を整えてから声を出してください。「お待たせいたしました」の「お」が小さく埋もれると、相手には待たされたことへの詫びが伝わりにくくなります。保留は用件の合間の空白ではなく、声を立て直すための短い準備時間として使うといいです。長く待たせてしまった場合ほど、この一呼吸を飛ばして早口で切り出したくなりますが、急ぐほど声は浅くなり、詫びの気持ちはかえって伝わりにくくなります。

受話器を取る直前は、短い準備だけで十分です

呼び出し音が鳴っている間に長く準備しようとすると、かえって焦ってしまいます。直前にやることは少なくて構いません。口を閉じたまま一度息を吐き、肩を上げずに短く息を入れ直し、声には出さず名乗りの一文を口だけ動かしてから、受話器を取りながら小さな声で一度だけ言ってみます。ここで見るのは声の大きさではなく、最初の音が欠けていないか、喉で押していないか、語尾まで息が残っているかの三点です。

電話口で崩れたときは、次の一文だけ立て直します

対応の途中で声が崩れても、全部を一度に直そうとしないでください。一文を短くし、語尾まで言い、それでも崩れるなら次の一文の前で一拍置きます。この一拍は沈黙ではなく、相手に言葉を渡す時間です。焦って次の案内を重ねるほど、声はさらに浅くなり、聞き手にも余裕のなさが伝わります。

もう一度、名乗りの一文を録音してみてください。今度は語尾だけに意識を向けます。「奥津です」の「す」まで音が残っていれば、電話口での印象はかなり変わっています。崩れた瞬間にどう戻すかをあらかじめ決めておくだけで、応対中の安心感は変わります。

込み入った問い合わせで説明が長くなる場面ほど、途中で自分がどこまで話したか分からなくなり、声がふらつきやすくなります。そんなときこそ、いったん一文を短く切ってしまって構いません。「ここまでで一度よろしいでしょうか」のように相手へ確認を挟むと、声を立て直す間ができるだけでなく、相手にとっても内容を整理する時間になります。

名乗りの声は、日によって同じでなくて構いません

体調や忙しさによって、その日の声の調子は変わります。無理に毎回同じ明るさを作ろうとすると、かえって声は硬くなります。整えるべきは声の明るさそのものではなく、受話器を取る前の一呼吸と、名乗りの語尾まで息を残す習慣のほうです。この二つさえ保てていれば、多少疲れている日でも、相手が受け取る印象は大きく崩れません。

朝一番の電話と、午後何十件目かの電話とでは、体の状態がまるで違います。それでも相手にとっては、どちらも今日はじめて聞く声です。声を毎回作り直そうとするより、受話器を取る前の一呼吸を習慣として固定しておくほうが、時間帯による差を感じさせません。次の一件は、今日録ったこの名乗りから始めてみてください。

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よくある質問

Q. 電話対応で声が暗く聞こえる原因は何ですか
話し始める前に息が止まり、第一声が喉だけで出ていることが多いです。明るく作るより、息の入口と語尾を整えることが先です。
Q. 電話で聞き返されるときは声量を上げるべきですか
声量だけを上げると硬く聞こえることがあります。会社名、名前、要件の前に短い間を置き、母音を潰さないことが大切です。
Q. 電話対応の練習は何を録音すればいいですか
実際に使う名乗り、保留前の一文、折り返し案内の三つを録音してください。声質ではなく、出だし、間、語尾を確認します。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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