美容室でも病院でも飲食店でも、予約の電話では自分の名前と希望の日時を必ず口にします。そして聞き返されるのは、決まってこの二か所です。声質をどうにかしようとする前に、いまの自分の声がどう出ているかを一分だけ確かめてください。用意するのはスマホのボイスメモだけです。
かける前に、予約の一文を二回録音してみてください
録るのはこの一文です。
「予約をお願いしたいのですが、空いている時間はありますか。」
一回目は、いつも電話をかけるときの調子そのままで。二回目は、受話器を持ち上げる前を思い浮かべ、短くふっと息を吐いてから読みます。再生して並べると、二回目は出だしの音がすっと立ち、文末まで声が保たれているはずです。言葉は一字も変えていません。予約の電話で小さくなる声は、性格ではなく、話し始める前の息の状態から崩れています。
聞き比べるときは、うまく話せているかを採点しないでください。一回目と二回目とで、出だしの音の立ち方と、文末の残り方だけを比べます。自分では差が小さく感じられても、電話口の相手には、その差がそのまま聞き取りやすさとして届きます。
聞き返されるのは、名前と日時の語尾からです
予約の電話は、用件を早く済ませたい気持ちが乗りやすい電話です。急ぐ気持ちは、話す速さよりも先に語尾へ出ます。希望の曜日、時間、そして自分の名前。ここで最後の一音が沈むと、聞き手には数字と名前の後半だけが欠けて届き、聞き返しが起きます。
聞き返されると、たいていの人は次を声量で補おうとします。ただ、緊張したまま一息にまくし立てると喉に力が集まり、肝心の名前と日時はさらに出しにくくなります。直す場所は音量ではなく、語尾に息が残っているかどうかです。
忘れがちなのは、相手側の環境です。予約の電話を受ける店や受付は、こちらの声を静かな部屋で聞いているとは限りません。営業中の店内のざわめき、別の呼び出し音が重なる受付。だからこそ、全体をゆっくり話すことよりも、大事な二か所の前後に区切りを作ることのほうが効きます。聞き返された直後の言い直しも、同じ速さで全部を繰り返すのではなく、崩れた箇所にだけ区切りを足して置き直してください。
名乗りの一音目が、喉の奥から始まっていないかを見ます
出だしの音が喉の奥にとどまったまま始まると、そのあとに続く言葉も奥にこもったまま流れます。逆に、一音目が息の流れの上に乗っていれば、声は受話器の向こうへ自然に運ばれます。
順番を分けると分かりやすくなります。まず、受話器を持つ手と肩の力を抜きます。次に、声を出さずに短く息を通します。最後に、その息の続きに一文を乗せます。この三段階に区切って出してみると、自分が喉で押しているのか、息に乗せられているのかの違いが、耳ではっきり分かります。
電話が苦手な人ほど、つながる前に文言を頭の中で何度も練習します。それ自体は構いませんが、頭の中の練習では息の準備は進みません。声に出さなくてよいので、口の形と息の流れだけを一度なぞっておくと、つながった瞬間の一音目が変わります。
息、喉、体。受話器を上げる前の三段階です
息は、深く吸うことより、先に短く吐くことです。吸う量を欲張るほど胸や肩が浮き、体は固まります。呼び出し音を聞いている数秒は、身構える時間ではなく、息を先に流しておく時間に使ってください。
喉は、控えめな声でも詰まらずに出せるかを先に確かめます。控えめな時点で詰まるなら、音量を足しても苦しさが増えるだけです。口から息と声を一緒に押し出そうとするのをやめ、鼻の奥のほうへ軽く響かせる感覚に切り替えると、受話器越しのこもりは変わります。
体は、首すじ、肩、顎、舌の根元です。電話は立ってかけたほうが声が良くなると言われることがありますが、私の実感では、座ったままでまったく差し支えありません。両足の裏を床に置き、うなじの張りをほどいてから話し始める。姿勢の形より、このほどきのほうが先です。
もう一つ、スマホを肩と耳のあいだに挟んだまま、手帳やカレンダーの画面を操作しながら話す癖にも注意してください。首が傾いたまま固定されると、息が流れていても声の通り道が細くなります。日時を伝えるあいだだけでも画面の確認をやめて、首をまっすぐに戻す。それだけで数字の届き方が変わります。
日時と名前は、半拍の間で区切って置きます
予約の電話では、希望日、時間帯、人数、名前と、情報が続けて並びます。これをひと息で言い切ろうとすると、全部がひとかたまりに流れて、相手のメモが追いつきません。日時の前に半拍、名前の前に半拍。相手が書き留めるための余白を、こちらの間で作ります。
時刻の数字には、耳だけで聞くと取り違えやすい音の組み合わせがあります。一時と七時のように紛れやすい数字ほど、直前に半拍置いて、最後の音まで息を残して置いてください。相手が復唱してくれる間は、沈黙を埋めようとせず、息を整える時間にあてます。復唱を最後まで聞いてから答えるだけで、通話全体が落ち着いた調子になります。
名前も同じ要領です。聞き取りにくい名字ほど、名乗りをひとかたまりで流さず、姓のあとに半拍置いてください。フリガナを聞かれたら、焦らず一音ずつ置くつもりで答えます。そして希望した日が埋まっていたときは、慌てて代わりの日を早口で探し始めないこと。一拍おいて、次の候補をまた同じ形で区切って置けば、通話の落ち着きは最後まで保てます。
保留のあとに担当へ替わったら、名乗りからやり直します
予約の電話では、最初に出た人から担当の人へ替わる場面がよくあります。保留音が流れている数十秒を、たいていの人は身構えたまま待ってしまいますが、ここは息を整え直せる貴重な時間です。保留中に肩を一度下ろし、短く吐いておく。
替わった相手には、また最初から名乗り直すことになりますが、この二度目の名乗りこそ雑になりやすい箇所です。一度目と同じ手順で、一音目を息に乗せて置き直してください。取り次ぎのたびに入りを作り直せるようになると、長い通話でも声は崩れません。
変更やキャンセルの電話は、申し訳なさで声が縮みます
予約を取るときは普通に話せるのに、変更やキャンセルを申し出る電話になると急に声が小さくなる人がいます。申し訳ないという気持ちが先に立ち、謝る言葉のほうに息を使い切って、肝心の新しい希望日時が尻すぼみになるからです。
謝意は最初のひと言に短く置き、そのあとは息を残して要件を区切ります。相手にとって必要なのは長い恐縮ではなく、聞き取りやすい変更内容です。言いにくい電話ほど、かける前の短いひと息が効きます。
録音は、条件をそろえて三回だけ比べます
練習に使う言葉は、最初に録った一文から変えません。言葉を毎回変えると、声が変わったのか言葉が変わったのか分からなくなるからです。一回目はいつも通り、二回目は息を通してから、三回目は語尾まで残して。聞き分けるのは、出だしが急いでいないか、途中で息が切れていないか、語尾が落ちていないか、詰まった響きになっていないか、の四点だけです。
うまくいかない日は、声の才能ではなく条件を疑ってください。かけるタイミングを焦っていないか。呼び出し音の間に肩が上がっていないか。感じよく聞こえるように喉のあたりで声色を作っていないか。喉に痛みや強い違和感がある日は練習を足さず、休む判断も練習のうちに入れてください。
かける直前の点検を、長い発声練習に置き換える必要もありません。息を止めていないか、顎がこわばっていないか、肩が上がっていないか、名前と日時を言い切る心づもりがあるか。受話器を持ち上げる前のこの四つで十分です。予約の電話は毎日かけるものではないので、実際にかける用事のある日を練習台にするつもりで向き合えば、回数の少なさは気になりません。
切る間際の半拍まで含めて、予約の電話です
名前と日時を言い終えた直後に気が抜けると、最後のやり取りだけ投げやりな印象になります。最後の一音を出したあと、あえて半拍だけ黙ってみてください。その半拍で、喉が締まっていないか、息が残っているか、肩が持ち上がったままでないかを確かめます。最後まで落ち着いて置けた通話は自分の記憶にも軽く残るので、次に同じ店へかけるときの気楽さにもつながります。
仕上げに、最初の一文をもう一度録音して、一回目と聞き比べてください。
「予約をお願いしたいのですが、空いている時間はありますか。」
出だしが立ち、日時を言う前の半拍が取れて、最後まで息が残っている。この形ができていれば、それをそのまま次の電話に持ち込むだけです。予約の電話は、ダイヤルする前のわずかなひと息から変わります。
よくある質問
- Q. 予約 電話 声が小さいの原因は何ですか
- 声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
- Q. すぐできる練習はありますか
- 短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
- Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
- 痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →ビジネスボイトレとは。声で印象の主導権を握るために鍛えること
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