電話の第一声が暗く聞こえる原因。声色より先に整える入り方

電話の第一声が暗い、低い、元気がないと言われる時に、声色ではなく息・間・語尾から整える方法を解説します。

奥津ユキ

電話に出た瞬間の声だけ「暗いですね」「元気ないですか」と言われる。自分では普通に出たつもりなのに、と戸惑っている人へ。これは性格を直す話ではなく、声の置き場所の話です。スマホのボイスメモで一分、まず次の聞き比べをしてみてください。

同じ一言を、置き場所だけ変えて録ってみてください

録音するのは、電話を取った時の短い一言です。

「はい、営業部の奥津です。」

一回目は、デスクでうつむいたまま、胸のあたりで声を響かせるつもりで普段どおりに言います。二回目は、高さも大きさもほとんど変えずに、声を少しだけ鼻の近くに置くつもりで、同じ一言を言います。

再生して比べると、二回目のほうが明るく聞こえるはずです。声の明るさは高さと深さのかけ合わせで決まっていて、胸に置いたままの声は暗く、少し鼻寄りに置いた声は明るく響きます。第一声が暗いと言われる原因の多くは、声質でも気分でもなく、この置き場所にあります。テンションを上げなくても、置き場所を変えるだけで印象は動く。これが最初の一分で分かることです。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

電話の第一声が暗いかどうかは、声質だけでは決まりません。受話器を取る前の息の準備と、名乗りの語尾がそろうと、同じ一言でも印象は変わります。

暗く聞こえるのは、性格ではなく通り道の問題です

声が暗いというと性格が暗いからだと受け取られがちですが、実際はこもりなど声の通り道の問題であることの方が多いです。性格を変える必要はなく、声の通り道を変えれば済む話だと捉えておくと、気持ちの負担が減ります。

電話が対面より不利なのは、表情や身ぶりが一切手伝ってくれないことです。対面なら口角の上がった顔が声の硬さを補ってくれますが、受話器の向こうには音しか届きません。同じ人が同じ気分で話しても、電話でだけ暗く聞こえるのはこのためで、音の置き場所の影響が電話では何倍にもなって出ます。

受話器を取ってすぐ第一声を急いで出すと、声は喉から始まりやすくなります。感じよく話そうとしても、息が止まっていると第一声は沈みます。逆に、声を出す前に小さく息を流し、体の前側に余白を作ってから応答すると、声の入りは変わります。

声のトーンを変えるといっても、別人になるくらい高くする必要はありません。気持ち悪くならない程度に、ちょっとだけトーンを上げるだけで印象は変わります。明るくしようとして声だけを高く作り込むと、喉に力が集まり、その次の言葉がさらに出しにくくなります。作るのではなく、置き場所と息の順番を整える。この違いを覚えておいてください。

受話器を取る前に、息・喉・体の順で確認します

一つ目は息です。受話器を取る前に息が止まっていると、第一声は硬くなります。深く吸うよりも、短く吐く流れを先に作ってください。感じよく出ようとして吸い込みすぎると、胸や肩が上がり、体は固まりやすくなります。

二つ目は喉です。喉で押す声は一瞬だけ強く聞こえても長く続きません。声を大きくするより先に、喉の奥を固めずに出せる小さな声を確かめてください。小さく出しても詰まる場合は、大きくしても負担が増えるだけです。

三つ目は体の状態です。首、肩、顎、舌の根元がこわばっていると、息は流れていても声が前に出ません。足の裏を床につけ、首の後ろを長く保ってから受け答えすると、喉だけで明るさを作ろうとしている癖に気づきやすくなります。

デスクワーク中の電話には、姿勢の落とし穴もあります。モニターをのぞき込んだまま受話器を取ると、顎が前に突き出た形になり、喉の通り道が狭いまま第一声を出すことになります。着信音が鳴ったら、受話器より先に一度だけ背中を起こす。この順番を癖にしておくと、画面を見ながらの応対でも声の沈みが減ります。

一文を三回、条件を変えて録音で比べます

置き場所の聞き比べが済んだら、今度は同じ一言で条件を三つ試します。一回目はいつも通りに言い、二回目は声を出す前に短く息を流し、三回目は語尾まで息を残して言います。毎回違う言葉で練習すると、声が変わったのか、言葉が変わっただけなのかが分かりにくくなるので、一言は固定してください。

録音では、明るく聞こえるかどうかを採点する必要はありません。最初の音が急いでいないか。途中で息が止まっていないか。語尾が落ちていないか。喉が詰まったように聞こえないか。この四点だけを確かめます。自分の耳の中で響く声と、録音に残る声が違って聞こえても心配は要りません。相手に届いているのは録音のほうの声なので、判断の基準はいつも録音側に置いてください。

語尾は特に大切です。引き伸ばすという意味ではなく、最後の一音まで息が切れず、投げ出すように終わっていないかという意味です。名乗りの語尾が残ると、そのあとに相手が安心して用件を話し始められる余白が生まれます。語尾が急に消えると、内容は合っていても暗い印象だけが残ります。

着信の直前は、短い点検だけで足ります

電話に出る直前に、長い発声練習をする必要はありません。必要なのは、声を出す前のごく短い確認です。息を止めていないか。顎が固まっていないか。肩が上がっていないか。語尾まで言い切る準備があるか。この確認だけでも第一声は変わります。

慣れてきたら、声の大きさではなく、電話の向こうに届く位置を意識してください。自分の喉の中で鳴らすのではなく、相手の耳の手前に言葉を置く感覚です。強く投げるのではなく、息の流れで前に置く。そうすると、声を張らなくても聞こえ方が安定します。

折り返しでこちらからかける時も、原理は同じです。呼び出し音が鳴っている間はつい用件の段取りで頭がいっぱいになりますが、その間に息だけは止めないでおきます。相手が出る瞬間に息が動いていれば、かける側の第一声も沈まずに済みます。

朝の一本目と保留明けは、特に沈みやすい場面です

一日の中で第一声が最も暗くなりやすいのは、出社直後の一本目です。前の晩から一度もまとまった声を出していない状態で受話器を取ると、声帯がまだ目覚めておらず、低くかすれた音から一日が始まります。出社してから誰とも話さないまま電話を取る流れになっている人は、その日最初の発声が電話にならないようにしてみてください。席に着く前の挨拶をひと言、意識して声に出しておくだけで、一本目の沈み方は変わります。

もう一つが保留明けです。お待たせした申し訳なさが先に立つと、保留を解除した瞬間の声は小さく沈みます。ここでも必要なのは謝罪のトーンを作り込むことではなく、解除のボタンに指を掛けると同時に短く息を吐いておくことです。待たせた事実は言葉で伝えれば十分で、声まで沈ませる必要はありません。

変わらない日は、条件と喉の負担を見直します

練習しても変わらない時、それは声の才能ではなく条件がずれていることがほとんどです。受話器を取る前に急いでいる。息を吸いすぎて胸が固い。明るく作ろうとして喉が上がっている。語尾を最後まで聞かずに終えている。こうした小さなズレが、電話口での聞こえ方を変えてしまいます。

比べる基準も、明るいかどうかより先に、まず喉の軽さです。次に語尾、その次に息。前日の録音と並べて、この三つだけを順に聞き比べてください。手応えがあった日ほど練習を伸ばしたくなりますが、量を増やすよりも短時間で毎日同じ条件を保つ方が、電話口での声は安定して再現できます。

喉に痛みや強い違和感がある日は別です。電話が多い日だからといって、声を出す練習を増やさないでください。水分、休息、声量を落とす判断も必要です。声を変えることと、喉を無視して出し続けることは別の話です。

明日の一本目の電話から、置き場所を変えてください

仕上げに「はい、営業部の奥津です。」をもう一度録音します。聞き比べる相手は、最初の実験でうつむいたまま録った一回目です。声が少し鼻寄りに置けて、息が先に流れ、語尾まで残っていれば、暗いと言われてきた第一声はすでに変わり始めています。

電話は表情が見えないぶん、置き場所の差がそのまま印象の差になります。裏を返せば、置き場所さえ整えば、それだけで印象は先に変わってくれるということです。明日の一本目の着信で、受話器に手を伸ばしながら短く息を吐き、いつもより少しだけ鼻の近くに声を置いてみてください。暗いと言われる日々を終わらせるのに、大きな声も作った明るさも要りません。

よくある質問

Q. 電話 第一声 暗いの原因は何ですか
声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
Q. すぐできる練習はありますか
短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
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