自分の声の録音チェック方法。嫌な声で止まらない聞き方

自分の声を録音すると嫌に聞こえる人へ。声の好き嫌いではなく、第一声・息・語尾を確認する方法を整理します。

奥津ユキ

録音した自分の声を聞いて、気持ち悪くなってすぐ消してしまう。それを繰り返しているうちは、何度録音してもチェックになりません。声質の良し悪しを判定する聞き方から、崩れた場所を探す聞き方へ切り替えると、録音は一気に練習の道具に変わります。切り替えは難しくありません。まず三十秒、二本だけ録ってみてください。

最初の実験は、二本の録音を一音だけで比べます

スマホのボイスメモを開いて、次の一文を録音します。

「この声が、相手に届いている声です。」

一本目は、いつも通りに読みます。うまく読もうとせず、途中でやり直さず、最後まで通してください。二本目は、録音ボタンを押したあと、声を出す前に口から細い息を一秒だけ吐き、その流れが残っているうちに同じ一文を読みます。

再生して比べるのは、最初の一音だけです。全体の印象は一切見ません。一本目の出だしは喉の奥から硬く始まり、二本目はわずかに柔らかく立ち上がって聞こえるはずです。この差が聞き取れたら、チェックの耳はもう働き始めています。声質は何も変えていないのに、届き方だけが変わっている。録音チェックで探すのは、この種類の差です。

一音に絞るのには理由があります。通しで聞いてしまうと、高さや滑舌、話し方の癖まで一度に気になり始めて、判断が散らばるからです。比べる場所を先に一つ決めてから再生する。これが、嫌な声で手が止まらないための最初の技術です。

気持ち悪く聞こえるのは、耳のズレのせいです

再生した瞬間に、自分の声はこんなに変だったのかと落ち込む人は多いです。ただ、これは録音機が本当の声を歪めているのではありません。順序が逆で、話している最中に自分の耳へ届いている声のほうが、頭蓋骨を伝う低い響きが混ざった、実際とはズレた聞こえ方をしています。スピーカーから流れてくる声は、隣にいる相手が普段から受け取っている声にかなり近いものです。

だから、録音の声を別物として退けてしまうと、相手に届いている声を確認する手段そのものを失います。最初の数回は違和感があって当然です。同じ録音を三回、五回と聞き返すうちに耳のほうが慣れていき、好きか嫌いかより先に、どこが崩れているかへ意識が向くようになります。無理に声を作り変える必要はありません。先に変わるのは声ではなく、聞き方です。

慣れるまでの期間だけは、消さない約束を自分としてください。嫌だと感じた録音ほど、削除した瞬間に比較の材料が消えます。聞き返すのが苦しい日は、再生せずに残しておくだけで構いません。数日後に聞くと、あの時ほど嫌ではないと感じることがほとんどです。

聞く順番を先に決めます。息、喉、体、第一声、語尾、間

チェック方法として持っておきたいのは、聞く順番です。順番を決めずに再生すると、気になった箇所を場当たりで追いかけて、毎回違う反省だけが残ります。

最初は息です。声が出る前に息が止まっていなかったか。止まっていれば、第一声は必ず硬く録れています。次に喉です。一瞬強く聞こえても、押して出した声は文の後半で細くなったり詰まったりして残ります。三番目は体です。首や肩、顎の根元がこわばっていると、息は流れていても声が前に出ず、録音では奥にこもって聞こえます。そのうえで、第一声、語尾、間の三箇所を聞きます。出だしの一音が急いでいないか。最後の一音が雑に消えていないか。大事な言葉の前に、相手が受け取るための隙間があるか。

六つを一度に判定する必要はありません。一回の再生につき一つずつ。同じ三十秒を六回聞き直すくらいの配分が、ちょうどよいです。

三本目の録音で、語尾を足します

先ほどの二本に、もう一本だけ足します。三本目は、最後の一音を雑に手放さず、息がまだ残っている状態で録音を止める読み方です。長く伸ばすという意味ではなく、文の終わりまで息の量を保つという意味です。

三本を続けて再生すると、入りの差、息の差、語尾の差がひと続きで聞こえてきます。この三本が、以後のチェックの物差しになります。新しく録った声を評価する時は、良いか悪いかではなく、三本のうちどれに近いかで判断してください。好き嫌いの感情に引っ張られずに済みます。

三本とも録り直したくなっても、その日はそこで止めてください。納得のいく一本が録れるまで繰り返すと、録音は練習ではなく採点会になります。物差しは、上手な声ではなく、今日の自分の声でできていることに意味があります。

話し終えた後の半拍に、癖が残ります

チェックで見落とされやすいのが、言い終えた直後です。録音を文の最後でぴたりと止めず、半拍だけ回したままにしてください。その半拍に、喉の苦しそうな音が混ざっていないか、息が完全に固まっていないか、力んで止めた気配が残っていないか。話している最中の癖より、話し終えた直後の癖のほうが正直に録れていることがよくあります。

語尾の後に余白がある録音は、聞き手の立場で再生しても落ち着いて聞こえます。逆に、語尾と同時に息まで断ち切っている録音は、内容が正しくても余裕のなさだけが先に届きます。録音を止める指の動きにも癖は出ます。言い終わるより先に停止ボタンへ意識が飛んでいる人は、実際の会話でも、言い終わるより先に気持ちが次へ行っています。

録る言葉は、実際に使う言葉へ寄せていきます

練習用の一文で耳が慣れてきたら、録音する言葉を日常のものへ寄せます。あいさつ、名乗り、電話の受け答え。普段いちばん多く口にしている言葉ほど、癖は正直に録れます。長い説明を録る必要はなく、五秒で言い終わる一言で十分です。

同じ声でも、対面では小さく感じ、オンラインでは暗く沈み、マイク越しでは強すぎるというように、場面ごとに印象は違って聞こえます。それでも、録音でチェックする場所は変わりません。入り、息、語尾です。場面ごとに聞く項目を増やし始めると、どの録音で何を直しているのかが分からなくなります。項目は固定したまま、言葉と場面だけを入れ替えるのが、迷わないための組み立てです。

録るタイミングにも意味があります。声の調子が良い時だけ録っていると、記録が本番の声とかけ離れていきます。大事な話の直前や、話し終えた直後のような、実際の状態が声に出ている瞬間にこそ、三十秒を挟んでください。

直すのは、一回につき一箇所だけです

録音を聞くと、息も第一声も語尾も、全部が同時に気になります。ここで全部をまとめて直そうとすると、次の録音は作り物めいた声になり、比較そのものが壊れます。

選び方は単純です。六つの順番の中で、いちばん手前で崩れていた場所を一つだけ選びます。息が止まっていたなら息だけ。息は流れていて第一声だけ硬いなら第一声だけ。早口に聞こえた日は、話す速さそのものではなく、大事な言葉の前の間だけを選びます。間が一つ入るだけで、速さを変えなくても録音の印象は変わるからです。

翌日は同じ一文を同じ手順で録音し、選んだ一箇所が変わったかどうかだけを聞きます。声全体が良くなったかではなく、選んだ場所が動いたか。この基準なら、進んだのか止まっているのかを自分で判定できます。

ファイル名とメモで、後から比べられる形にします

録音チェックは、録りっぱなしにすると三日で嫌になります。ファイル名には日付に加えて、何を確かめた一本なのかを入れておきます。「息だけ」「語尾だけ」のような短い言葉で十分です。あとで並べ替えた時に、同じテーマの録音同士をすぐ聞き比べられます。

聞いた後に残すメモも三行までにします。出だしは急いでいなかったか。途中で息は止まらなかったか。最後の一音は残っていたか。反省文ではなく、次に選ぶ一箇所を決めるための記録です。長い分析を書き始めると、書くことが目的になって録音の習慣が止まります。三十秒録って、六つの順で聞いて、三行残す。この軽さがチェックを続けさせてくれます。

週に一度だけ、棚卸しの時間を作るのもおすすめです。最初に録った三本と、その週のいちばん新しい一本を並べて再生します。毎日の比較では聞き取れない小さな変化も、一週間の幅で聞くとはっきり分かります。変わっていなくても落ち込む必要はありません。同じ条件で録れているという事実そのものが、チェック方法として機能している証拠です。

三十秒の録音が、いちばん正直な鏡になります

仕上げに、もう一度だけ録ってください。

「この声が、相手に届いている声です。」

細い息を先に流し、最後の一音まで息を残して読みます。今日最初の一本と並べて再生し、出だしと語尾の二箇所だけを聞き比べてください。差がわずかでも聞き取れたなら、あなたのチェック方法はもう成立しています。嫌な声かどうかを裁く耳は今日で終わりにして、明日からは、崩れた場所を一つだけ探す耳で三十秒の録音を続けてください。鏡を見ずに身だしなみが整わないのと同じで、録音を聞かずに声は整いません。そして鏡と同じで、慣れれば見るのに勇気は要らなくなります。

よくある質問

Q. 私の声だけ録音で高く聞こえるのはなぜですか?
私自身の耳には骨伝導を含んだ低めの声が届きますが、録音には空気を通った声だけが残ります。その差で高く・薄く感じることがあり、まずは異常と決めつけなくて大丈夫です。
Q. 自分の声が嫌で再生を止めてしまうとき、どう聞けばよいですか?
私なら、最初は内容を追わず、短い区間で語尾だけを聞きます。好き嫌いの判定を後に回し、「伸びる」「落ちる」などの観察語を一つ添えると、聞き続けやすくなります。
Q. 録音の声を自然に受け止めるために、再生順は変えたほうがよいですか?
私なら、同じ素材を一度目は全体の流れ、二度目は一項目だけ、と役割を分けます。最初から細部を裁くよりも、話の目的に声が合っているかを先に聞くと、嫌悪感に引っぱられにくくなります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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