舌根の力みで声がこもる人へ。喉を押さない発声

舌の奥が固い、声がこもる人へ。舌だけを動かさず、息と母音で整える方法をまとめます。

奥津ユキ

話し終わったあとに舌の付け根がだるい、声がいつも奥にこもって暗い。こうした人は、舌そのものより先に、喉と首まわりが常に軽く締まった状態になっていることが多いです。舌根だけを鍛えたり伸ばしたりする練習を続けても、この締まりが残っている限り、こもりは戻ってきます。

まず、顎と首の力みを確認します

鏡を見ながら「あ」と声を出す前に、指を顎の下、耳の少し前の位置に軽く当ててください。声を出す瞬間にそこが硬く盛り上がるなら、舌根はその時点ですでに力んでいます。

次の一文で、実際の発声を確認します。

「舌を押し下げず、息を流して、母音の明るさを録音します。」

顎の下に力を感じたまま話し始めると、「舌を押し下げず」の時点で声はすでに奥にこもっています。「息を流して」で息を止めてしまうと、母音は暗く沈んだまま出てきます。「録音します」まで実際に聞き返さないと、力みが取れたかどうかは自分の感覚だけの判断になってしまいます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

舌根の力みは、舌の筋トレでは解けません。喉の奥に余白を作ることで緩みます。

力で押し下げようとするほど、逆効果です

舌根が固い人ほど、「舌をもっと下げなければ」と強く意識して、舌そのものに力を入れがちです。これは遠回りです。舌根の緊張は、喉の奥がすでに狭くなっていることの結果であることが多く、舌だけをいじっても根本の状態は変わりません。

先に見るべきは、次の三点です。あくびをする直前のように、喉の奥に少し空間ができているか。息を吸う時、肩ではなく脇腹のあたりが動いているか。声を出す前の一瞬、首の前側が固まっていないか。この三つが整うと、舌根は自然にゆるみます。

この三点は、一度に全部そろえようとしなくて構いません。今日は喉の奥の空間だけを見る。明日は息の入る場所だけを見る。あさっては首の前側だけを見る。分けて確認するほうが、自分がどこで力みを作っているかがはっきりします。一度に全部を直そうとすると、結局どれも中途半端になり、結果として舌根に力を戻してしまうことがよくあります。

本番の直前は、30秒だけ顎を確認します

人前で歌う前や、大事な電話の前にできることは多くありません。まず顎を軽く上下に揺らし、次に耳の前を指で軽く押して硬さがないかを確かめます。硬ければ、あくびをする直前の感覚を作り、喉の奥に空間を作ってから話し始めてください。

長い時間をかけて発声練習をする必要はありません。この30秒だけでも、舌根が持ち上がったまま声を出す事故は減らせます。慌てて省略したくなる時ほど、この確認が効きます。

それでも締まりが抜けにくい時は、少し声色を作って遊んでみるのも一つの手です。芝居がかったオペラ風の「うー」や、アニメのキャラクターがよく出す短い「メッ」のような音をふざけ半分でまねてみると、まじめに直そうとするより先に喉まわりの締めすぎがふっと抜けることがあります。

力みが取れない時は、順番を疑います

うまくいかない時、多くの人は「もっと舌を意識しよう」と力を強めます。反対に、次の順番で戻ってください。

  1. 顎と首の力を抜く。
  2. 短く息を吐き、喉の奥に空間を作る。
  3. その状態のまま、小さな声で母音だけを出す。
  4. 最後に、一文にして録音する。

この順番を飛ばして声から直そうとすると、舌根の力みはむしろ強化されます。

高い音や長い一文ほど、力みは強く出ます

舌根の力みは、低い声で短く話している時にはあまり目立ちません。目立つのは、音が高くなる瞬間や、一息で長く声を伸ばす瞬間、そして人前で緊張している瞬間です。高音に届かせようとして喉を持ち上げると、舌根がその動きに引っ張られて一緒に固まります。

長い一文を最後まで言い切ろうとする時も同じです。息が足りなくなってくるほど、体は喉と舌根で無理に音を支えようとします。まず短い一文で力みのない状態をしっかり作り、そのあとで少しずつ音を高くしたり、一文を長くしたりしてください。順序を逆にしてしまうと、力みごと音域や長さを体が覚えてしまいます。

高音が出ないのは喉が締まっているからだ、とよく言われますが、実際は声帯そのものはある程度しっかり閉じている必要があり、問題になりやすいのはむしろ喉仏を上げすぎていることのほうです。締めること自体を一律に悪者にせず、喉仏の高さだけを見直す視点を持ってください。

話す場面でも、同じ力みは起きます

舌根の力みは、歌う時だけの話ではありません。緊張する場面で早口になる、電話で声を張ろうとする、人前で滑舌を気にしすぎる。こうした場面でも、顎の下に力を入れたまま声を出していることがあります。

歌でも会話でも、確認する場所は同じです。声を出す前に顎の下を触ってみて、硬くなっていないかを見てください。硬さに気づけるようになるだけで、力を抜くタイミングも分かるようになります。緊張する場面ほど、この確認を飛ばして声からいきなり出そうとしがちなので、意識して一呼吸置く癖をつけてください。

練習は、次の四段階で進めます

順番練習見る場所
1顎を軽く揺らして脱力する首の前側が固まっていないか
2短く息を吐く喉の奥に空間があるか
3小さな声で母音を出す舌根が持ち上がっていないか
4一文を録音する母音の明るさが残るか

音量は最初から必要ありません。むしろ小さい声のほうが、舌根がふっと持ち上がる瞬間を見つけやすくなります。

録音では、暗さが増える場所だけを探します

録音を聞く時、うまいかどうかは関係ありません。探すのは、母音が急に暗く沈む瞬間です。

「舌を押し下げず」で入りが重くないか。「息を流して」の途中で息が止まっていないか。「録音します」まで明るさが残っているか。この三か所のどこで沈むかが分かれば、次にほぐすべき場所も具体的に決まります。

口を大きく開けても、力みは取れません

舌根が固い人ほど、「もっと口を大きく開ければ響くはず」と考えて、口の開け方を先に直そうとします。ただ、口をどれだけ大きく開けても、喉の奥が狭いままなら母音はやはり暗くこもったままです。逆に、口の開きが小さくても、喉の奥にきちんと空間があれば、母音は自然と前に出やすくなります。

同じように、深呼吸をすればいずれ緩むという考え方も、半分は正しく半分は違います。深く吸うこと自体より、吸ったあとに短く吐きながら喉の奥の空間を保てているかどうかのほうが、舌根の力みには直接関わります。大きく吸い込みすぎると、かえって肩や胸が持ち上がり、首の前側が固まって舌根の力みを助長することもあります。吸う量を増やすことより、吐く息の流れを整えることのほうを優先してください。

一週間は、同じ一文と同じ手順で確認します

「舌を押し下げず、息を流して、母音の明るさを録音します。」

毎日この一文を使い、手順も固定します。顎を緩める、息を吐く、母音を出す、録音する。この順番を崩さないでください。一週間続けると、自分がどの段階で力んでいるかが具体的に見えてきます。声量を増やすのはそのあとで構いません。

喉に違和感がある時は、その日は録音だけにします

痛みがある、強いかすれがある、休んでも戻らない状態が続くなら、顎や首を動かす練習そのものを控え、専門家への相談を優先してください。舌根をほぐすことは、喉を酷使することとは違います。無理をしないことも、この練習の一部です。

違和感がある日は、音域を広げようとせず、昨日と同じ一文を同じ音量で録音するだけにとどめます。変化を求めず、状態を記録するだけの日があってもかまいません。無理に練習を詰め込むより、違和感が引くまで待つほうが、結果的に力みの癖も取れやすくなります。

一週間続けたあとは、場面を広げます

同じ一文と同じ手順で一週間ほど確認できたら、次は場面を広げます。歌う一文だけでなく、実際の会話で使う短い一言でも、同じように顎の下を確認してください。名乗る時、質問に答える時、電話を取る時。場面が変わっても、見る場所は顎、喉の奥、母音の明るさの三つのままです。

場面を広げても、いきなり長い会話全体を直そうとしないでください。まずは最初の一言だけで力みの有無を確認し、そこが緩んでいれば、その後の言葉も自然と楽になります。最初の一言で力みに気づけるようになると、会話の途中で声が沈んできた時にも、同じ確認に戻れるようになります。

仕上げは、力みが戻っていないかの確認です

練習の最後に、もう一度顎の下と喉の奥を触ってみてください。声を出す前に硬さが残っていなければ、その日の練習は十分です。声量や高さで判断せず、力みが戻っていないかどうかで判断してください。硬さが残っていたら、無理に次の練習へ進まず、顎を軽く揺らす動きだけで終えて構いません。

まとめ

舌根が力む場面では、舌を力で下げようとする前に、顎と首の脱力、息、母音、録音という順番で見てください。「舌を押し下げず」の入り、「息を流して」の息、「録音します」の明るさを、この順番で確認するだけでも変わります。

歌でも会話でも、高い音や長い一文、緊張する場面ほど舌根の力みは強く出ます。だからこそ、短く楽な状態を先に作ってから、少しずつ音域や場面を広げていくことが近道になります。

舌根の力みをほぐすことは、舌を鍛えることではありません。喉の奥に余白を作り、その上に母音を乗せる感覚を、焦らず体で覚えていくことです。

よくある質問

Q. 舌根 力み 声では何から始めるべきですか
最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
Q. 毎日練習した方がいいですか
短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
Q. 録音は必要ですか
必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
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