·滑舌・発音

もごもご話す声の直し方。仕事で聞き返されない話し方

もごもご話す、声がこもる、言葉がはっきりしない人へ。口先ではなく息、母音、言葉の頭から整える方法を解説します。

奥津ユキ

上司への報告の場面で、言葉が口の中にとどまったまま外に出てこない人は少なくありません。性格や滑舌の悪さのせいにしてしまう前に、報告の一文を切り出す直前と、言い終えた直後に何が起きているかを見てみてください。

口の中の移動量を頬の外から測る

「本日の資料をご確認ください」と、普段の声量・速さ・高さで一度言ってください。次も同じ文、同じ区切り、同じ吐く息の量で話します。変えるのは、発音中に頬を外側へ動かす幅だけです。二度目は左右の人差し指の腹を頬骨の下に軽く当て、各語の切り替わりで頬が指先をわずかに押す幅まで動かしながら言います。唇の形、顎の位置、舌先の置き方は一度目と同じにします。

二度目で、指先が「ほんじつ」「しりょう」「ごかくにん」の切り替わりごとに別々に動けば、口の中の移動が一続きにならずに済んでいます。頬の外側を大きく膨らませる必要はなく、語ごとに一度ずつ動きが届くかを一度目と二度目で観察してください。もごもごは、口を大きく開くかどうかだけで決まらず、内部の動きが次の語まで運ばれないことで起こります。成功の目印は、頬を外へ押し出す大きさではなく、指先への動きが「資料」と「ご確認」の間で途切れることです。二度目で片側だけが大きく動いた場合も、左右の幅をそろえることはせず、その偏りを観察として残してください。差が出なければ、頬の移動量ではなく、文の区切り方にある別の原因を確かめてください。

もごもごには、たいてい三つの崩れが重なっています

報告の場面を細かく見ていくと、もごもごの正体は一つではなく、三つの崩れが同時に起きていることがほとんどです。

第一に、話し出す前の段階で息を止めてしまうこと。第二に、伝えたい核心の言葉に着地する前に、息継ぎを飛ばして駆け込んでしまうこと。第三に、言い終えた安堵から語尾の力がふっと抜けてしまうこと。「です」「ます」の末尾が消えてしまうと、内容そのものは合っていても頼りない響きになります。

これは性格の弱さではなく、体の使い方についた癖にすぎません。出だしの音、母音の形、息の通り道、語尾の残り方。この順番で一つずつ確認していけば、直すべき場所は自然に絞られていきます。三つ同時に直そうとせず、まず一つだけを意識する日を決めるほうが、忙しい業務の合間でも続けやすくなります。

口を開ける前に、通り道と舌の位置を確認します

もごもご話す人がまず試したくなるのは、口を大きく開けることです。ただ、口の開け方だけを直そうとすると、喉に力が入り、かえって硬い声になることがあります。

先に見るべきは、次の三つの通り道です。話し始める前に、息はすでに動いているか。大事な語の手前で、息を吸い直さずに待てているか。文の終わりまで、息が切れずに続いているか。この三つのどこかが詰まると、言葉は口の中にとどまったまま外へ出てきません。

もう一つ、見落とされがちなのが待機中の舌の位置です。話していないときに舌がだらりと下がっていると、話し出す瞬間に言葉の頭が立ち上がるまで時間がかかります。舌先を上の前歯の裏側にある歯茎に軽く触れさせておくだけで、話し出しの反応が変わります。口を頑張って大きく開けるより、待機中の舌の置き場所を変えるほうが、報告の場面では効果が出やすいです。

メモに目を落とした瞬間、声はこもります

報告用のメモや手元の資料を見ながら話すと、視線が下がり、顎も一緒に下を向きます。この姿勢のまま話すと、声は喉の奥から下方向へ抜けてしまい、相手に届く前にこもって消えます。メモを読み上げること自体は悪くありませんが、大事な一文を言う直前だけ、視線を相手の顔の高さまで戻す習慣をつけてください。

視線を上げる、それだけで声の抜ける方向が変わります。全文を暗記する必要はなく、報告の要になる一文、たとえば結論を伝える箇所だけメモから目を離せるようにしておけば十分です。その一文を先に決めておくだけで、報告全体の印象は大きく変わります。

声色をいじる前に、まず疑ってほしいこと

もごもごを直そうと思ったとき、人がよくやるのは声そのものへの手当てです。低く落として重みを出す、明るくして印象をやわらげる、勢いよく張って存在感を出す、一語ずつ区切ってゆっくり話す。どれも試したことがあるかもしれません。

これらは直後こそ変わった気がしますが、体の準備そのものは変わっていないので、緊張する場面ではすぐに元の癖が顔を出します。特に張って出すやり方は、声を出し切った後半、つまり語尾のあたりから真っ先に力を失っていくという弱点があります。

喉に意識を向ける前に、体の向きも点検してください。足の裏が床にしっかりついているか、手元の資料や画面に気を取られて胸が内側に閉じていないか、顎が前に出て首の前側がこわばっていないか。この三か所が崩れたままでは、声色をどう変えても最初の音は喉で押さえ込まれます。座った姿勢のまま報告する場合も同じで、椅子の背もたれに寄りかかりすぎると胸が閉じやすくなるので気をつけてください。

席を立つまでの数十秒でできる準備

報告の直前にまとまった練習時間は取れません。私がいつも案内しているのは、次のごく短い手順です。

まず唇を閉じたまま息を静かに吐き切ります。次に、肩を持ち上げないよう気をつけながら短く息を吸い直します。そのまま声には出さず、先ほどの一文を口の形だけでなぞってみます。最後に、ごく小さな声で一度だけ実際に発音してください。

このときチェックするのは声の大小ではありません。最初の音がすでに欠けていないか、そして語尾まで息の支えが続いているか。見る場所はこの二つだけに絞ってください。デスクから会議スペースまで歩く数十秒でも十分に間に合います。

エレベーターの中や廊下を歩いている間でも構いません。声を出さずに口の形だけをなぞる練習は、周りに気づかれることもなく、報告に向かう緊張をそのまま準備に変えられます。

報告の途中でもごついても、直すのはその一文だけです

報告の最中に言葉がもごついても、最初からやり直す必要はありません。話している一文をそこで短く切り上げ、語尾まではっきり言い切ってしまいます。それでも気持ちが落ち着かないときは、次の一文へ移る前にほんの半拍だけ動きを止めてみてください。

これは失敗して黙り込んでいるのではなく、聞き手が今の言葉を受け取り終えるまでの時間です。崩れてもそこから立て直せる手順をひとつ知っているだけで、報告に向かう気持ちの余裕はまるで違ってきます。

長く一気に話そうとするほど、途中の息継ぎが飛びやすくなります。伝える内容を頭の中で三つ程度の塊に分け、塊と塊の間でだけ短く息を入れ直すようにすると、話す速さを変えなくても、もごつく回数そのものが減っていきます。急いで結論までたどり着こうとするより、塊ごとに一度止まるほうが、結果として報告全体の時間も短くなります。

周りの反応を、練習の目安にします

もごもごした話し方が直っているかどうかは、自分の耳だけでは判断しにくいものです。上司や同僚から聞き返される回数が減ったかどうかは、意外と正直な目安になります。

毎回の報告のあとに、聞き返されたかどうかだけをメモしておくと、練習の成果が数字として見えてきます。減っていれば、それは声質が変わったからではなく、入り、間、語尾のどこかを整えられたからです。一週間分たまったメモを見返すだけでも、自分がどの曜日、どんな相手のときに崩れやすいかという傾向まで見えてきます。

今日の報告で使う一文を、もう一度だけ録音してください。

「確認した内容を共有します」

出だしの「か」を口の中で止めずに前へ出し、語尾の「す」まで息を残す。この二点だけを聞き比べれば、うまく声が出ない日があっても、前の日にできていた一点を思い出せば、また同じ場所から始められます。

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よくある質問

Q. もごもご話してしまうのは、滑舌だけの問題ですか?
滑舌だけとは限りません。言葉を口先で急いで処理すると、母音の形が消えて、音がまとまって聞こえます。私は子音を強める前に、口の開きと一音の長さを整えます。
Q. ビジネス会話で語尾が曖昧になるとき、何を変えればよいですか?
語尾を押し出そうとすると喉が閉じやすいため、文末まで息の流れを途切れさせないことを意識します。最後の母音だけを前に伸ばすと、言い切りが伝わりやすくなります。
Q. 話す途中で口が動かなくなる感覚には、どう対応しますか?
大きく動かそうと力むのではなく、上下より横方向の動きを使います。短いフレーズを、母音が見える口の形でゆっくり言うと、もごもごした連なりをほどきやすくなります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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