歌っている途中で母音が奥にこもって聞こえる人は、舌の位置そのものを気にして動かそうとしがちです。ただ実際には、母音を作る瞬間より前に、息の流れが弱いまま声だけを出そうとしていることが原因になっている場合が多くあります。
母音のこもりは、舌より先に息の流れを確認します
次の一文で、自分の状態を確認してみてください。
「舌を押しつけず、息を流して、母音が前に出るか録音します。」
出だしの「舌を押しつけず」で顎やのど元にすでに力が入っていると、声はその時点で奥まった位置から始まります。「息を流して」の部分を急いで通り過ぎると、息と声のタイミングがずれ、母音が息に乗り切らないまま形だけ作られます。最後の「母音が前に出るか録音します」まで実際に聞き返さずに終えると、こもりが取れたかどうかは感覚だけの判断になってしまいます。
舌を前に出そうと力を入れるほど、こもりは強くなります
歌の練習でよくある失敗は、こもりを直そうとして舌を意識的に前へ押し出すことです。早く変えたいという気持ちが強いほど、舌そのものを操作しようとしてしまいます。
けれど、舌は力で動かすほど整うわけではありません。舌に力を入れて位置を作る動きを繰り返すと、その力み方自体が新しい癖として定着します。まずは、力を入れなくても自然に出てくる楽な母音があるかどうかを確かめてください。
声がこもるのは舌の根元が下がって気道をふさいでいるからだ、と考えて根元を持ち上げようとする人もいますが、実際はそこに力を入れるほど逆にこもりが強くなります。舌の根元は気道をふさいでいるというより、力が入って動きにくくなっている場合がほとんどなので、まずは根元の力を抜くことを優先してください。
見る順番は、息、喉、体、録音です。息が止まっていないか。喉で押していないか。体のどこかが固まっていないか。録音で聞いて同じ状態を再現できるか。この順番で見ていくと、舌に頼りすぎている場面が具体的に見えてきます。
こもりの原因は、舌だけに限りません
母音がこもる場面でうまくいかないと感じる時は、原因を舌だけに絞らないでください。舌が奥に引ける、母音がこもる、喉で音を補おうとする。この三つは同時に起きていることが多く、それぞれ息、喉、体の状態と結びついています。息が強すぎても弱すぎても声に乗る流れは崩れますし、響きや高さを喉だけで作ろうとすると声は硬くなります。肩や胸、顎が固まっていれば息の流れそのものが変わり、舌や喉で無理に補おうとする癖が出やすくなります。
母音によって、こもりやすさは変わります
五つの母音の中でも、こもりが目立ちやすいのは「う」と「お」です。口の形を丸くしようとするあまり、舌の奥が一緒に持ち上がり、そのまま喉に近づいてしまうことがあります。「い」や「え」は横に引く動きが多いため、舌先は動いても奥はあまり動かず、比較的こもりにくい母音だといえます。
歌詞を練習する時は、こもりやすい母音が出てくる箇所だけを取り出して確認すると効率的です。曲全体を通しで直そうとするより、「う」や「お」を含む一小節だけを繰り返すほうが、変化にずっと気づきやすくなります。
練習は、声を出す前の準備から組み立てます
最初に行うのは、声を出さない息だけの準備です。大きく吸い込むのではなく、短く吐く息が前へ流れる感覚を作ります。次に、小さな声で喉が押されていないかを確かめます。大きく出す必要はなく、楽な音量で十分です。声を出す瞬間は、口から声を息と一緒に押し出そうとせず、鼻の奥のほうに響かせるつもりで一文を出してみてください。同じ言葉でも、響かせる場所を変えるだけで母音の前への出方が変わります。最後に、一文を録音して実際の言葉としてどう届くかを確認します。音階だけで判断せず、言葉になった時に母音がどこまで前に出ているかを聞いてください。
| 段階 | やること | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 1 | 短く息を吐く準備 | 体のどこかが固まっていないか |
| 2 | 楽な音量で声を出す | 喉で押していないか |
| 3 | 一文を録音して聞く | 母音が前まで残っているか |
音量を下げると、舌の癖が見えやすくなります
こもりを感じるほど、大きな声で押し流したくなりますが、喉で押している状態のまま音量を上げると負担が増えるだけです。まず音量を下げてください。小さな声にすると、息が止まっているか、喉で押しているか、母音が奥にこもっているかといった癖が見えやすくなります。「舌を押しつけず」を楽な声で出せるか、続けて「息を流して」に息を止めずつなげられるか、最後の「録音します」まで息が残るかを、小さい声で確認してから少しずつ音量を上げていきます。
喉を守る判断も、歌の練習の一部です
痛みがある、強いかすれがある、休んでも戻らない状態が続くなら、練習で押し切らず専門家に相談する判断も必要です。喉を守ることは弱い練習ではなく、歌を長く続けるための技術です。一度だけ強い声を出せることより、必要な母音を毎回安定して出せることのほうが価値があります。
録音は、声の好き嫌いを判断する場ではありません
録音した自分の声に違和感を覚えることはあります。ただ録音で見るべきは好き嫌いではなく、再現できるかどうかです。昨日より「舌を押しつけず」が楽に入ったか、「息を流して」で息が止まらなかったか、「録音します」まで母音が前に残ったか。この三つだけを確認してください。自分の中で聞こえる声と外に届く声は違うため、録音という外の耳を使って母音の位置を整えます。
迷ったら、練習項目を一つ減らします
声が変わらない時ほど練習を増やしたくなりますが、増やすほど何が効いたのか分からなくなります。今日は息だけを見る、明日は喉の力みだけを見る、次の日は録音で母音の抜けだけを見る。こうして一つずつ絞るほうが、変化ははっきり見えてきます。
一週間は、同じ一文で様子を見ます
「舌を押しつけず、息を流して、母音が前に出るか録音します。」
この一文を毎日録音し、声量を上げる日ではなく、息を見る日、喉を見る日、母音を見る日というふうに、一日一つだけテーマを決めてください。一週間続けると、自分がどこで舌に頼りやすいかが見えてきて、そこから練習を広げれば無駄なく進められます。
声そのものより先に、順番を戻します
声がうまく出ない時、多くの人はすぐに声を直接よくしようとしますが、その前に順番を戻すほうが安定します。最初に戻すのは息、次に戻すのは体、最後に戻すのが声です。息が止まったまま声を出すと喉が先に働き、肩や顎が固まると息が流れにくくなります。息と体が整ってから、楽に出る母音を確認する。この順番を守るだけで、練習の結果は変わります。
録音で聞く変化は、三つに絞ります
全体の上手さを判断せず、最初の音、途中の息、母音の抜け方という三か所だけを聞いてください。声が喉から押し出されていないか、途中で止まったり急に強くなったりしていないか、母音が最後まで前に残っているか。この三つのどこかが少しでも変われば、練習は前に進んでいます。
一回で変えようとしない方が、うまくいきます
強い手応えを求めるほど、喉や舌で頑張ってしまいます。まずは楽に出せる範囲だけで十分です。楽な母音があってから、高い音、低い音、大きな声へと少しずつ広げてください。一日目は息、二日目は喉の力み、三日目は録音での母音というように、練習を分けるほど、何が変わったかがはっきり分かります。
喉に違和感がある日は、練習を軽くします
痛みがある、強いかすれがある、休んでも戻らない。こうした状態が続く場合は、無理に発声で解決しようとしないでください。声量を上げない、高い音を攻めない、長く伸ばさない。息を流して短い一文だけ録音する日があってもいいのです。声を守ることも、歌の練習の大切な一部です。
仕上げは、同じ一文で毎回比べます
毎回違う文を使うと変化が分かりにくくなるため、練習の最後は同じ一文で録音してください。昨日より楽に出たか、昨日より喉が押されていないか、昨日より母音が前に残っているか。この三つだけで十分です。声を変えることは別人になることではなく、自分の声を舌の力みに頼らず再現できるようにすることです。
練習後は、強さより再現性で判断します
練習の終わりは、強く出たかどうかだけで決めません。喉が軽く、同じ一文をもう一度出せる状態が残っているかを確認します。同じ音量、同じ一文、同じ距離で録音し、入りが喉から押されていないか、途中で息が止まっていないか、母音が最後まで残っているかという三点だけを見てください。この状態がそろう練習を残しておくと、翌日も同じ声を再現しやすくなります。
本番の直前は、こもりやすい母音だけ確認します
本番前に長く発声練習をする必要はありません。曲の中でこもりやすい「う」や「お」が出てくる箇所だけを選び、口ずさむ程度に一度確認してください。舌の奥が持ち上がっていないか、息が止まっていないかを、この短い確認だけで見ておいてください。
長い通し練習より、こもりやすい母音をピンポイントで狙って確認するほうが、本番での安定にはずっとつながります。
まとめ
舌の位置を整える場面では、舌だけを動かせば声が変わると考える前に、息、喉、体、録音の順番で見てください。「舌を押しつけず」の入り、「息を流して」の息、「録音します」の母音確認を整えるだけでも、練習の方向は変わります。
母音のこもりを直すことは、舌を鍛えることではありません。「う」や「お」のようにこもりやすい母音をあらかじめ把握したうえで、息を先に流し、その上に母音を乗せる感覚を体で覚えることです。
よくある質問
- Q. 舌 位置 発声では何から始めるべきですか
- 最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
- Q. 毎日練習した方がいいですか
- 短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
- Q. 録音は必要ですか
- 必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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詳しいプロフィール →歌が上手くなる声の出し方。音程の前に整える息と響き
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