滑舌が悪い・早口になる人へ。舌より先に整えるべき声の出し方

滑舌が悪い、早口で聞き返される原因を、舌の筋トレだけでなく息・言葉の頭・区切り方から解説します。会議やプレゼンで聞き取りやすく話す練習も紹介します。

奥津ユキ

会議で聞き返される、早口だと言われる。そう感じたら、まずスマホで自分の説明を録ってみてください。舌の練習量を増やす前に、直せる場所が見つかります。

会議の説明を録り、顎を固定して録り直します

「本日は、資料の二ページを見ながら、今月の数値について説明します」を、いつも会議で話す速さでそのまま録音します。再生して、区切りの位置と語尾の残り方を聞いてください。

次に、顎をほとんど動かさず、口を横に開くつもりで同じ一文をもう一度録ります。多くの人はこの二回目のほうが一語ずつはっきり届きます。口を大きく縦に動かすほど輪郭がぼやけ、顎を止めて横に開いたほうが言葉の頭がそろうからです。

聞き比べるときの基準は、滑舌が良くなったかどうかではありません。「二ページ」「今月の数値」という、聞き手が拾うべき言葉の頭がどちらの録音でそろっているかだけを聞いてください。舌の動きを変えたわけではないのに、顎を止めるだけで言葉の輪郭が変わることに気づくはずです。

早口で崩れるのは舌ではなく、言葉の頭と語尾です

聞き返される原因のほとんどは、舌が回っていないことではありません。言葉の頭の音が欠ける、大事な語の直前で息を吸い直せていない、語尾の手前で息が尽きている。この三つのどこかがほどけると、話す速さに関係なく聞き取りにくくなります。

早口で聞き返される人に共通するのは、伝えたい情報量が多いほど息継ぎを省いてしまうことです。数字や固有名詞が続く説明ほど、無意識に息を止めたまま突っ切ろうとするため、肝心の言葉ほど輪郭がぼやけてしまいます。

上手く話す人ほど、実は一つひとつの音が短く切れています。音を伸ばしたまま次の言葉につなげようとすると息が続かず、結果として言葉同士がくっついて早口に聞こえます。会議の冒頭で資料をめくりながら話し始めるとき、次のページに気を取られて息が浅くなる人は特に多く、そこで頭の一音が遅れて出てしまいます。

体の点検も、喉や舌だけでは足りません。座ったまま足の裏が床から浮いていないか。ここが浮くと息もふわついたまま安定しません。手元の資料や画面に気を取られて胸が縮こまっていないか。閉じたままだと声が前に抜けず、こもった印象になります。顎が前に出て首の前側が張っていないか。この状態では第一音を喉で押しがちになります。この三箇所を座った姿勢のまま確かめておくだけで、話し始めの音の出方は変わります。

マイク越しでは、口を大きく動かすほど聞き取りにくくなります

オンライン会議やマイクを使う場面でこもって聞こえる人の多くは、顎を下にパカパカ動かして声を出しています。縦に大きく開けるほど音の輪郭は崩れ、逆に顎を固定して横に「い」の形を保ったまま話すと、子音の立ち上がりがそろって聞き取りやすくなります。

対面の会議でも同じです。資料をめくる、身振りを交える、といった動作に気を取られると顎が無防備に揺れ、そこから言葉が崩れていきます。話す内容よりも先に、顎を止めておくことを意識してください。

顎を固定したまま五十音を一通り言ってみると、舌がどう動いているかがはっきり分かります。顎の代わりに舌が動いていることに気づけば、滑舌の悩みが口の開け方ではなく舌の使い方の問題だと実感しやすくなります。日常でも舌を軽く上顎につけ、口を自然に閉じておくことが、この動きの土台になります。

口を大きく、ゆっくり読む。その直し方はむしろ逆効果です

滑舌を直そうとして、口を大きく開けて一音ずつ強調したり、意識的にゆっくり読もうとしたりする人がいます。実際に滑舌がいい人ほど口はそれほど大きく動いていません。唇や顎を大げさに動かすほど、かえって言葉の輪郭はぼやけます。ゆっくり話すことも、間を作らないまま速度だけ落とすと、聞き手にはむしろ間延びした早口として伝わります。

必要なのは口の動かし方を変えることではなく、区切りの位置を変えることです。話のまとまりごとに一拍置き、語尾の一音まで息を残す。この二つを守るほうが、口の開け方を作り込むより確実に聞き取りやすくなります。

早口を直そうとして単純に速度を落とす人もいますが、区切りのないまま遅くするだけでは、聞き手にはただ間延びした話し方に聞こえます。速さそのものより、意味のまとまりごとに小さな間があるかどうかの方が、聞き取りやすさを大きく左右します。

長時間話しても崩れないための、横隔膜の使い方

営業や講師のように長く話し続ける人ほど、後半になるにつれ滑舌が乱れていきます。原因の多くは喉の締めすぎです。横隔膜のあたりを前にそっとつまむような感覚を保ったまま話すと、喉に頼らずに声を支えられるため、長時間話しても崩れにくくなります。

一日に何本も電話対応や商談が続く人ほど、この感覚の有無で終業間際の聞き取りやすさが変わります。喉で支えている人は午後になるほど声がかすれ、言葉の頭が抜けやすくなります。横隔膜の感覚を保てている人は、同じ時間量を話しても言葉の輪郭がそれほど崩れません。

会議の冒頭30秒はこの感覚を確かめる時間に充ててください。口を閉じて息を吐き切り、肩を上げずに吸い直し、先ほどの一文を無声で口の形だけなぞってから、小さな声で一度だけ言ってみます。ここで見るのは声量ではなく、頭の一音が欠けずに出たか、語尾まで息が保たれたかの二点です。

録音は、うまく読めたかの採点ではありません

自分の録音した声には最初、誰でも違和感を覚えます。話している間に頭の中で響いて聞こえる声と、相手に実際届いている声は通り道が別だからで、これは滑舌の良し悪しとは関係のない現象です。骨伝導で自分の耳に伝わる声と、空気を通って相手に届く声は別物なので、聞こえ方が違って当たり前なのです。

聞くべきは、言葉の頭の音、まとまりの前の間、語尾の三点だけです。うまく読めたかどうかを気にし始めると、そこで練習は止まります。録音は声の採点表ではなく、どこで言葉がほどけているかを探すための材料として使ってください。

一度の録音で三点をすべて直そうとしなくて構いません。今日は言葉の頭だけ、明日は語尾だけというように、聞く場所を一つに絞る方が、結果的に会議での聞こえ方は早く整います。

話しながら早口に戻ったら、区切りを一つ足すだけで直せます

説明の途中で早口に戻っていることに気づいても、全体をまとめて直そうとしないでください。まず、話している一文をそこで短く切ります。次に、切った文の語尾まで言い切ります。それでも勢いが戻らなければ、次の話題に移る前に一拍だけ間を置きます。

この一拍は聞き手にとって、話の区切りを認識するための時間になります。焦って次の文をつなげるほど、息は浅くなり早口はさらに加速します。切る、言い切る、一拍置く。この三手を知っているだけで、会議中に早口へ戻りかけたときの立て直しが変わります。

「すみません、もう一度お願いできますか」と聞き返された瞬間は、多くの人がさらに早口になります。同じ速さで繰り返すのではなく、一段落として区切り直し、頭の一音だけをわずかに立てて言い直すと、二度目は伝わりやすくなります。

今日の会議で話す一文だけ、先に仕上げておきます

発声練習を積み重ねるより、今日の会議で実際に使う説明の冒頭一文を仕上げておくほうが、その場での聞こえ方に直結します。「資料の二ページを見ながら」を、頭の一音・区切りの間・語尾の三点だけ意識して言えるようにしておけば、続く説明全体の速さも自然と落ち着きます。

会議が始まる直前、パソコンの前でもう一度だけこの一文を小さな声で確かめてみてください。舌を鍛え直す前に、まずここから整えれば十分です。

滑舌と早口の悩みは、舌の器用さを一から鍛え直す話ではありません。会議で実際に使う一文の、頭の音・区切り・語尾という三箇所だけを整える話です。順番さえ守れれば、口を大げさに動かさなくても、聞き手には十分に届く声になります。

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よくある質問

Q. 滑舌が悪いときは舌の筋トレから始めるべきですか
舌の練習が必要な場合もありますが、まず息、言葉の頭、母音、区切りを確認してください。そこが崩れると舌だけ鍛えても聞き取りやすくなりにくいです。
Q. 早口を直すにはゆっくり話せばいいですか
ただ遅くするより、意味のまとまりで区切ることが重要です。区切りがあると、少し速くても相手は聞き取りやすくなります。
Q. 会議で使える滑舌練習はありますか
「本日は、資料の二ページを見ながら、今月の数値について説明します」を録音し、まとまりごとの最初の音を丁寧に出してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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