話すと咳払いが多くなる。喉に頼らず声を出す

コールセンターの連続応対や授業中の発声で咳払いが増える人へ。喉のリセット動作に頼らず、締めすぎを外して長く話せる声の使い方を紹介します。

奥津ユキ

電話を切った直後に喉を鳴らす。休み時間になった途端に咳払いが出る。レッスンの合間、マイクを置いた瞬間に喉をこする。話す仕事を続けている人ほど、こうした咳払いが癖になりがちです。喉が弱いからでも、性格が神経質だからでもありません。声帯の締め方が偏っていて、喉自身が無理やりリセットしようとしている状態です。

咳払いは、喉が締まりすぎているか緩みすぎているかのサインです

声帯の閉鎖には、締めすぎと緩みすぎの両方があります。締めすぎれば声は硬くなり、緩みすぎれば息が漏れて弱い声になります。どちらの方向に寄っているかは人によって逆なので、自己判断で「もっと締めよう」「もっと開こう」と独学で調整するのはリスクがあります。咳払いが多い人の多くは、話し続けるうちにどちらかへ偏り、その偏りを喉自身が押し戻そうとして起きています。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

咳払いを繰り返して喉を整えようとしても、締め方そのものが変わらなければ、次の一言でまた同じ偏りに戻ります。

一日100件応対するコールセンターで、電話を切るたびに喉を鳴らす理由

コールセンターの仕事で喉が疲れるのは、単純に話し続けているからだと思われがちです。ですが私の見立てでは、それだけではありません。電話越しでは表情が伝わらないぶん、声だけでオーバーに抑揚をつけようとする人が多く、そのオーバーな抑揚を喉の力だけで作っているケースがよく見られます。声の出し方さえ整っていれば、同じ件数をこなしてもここまで疲れないことがほとんどです。

一件ごとに「お電話ありがとうございました」と言い切った直後、喉を鳴らしたくなる人は、その一文の語尾を喉で押し切っています。次の一件に入る前に、鳴らす代わりに軽く息を吐き切ってから吸い直すだけでも、喉への負担は変わってきます。

授業中ずっと声を張り続ける教師が、休み時間に喉払いをする理由

教室の後ろまで届かせようとする声を一時間続けたあと、チャイムが鳴った瞬間に咳払いが止まらなくなる。これは声を使いすぎたからというより、声を張るときの張り方に偏りがある場合が多いです。大きな声を出そうとするほど力の入れ先が喉に集まりやすく、休み時間になって気が緩んだ瞬間、締めていた分を喉自身がリセットしようとします。

板書をしながら話す、生徒の方を振り向かずに話す、といった姿勢の癖も関わります。体が黒板の方を向いたまま声を張ると、声が前に抜けにくく、喉の奥にこもった分を咳払いで押し出そうとする流れができやすくなります。

BGM越しに掛け声を出し続けるインストラクターの喉鳴らし

スタジオでBGMに負けじと「はい、あと5秒」「もう一回いきましょう」と声を張り続ける仕事も、咳払いが増えやすい代表例です。音楽に対抗しようとするほど、声量よりも先に喉の締まりで音量を稼ごうとしてしまいます。

レッスンの合間、次のクラスが始まる前に喉を鳴らして整えようとする人は多いですが、鳴らしたところで締め方の癖自体は変わりません。むしろ次のクラスでも同じ締め方を繰り返すことになります。

「話しすぎたから」で片づけると、直すべき場所を見失います

咳払いが増える原因を「今日は話しすぎたから」で片づけてしまう人は多いです。もちろん話した量も関係しますが、それだけで説明できるわけではありません。同じ件数をこなしても喉が平気な日と、途中から咳払いが止まらなくなる日があるなら、量以外の何かが変わっています。

たいてい変わっているのは、声を張るときの張り方です。声量を出そうとして喉の奥で押し込む時間が長くなっていないか。相手の勢いや忙しさに引っ張られて、いつもより早口になっていないか。この二つが重なると、話した件数や時間が同じでも、喉への負担は大きく変わります。

三つの現場を並べて、咳払いが出るタイミングを比べます

現場咳払いが出やすい瞬間見る場所
コールセンター一件の電話を切った直後語尾を喉で押し切っていないか
教室チャイムが鳴った休み時間の入り黒板の方を向いたまま声を張っていないか
スタジオ次のクラスが始まる前の合間BGMに対抗して喉で音量を稼いでいないか

三つとも、咳払いが出るのは声を出している最中ではなく、ひと区切りついた直後です。区切りの瞬間に喉を鳴らして整えようとする代わりに、その手前でどれだけ喉に頼っていたかを振り返る方が、次の一件・次の時限・次のクラスにつながります。

咳払いは喉の「リセットボタン」にはなりません

咳払いをすると一瞬すっきりした感覚がありますが、これは締め方が変わったからではなく、声帯を強く打ち合わせて刺激しているだけです。繰り返すほど喉の粘膜には負担が積み重なり、締める癖そのものは温存されたままになります。喉が疲れるのは声帯が弱いからだと決めつける前に、声量や息の流し方、締め方の偏りという使い方の側を見てください。

横隔膜をつまむ感覚で、連続応対・連続指導を乗り切ります

長時間話して枯れやすい人に効くのは、声を張る方向を喉から体の下側へ移すことです。私がよく伝えるのは、横隔膜を前にスライムのようにすっとつまみ出す感覚を、話している間ずっと保つというものです。吐くときだけでなく、吸うときもこの感覚を抜かずにおくと、一件ごと、一時限ごとに喉をリセットする必要が減っていきます。

スマホでできる即効練習

道具は要りません。まず、鼻歌のようなハミングで軽く喉を目覚めさせます。強く張らず、鼻の奥に音を通す程度で十分です。

そのあと、実際に使う一言を録音してみます。コールセンターなら「お電話ありがとうございました」、教師なら「今日はここまでにします」、インストラクターなら「もう一回いきましょう」。言い終えた直後に喉を鳴らしたくなるかどうかを観察し、鳴らしたくなる一歩手前で横隔膜をつまむ感覚に切り替えて、もう一度同じ一言を言ってみてください。

一週間、同じ場面の一言だけで慣らします

咳払いの回数を数えようとすると、意識しすぎてかえって気になってしまいます。それより、決めた一言を毎日同じように録音して比べる方が変化をつかみやすいです。

一日目は、言い終えた直後に喉を鳴らしたくなるかどうかだけを観察します。二日目は、鳴らしたくなる直前で横隔膜をつまむ感覚に切り替えられるかを見ます。三日目は、その一言を含めて件数や時限をひとつ多くこなしても、同じように乗り切れるかを確かめます。一日ひとつのテーマに絞ることで、何が効いているのかが具体的に見えてきます。

シフトや授業が始まる前の準備も、咳払いの回数を左右します

その日最初の一言をどう出すかは、その後の咳払いの回数にも関わってきます。コールセンターならシフトに入る前、教師なら一時限目の前、インストラクターならレッスン開始前に、ハミングで軽く声を目覚めさせておくと、いきなり喉で押した声から始めずに済みます。

反対に、朝いちばんの声を大きく張って出そうとすると、その日一日ずっと締めた状態を引きずりやすくなります。声を大きくする準備ではなく、喉をゆるめたまま一日を始める準備だと考えてください。

咳払いしたくなった瞬間の代わりにできること

咳払いへ手が伸びそうになったら、まず一度だけ音を出さずに息を吐き切ってください。吐き切った分だけ、自然に入ってくる息を受け取ります。それでも違和感が残るなら、鳴らさずに軽くつばを飲み込む、水を一口含む、といった動作に置き換えます。喉を強く打ち合わせずに済むだけで、負担の積み重なり方は変わります。

痛みが続く、かすれが取れない、休んでも戻らないといった状態が続くようなら、練習量で乗り切ろうとせず、耳鼻咽喉科など専門家に相談する判断も持っておいてください。

まとめ

コールセンターの連続応対、教師の一時限、インストラクターのレッスンの合間。話すたびに咳払いが増える背景には、締めすぎか緩みすぎかに偏った声帯の使い方があります。鳴らして無理にリセットするより、横隔膜をつまむ感覚を保ちながら、実際に使う一言で確かめてみてください。

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よくある質問

Q. 咳払いが増えるのは、喉が弱いからですか
弱さだけが原因ではありません。声帯の閉鎖が締まりすぎ、または緩みすぎのどちらかに偏っていて、喉が自分でリセットしようとしている状態のことが多いです。
Q. 咳払いを我慢すれば癖は直りますか
我慢だけでは直りません。締めすぎや腹圧の抜けといった、咳払いを欲しがる原因のほうを整える必要があります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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