ストロー発声で喉を守りながら鍛える。声帯閉鎖と息を整える
個別指導や在宅ワークで声を使い続け、喉を痛めずに鍛えたい人へ。ストロー発声で声帯閉鎖の加減と息のスピードを整える具体的なやり方と注意点を解説します。
奥津ユキ
個別指導塾の狭いブースで、50分の授業を1日に5コマも6コマも続けていると、同じ説明を生徒の数だけ繰り返すことになります。教室では大きな声を出せず、隣のブースの先生や生徒の邪魔にもなりたくない。そんな環境で喉を守りながら発声を鍛えたい方に、私がすすめているのがストロー発声です。理屈は後回しにして、まず次の休憩5分でできる録り比べから始めてください。
いつもの説明文を、ストローの前と後で録り比べます
用意するのはスマホのボイスメモと、飲み物用のストロー1本だけです。最初に、授業でそのまま使っている説明の一文を、普段のつもりでひとこと録音します。
「ここでは、xの係数を移項して整理します」
ストローは、コンビニでもらえる普通の太さのもので構いません。細すぎるストローは息の抵抗が強く、慣れないうちはかえって喉に力が入りやすくなるので、最初は普通の太さから始めてください。準備ができたら、ストローを唇でしっかりくわえ、同じ一文をストロー越しに1分ほど声にし続けます。大きな声は要りません。ストロー越しでは音量そのものが抑えられるので、普段の説明と同じくらいの気持ちで発声すれば十分です。最後にストローを外し、同じ一文をもう一度録音して、1回目と聞き比べてください。
聞き比べる場所は二つだけです。出だしの「こ」の詰まりが減っているか。語尾まで息が残っているか。多くの方は、2回目のほうが出だしが軽く前に出ることに自分で気づけます。良い声かどうかを判定する必要はありません。詰まりが減ったかどうか、それだけを耳で確かめてください。この小さな変化が、ストロー発声で起きていることの全部です。
大声を出せない個別指導のブースだからこそ、静かな練習が要ります
集団授業なら教室の後ろまで声を届かせる発声練習もできますが、個別指導は仕切りの薄いブースが並ぶ環境がほとんどです。休み時間にウォームアップをしようにも、隣で他の先生が生徒と話している中で声を張るわけにはいきません。
だからといって、声のケアを諦めていいわけではありません。1コマごとに同じ説明を繰り返す仕事は、声を使う総量そのものが多い仕事です。ストロー発声は、ストロー1本を口にくわえて小さく声を出すだけなので、隣のブースに気兼ねなく行える数少ない練習です。しかも先ほどの録り比べのように、その場で前後の変化を耳で確認できるので、効いているかどうかを自分で判断しながら続けられます。
ストローで分かるのは、声帯閉鎖が締めすぎか緩みすぎかです
声の悩みには、締めすぎているタイプと、緩みすぎて息が漏れているタイプの両方があります。どちらに寄っているかは人によって逆で、自己判断で決めつけると練習の方向を誤ることがあります。
ストローを通して声を出すと、狭い管を通すぶん、声帯の閉じ方の加減がいつもよりはっきり感じ取れます。先ほどの一文の出だしがストローの中で詰まった感じになるなら締めすぎ、逆に息だけが抜けてスカスカ鳴るなら緩みすぎです。締めすぎている方はストローを吹いた瞬間に喉の詰まりを自覚しやすく、緩んでいる方は息ばかり流れて音にならない感覚に気づきやすくなります。大きな声を出さずに、閉じ方の加減だけを確かめられる点が、ストロー発声の使いどころです。
息の量より、腹圧を抜かないことを見ます
ストロー発声をする時、多くの人は息の量ばかりに意識を向けますが、私が見ているのはお腹の圧です。お腹を大きく膨らませたりへこませたりする呼吸ではなく、常に軽く圧をかけ続けたまま息を使う感覚です。
ストロー越しに声を出している間、吐く時だけでなく、次の言葉の前に息を吸う時にもお腹の圧を抜かないでおいてください。この圧が抜けた瞬間に、声はストローの中で詰まったり、逆に息だけが漏れたりします。腹圧を保ったまま声を通せているかどうかが、閉鎖の加減を整えるための土台になります。録り比べをしても2回目が良くならない日は、たいてい吸うたびに圧が抜けています。吸う瞬間のお腹だけ意識し直して、もう一度試してみてください。
毎コマ前の義務にはしないでください
発声練習は話す前に毎回やるべきだと言われることがありますが、1日に5コマも6コマもこなす個別指導の現場で、コマ間の短い休憩のたびにウォームアップするのは現実的ではありません。私は、毎回はできなくても、しっかり腹圧をかけて体幹を使って話すことのほうが、声を枯らさないためにはよほど効くと考えています。
声を出す前に必ずウォームアップをしないと声帯を傷めるという考え方も、私は少し違うと感じています。ちゃんと声が出せている状態であれば、ウォームアップをしなくてもある程度は大丈夫です。ストロー発声は義務として毎コマ挟むものではなく、声がこもってきた、いつもより出しにくいと感じた休憩にだけ短く使う道具にしてください。
もう一つ、休憩の使い方で気をつけたいことがあります。疲れた喉を休めようと、ささやき声で独り言をつぶやいたり、次の説明を小声で予習したりする方がいますが、ささやき声は思っている以上に喉を使い、完全には休まりません。本当に喉を休めたい数分間は、口を軽く閉じて静かに息を吐くだけにとどめ、声を発しない時間を作ってください。ストロー発声を挟むなら、この発声しない休憩の後、次のコマへ向かう直前がちょうどよいタイミングです。
学年で声を切り替えても、土台は共通のままにします
小学生には明るく親しみやすいトーンで、高校生には落ち着いた対等なトーンで。個別指導では生徒の学年や性格によって声の印象を切り替える場面が多くあります。この切り替え自体は自然なことで、無理にやめる必要はありません。
ただ、切り替えるたびに喉の使い方まで作り変えようとすると、その分だけ負担が増えます。腹圧をかけたまま息を通すという土台は、小学生相手でも高校生相手でも共通にしておき、その上でトーンの明るさや落ち着き方だけを調整してください。オンライン指導を掛け持ちしている方も同じで、ヘッドセット越しだからと声を張り直す必要はなく、土台は対面のブースとまったく変わりません。保護者への電話連絡や面談の前も同じです。面談用に声色を作り込む必要はなく、数分の空きにストロー発声で出だしの詰まりと腹圧だけを点検しておけば、落ち着いたトーンは自然と出しやすくなります。ストローで確認しているのは、場面が変わっても揺れない共通の土台の部分です。
かすれや痛みが続く日は、練習より休息です
声のかすれが続く、痛みを伴う、休んでも戻らない。こうした状態の時は、ストロー発声を含めた練習量を増やそうとせず、無理をせず耳鼻咽喉科など専門家に相談することを優先してください。喉のケアには、練習を頑張ることと同じくらい、休む判断も含まれます。
体調が優れない日にストロー発声を行う場合も、声量を上げず、短い時間だけにとどめてください。翌日に面談や模試対策の説明が控えている日ほど、今日の練習量を欲張らないことです。長く声を使う仕事を続けるには、その日の状態に応じて練習と休息を切り替える判断が欠かせません。
今日の6コマ目が、いちばんの確かめどきです
ストロー発声の価値がいちばん分かるのは、声が疲れてくる夕方以降のコマの前です。こもってきたと感じるのは、たいてい連続3コマを超えたあたりからです。ホワイトボードに書き込みながら下を向いて話す時間が長い日ほど、顎が下がって息の通り道も狭くなっていきます。そこで、5コマ目と6コマ目の間の休憩に、もう一度だけ録り比べをしてみてください。
「ここでは、xの係数を移項して整理します」
朝と同じこの一文の出だしが、疲れた時間帯でも詰まらずに出せていれば、その日の喉の使い方は保てています。詰まっていたら、ストローを1分吹いて、吸う時の腹圧を確かめてから次の生徒を迎えてください。ブースの中の1分が、最後のコマの説明を、最初のコマと同じ声で生徒に届けてくれます。
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よくある質問
- Q. ストロー発声は毎コマの前に必ずやるべきですか
- 必ずではありません。正しく声が出せていれば毎回は不要です。声がこもり始めたと感じた休憩に絞って行う程度で十分です。
- Q. 喉を休めたい時は、ささやき声で話した方がいいですか
- ささやき声も意外と喉を使い、完全には休まりません。短い休憩なら、声を出さずに黙る方がしっかり休めます。
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詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
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