声帯閉鎖とは何か。締めすぎと緩みすぎ、両方が声を弱くする理由

声帯閉鎖という言葉を調べてたどり着いた人へ。締めても緩めても声が弱くなる仕組みと、今日スマホだけで確かめられる練習をやさしく説明します。

奥津ユキ

「声帯閉鎖」という言葉を検索してここにたどり着いた人は、たぶんもう気づいています。声が弱いのは、気合いや性格の問題ではなさそうだ、と。

声帯閉鎖とは、ひとことで言うと、声を出すときに左右の声帯(喉の奥にある薄いひだ)がどれくらいぴったり閉じ合わさるか、その加減のことです。締めすぎても声は弱くなり、逆に緩みすぎても声は弱くなります。私の感覚では、この言葉でつまずく人のほとんどが「閉じる=強く締める」だと思い込んでいて、そこが一番の遠回りになっています。

声帯閉鎖とは、力任せに締めることではありません

声帯閉鎖という響きから、多くの人は「ぎゅっと締める」イメージを持ちます。ですが実際は真逆に近く、閉じ方が強すぎる人と、閉じ方が弱くて息が漏れている人が、同じくらいの割合でいます。

閉じ方が強すぎる人は、高い声を出そうとするほど喉に力が入り、震えたり、そもそも声にならなかったりします。閉じ方が弱い人は、息が声と一緒に漏れ続け、かすれた声やウィスパーのような声になりやすくなります。どちらに寄っているかは人によって逆なので、「とにかく締めればいい」も「とにかく力を抜けばいい」も、当てはまらない人の方が多いというのが実感です。

カラオケで高音に来ると声がひっくり返る人に起きていること

たとえばカラオケでサビの高い部分に差しかかったとき、声がひっくり返ったり、裏返って情けない音になったりする人がいます。

「もっと強く声を出さなきゃ」と思うほど、喉ぼとけの位置を無理に動かして、声帯を平らなまま締め続けようとしてしまいます。すると声帯はしなりを失い、震えるか、途中で抜けるかのどちらかになります。ここでよく言われる「喉を開ければ高音が出る」というアドバイスも、私の感覚では半分だけ正しく半分は誤解のもとです。喉ぼとけを下げて喉を開けようとするほど、逆に声帯はたわみ、力も抜けすぎて高音から遠のいてしまいます。

話しているうちに声がかすれてくる人に起きていること

別のタイプとして、学校で一日中授業をしている先生が、夕方になると声がかすれて掠れてくる、という悩みもよく聞きます。

「では、続きはまた次の時間にやりましょう」

一日の最初にはこの一文がまっすぐ届いていたのに、六時間目が終わる頃には語尾がかすれ、息だけが先に抜けていくようになります。これは声帯の閉じ方が緩んで、息が声にならないまま漏れ続けている状態です。大きな声を出そうとがんばるほど、閉じきれない隙間から息が余計に漏れ、疲労だけが積み重なっていきます。

逆に喉が締まって苦しくなる人に起きていること

朝礼やちょっとした挨拶で人前に立ち、「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます」と話し始めた瞬間、喉がぎゅっと詰まって声が出しづらくなる人もいます。

このタイプは、緊張すると声帯を必要以上に強く締めてしまう癖があります。人前という状況そのものが原因というより、体が「声を大きく張らなければ」と反応して、閉じる力を過剰にかけてしまうことの方が大きいというのが私の見立てです。メンタルの弱さのせいにされがちですが、実際には筋肉の使い方の癖であることがほとんどで、体の使い方を変えれば緊張していても同じように声は出せるようになります。

「緊張しなければ声は出るのに」と自分を責める人もいますが、順番はむしろ逆です。緊張という気持ちの状態が先にあって声を乱すのではなく、閉じすぎる筋肉の使い方が先にあって、そこに緊張という場面が重なると症状として表に出やすくなる、というだけのことです。だから場数を踏んでも直らなかった人が、閉じ方の練習だけで変わることもあります。

自分の声を録音すると、閉じ方の癖はさらに分かりにくくなります

「自分の声は震えていないつもりだったのに、録音を聞いたら全然違った」という声もよく聞きます。これは声帯閉鎖の乱れとは別に、もう一つのからくりが重なっているからです。

自分に聞こえている声には、骨を伝って耳に届く低い響きが混ざっています。ところが録音やマイクが拾うのは、口から外に出た音だけです。だから自分では「そこそこ締まって出せている」と感じていても、外に届く声は思ったより高く、そして閉じ方の乱れがそのまま音に出ています。声が悪いから違って聞こえるのではなく、届くルートが違うだけなので、まずはその前提で録音を聞くようにしてください。

独学で「開ける」「締める」を試すと遠回りになりやすい理由

声帯閉鎖について調べると、「喉を開けて力を抜けば自然に閉じる」という説明もよく見かけます。ですが私はこの考え方を強くはおすすめしません。喉そのものは開けようとせず、声帯自体はしっかり閉じておく必要があるからです。力を抜けば抜くほど声が出るというものでもありません。

閉じ方が強すぎる人と弱すぎる人で、必要な直し方はまったく逆になります。独学だと、自分がどちら寄りなのか判断がつかないまま、ネットで見た万人向けのやり方を試してしまいがちです。アプリや動画で練習すること自体は悪くありませんが、正誤を判断してくれる役目がいないまま続けると、自分では気づかないうちに癖が固定されてしまうことがあります。喉に強い痛みや違和感が続く場合は、練習で無理に押し通さず、耳鼻咽喉科などの専門家に相談することも選択肢に入れてください。

今日、スマホだけで試せる練習

道具は何もいりません。まず準備として、鼻歌のように「んー」と軽くハミングしてみてください。無理に張り上げず、鼻の奥がわずかに震える程度で十分です。喉がまだ強張っている状態でいきなり練習を始めると、閉じすぎのタイプはさらに締めてしまいがちなので、この一呼吸を先に挟みます。

準備ができたら、軽く「あ゛ぁ゛」と、声を少しつぶすように短く出してみてください。喉の奥で何かが軽く閉じる感触があれば、それが声帯が閉じている手触りです。

閉じすぎて苦しくなる人は、次に手のひらで顎の下をそっと押さえ、顎が上がらないようにしてから、さっきの「あ゛ぁ゛」をもう一度出してみます。喉の詰まりがふっとゆるむのが分かるはずです。反対に、かすれて息が漏れやすい人は、同じ「あ゛ぁ゛」を、いつもより少し小さい音量で、息を先に流してから乗せるつもりで出してみてください。この二つは、朝の身支度の間や、通勤前の数十秒でも十分試せます。

一度で直そうとせず、毎日少しずつ混ぜてください

声帯閉鎖の練習でありがちな失敗は、一回の練習で完璧に整えようと気合いを入れすぎることです。強く締めすぎている人がその日だけ頑張って緩めても、翌日にはまた元の締め方に戻ります。反対に息が漏れやすい人が一度エッジボイスをやっただけで、かすれがすぐになくなるわけでもありません。

私がおすすめしているのは、朝の準備の合間や湯船につかっている時間など、すでにある習慣の中に「あ゛ぁ゛」を数回混ぜ込むやり方です。まとまった練習時間を新しく確保しようとすると続きにくいので、一日のどこかに数十秒だけ差し込む感覚で十分です。閉じる感覚は、量をこなすことよりも、短くても毎日繰り返すことの方が定着しやすいというのが私の実感です。

録音で確かめる、たった一つのポイント

「では、続きはまた次の時間にやりましょう」を、スマホで録音してみてください。

聞き返すときに見る場所は一つだけです。文の最後、「しょう」の「う」まで、声としてはっきり残っているか。途中で息だけの音に変わっていたら緩みすぎ、逆に喉が詰まったような硬い音になっていたら締めすぎです。どちらのタイプかが分かれば、さきほどの練習をどちらの向きに使えばいいかもはっきりします。

まとめ

声帯閉鎖とは、締める力と緩める力のバランスの名前です。強く締めれば正解というわけでも、力を抜けば正解というわけでもありません。自分がひっくり返るタイプなのか、かすれて抜けるタイプなのかを録音で見分けてから、「あ゛ぁ゛」の練習を少しずつ日常に混ぜてみてください。

言葉の意味が分かっただけでは、閉じ方の癖はまだ変わりません。今日のうちに一度、鼻歌のハミングと「あ゛ぁ゛」を試して、自分の喉がどちらの方向にずれやすいかだけでも確かめてみてください。そこから先の調整は、無理に急がなくても大丈夫です。

よくある質問

Q. 声帯閉鎖は強く締めるほど良いのですか
いいえ。締めすぎると喉に力が入り声が硬くなります。締めすぎと緩みすぎの真ん中を探すのが目的です。
Q. 声帯閉鎖の練習は毎日やっていいですか
短時間なら問題ありません。ただし喉に痛みや違和感がある日は控え、長引くようなら専門家に相談してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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