息が漏れる、声がかすれるという悩みで「声帯閉鎖」という言葉を調べた人は、まず「締める練習」を疑ってください。ただ、理屈の説明より先に、閉じた声がどんな音なのかを、スマホの録音で十数秒だけ体感してみてください。
最初に、エッジボイスで閉じた音を録ってみます
録音を回し、楽な小声で「あー」を三秒だけ伸ばします。続けて、「あ゛ぁ゛」と少し潰した低い音を短く出し、その響きを引き継ぐように、もう一度「あー」を三秒伸ばします。この潰した音がエッジボイスで、声帯が閉じた状態の手触りを声で覚えるための音です。
再生して、前後ふたつの伸ばした音を聞き比べてください。あとの方は息の雑音が減り、音の芯が前に出て聞こえるはずです。喉を締め上げた覚えがないのに音が変わった。この体感が出発点になります。閉じるとは力で塞ぐことではなく、息の通り道の上で起きることだからです。とくに息が漏れやすいタイプの人は、エッジボイスを毎日少しずつ混ぜると、閉じた状態を声で思い出しやすくなります。
潰した音がうまく出ない人は、深いため息の終わりぎわを思い出してください。息が尽きる直前に、声とも息ともつかない、かすかにきしむような音が混ざる瞬間があります。あの弱くきしむ音を、力を足さずにほんの少しだけ長引かせるのがコツです。音量を出そうとした時点で別の音になってしまうので、周りに聞こえないくらいの小ささで構いません。逆に、潰した音を出そうとして喉の奥が痛むなら、それは押しつけすぎです。すぐに中断して、もっと小さく、もっと低いところから出し直してください。
締めようとするほど、声は喉から始まります
喉を意識して締めようとするほど、声はかえって硬くなり、息漏れも改善しにくくなります。一方で「喉を開いて力を抜けば声帯が自然に閉じる」と考える人もいますが、私の感覚ではこれも違います。喉自体は開けようとせず、声帯そのものはしっかり閉じる必要があります。緩めれば閉じるのではなく、開ける場所と閉じる場所を分けて考えることが出発点です。
息漏れやかすれを直したい気持ちが強いと、喉の奥に力を入れて塞ごうとしがちです。けれど声は喉で締めて作るものではなく、息の流れに乗って自然と閉じていくものです。順番を間違えると、練習するほど喉が疲れやすくなります。
一文で練習するなら、次のものを使います。
「声帯を締めようとせず、息を流したまま軽い声で息漏れを確認します。」
文頭を勢いよく言おうとすると、そこで声が喉から始まってしまいます。反対に、声を出す前に短く息を流してから同じ言葉に乗せると、息と声がひとつながりになりやすくなります。聞き分ける場所は、文頭の入り、文中で息が途切れないか、文末まで声が残るかの三か所です。すべてを同時に良くしようとせず、今日はどこか一か所だけに絞って直してください。
「強く出せば締まる」と考えると、遠回りになります
声帯閉鎖のトレーニングで多くの人がつまずくのは、強く声を出せば自然と喉が締まって息漏れが減ると考えてしまうことです。けれど喉で押した声を繰り返すほど、その押し方の癖が強くなるだけです。大きい声、高い声、はっきりした声を目指す前に、まず楽に出る小さな声で息漏れの具合を確認してください。
うまくいかない時、多くの人は練習量が足りないと考えます。もちろん量も関係しますが、喉を締めて息漏れを止めようとする姿勢のまま回数だけ重ねると、今の癖をむしろ強めてしまいます。確認する順序は、息、喉、体、録音の四段階です。声を出す前に息が止まっていないか、喉に力が入っていないか、体のどこかが固まっていないか、そして録音で同じ状態を再現できるか。この順に見ていくと、練習の的が絞りやすくなります。
練習は、声を出す前の一呼吸から組み立てます
| 順番 | 練習内容 | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 1 | 声を出さず、短く息だけを吐く | 胸や肩が力んでいないか |
| 2 | 楽な音量で軽い声を出す | 喉の奥に力が入っていないか |
| 3 | 一文を通して録音する | 息漏れが同じ量で続いているか |
声を出さない準備の段階で体が硬いままだと、声を出した瞬間から喉に頼ってしまいます。まず息だけで整えてから、声を重ねてください。息の量は強すぎても弱すぎても声を不安定にします。重要なのは息の量そのものより、声に乗せた息の流れが一定であることです。
息漏れが強い日ほど、音量を一段落とします
息漏れやかすれに気づくと、音を張って隠したくなるものです。ただ喉に力がこもった状態のまま音量だけ上げても、負担が重くなるだけで漏れ具合は同じままです。まず、いつもより一段階小さい音量で試してください。音を落とすと、普段は隠れていた自分の癖が見えてきます。声を出す前で息が途切れていないか、喉の奥がすぼまっていないか、文末に向けて漏れが増していないか。小さい声で崩れる状態は、声量を足しても直りません。
楽な音量で先ほどの一文の三か所が安定してから、少しずつ音量や音の高さを変えてみます。変化は小さくて構いません。声は一気に変えるより、崩れない範囲を少しずつ広げる方が長続きします。
七日間、同じ一文で再現性だけを見ます
自分の声を録音で聞くと、最初は嫌な感じがすることがあります。ただ録音で見るべきは声の好き嫌いではなく、同じ状態を再現できているかどうかです。自分の頭の中で響いて聞こえる声と、外に出て相手に届く声はまったくの別物です。だからこそ、外に届く方の声を整えるために録音が欠かせません。
毎日違うメニューに手を出すと、何が効いたのか判断できなくなります。最初の七日間は、練習に使う一文を先ほどのものに固定してください。一日目は息の流れだけを見る、二日目は喉のこわばりだけを見る、三日目は録音で息漏れの量だけを見る、というように、日ごとに見る項目をひとつに絞って記録します。七日間続けると、自分がどんな場面で崩れやすいのかという傾向がはっきりします。傾向がつかめてから練習のバリエーションを足せば、無駄な遠回りをしなくて済みます。
記録といっても、丁寧な練習日誌は要りません。録音ファイルを消さずに残し、その日の一言をメモに添えるだけで足ります。文末で漏れた、今日は芯があった、その程度の走り書きで十分です。七日後にファイルを日付順に聞き直すと、耳の記憶だけでは分からなかった変化の向きが見えてきます。
場面で目立ち方が変わっても、見る場所は同じです
朝いちばんの電話では声がかすれて聞こえやすく、静かな部屋で小さく話すと息の音が目立ち、歌の弱く歌う部分では音程より先に息漏れが気になる、という具合に、同じ癖でも場面によって出方が変わります。だからといって場面ごとに違う対策を覚える必要はありません。見る場所はいつも同じで、声を出す前の息、喉の力み、体の固まり方の三つです。
朝は体全体が起ききっていないため、声を出す前の準備を長めに取ります。静かな部屋での会話では、声を張ろうとせず、息を先に流してから言葉に乗せる練習がそのまま使えます。歌で弱く歌う部分は、大きな声の延長で小さくするのではなく、最初から小さい声を出す前提で息を整えてから声を出すと、息漏れが目立ちにくくなります。
数日で変わらなくても、焦って声量を上げたり、喉に力を入れて締めようとしたりすると、直したい癖をむしろ強化してしまいます。録音した声の中に、昨日よりわずかに息が続いた瞬間があれば、それは前進です。乾燥した部屋で長く話した日や寝不足の翌朝は、いつもより息漏れが強く出ることがあります。そういう日は練習量そのものを減らし、体調が整った日に確認する方が、変化を見誤りにくくなります。
閉じた音の芯を、一文の上で再現できたら前進です
喉に痛みや強い違和感を覚えた日は、練習を無理に押し通さないでください。休息を取っても状態が戻らないなら、専門家に相談するという選択も必要です。喉を大切に扱うことは練習を怠けることではなく、長く声を使い続けるための技術のひとつです。
最後に、もう一度だけ録音します。
「声帯を締めようとせず、息を流したまま軽い声で息漏れを確認します。」
最初にエッジボイスの前後で聞き比べた、ふたつの音の差を思い出してください。あの芯のある方の音が、この一文の文頭から文末まで続いていれば、閉じ方は確実に変わり始めています。喉に頑張らせて声を変えるのではなく、息の流れの上で閉じた声を何度でも再現できるようにすること。それが、このトレーニングの目的です。
よくある質問
- Q. 声帯閉鎖 トレーニングでは何から始めるべきですか
- 最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
- Q. 毎日練習した方がいいですか
- 短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
- Q. 録音は必要ですか
- 必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
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息漏れは根性で塞ぐものではありません。息の流れに軽い声を乗せる順番を覚えると、少しずつ閉じ方は変わっていきます。