リップロールのやり方。できない人が見るべき息と力み

リップロールが続かない、唇が震えない、喉に力が入る人へ。唇だけでなく息の量と体の力みを整えます。

奥津ユキ

リップロールをやってみても唇が震えない、震えてもすぐ止まる。そんな時、唇に力を足すのは逆方向です。原因のほとんどは唇ではなく、息の流れ方にあります。まず、それをスマホの録音で確かめてみましょう。

力ずくの震えと、頬をつまんだ震えを録り比べます

ボイスメモの録音を回したまま、二通り試してください。一回目は、唇にぎゅっと力を入れて、意志の力で震わせようとします。二回目は、両頬を指で軽くつまんで唇の重さを支え、唇のことは忘れて、息だけを細く長く流します。

録音を聞き返すと、力を入れた一回目は震えが詰まってすぐ途切れ、頬をつまんだ二回目のほうが、勝手に震えが続いていることが多いはずです。唇を頑張らせるほど止まり、息に任せるほど続く。リップロールの正体は唇の運動ではなく、息の流れの確認です。ここから先の練習は、すべてこの一点に向かっていきます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声は生まれつきや性格だけで決まるわけではありません。息、喉、体、録音で見直すと、リップロールの震え方も変えられます。

リップロールが一番効く、という順番の誤解

自宅でできるボイトレとしてリップロールが一番効果的だと言われることがありますが、私の実感では順番が逆です。腹圧を使って息そのものを流す土台のトレーニングのほうが先にあって、リップロールはその上に震えが乗っているかを確かめるための練習という位置づけで十分です。

腹式呼吸だけを意識すれば震えが続く、というものでもありません。お腹をどれだけ使っても、吐く息が唇の上を細く流れていなければ、震えは支えられません。大事なのは呼吸法の名前ではなく、息が先に流れて、その上に震えが乗っている感覚です。

リップロールだけを長く続ければ声が良くなる、という期待も手放してください。これは筋トレではなく、息が流れているかどうかを映す鏡のような確認です。鏡を長時間見続けても姿勢が良くならないのと同じで、映った結果を土台の練習に返すことで初めて意味を持ちます。

息を整えても震えない時は、唇と顔の状態を見ます

息の流し方に問題がなくても、唇そのものの状態で止まることがあります。唇が乾いていると、上下の唇が滑らずに引っかかり、震えが始まりません。軽く唇を湿らせるだけで、急にできるようになる人もいます。

口角にも注意が必要です。真剣になるほど口元がへの字に固まり、口角の力が唇の合わせ目を締め付けます。その状態のまま息を送っても、唇は開閉できません。頬をつまむやり方が効くのは、この口角の力みを指が肩代わりしてくれるからでもあります。

くすぐったくて笑ってしまい、続かないという人もいます。これは失敗ではなく、唇の力が抜け始めた証拠のようなものです。笑って止まったら、また流し直せば構いません。

確認用の一文を決めて、止まる原因を三つに分けます

毎日の確認には、次の一文を使います。

「唇を頑張らせず、息を細く流して、楽に震える状態を確認します。」

入りで力んでいると、震えは唇ではなく喉から始まります。途中を急ぐと、息と唇の動きが分かれて途切れます。文末まで録音で聞かないと、うまくいったかどうかが感覚だけの判断になります。

止まる原因は三つに分けてください。一つ目は息です。強すぎると唇は押されて止まり、弱すぎると震えが立ち上がりません。大切なのは量ではなく、唇に乗る流れです。二つ目は喉です。喉で震えを支えようとすると、音は硬くなります。震え、響き、長さ、どれも喉だけで作ろうとすると不安定になります。三つ目は体です。肩が上がる、頬が固まる、顎が上がると、息の流れが変わります。座って練習するとうまくいくのに立つと止まる、という人は、姿勢が変わって息の通り道が変わっていることが多いです。

練習は、声を出す前の一呼吸から始めます

一つ目は、息だけの準備です。声も唇の震えも作らず、短く息を吐きます。それでも流れる感覚がつかみにくい時は、一度だけ声を出さずに息を勢いよく速く吐き切ってみてください。ゆっくり吐こうとするより、先に速く吐く感覚を体で覚えたほうが、唇に息を乗せる感覚は早くつかめます。

二つ目は、唇の力を抜いた状態の確認です。最初の録り比べと同じように、頬を軽くつまんで支えても構いません。唇そのものに力を入れないまま息を通します。

三つ目は、一文の録音です。震わせるだけで終わらせず、実際の言葉につなげて聞きます。

息だけの震えが安定してきたら、次の段階として声を乗せます。順番は必ず、息だけが先です。息だけで続かない震えに声を足しても、喉で支える癖が入り込むだけです。声を乗せる時は、楽な高さの一音から始めて、震えが途切れないかだけを聞きます。音程を上下に動かす練習は、その先の段階です。

ステップリップロールの練習チェックする場所
1声を出さず息だけを細く吐く肩や頬が固まっていないか
2唇を力ませずに震わせる喉で支えていないか
3練習文につなげて録音する入りから語尾まで震えが続くか

止まる時は、息の量ではなく力みを下げます

震えが止まる時ほど、唇に力を入れたくなります。けれど、力を入れるほど喉のほうで支えてしまい、震えは逆に止まりやすくなります。まず力を抜いてください。

力を抜くと、自分の癖が見えやすくなります。息が止まっているか。喉で支えているか。語尾まで声が残っているか。小さく弱い息で安定しないものは、強い息にしても安定しません。楽な息のまま入れて、震えをつなげ、語尾まで残す。そこまで確認できてから、息の量を少しずつ上げます。

続く長さは、最初は一呼吸分で十分です。長く続けることよりも、始まりの瞬間に唇がふっと軽く動き出すかどうかのほうが、ずっと大事な確認です。

録音で見るのは、震えの完成度ではなく再現性です

リップロールの録音を聞き返すと、自分の声を嫌に感じる瞬間があるかもしれません。それでも、ここで見るのは好き嫌いではなく、同じ状態をもう一度作れるかどうかです。入りが楽だったか、途中で息が止まらなかったか、語尾まで声が残ったか。この三つだけを見ます。昨日より少しでも楽に震えたなら、それはもう十分な変化です。

録音した自分の声に違和感を覚えるのは、当たり前のことです。自分の声は、口や喉から出た音だけでなく、骨を通って自分の頭の中にも響いています。相手が聞いている声は、骨伝導を含まない、外に出た音そのものです。だから録音の声を聞いて戸惑っても、それは失敗ではなく、聞こえ方のルートが違うだけです。

一週間、同じ一文で震え方を比べます

日替わりで違う練習をすると、何が変わったのか追えなくなります。最初の一週間は同じ一文に絞ったほうが、変化を見つけやすくなります。一日目は息が流れているかだけを見る。二日目は唇の力みだけを見る。三日目は録音で語尾だけを見る。一週間続けると、自分がどこで震えを止めやすいかが見えてきます。見えてから練習を広げれば、遠回りをせずに済みます。

録音には、震えの音だけでなく、始まる直前の息の音も残っています。うまくいった日の録音は、震えの前の息が静かです。いきなり強い破裂音のような始まり方をしている日は、息を唇に当てにいっています。聞き比べる時は、この始まりの部分にも耳を向けてください。

喉に違和感がある日は、無理に続けないでください。息の量を上げない、高い音や低い音を攻めない、震える感覚だけを短く確かめる。それで十分です。痛みが出ている、いつもより強くかすれる、休んでも戻らない状態が続くなら、練習で押し切らず専門家に相談してください。休む日を作れることも、練習の実力のうちです。

震えは作るものではなく、息の上に乗るものです

最初の録り比べに戻ります。頬をつまんで息に任せた時のほうが、震えは長く続いていたはずです。あなたの唇が震えないのは、唇の才能の問題ではなく、息がまだ唇まで流れ切っていないだけです。

「唇を頑張らせず、息を細く流して、楽に震える状態を確認します。」

一週間後、初日の録音と聞き比べてください。震えの長さより先に、始まり方が静かになっていれば前進です。練習の時間は、一回ごとにごく短くて構いません。洗面所で顔を洗ったついで、湯船に浸かりながらなど、生活の動きに紐づけてしまうのが長続きのコツです。息が流れた分だけ勝手に震える。その感覚を覚えた唇は、高い音の練習にも、歌う前の準備にも、そのまま連れていけます。

よくある質問

Q. リップロール やり方では何から始めるべきですか
最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
Q. 毎日練習した方がいいですか
短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
Q. 録音は必要ですか
必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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