一曲目は気持ちよく歌えたのに、2曲目のAメロで喉の奥がきゅっと締まる。高音が急に苦しくなる。この現象の原因は2曲目にはなく、たいてい一曲目の歌い方にあります。次にカラオケへ行く前に、家のワンフレーズで確かめられます。
一曲目の伸ばす長さを替え、二曲目の歌い出しの詰まりを確かめる
好きな一曲目の最後を歌った直後、二曲目の歌い出しとして「次の曲も、気持ちよく歌える」と、歌うように言ってみてください。一度目は一曲目の最後の伸ばす音を、伴奏が消えるところまで保ちます。その直後の一言で、喉の奥が残ったまま動きにくくないか、最初の音だけが押し出されるようにならないかを観察します。最後まで伸ばし切ることが達成感になり、次の曲の入口を狭めるということが起こります。二曲目を始める前の数秒に、喉だけが仕事を続けているような感じが残るかも見ます。
二度目は同じ一曲目を同じキー、声量、テンポ、歌詞で歌い、最後の伸ばす音だけを楽譜どおりの長さで終えます。続けて同じ文を同じ高さ、速さ、声量で歌うように言ってみてください。変えるのは一曲目の最後の音を保つ長さだけです。二度目に歌い出しが引っかからず、二曲目へ移る余白が残るなら、詰まりは曲数ではなく一曲目の終え方に関係しています。差が出なければ、音の長さではなく選曲の高さや乾燥が別の原因として考えられます。私がこの場面でまず確認したいのは、二曲目で急に弱くなった理由です。
2曲目の詰まりは、一曲目の張り方の置き土産です
症状の出方には、覚えのある流れがあるはずです。2曲目のAメロで、一曲目にはなかった引っかかりを感じる。サビが近づくにつれて、高音の予感だけで体が身構え始める。そしてサビで案の定苦しくなり、三曲目以降はもう選曲が守りに入る。この流れの出発点は、2曲目ではなく一曲目にあります。
2曲目から苦しくなると、多くの人は声量や気合いを足そうとします。けれど一曲目のサビから喉の力で張り上げていると、その力みが抜けないまま2曲目に入ることになり、足せば足すほど締まりは強くなります。
部屋にはマイクとスピーカーがあるのに、地声だけで部屋の奥まで届かせようとするのも、一曲目にありがちな張り方です。マイクに乗る分まで喉で作ろうとすれば、一曲でその日の余力を先に使ってしまいます。
喉を鍛えるつもりで毎回全力で歌い切る人もいますが、私の実感では、大きな声を出し続けるほど喉へのダメージは蓄積し、間違った出し方のまま鍛えても長くは持ちません。見るべきは最初の音です。最初の音が喉の奥から始まると、そのあとの言葉も奥に残ったまま進みます。息の流れに乗って始まれば、声は前に出ます。必要なのは派手な発声練習ではなく、一曲目の入りを小さく整えることです。
みぞおちのつまみは、吸うときも緩めません
先ほどの録音で使った、みぞおちを軽くつまんで細くする感覚は、吐いている間だけのものではありません。フレーズの合間に息を吸う瞬間も、その細さを保ち続けてください。ブレスのたびに緩めてしまうと、次のフレーズをまた喉の力で持ち上げることになります。
つまむ位置が分からないときは、肋骨の下、おへその少し上のあたりに指先を軽く当てて、咳払いをしてみてください。ふっと動く場所があります。そこを前へ軽くつまみ出すつもりで保つのが、ここで言う細さです。強く固める必要はなく、指でつまめる程度の軽い張りで足ります。
この支えを保てていると、一曲目をいつも通りの選曲で歌っても、喉に頼る割合が減り、歌い終えた時点の消耗が変わります。2曲目対策と言いながら、実際にやることのほとんどは一曲目の中にある、というのがこの悩みの面白いところです。
締まりの入り口は、息、喉、体の順に探します
まず息です。歌い出しの直前に息が止まっていれば、第一声は硬くなります。深く吸い込もうとするより、短く吐く流れを先に作ってください。吸おう吸おうとするほど胸と肩がせり上がり、体は固まっていきます。
次に喉です。一曲目を歌い終えた直後は、声を張り直すより先に、喉の奥を固めずに出せる小さな声が残っているかを確かめます。小さく出しても詰まるなら、大きくすれば負担が増えるだけです。
最後に体です。首まわり、肩、顎、舌の付け根のどこかが固いと、せっかく息が流れていても声は前に抜けません。ソファに沈み込んだまま歌わず、足の裏を床に預けて首の後ろを長く保つだけで、喉一本で支えていた癖が浮かび上がります。
高い曲は避けずに、サビ手前のブレスで備えます
2曲目に高い曲を入れると詰まるからと、好きな曲を我慢する必要はありません。締まりの引き金は音の高さそのものより、高いフレーズの手前で大きく吸って身構える癖にあります。たくさん吸うほど胸と肩がせり上がり、喉は歌い出す前から締まる準備を整えてしまいます。
高いサビの手前ほど、ブレスは短く細くしてください。みぞおちの細さを保ったまま、必要な分だけ素早く入れる。足りるだろうかという不安は、吸う量ではなく、息の流れの速さで補います。息が心配なフレーズは、家で歌詞を話し言葉として読み、どこで息を継ぐかを先に決めておくと、本番で慌てて大きく吸う癖が抜けやすくなります。キーを下げるのは最後の手段で構いません。その前に、直前のひと吸いを変えるだけで、同じキーのサビの苦しさはかなり変わります。
曲間の数十秒で、2曲目の入りを整えます
2曲目のイントロが流れている間に、長い調整は要りません。見るのは四つだけです。息を詰めて待っていないか。顎に力が入っていないか。肩が浮いていないか。フレーズの終わりまで歌い切る息の余裕があるか。画面に歌い出しのカウントが出るまでの数秒あれば、四つとも確かめられます。
歌い出しの響きは、届け先を変えるだけでも変わります。喉の内側で鳴らして終えるのではなく、マイクの少し先に言葉を降ろすつもりで出す。力で飛ばすのではなく、息の流れに乗せて前へ運ぶ。この意識だけで、張り上げなくても2曲目の第一声は安定します。
家での確認は、歌わなくても一文でできます
カラオケの機会がない週は、話し声の一文で同じ点検ができます。
「次の曲は、息を流して無理なく入ります。」
一本目はいつも通りに読み、二本目は先に息を短く流してから、三本目は語尾の一音まで息を残して読みます。録音で聞くのは、出だしを急いでいないか、途中で息が途切れていないか、語尾が沈んでいないか、喉が詰まった響きになっていないか、の四点だけです。歌もこの一文も、崩れる場所は同じです。
夜のアパートで大声を出せなくても問題ありません。この点検は小さな声のほうがむしろ正確です。小声で詰まる出し方は、音量を上げても詰まったままです。逆に、小声で息に乗せられていれば、その感覚はカラオケの音量でもそのまま使えます。
調子が出ない日は、足すより引きます
出にくい日に歌い込みを増やすのは、喉で押す癖の反復練習になりかねません。音量を絞る。ワンフレーズだけに戻る。録音は一本で切り上げる。水分をとり、喉に痛みやはっきりした違和感がある日は歌わない。それでも長引くなら、練習で解決しようとせず専門家に相談する。この引き算も上達のうちです。
比べる相手は、昨日の自分だけで構いません。昨日より大声が出たかではなく、昨日より喉が軽かったか。サビのあとのひと言が重くなかったか。息は途切れなかったか。この地味な比較の積み重ねが、次のカラオケで効いてきます。
2曲目の軽さは、一曲目の七割から始まります
次にマイクを握る日は、一曲目をいつもの七割の声量で入り、みぞおちの細さを保ったまま歌い切ってみてください。Aメロは音を置きにいくだけにして、サビでも八割まで、伸ばす音は最後まで引っ張り切らずに手前で切り上げる。この設計で一曲目を終えると、物足りなく感じるのは最初のワンコーラスだけで、2曲目のAメロに入った瞬間、喉の奥が開いたまま残っていることに気づくはずです。
一曲目は、その日の喉の状態を確かめる試運転だと考えてください。試運転でアクセルを全開にすれば、そのあとの曲に余力は残りません。曲を我慢するのではなく、声量の配分だけを変える。それだけで、その日の全部の曲が歌いやすくなります。
「次の曲は、息を流して無理なく入ります。」
この一文の通りに体が動いていれば、2曲目はもう、喉との我慢比べではなくなっています。
よくある質問
- Q. カラオケで一曲目は歌えても、二曲目から喉が詰まるのはなぜですか?
- 私は、二曲目で喉が詰まるなら、一曲目の冒頭から声を張り上げて息を使い切っている可能性を考えます。最初の歌詞を強く当てず、息の圧を保ったまま入ると、消耗を抑えやすいです。
- Q. 二曲目だけ急に苦しいとき、選曲より先に確認することは何ですか?
- 私は、二曲目だけ急に苦しい場合、選曲より一曲目のサビ終わりを見直したいです。高い音の後に喉を締めたまま話し始めると、次の曲まで硬さが残ることがあります。
- Q. 歌っている途中で詰まりを感じたら、どう立て直せばよいですか?
- 私は、歌っている途中で詰まりを感じたら、声を太くしようとせず、次のフレーズの息を細く前へ流します。違和感や枯れが続くときは歌唱を休み、耳鼻咽喉科などの専門家に相談してください。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →歌が上手くなる声の出し方。音程の前に整える息と響き
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