会議室の奥や広い部屋で声が届かないと感じる場面では、喉だけで叫んでいないか、息が途中で足りなくなっていないか、出だしの音だけが強くなっていないかをまず見ます。声量が足りないと感じるときほど喉に力を込めがちですが、それだけでは声は届く形になりません。
声が届かないのは、大きさではなく息の速さの問題です
次の一文で確かめてみます。
「声量は喉で上げず、息のスピードと言葉の頭で前に届けます。」
声を張ろうとするとき、多くの人はまず喉に力を込めます。ですが遠くまで届く声に必要なのは喉の力ではなく、息が言葉の先端までしっかり流れているかどうかです。「喉で上げず」の入りが硬いと声は喉から始まってしまい、「息のスピードと」を急ぐと息と声が分離し、「前に届けます」まで一度も録音で確かめないと変化が感覚だけで終わってしまいます。
息のスピードは、自転車に似ていると私は感じています。ゆっくり漕ぐとふらついて倒れそうになりますが、スピードが上がるとかえって自走して安定します。声も同じで、ゆっくり息を出すよりも、スピードを上げて吐く方が、声はまっすぐ前まで届きやすくなります。
大声を出せば声量が上がると考えるほど、喉が先に疲れます
声量を上げたいときにやりがちなのは、とにかく大きな声を出そうとすることです。声を通したい気持ちが強いほど、いきなり喉を張り上げたくなります。
ですが声は喉で叫ぶことで育つわけではありません。喉で押した声を繰り返すほど、その力み方が体の癖として残り、長く話すほど声が枯れやすくなっていきます。声量を上げるには腹式呼吸を鍛えるべきだと言われることがありますが、私はお腹を大きく膨らませたりへこませたりする動きより、常に圧をかけ続けられるかどうか、つまり腹圧呼吸を鍛える方が、届く声には近いと考えています。まず確かめたいのは、楽に出せる声の範囲内で、息がどこまで前へ届いているかです。
見ていく順番は、呼吸・喉・体・録音の四つです。息が止まっていないか。喉で押していないか。体のどこかが固まっていないか。録音して同じ状態を再現できるか。この順で見ると、練習の方向がぶれにくくなります。
基本練習は、細かく分けた方が変化が見えます
いきなり大声を出す練習をする必要はありません。むしろ細かく分けた方が声の変化はつかみやすくなります。
最初は呼吸だけです。声を出さずに、短く鋭く吐きます。吸うことよりも、吐き出す速さを意識します。息を吸って、そこから一気に強く速く吐き切る動作を繰り返してみます。ゆっくり長く吐く練習よりも、この速く吐き切る感覚の方が、声量にはずっと直結します。
次は無理のない声です。大きくする必要はなく、喉が押されていない状態のまま、少しだけ息の速さを上げて声にします。
最後に一文で確認します。「声量は喉で上げず、息のスピードと言葉の頭で前に届けます。」を録音し、声の大きさではなく出だし・息・語尾を聞きます。
録音で見るのは、大きさではなく届き方です
声量の練習で大切なのは、一度だけ大きな声が出せることではなく、同じ状態を繰り返し再現できることです。そのために録音を使います。
録音では「喉で上げず」の出だしを聞きます。続けて「息のスピードと」で息が止まっていないかを聞きます。最後に「前に届けます」が感覚の話ではなく音として変わっているかを確かめます。
自分の声を録音で聞くと、思っていたより通っていないと感じることがあります。ですがその違和感こそが練習の出発点です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は別物であり、相手に届く声を整えるためには録音という手段が欠かせません。
喉に違和感がある日は、練習の負荷そのものを下げます
声を通したいと思うほど、毎日強めの練習を積みたくなります。ですが喉に違和感がある日に無理を重ねると、良い練習ではなく単なる負担の反復になってしまいます。
痛みが出ている、かすれが強い、休んでも違和感が抜けない。こうした状態が続くなら、無理に練習を続けず専門家へ相談する判断も必要です。
負荷を下げる日は、声量を上げようとしません。息を流すことと、小さな声で一文だけ録音することにとどめます。声を鍛えることと、喉の状態を無視して押し通すことは別の話です。
毎日の練習は、同じ一文で変化を比べます
練習を継続するなら、日によってやることを変えすぎない方がよいです。同じ一文を使うことで、変化そのものが見えやすくなります。
- 「喉で上げず」
- 「息のスピードと」
- 「前に届けます」
この三つを毎回同じ順番で確認します。今日は息が流れたか。喉が押されずに済んだか。録音で聞くと前回より遠くまで届く感触があるか。こうした小さな変化を積み重ねて見ます。
うまくいかないときは、文そのものを短くします
声量が上がらないとき、練習を難しくする必要はありません。まず文を短くします。一文が長くなるほど息は足りなくなり、その分を喉で補おうとしてしまいます。
最初は短い一文で十分です。短い文で楽に届く声が増えてきたら、少しずつ長い文にも広げていきます。声はいきなり大きくしようとするより、届く範囲を段階的に広げる方が安定します。
声が変わらない理由は、練習不足だけではありません
声量を上げたい場面でうまくいかないとき、練習量の不足だと考えがちです。もちろん練習量も関係しますが、喉で叫ぶ・息が足りない・出だしの音だけ強いという状態のまま練習を重ねると、声が変わるどころか今の癖をむしろ強めてしまうことがあります。
最初のチェックポイントは呼吸が働いているかどうかです。息を止めた状態で発声すると、声の起点が喉になってしまいます。二つ目のチェックポイントは喉に余計な力が入っていないかで、強く出したつもりが喉への力の集中を招くと声質は硬くなります。三つ目のチェックポイントは、録音で確かめたときに同じ状態が再現できているかです。
「声量は喉で上げず、息のスピードと言葉の頭で前に届けます。」
この一文を使い、「喉で上げず」の出だし、「息のスピードと」の途中経過、「前に届けます」の締めくくりを分けて聞きます。すべてを一度に良くしようとせず、まずひとつの地点だけを直します。
練習は発声そのものより前の段階から組み立てます
まずは呼吸だけの段階です。声を出さず、短く鋭く息を吐く動作を繰り返します。大きく吸うことより、吐いた息がまっすぐ前へ抜ける感覚をつかむことを優先します。
続いて小さな声の段階です。声を大きくしようとせず、喉が押されていないかを確かめられる程度の、無理のない音量で声にします。
最後は一文を使った録音の段階です。発声練習だけで終わらせず、実際に使う言葉につなげます。声量は会議や広い部屋で人に届けるためのものなので、言葉として発したときにどう届くかまで確認して初めて意味を持ちます。
| 段階 | 内容 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 呼吸 | 短く鋭く息だけを吐く | 体のどこかがこわばっていないか |
| 発声 | 無理のない音量で声にする | 喉に押し出す力が入っていないか |
| 録音 | 一文をそのまま録音する | 出だし・息・語尾が保たれているか |
音量を上げたいときほど、いったん下げてみます
声が届かないと感じるほど、音量そのものを上げたくなるものです。ですが喉で押している状態のまま音量だけを足すと、負担が増える一方で届き方は変わりません。まずは音量を落としてください。
音量を落とすと、逆に自分の癖がはっきり見えてきます。息が途中で止まっていないか、喉に頼っていないか、語尾がすり抜けていないか。小さな声の段階で届いていないものは、音量を上げただけでは結局届きません。
「喉で上げず」を無理のない声で出せているか。「息のスピードと」まで息を止めずにつなげられているか。「前に届けます」の最後まで息が残っているか。この三点を小さな声で確認してから、少しずつ音量を戻していきます。
喉の状態を見極めることも、練習のうちに入ります
喉に違和感がある日は、その日の練習量を無理に維持しようとしないでください。刺すような痛みがある、かすれが強く抜けない、休んでも元に戻らない。こうしたサインが続くようなら、自己判断で押し通さず専門家に相談してください。
喉をいたわることは練習をさぼることではなく、声を長く使い続けるための技術のひとつです。一度だけ大きな声を出せることより、必要なときに安定して声を出せることのほうに価値があります。
調子が悪い日は、音量を上げない、高い声も低い声も無理に狙わない、息の流れと短い一文の確認だけにとどめる。これで十分です。
録音は良し悪しの判定ではなく、再現性の確認です
録音を聞くと、自分の声が想像より小さいと感じることがあります。ですが録音で確かめたいのは好みの問題ではなく、同じ状態を毎回再現できるかどうかです。
「喉で上げず」の入りが前回より楽になっているか。「息のスピードと」で息の流れが途切れていないか。「前に届けます」まで声が残っているか。見るのはこの三点だけです。
録音を使えば、感覚に頼らず音そのもので確かめられます。自分の内側で聞こえる声と、外へ実際に届く声は別のものなので、外に届くほうの声を整えるにはこの確認作業を省けません。
一週間は同じ一文だけを追いかけます
毎日違う練習を試すと、何が変化を生んだのか見えなくなります。最初の一週間は、同じ一文だけで十分です。
「声量は喉で上げず、息のスピードと言葉の頭で前に届けます。」
この一文を毎日録音してください。ただし声を大きくする日を作るのではなく、呼吸に注目する日、喉の力みに注目する日、語尾に注目する日というふうに、一日ひとつだけテーマを決めて臨みます。
一週間続けると、自分がどの段階でいちばん崩れやすいのかが具体的な形で見えてきます。その傾向を起点に練習を足していけば、闇雲に量を増やさずに済みます。
声は、順番を守ることで変わっていきます
声量を上げたい場面で、いきなり難しい練習から入る必要はありません。息を先に流す、喉で押さない、体を固めない、最後に録音で確かめる。この順序さえ守れば十分です。
声を変えるというのは、喉に力を入れて頑張ることではありません。楽に出せる声をまず見つけ、それを本番で使える大きさまで少しずつ広げていく作業です。
迷ったら、練習の種類ではなく数を減らします
声量が変わらないと感じるときほど、練習メニューの種類を増やしたくなります。ですが種類を増やすほど、何が効果を生んだのか判別しづらくなります。迷ったときは、練習をひとつに絞ってください。
今日は呼吸だけに集中する。翌日は喉の力みだけを見る。その次は録音で届き方だけを確認する。このくらい絞ったほうが、変化ははっきり見えます。
ボイトレの目的は、たくさんのメニューをこなすことではありません。自分の声がどの地点で崩れ、どこに手を入れれば変わるのかをつかむことそのものが目的です。それさえつかめれば、短い練習時間でも結果につながります。
まとめ
声量を上げたい場面では、まず大きな声を出そうとする前に、呼吸・喉・体・録音の順番で確認してください。「喉で上げず」の出だし、「息のスピードと」の息の流れ、「前に届けます」の録音確認。この三点を整えるだけでも練習の質は変わります。
声を変えるということは、喉の力で押し切ることではありません。相手に届く声を、体の使い方として再現できるようにすることです。
よくある質問
- Q. 声量を上げる 方法では何から始めるべきですか
- 最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
- Q. 毎日練習した方がいいですか
- 短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
- Q. 録音は必要ですか
- 必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →声が通る出し方。大きな声ではなく、息で届く声をつくる
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