仕事で声量をコントロールする方法。大きすぎず小さすぎない声
会議や接客で声が大きすぎる、小さすぎる、場に合わない人へ。声量ではなく距離、息、語尾で整える方法をまとめます。
奥津ユキ
デスクを挟んで話す相手には声が大きすぎると言われ、会議室では声が小さいと聞き返される。同じ人でも、場面によって声量の評価は正反対になることがあります。これは声質の問題ではなく、相手との距離に対して声を合わせられていないために起きています。
声量は、相手との距離で基準が変わります
隣の席の相手と話す声量と、会議室の奥にいる相手に届ける声量は、そもそも別物です。声量をひとつの「自分の標準」で固定してしまうと、近い相手には大きすぎ、遠い相手には小さすぎるという状態が同時に起こります。
次の一文で、距離ごとの声の置き方を確認してみてください。
「少し声量を落として、必要な点だけ順番にお伝えします。」
近い相手にこの一文を話す時と、会議室の全員に向けて話す時とでは、音量を変える前に、まず息の量と語尾の置き方を変える必要があります。
大きすぎる声も小さすぎる声も、原因は同じ場所にあります
声が大きすぎると言われる人は、意識が届かせることに向きすぎて、最初の音を強く出しがちです。反対に、声が小さすぎると言われる人は、遠慮から息を浅くしたまま話してしまいます。
一見正反対に見えますが、どちらも共通して息の流れが整っていません。大きい人は息を吐ききる前に声を押し出し、小さい人は十分な息を流さないまま声を出そうとしています。声量を上げ下げする前に、まず息が流れているかを確認してください。
私の実感では、多くの人はふだん、自分が出せる声の最大値を10だとすると、その2くらいの範囲だけで一日の会話を済ませています。これは気が弱いとか遠慮がちといった性格の話ではなく、単純に2から上を使う機会が少ないだけです。使い慣れていない範囲を急に求められるほど、大きい人はさらに強く押し、小さい人はさらに縮こまるという振れ方をしやすくなります。
ちょうどよい声量に整える三つの操作
一つ目は、言葉の頭の置き方です。近い相手には、最初の音を柔らかく置きます。遠い相手には、最初の音の子音をはっきり出します。どちらも大きさを変えるのではなく、届け方を変える操作です。
二つ目は、重要語の前の間です。「必要な点だけ」のような大事な言葉の前に、聞き手が受け取れる分だけ間を作ります。近くても遠くても、この間は同じように必要です。
三つ目は、語尾です。「お伝えします」を最後まで届けます。語尾を強く押す必要はなく、最後の一音まで息を残すだけで、距離が離れていても弱く聞こえにくくなります。
録音では、距離を変えて三回聞き比べます
「少し声量を落として、必要な点だけ順番にお伝えします。」を、三つの距離を想定して録音してください。
| 想定する場面 | 確認するポイント |
|---|---|
| 隣の席の相手 | 最初の音が強すぎて威圧的になっていないか |
| 対面のテーブル越し | 重要語の前で間が取れているか |
| 会議室の奥の相手 | 語尾まで息が届いているか |
一回目は普段のまま読みます。二回目は文の前に短く息を吐いてから読みます。三回目は語尾だけを最後まで置く意識で読みます。録音で違和感があっても、声そのものを嫌わないでください。直す場所を見つけるための確認です。
体が固まると、声量の調整はさらに難しくなります
声が崩れる時、喉だけでなく体も見ます。肩が上がっていないか。胸だけで息を吸っていないか。背中が止まっていないか。
体が固まると息は細くなり、声を喉で補おうとします。喉で補うと、最初は出ているようでも、途中で苦しくなったり語尾が落ちたりします。姿勢はきれいに見せるためではなく、声が通る道を作るためのものです。足の裏を床に置き、息を短く吐き、言葉の頭を置く。これだけでも声の入り口は変わります。
本番前は、三つの距離を想定して準備します
本番前に長く練習すると、かえって喉が疲れることがあります。短い時間で、近い距離、中間の距離、遠い距離を一回ずつ想定して読みます。
- 近い相手へ、柔らかく言葉の頭を置く
- 中間の距離へ、重要語の前で間を作る
- 遠い相手へ、語尾まで息を届ける
それぞれを大きく読む必要はありません。距離に応じて、置き方を変える練習です。
相手の立場で聞くと、直す場所が絞れます
仕上げでは、自分がうまく話せたかではなく、相手が聞きやすいかで録音を聞きます。入りが強すぎれば、近い相手は身構えます。語尾が届かなければ、遠い相手は聞き取れないまま置いていかれます。
声を変えることは、相手の受け取り方を変えることです。声量そのものより、入り、間、語尾を距離に合わせて整えてください。
声量を一気に変えようとすると、余計に崩れます
声量の悩みを抱えると、もっと通る声にしよう、もっと控えめにしようと、声色を一気に変えたくなります。けれど、本番で必要なのは、大きいか小さいかではなく、その距離の相手が受け取りやすい声です。
強く見せようとすると最初の音だけが硬くなり、控えめにしようとすると語尾が引っ込みます。変えるべきは、入り、間、語尾の三つです。少し声量を落としての入りを置く。必要な点だけの前で待つ。お伝えしますの語尾を残す。この三つに絞ると、練習は現実的になります。
声が安定する人は、息を距離に合わせて配分しています
遠くの相手に届けるには、声を張り上げて距離を埋めるしかないと思われがちです。ですが実際には、張り上げるほど喉に力が入り、音は硬くなるだけで届きにくくなります。声を大きくするというより、響かせる方向に息を通す方が、会議室の奥まで自然に届きます。
声が安定して聞こえる人は、必ずしも声量が大きいわけではありません。相手との距離に応じて、息を配分できています。近い相手には少ない息で、遠い相手にはやや多めの息を、それぞれ語尾まで残るように配分します。
大きく吸えば息が足りるわけではありません。吸いすぎると体が固まり、喉で押しやすくなります。短く吐いてから話す。意味のまとまりで区切る。語尾のために息を少し残す。この方が、距離が変わっても対応しやすくなります。
本番で崩れた時の戻し方
本番で声が崩れた時、最初からやり直す必要はありません。戻す場所を一つだけ決めます。
入りが強すぎたなら、次の文の言葉の頭を少し柔らかくします。語尾が届かなかったなら、次の文の最後だけ息を残します。一度崩れたから全部だめ、とは考えないでください。声は一文ごとに戻せます。
まとめ
仕事で声量が合わないと感じる時は、大きくする、小さくするという発想の前に、相手との距離に応じて入り、間、語尾を置き直してみてください。声量そのものより、この三点を距離に合わせることで、聞かれ方は変わります。
まずは一文だけ録音して、近い距離、中間の距離、遠い距離で聞き比べてください。直す場所が見えれば、声は練習で変えられます。
よくある質問
- Q. 仕事で声量を調整する場面で声が弱く聞こえる原因は何ですか
- 近い相手に大きすぎる、会議では小さすぎる、語尾だけ急に弱くなるなどで、息・喉・体・語尾・間のどこかが崩れていることが多いです。
- Q. 声量を上げれば解決しますか
- 声量だけでは安定しません。最初の音、重要語の前の間、語尾まで息を残すことを先に整えます。
- Q. 本番前に何を練習すればいいですか
- 本番で使う一文を録音し、入り、間、語尾の三点だけを確認してください。
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詳しいプロフィール →声が通る出し方。大きな声ではなく、息で届く声をつくる
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声量は、大きいか小さいかだけで測るものではありません。相手との距離に応じて息と語尾の置き方を変えると、届き方は変わります。