毎日ボイトレを続けているのに声が変わらない時は、練習量よりも先に、息、喉、体、録音を見る順番を疑ってみてください。長い時間机に向かっても喉が疲れるだけで終わったり、日によってやることが変わったり、録音で結果を確かめないまま次の日に進んだりすると、続けているのに声だけがなかなか安定しません。逆に言えば、この四つを毎日同じ順番で確認するだけで、練習時間を増やさなくても変化は見えてきます。
毎日の練習は、声を出す前の準備で決まります
ボイトレというと、発声練習の音階や声量を思い浮かべる人が多いです。もちろん、それも大切な要素です。ただ毎日続ける場合は、声を出す前の息と体が固まったままだと、どんな練習を積んでも喉に負担が集まりやすくなります。
たとえば、次の一文を使います。
「三分だけ息を流し、三分だけ声を出し、最後に一文を録音します。」
息を流すの入りが硬いと、声は喉から始まってしまいます。声を出すを急ぐと、息と声が途中で分かれてしまいます。録音までの確認を飛ばすと、変化は感覚だけのものになり、翌日には忘れてしまいます。
長く練習するほど、喉の癖は強く固定されます
毎日続けるうえでやりがちな失敗は、長くやるほど早く上達すると考えることです。声を変えたい気持ちが強いほど、初日から難しい練習を詰め込みたくなります。
毎日ボイトレを続けるなら大きな声を出す練習を欠かさない方がいいと思われがちですが、実際は逆だと私は感じています。毎日大きい声を出し続けると、喉にダメージが少しずつ蓄積していきます。声を出すこと自体は鍛錬になっても、間違った使い方のまま繰り返せば、鍛えているつもりで喉を痛めてしまいます。
けれど、声は強く出せば育つわけではありません。喉で押した声を毎日繰り返すと、その癖のほうが強く固定されてしまいます。高い声、低い声、大きい声、響く声を目指す前に、まず楽に出せる声を確認します。
確認する順番はいつも同じです。まず息が止まっていないか。次に喉で押していないか。体が固まっていないか。最後に録音で同じように再現できるか。この順番を毎日繰り返すと、練習の方向がぶれにくくなります。
基本メニューは三つ、どれも短く区切ります
毎日長く練習する必要はありません。むしろ、短く区切ったほうが声の変化は見えやすくなります。
一つ目は、息だけです。声を出さずに、短く吐きます。吸うことよりも、吐く息が前へ流れる感覚を作ります。私はよく自転車にたとえてお伝えしています。息のスピードはこぎ方と同じで、ゆっくりだとふらついて倒れそうになり、ある程度のスピードに乗ると自分の力だけで進めるようになります。声も同じで、ゆっくり息を出そうとするほど喉に頼りやすくなり、少し速く吐き切るくらいのほうが勝手に声が乗ってきます。
二つ目は、楽に出る声です。大きくしません。高くもしません。喉が押されていない声を短く出します。
三つ目は、一文の確認です。「三分だけ息を流し、三分だけ声を出し、最後に一文を録音します。」を録音します。声の良し悪しではなく、入り、息、語尾を聞き分けます。
通勤前や仕事の合間のような、まとまった時間が取れない日でも、この三つなら数分で終わります。忙しさを理由に丸ごと飛ばす前に、まずこの短い流れだけを毎日続けてみてください。続けるうちに、三分という目安がなくても同じ感覚を再現できるようになっていきます。
録音は、うまさではなく再現できるかを聞くために使います
毎日の練習で大切なのは、一回だけ良い声が出ることではなく、同じ状態を翌日も再現できることです。そのために録音を使います。
録音では、息を流すの入りをまず聞きます。次に、声を出すの途中で息が止まっていないかを聞きます。最後に、一文の録音が感覚ではなく音として変わっているかを聞きます。
自分の声を録音で聞くと、違和感を覚える日もあると思います。ただ、その違和感は毎日続けるうえでの入口です。自分の中で聞こえる声と、相手に届く声は別物なので、届く声を整えるには録音での確認が欠かせません。
喉に違和感がある日は、メニューを削ります
声を変えたい気持ちが強いほど、毎日でも強く練習を続けたくなります。ただ、喉に違和感がある日に無理を重ねると、練習ではなく負担の反復になってしまいます。
痛みがある、強いかすれがある、休んでも戻らない違和感が続く時は、無理に毎日のノルマを守ろうとせず、専門家に相談する判断も必要です。
軽くする日は、声量を上げません。息を流し、小さな声で一文だけ録音します。喉を守ることと、練習をさぼることは別物です。強い声を一回出すより、必要な声を安定して出せることのほうが、毎日続けるうえでは大切です。
軽くする日の判断に迷ったら、声量を上げない、高い声や低い声を無理に狙わない、息と短い一文の確認だけにとどめる。この三つを守れば十分です。喉を休めることは練習をやめることではなく、翌日以降も同じ練習を続けるための調整だと考えてください。
同じ一文を一週間続けると、崩れる場所が見えてきます
毎日違う練習を試すと、何が変わったのか分かりにくくなります。最初の一週間は、同じ一文で十分です。
- 「三分だけ息を流し」
- 「三分だけ声を出し」
- 「一文を録音します」
この三つを同じ順番で毎日確認します。今日は息が流れたか。喉が押されなかったか。録音で昨日より楽に聞こえるか。小さな変化を積み重ねます。
一週間続けると、自分がどこで崩れやすいかが見えてきます。そこから練習を増やせば、必要以上に長く練習しなくて済みます。一週間だけでは変化がわずかに感じられても構いません。毎日録音を比べていくと、声そのものより先に、息の流れや語尾の残り方から変わっていくことが多いです。
うまくいかない日は、文と音量を落とします
声が安定しない時、練習を難しくする必要はありません。まず文を短くします。一文が長いほど息は足りなくなり、喉で補いやすくなるからです。最初は短い一文で構いません。短い文で楽に出せる声が増えると、長い文にも少しずつ広げられます。
声が出ない時ほど、音量を上げたくなりますが、喉で押している状態で音量だけ上げると負担が増えます。まず音量を下げてください。音量を落とすことで、息の流れが途中で止まっていないか、喉に頼って出していないか、語尾が消えかけていないかといった自分の傾向がつかみやすくなります。小さな声で崩れる部分は、声量を足しても結局は崩れたままです。楽な声で息を流すを出せるか、次に声を出すへつなげられるか、最後まで息が残るかを、音量を上げる前に確かめます。
練習メニューの流れを表にすると、こうなります
一つ目は、声を出す前の準備です。声を出さずに短く吐き、吐く息が前へ流れる状態を作ります。二つ目は、小さな声です。喉に力みが入っていないかを確かめるため、負担のない音量で声を乗せます。三つ目に、一文を録って聞き返す工程を置きます。発声だけの練習で終わらせず、実際に使う言葉へつなげるための段階です。声は歌や音階だけで使うものではなく、言葉になった時にどう届くかを確認するところまでが練習です。
| ステップ | 具体的にやること | チェックする観点 |
|---|---|---|
| Step1 | 声を出さず短く息を吐く | 肩や胸がこわばっていないか |
| Step2 | 無理のない音量で声を出す | 喉に押し込む力みがないか |
| Step3 | 一文だけ録って聞き返す | 出だし・息継ぎ・語尾の残り方 |
この三つを毎日同じ順番でなぞるだけで、声を出す前の準備から録音での確認までが一巡します。表の順番を入れ替える必要はありません。
声が変わらないのは、練習不足だけが理由ではありません
毎日の練習でうまくいかない時、練習が足りないからだと考えがちです。もちろん練習量も関係します。ただ、長く練習して喉だけが疲れる、日によってやることが変わる、成果を録音で見ないまま続けるという状態のままでは、練習を重ねても声が変わるどころか、今の癖のほうを強めてしまうことがあります。
この一文を使って、入り、途中、終わりを分けて聞きます。全部を一度に良くしようとせず、まず一か所だけ直すつもりで続けてください。
毎日の練習をまとめると、声は順番で変わります
毎日の練習では、いきなり難しいメニューへ進む必要はありません。息を流す。喉で押さない。体を固めない。録音で確認する。この順番を守ります。
声を変えることは、喉で頑張ることではありません。楽に出る声を見つけ、それを少しずつ広げていくことです。
迷った時は、メニューを一つ減らします
声が変わらない時ほど、練習を増やしたくなります。けれど、増やすほどどれが効いたのか分からなくなります。迷った時は、メニューを一つ減らしてください。
ある日は息の流れだけに注目し、別の日は喉の力みだけを観察し、また別の日は録音で語尾の残り方だけを確かめる。日替わりでテーマを一つに絞ったほうが、変化がはっきりします。毎日のメニューをこなす量よりも、自分の声がどこで崩れ、どこを整えると変わるのかを知ることのほうが、続ける意味につながります。
まとめ
毎日の声の練習では、長く練習すれば早く変わると考える前に、息、喉、体、録音の順番で見てください。息を流す入り、声を出す途中の息、一文を録音するところまでの確認を整えるだけでも、練習の積み重ね方は変わります。
体が覚えている状態を録音で確かめながら、少しずつ相手に届く声へ近づけていってください。毎日の数分を、声に負担をかけない形で積み重ねていくことが、遠回りに見えて一番の近道です。
よくある質問
- Q. ボイトレ 毎日では何から始めるべきですか
- 最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
- Q. 毎日練習した方がいいですか
- 短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
- Q. 録音は必要ですか
- 必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
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声は、生まれつきだけで決まるものではありません。息、喉、体、録音の順で毎日見直すと、声の出し方は少しずつ変えられます。