母音の発声練習。声を前に届けるための基本

母音が暗い、こもる、歌詞が聞こえにくい人へ。母音を喉で作らず、息と響きで整えます。

奥津ユキ

母音を歌に乗せる場面で声がこもる時は、練習量より先に、息、喉、体、録音の順番を見てください。母音が奥にこもる、口の形だけで作ろうとする、歌詞の終わりで音が暗くなる。この状態は、母音そのものより、母音に入る前の準備が崩れていることで起きます。

母音を歌に乗せる前に、口ではなく息の通り道を確認します

歌詞を口先だけで整えようとすると、母音は形になっても響きが乗りません。まず見るのは、口の開け方ではなく、声の前に息がどれだけ流れているかです。

次の一文で確認します。

「母音を喉で作らず、息を流して、響きが前に残るか確認します。」

「母音を喉で作らず」の入りで喉が締まっていると、声はそこから硬く始まります。「息を流して」を急いで通り過ぎると、息と声が離れたまま歌詞に入ります。「響きが前に残るか確認します」まで、録音で聞いて初めて、感覚だけでは気づけなかったずれが見えてきます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

母音は口の形を覚えるだけでは変わりません。息、喉、体、録音の四つで見直すと、同じ母音でも届き方が変わります。

母音は口の形の問題だと決めつけると、練習が止まります

母音の練習でつまずきやすいのは、こもりや暗さを口の開け方だけで直そうとすることです。うまく響かないと感じるほど、口を大きく開けたり、形を作り込んだりしたくなります。

けれど、声は喉で強く押して育つものではありません。喉で押した状態のまま繰り返すほど、その押し方が癖として残ります。高い音、低い音、大きい声、響く声を狙う前に、まず楽に出せる母音がどこにあるかを確認してください。

「頭のてっぺんから声を抜くように」といった抽象的なイメージで教わったことがある人もいると思いますが、私はそうした言い方はしません。実際に変わるのは、もっと具体的な場所だからです。レッスンで一番驚かれる指示は「口から声を出さないでください」というものです。口と息を一緒に前へ押し出すのをやめて、鼻の奥の方に響かせる感覚に変えるだけで、こもっていた母音が急に前に出てくることがあります。

見る順番は、息、喉、体、録音です。声を出す前に息が止まっていないか。喉で押して母音を作っていないか。肩や顎が固まっていないか。録音で聞いて、昨日と同じように再現できるか。この順で見ると、練習の的が絞れます。

こもる原因は、一つに決めつけず三つに分けて見ます

母音がこもる、口先だけの形になる、歌詞の終わりで暗くなる。この三つの状態には、息、喉、体がそれぞれ関わっています。

一つ目は息です。息が強すぎると母音は押されて硬くなります。弱すぎると届きません。大切なのは量ではなく、声に乗って流れているかどうかです。

二つ目は喉です。響きや高さを喉だけで作ろうとすると、母音は不安定になります。響きは喉の力で足すものではなく、息の流れの上に自然に乗るものです。

三つ目は体です。肩が上がる、胸が固まる、顎が前に出ると、息の通り道が狭くなります。体が固まるほど、喉で無理に補おうとする癖が出ます。

練習は、母音を出す前の準備から始めます

一つ目は、声を出さない準備です。短く息を吐き、吐く息が体の前へ流れる感覚を作ります。

二つ目は、小さな声で母音を置くことです。大きく出す必要はありません。喉が押されていないかを、楽な音量で確認します。

三つ目は、一文にして録音することです。母音の練習は発声だけで終わらせず、実際の歌詞につなげてください。歌詞になった時にどう届くかまで確認して、初めて練習が完結します。

順番練習見る場所
1声を出さず短く息を吐く肩や顎が固まっていないか
2小さな声で母音を置く喉で押していないか
3一文を録音する入り、息、語尾の響きが残るか

こもって出にくい時ほど、音量を下げます

母音が響かない時ほど、声を大きくして押し切りたくなります。けれど、喉で押している状態のまま音量を上げると、こもりは直らず負担だけが増えます。まず音量を下げてください。

音量を下げると、自分の癖に気づきやすくなります。息が止まっていないか。喉で母音を押していないか。歌詞の終わりで響きが消えていないか。小さい声で安定しない母音は、大きい声にしても安定しません。

小さな音量で「母音を喉で作らず」を楽に置けるか。「息を流して」まで息が途切れないか。「響きが前に残るか確認します」の最後まで響きが残るか。この三段階を小さな声で確認してから、少しずつ音量を戻します。

喉の違和感がある日は、練習より休息を優先します

母音の練習中に喉へ違和感が出ても、そのまま押し通す必要はありません。痛みを感じる、かすれが取れない、一晩休んでも改善しないといった状態が長引くようなら、根性で乗り切ろうとせず専門家の判断を仰ぐことも選択肢に入れてください。

喉をかばうことは、決して手を抜くことではなく、声を長い期間歌い続けるために欠かせない技術のひとつです。一度だけ大きく響かせられることより、必要な母音を毎回同じように安定して出せることのほうが、歌にとっては価値があります。

録音で聞くのは、いい声かどうかではありません

自分の録音を聞くと、母音が思ったより暗く感じることがあります。けれど録音で確認したいのは好き嫌いではなく、再現できているかどうかです。

昨日より「母音を喉で作らず」の入りが楽だったか。「息を流して」で息が途切れなかったか。「響きが前に残るか確認します」まで響きが残ったか。この三点だけを聞き分けてください。

録音を使うと、感覚ではなく音で確認できます。自分の中で鳴っている声と、外に届いている声は違うため、この確認がないと変化は主観のままになります。

迷ったら、練習項目を一つ減らします

母音が変わらない時ほど、練習を増やしたくなります。けれど項目を増やすほど、何が効いたのか分からなくなります。迷ったら、見る項目を一つに絞ってください。

今日は息だけを見る日。明日は喉の力みだけを見る日。次の日は録音で歌詞の終わりだけを見る日。こうして分けた方が、変化がはっきり見えます。

最初の一週間は、同じ一文で十分です

毎日違うフレーズで練習すると、何が変わったのかが分かりにくくなります。最初の一週間は、次の一文だけで十分です。

「母音を喉で作らず、息を流して、響きが前に残るか確認します。」

この一文を毎日録音します。声量を上げる日ではなく、息を見る日、喉の力みを見る日、歌詞の終わりの響きを見る日、というように日ごとにテーマを一つ決めます。

一週間続けると、自分がどこで母音を落としやすいかが見えてきます。そこから初めて、練習項目を増やしても遠回りになりません。

こもりが直らない時は、母音ではなく順番を戻します

母音がうまく響かない時、多くの人はまず母音そのものを直そうとします。もっと大きく、もっと高く、もっと響かせて、もっとはっきり。けれど母音を直接触る前に、順番を戻した方が安定します。

最初に戻すのは息です。息が止まったまま母音を出すと、喉が先に働きます。次に戻すのは体です。肩や顎が固まると、息が流れにくくなります。最後に戻すのが母音そのものです。息と体が整ってから、楽に出せる母音を確認します。

この順番で練習すると、母音を直接よくしようとするより、母音が出やすい状態を作る方が、喉への負担も少なくなります。

録音では、三つの変化だけを聞きます

録音を聞く時に、全体としてうまいかどうかを判断しないでください。全体を聞くと、好き嫌いや恥ずかしさに気持ちが引っ張られます。見る場所は三つだけです。

一つ目は最初の音です。母音が喉から押し出されていないかを聞きます。

二つ目は途中の息です。歌詞の途中で声が止まったり、急に強くなったりしていないかを聞きます。

三つ目は最後の音です。歌詞の終わりまで響きが残っているかを聞きます。

このどれか一つでも変化があれば、練習は進んでいます。大きな変化だけを成果にしないでください。母音は、小さな再現性の積み重ねで変わっていきます。

一回で変えようとしない方が、母音は安定します

母音を変えたい時ほど、一回の練習で結果を求めたくなります。ただ、強い手応えを求めるほど、喉で頑張って作りやすくなります。

最初は、楽に出せる範囲だけで十分です。高い音も、低い音も、大きな声も、まず楽な母音があってから広げてください。楽な範囲を飛ばして難しい音へ進むと、母音は不安定になります。

一日目は息だけを見る。二日目は喉の力みだけを見る。三日目は録音で歌詞の終わりだけを見る。これくらい分けた方が、何が変わったかがはっきりします。

喉に違和感がある時は、練習の負荷を落とします

喉に違和感を覚えたら、続けるかどうかを先に判断してください。痛みがある、かすれが強い、休んでも戻らない状態が続く場合は、無理に発声で解決しようとしないでください。

負荷を落とす日は、声量を上げません。高い音を攻めません。長く伸ばしません。息を流して、短い一文だけを録音します。

喉を守ることは、練習を怠けることではありません。歌に使える声を長く保つことも、母音練習の一部です。

仕上げは、同じ一文で昨日と比べます

練習の最後は、同じ一文を録音してください。毎回違う歌詞で確認すると、変化が分かりにくくなります。同じ一文なら、息、喉、歌詞の終わりの違いが聞き取りやすくなります。

昨日より楽に出たか。昨日より喉で押していないか。昨日より歌詞の終わりまで響きが残っているか。この三点だけで十分です。

母音を変えることは、別人の声になることではありません。自分の声を、歌詞として相手に届く形で再現できるようにすることです。

最後にもう一度、同じ条件で録音します

練習の締めくくりは、新しいことを増やさず、同じ条件で一度だけ録音してください。同じ音量、同じ一文、同じ距離で録ると、母音の変化が見えやすくなります。

聞く場所は変えません。母音の入りが喉から押されていないか。歌詞の途中で息が止まっていないか。最後の音まで響きが残っているか。この三点だけです。

同じ条件で比べると、感覚ではなく音で判断できます。母音は一回の手応えより、再現できる状態を積み重ねることで変わっていきます。

まとめ

母音の発声練習では、口の形だけで直そうとする前に、息、喉、体、録音の順番で見てください。「母音を喉で作らず」の入り、「息を流して」の息、「響きが前に残るか確認します」の響きを整えるだけでも、歌詞の届き方は変わります。

母音を変えることは、喉で頑張ることではありません。歌詞に乗った声を、体で再現できるようにすることです。

よくある質問

Q. 母音 発声 練習では何から始めるべきですか
最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
Q. 毎日練習した方がいいですか
短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
Q. 録音は必要ですか
必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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