留守電は、相手の反応がその場で見えないまま話し続ける、電話の中でも特に難しい場面です。表情や相槌が返ってこないため、早口になったり、名乗りと要件がひとかたまりになって流れたりしやすくなります。留守電のメッセージは、名乗り、要件、折り返しの依頼という三つの部分に分けて考えると整理しやすくなります。
名乗りの部分で、話の入口が決まります
留守電を再生した相手が最初に判断するのは、誰からの電話かということです。次の一文で、名乗りの部分を確認してみてください。
「株式会社〇〇の田中です。資料の件で確認したいことがあり、お電話しました。折り返しをお願いいたします。」
「株式会社〇〇の田中です」の入りが小さかったり早口だったりすると、相手は社名や名前を聞き取れないまま、そのあとの要件を追うことになります。名乗りは、急いで済ませる部分ではなく、いちばん丁寧に置く部分です。
留守電は口元だけで話しかけると、声がこもって奥に沈みがちです。話す直前に口の両端を軽く持ち上げるようにすると、声が鼻の方まで自然に通り、こもりにくくなります。意識して鼻にかけようとするより、口の両端を上げるだけの方が力みが出ません。
要件の部分で、急ぎすぎると意味が流れます
名乗りのあとに続く要件は、留守電の中でいちばん内容が詰まった部分です。「資料の件で確認したいことがあり」のような重要語の前で、ほんの少し間を作ります。
留守電は、話しながら相手の反応を確認できません。だからこそ、対面や通話中の会話以上に、意味の切れ目で意識的に間を取る必要があります。急いで一息に言い切ると、聞き手は要件を一度で聞き取れず、再生をやり直すことになります。
折り返し依頼の語尾で、印象が決まります
留守電の最後に置く「折り返しをお願いいたします」のような一言は、語尾まで届いているかどうかで印象が大きく変わります。語尾が消えると、丁寧な言葉を使っていても、投げやりに聞こえてしまうことがあります。
語尾を強く言い切る必要はありません。最後の一音まで息を残す。それだけで、折り返したくなる印象に近づきます。
直す順番は、息、名乗り、要件、語尾です
一つ目は、息です。話す直前に大きく吸い込むのではなく、短く吐いてから言葉に入ります。吸うことで準備するより、吐く流れに声を乗せる方が、喉で押しにくくなります。
二つ目は、名乗りです。「株式会社〇〇の田中です」の最初の音を、強く叩かずに置きます。小さく入るのではなく、相手が聞き始められる位置に置く感覚です。
三つ目は、要件です。「確認したいことがあり」の前で、ほんの少し待ちます。長い沈黙ではなく、聞き手が受け取るための一拍です。
四つ目は、語尾です。「折り返しをお願いいたします」を最後まで届けます。
録音では、三つの部分をそれぞれ聞きます
練習では、長い文章を読む必要はありません。まず本番で使う一文だけを録音します。
「株式会社〇〇の田中です。資料の件で確認したいことがあり、お電話しました。折り返しをお願いいたします。」
| 確認する部分 | 聞くポイント |
|---|---|
| 名乗り | 社名と名前が小さく消えていないか |
| 要件 | 重要語の前で急いでいないか |
| 折り返し依頼 | 語尾まで息が残っているか |
一回目は普通に読みます。二回目は、文の前に短く息を吐いてから読みます。三回目は、語尾だけを最後まで置く意識で読みます。
失敗パターン別に、直す部分を決めておきます
留守電で聞き取りにくいと言われる時、原因は一つとは限りません。だからこそ、自分がどのパターンに当てはまるかを先に決めておきます。
名乗りが早口になる人は、名乗りの部分だけを練習します。全文を一度に練習しようとすると、また途中で意識が散ります。最初の一音を相手に置けるかだけを見ます。
要件で息が切れる人は、要件の前だけを練習します。間を取るのが怖い場合は、一拍ではなく半拍で構いません。重要語を急いで逃がさないことが大切です。
語尾が弱くなる人は、折り返し依頼の部分だけを練習します。語尾を大きくする必要はなく、最後の音に息が残っているかを聞きます。
留守電は、電話番号を伝える部分も同じ考え方です
折り返し先の電話番号を伝える場合、数字を早口で読み上げると、相手は聞き取れずに再生をやり直すことになります。数字のまとまりごとに、短い間を作りながら読みます。
数字は特に、急ぐほど聞き取りにくくなる部分です。名乗りや要件と同じように、急がず、区切りごとに息を整えてから次のまとまりに進むと、聞き取りやすさが変わります。
声が安定する人は、息を留守電の長さに合わせています
留守電で落ち着いて聞こえる声は、大きな声量によるものとは限りません。一言ごとに、最後の語尾まで息が残っている点が共通しています。反対に弱く聞こえる声は、最初の名乗りの部分で息を使い切ってしまっていることが多いです。
息を確保しようとして大きく吸い込むと、かえって体が固まり、喉に力が入りやすくなります。短く吐いてから話し始める、意味のまとまりごとに区切る、語尾のために少し息を残しておく。相手の反応が返ってこない留守電だからこそ、この配分の差がそのまま声の印象になります。
名乗りが小さく消えるのは腹式呼吸ができていないからだ、と考える方もいますが、私の実感では腹式呼吸そのものよりも、お腹に圧をかけ続けられているかと、吐く息の速さの方が影響します。腹を大きく動かすことより、名乗りの間、圧を抜かずに話せているかを見てください。
本番で崩れた時の戻し方
留守電を残している途中で声が崩れても、最初からやり直す必要はありません。戻す場所を一つだけ決めます。
名乗りが小さかったなら、次の言葉の頭を置き直します。要件を急いでしまったなら、次の重要語の前で少し待ちます。語尾が消えたなら、最後の一言だけ息を残します。留守電は録り直せる場面も多いので、崩れた時点で完璧を諦める必要はありません。
練習後は、できた部分だけを残します
録音を聞くと、できていない部分ばかり気になります。けれど、全部を直そうとすると次の本番で迷います。練習後は、できた部分を一つだけ残してください。
今日は名乗りが少し落ち着いた。今日は要件の前で少し待てた。今日は語尾が消えなかった。その一つで十分です。留守電の練習は、完璧な録音を作るためではなく、本番で戻れる場所を作るためのものです。
まとめ
留守電メッセージの声は、根性や早口を我慢することで整えるものではありません。名乗り、要件、折り返しの依頼という三つの部分に分けて、それぞれの入り、間、語尾を整えるだけでも、折り返したくなる印象に近づきます。
名乗り、要件、折り返しの依頼という三つの部分に分けて一度録音してみれば、息、喉、体、語尾、間のどこで崩れているかが具体的に見えてきます。直す場所が絞れれば、留守電の声は練習で変えられます。
よくある質問
- Q. 留守電メッセージを残す場面で声が弱く聞こえる原因は何ですか
- 名乗りが流れる、電話番号を早く言う、最後の依頼が消えるなどで、息・喉・体・語尾・間のどこかが崩れていることが多いです。
- Q. 声量を上げれば解決しますか
- 声量だけでは安定しません。最初の音、重要語の前の間、語尾まで息を残すことを先に整えます。
- Q. 本番前に何を練習すればいいですか
- 本番で使う一文を録音し、入り、間、語尾の三点だけを確認してください。
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留守電の声は、早口で押し切るものではありません。名乗り、要件、語尾を分けて息を配ると、折り返したくなる印象に変わります。