電話で声が震える原因。見えない相手に落ち着いて話す準備

電話で声が震える、息が浅くなる、名乗りが不安定になる原因を、第一声と呼吸から整えます。

奥津ユキ

受話器を取った瞬間、名乗りの声だけが細く揺れる。相手の顔が見えないぶん、声だけで判断されると思うほど、余計に力が入ります。この揺れが気持ちの弱さの証拠なのかどうかは、頭で悩むより、スマホのボイスメモで先に確かめられます。

名乗りの一文を、三通りに録って聞き比べてください

録音するのは次の一文だけです。

「お世話になっております、奥津です。」

一回目は、いつも電話で出しているとおりに読みます。二回目は、録音の直前に声を出さず細く息を通してから読みます。三回目は、最後の「です」まで息を残すことだけを意識して読みます。

録音は誰かに聞かせるものではなく、三本合わせても一分かからない確認です。三本を並べて聞くと、声量を変えていないのに聞こえ方が違う場所が見つかります。聞く場所は四つです。出だしを急いで置いていないか。文の途中で呼吸が消えていないか。最後の音が沈んでいないか。喉の詰まりが音に出ていないか。上手い下手の採点はしません。

三本の差の出方で、原因の見当もつきます。二回目で揺れが減ったなら、話し始める前の息止めが主犯です。三回目で安定したなら、文の後半で息を使い切る癖が出ています。どちらも変わらなかったときは、録音する前の姿勢から見直してください。椅子の背に体を預けたまま録っていたなら、足の裏を床に置き直して、もう一度だけ試します。いずれにしても揺れが動いたなら、あなたの震えは性格ではなく、声を出す前の準備で動く種類のものだと分かります。

震えの正体は、メンタルより最初の音の置き方です

声が震えるのは心が弱いからだと思われがちですが、私の実感では、息の出し方と喉まわりの筋肉の使い方が関わっている部分のほうが大きく、気持ちだけの問題ではありません。震えを隠そうと早口にしたり声量で押したりすると、喉に力が集まり、次の言葉がますます出にくくなります。

見るべきは最初の音です。最初の音が喉の奥で始まると、続く言葉も奥にこもります。息の流れに乗って始まれば、声は自然と前に出ます。一文を出す前に、口を開ける準備だけをする。続けて声を出さずに短く息を通す。その流れの上に一文を乗せる。三つに分けてみると、喉で押しているのか息に乗せているのかが、自分の喉の感覚でも分かるようになります。

電話で震えが出やすいのには、名乗りが定型文だという事情もあります。決まりきった言葉は考えずに出せるぶん、息の準備を飛ばして口だけが先に動きます。よく知っている言葉ほど、声を出す前の一瞬を丁寧に扱ってください。

息が遅いと、自転車と同じで声はふらつきます

息のスピードは自転車をイメージしてください。ゆっくりこぐ自転車がふらつくように、息の流れが遅いと声も揺れやすくなります。少し勢いをつけて流すと、走り出した自転車が安定するのと同じ支えが声に生まれます。スピードを上げるといっても、強く吐き出すことではありません。同じ細さの息が、途切れずに流れ続けている状態のことです。名乗りの数秒間だけ、その流れを保てれば十分です。

だから、深く吸うことより短く吐く流れを先に作ります。吸い込みすぎると胸や肩が上がり、体ごと固まりやすくなります。喉については、大きくする前に、小さな声で詰まらないかを確認してください。小さくても詰まるなら、大きくすれば負担が増えるだけです。体については、受話器を握る前に足の裏を床につけ、首筋を軽く伸ばします。喉だけで声を支えていた癖に、それだけで気づけます。

揺れの多くは、受話器を持つ前に仕込まれています

崩れは発声の最中ではなく、その手前で始まっています。急いでいる。息を止めて構えている。肩が上がっている。喉を先に固めている。この状態のまま名乗り始めると、途中から立て直すのは難しくなります。

受ける電話とかける電話でも、準備のしやすさは違います。かける電話は、番号を押す前に息を整える余地があります。受ける電話は不意打ちなので、鳴った瞬間に飛びつかず、着信音の一回分だけ待って、息をひとつ通してから出る癖をつけてください。その一回分の遅れで印象が悪くなることはありませんが、息が止まったままの名乗りは、最初の一言から硬くなります。

急ぎの折り返しほど、この準備を飛ばしがちです。かける前に一呼吸分だけ間を置いてください。数秒あるかないかで、名乗りの安定感は変わります。静かなオフィスで、自分の声だけが周りに聞こえる状況も力みを生みますが、そこで必要になるのも長い発声練習ではありません。息が止まっていないか、顎と肩がこわばっていないか、語尾まで言い切る用意があるか。受話器を持つ前のこの確認で十分です。

慣れてきたら、声の大きさより言葉を置く位置を意識します。自分の喉の中で鳴らすのではなく、電話の向こうの相手の手前にそっと置く感覚です。強く投げず、息の流れに乗せて前へ運びます。

通話の途中で震えても、次の一音から戻せます

名乗りの途中で揺れを感じたら、声を大きくして隠そうとしないでください。震えは喉に力が入っている合図なので、張るほど逆効果になります。一度だけ小さく息を吐き、次の言葉をゆっくり置き直します。

用件の途中でも同じです。次の一音だけを息に乗せる意識に切り替えられれば、途中で崩れても最後まで話し切れます。全部を立て直そうとせず、目の前の一音に戻る。この小ささが、電話では効きます。

名乗りを越えても、用件の一文目でまた揺れる人は多いです。用件の頭で使う言い回しをひとつ決めておき、名乗りと同じように息へ乗せて置いてください。言葉を探しながら話すと息が止まり、声は喉に集まります。決まった言い回しのある場所は、震えの出にくい場所になります。

言い終えたあとの半拍に、癖が出ます

言い終わった瞬間で確認をやめず、最後の一音のあとに半拍だけ黙ってみてください。その半拍で、喉が苦しくないか、息が止まり切っていないか、肩が上がっていないかを見ます。語尾が急に消える人は、この半拍の手前で息を使い切っています。

語尾が残ると、相手には受け取りやすい余白が生まれます。内容が同じでも、語尾ごと消える名乗りと、最後の一音まで届く名乗りとでは、電話の入り口の印象が変わります。電話は音だけの場なので、この余白の有無は対面より大きく響きます。話し終わりの癖は、話している最中には気づけません。半拍の沈黙が、それを教えてくれます。聞き直すときは、さきほどの三本の録音がそのまま使えます。語尾のあとに余白が残っているのはどれか、という一点だけで聞き比べてみてください。

短い言葉に広げて、同じ条件で確かめます

名乗りに慣れたら、「お待たせいたしました」「かしこまりました」のような、電話でよく使う短い言葉でも同じ三通りを試してください。短い言葉ほど、入りと語尾の癖が隠れずに出ます。保留明けの再開の一言は、名乗りの次に揺れやすい場所です。

回数を増やすことより、条件をそろえることを優先してください。崩れた条件のまま回数だけ重ねると、喉で押す癖がかえって固まります。一回ごとに見るのは一つだけ。息か、喉か、語尾か。全部を同時に直そうとすると、声が作り物になっていきます。

周りに人がいて練習しにくい職場なら、昼休みの空き会議室や帰宅後でかまいません。練習する場所より、同じ一文と同じ手順を守り続けることのほうがずっと大切です。

震えが残る日も、最後まで言い切れれば足ります

体調が悪い日や極度に緊張している日は、揺れが普段より強く出ます。そういう日は練習で克服しようとせず、用件を短くまとめて早めに切り上げる工夫のほうが現実的です。喉に痛みや強い違和感がある日は、発声の練習を増やさず、水分と休息を優先してください。長引く場合は専門家への相談も選択肢に入れてください。

電話を切ったあとにどっと疲れが出る人も、喉で押す癖を疑ってください。一本ごとの負担は小さくても、喉頼みの発声は積み重なります。息に乗せる名乗りへ変わると、電話が続く日の夕方の疲れ方まで変わってきます。

目指すのは、震えを完全に消すことではありません。震えても最後まで言い切れる状態です。先ほどの「お世話になっております、奥津です。」が、三通りのどれかで最後まで揺れずに置けたなら、その時の条件を覚えておいてください。明日の一本目の電話は、その条件から始められます。

よくある質問

Q. 電話 声が震えるの原因は何ですか
声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
Q. すぐできる練習はありますか
短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
無料動画講座

声が変わると、人生が変わる。

通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。

登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
関連記事