動画撮影で声が薄く聞こえる原因。カメラ前でも届く声の作り方

動画撮影で声が薄い、こもる、説得力が出ない原因を、マイクより先に息・体・語尾から整理します。

奥津ユキ

撮った動画を見返すと、自分の声だけが薄くて弱い。マイクや声質を疑う前に、レンズの前で顎が上がり、息が止まっていないかを確かめてください。

腕のすき間を作って体の縮みを外す

画面に向けた導入として、「ここから、申請の流れを順にご説明します」と、同じ条件で二度声に出してみてください。一度目は上腕の外側を胴体の脇に寄せたまま、二度目は上腕と胴体の間を指二本分だけ離します。文、声量、速さ、高さ、カメラの高さ、立つ位置、照明、口の形はそろえ、変えるのは上腕と胴体のすき間だけです。正面の鏡で、最初の「ここから」を言うとき、胸元のシャツの縦じわが中央に集まるかを見てください。腕の前後の位置も、二度とも胴の横でそろえます。鏡の高さも、二度とも同じ位置に固定します。

二度目は上腕のすき間だけを作り、同じ文を同じ条件で言います。私がこの場面でまず確認したいのは、声を出す直前の気分ではなく、「ご説明します」まで進んだときに胸元のしわがどこへ集まるかです。脇に寄せた一度目だけで中央へ集まり、すき間を作った二度目で散るなら、画面の前で腕が胴へ密着する形が、体の縮まりに関わっているということが起こります。中央のしわが首元まで伸びるか、胸の途中で止まるかも比べます。二度のしわの位置が同じなら、腕のすき間には差がありません。差が出なければ、別の原因としてカメラの置く高さ、または背景との間に残した空間を確認する段へ進みます。

薄さの正体は、声帯の生まれつきではなく振動です

声が薄いと感じると、声帯そのものが薄い・弱いからだと考えがちですが、実際はそうとも限りません。響きを左右するのは声帯の厚みより、声帯がしっかり共鳴して震えているかどうかです。生まれ持った形を気にするより、いま出している声が十分に振動しているかを確かめるほうが先です。

振動しているかどうかは、録音を聞く前に体でも確かめられます。鎖骨のあたりに手のひらを当てて一文を言い、手に響きが返ってくるかを見てください。手に届かない響きは、マイクにも薄くしか届いていません。

マイクに近づいたり声量を上げたりして薄さを埋めようとするのも遠回りです。無理に張ると喉の奥に力が集まり、次のカットではさらに出しにくくなります。ワンカットだけ強く聞こえても、テイクを重ねるうちに続かなくなります。薄い声を編集で持ち上げるのも同じで、音量は上がっても質感は薄いままです。息のノイズや部屋の反響まで一緒に持ち上がるので、かえって聞きづらくなることさえあります。

相槌のない一人撮りでは、息から先に痩せます

対面の会話なら、相手の相槌に合わせて呼吸が自然に続きます。カメラ一台に向かって話すと、その手がかりがなくなり、息を止めたまま声を出していても自分では気づけません。声より先に息が痩せ、その息の上に乗る声も痩せる。これが一人撮り特有の順番です。

台本を目で追いながら話す人は、さらに息が細くなります。目線が文字に固定されると、呼吸の切れ目が文の意味ではなく、行の折り返しに支配されるからです。一文ぶんだけ頭に入れて、レンズを見て言い切る。この単位で撮ると、息は文に沿って流れるようになります。

だから撮る前に作るのは、深い吸気ではなく短く吐く流れです。吸い込みすぎれば胸と肩が上がって固まります。喉は、締めずに出せる小さな声を先に確かめます。体は、足の裏を床につけ、首の後ろを詰めないこと。この三つがそろってから、レンズに向かってください。

画面に映る自分の顔を見ながら話すのも、薄さを助長します。表情の確認に意識が向くと、息の監視が留守になるからです。撮影中に見るのはレンズ、映りの確認は撮り終えてから。この分担だけでも、息の続き方は変わります。

撮る直前の三段階で、押す声か乗る声かを見分けます

本番の前に、一文を三段階に分けて準備します。はじめに口を開ける準備だけをする。続いて声を出さず、短く息だけを流す。仕上げに、その流れの上へ一文を乗せる。

喉で押しているときは、息の段階と声の段階が切り離され、声だけが急に立ち上がります。乗っているときは、息の音から声への切り替わりがなめらかです。この違いは、録音で聞き分けるより先に、やっている本人の喉の感覚で分かります。

三段階の準備は、テイクの合間に毎回はさんでも十秒かかりません。長い発声練習を撮影前に一度だけやるより、短い準備を毎テイクの前に置くほうが、後半のカットの薄さを防げます。

素材の聞き返しは、入り・息・語尾の順だけです

撮った素材を、声の好みで採点しないでください。確認は三つの順番で足ります。入りで言葉が急に飛び出していないか。途中で息が止まって声が固まっていないか。語尾が放り出されず、最後の一音まで残っているか。テロップや BGM を足す前の素の音声で聞くことも重要です。編集後の音に慣れると、収録時の癖はどんどん見えなくなります。

語尾の先も聞きます。言い切った直後に半拍の沈黙を置き、その間に喉の力み、息の残り、肩の高さを確かめてください。カットの終わり際に出る癖は、話している瞬間の音だけでは見つかりません。語尾まで息が保てた一本は、短い言葉でも落ち着いて届きます。

三点のどれかが毎回同じ場所で崩れているなら、そこがあなたの癖です。癖の場所さえ分かれば、撮る前の準備をその一点に寄せられるので、確認の時間はどんどん短くなっていきます。

部屋やマイクを変える前に、直前の数秒を整えます

自宅では声がこもる、屋外では飛ばない、ピンマイクでは強すぎる。撮影環境ごとに悩みは違って見えますが、確認する場所は入り・息・喉・体・語尾で変わりません。環境ごとに対策を増やすより、同じ一文で同じ順番を確かめるほうが、どの現場にも持ち込めます。

自宅で撮る人は部屋の反響を気にしがちですが、反響そのものが薄さの主因になることは多くありません。反響を気にして声を抑え、その抑えた声が薄く録れている、という順番のほうがよくあります。抑えるべきは声量だけで、息の速さは保つ。この区別ができると、夜の自宅でも撮影を続けられます。屋外では風の音に負けまいと張りがちですが、張った声は硬く録れて、かえって細く聞こえます。屋外こそ息の流れを保ったまま、声量は控えめのほうが太く残ります。

崩れの多くは、録画ボタンを押す前の数秒で起きています。焦って構える。息を吸ったまま止める。肩がせり上がる。この状態で本番に入った素材は、あとから編集で直せません。慣れてきたら、声の大きさではなく、レンズの向こうにいる視聴者の手前に言葉を置く感覚へ意識を移してください。強く投げるのではなく、息の流れで前に置くと、張らなくても厚みが安定します。

撮り直しの回数より、次のカットへ残す条件です

何度撮り直しても変わらないときは、才能ではなく撮影前の条件がずれています。急いでカメラの前に立った。明るく見せようとして喉が上がった。語尾を聞き終える前にカットを切った。同じ崩れ方のまま本数だけ積むと、喉で押す癖がむしろ根付いていきます。

一本ごとに見るのは一点だけにしてください。息か、喉か、語尾か。喉が軽く、語尾まで残った一本が撮れたら、その時の体の条件を次のカットへそのまま持ち込みます。

長尺を一気に撮る日ほど、後半のカットから薄くなっていきます。二十分を超える撮影では、途中で一度立ち上がり、足裏と首の後ろを確かめ直してから再開してください。薄さは疲労の自覚より先に、姿勢の崩れとして音に出ます。喉に痛みや強い違和感がある日は撮影を詰め込まないでください。休む判断も、撮影の一部です。

語尾まで届いた一本が、撮れ高になります

動画の説得力は、一度だけ張り上げた強い声からではなく、軽い声を安定して繰り返せることから生まれます。仕上げに、「今日は、この方法を三つに分けてお伝えします。」を、今度は顎を支えずにもう一本だけ撮ってください。手を添えなくても芯が残っていれば、体が新しい形を覚え始めています。

冒頭の挨拶や締めの一言など、実際の動画で使う短いフレーズにも、同じ確かめ方をそのまま持ち込めます。短いフレーズほどごまかしがきかず、入りと語尾の癖が正直に出ます。

動画は撮ったあとも残り続けます。何年か後に見返して恥ずかしくないのは、頑張って張った声より、語尾まで落ち着いて届いている声のほうです。薄さが消えた一本を基準にして、次の撮影を始めてください。

よくある質問

Q. 動画では普段より声が薄く聞こえるのはなぜですか?
撮影中に自分の声を小さく抑えると、カメラの前では遠慮した印象が残りやすいです。私は音量を無理に上げるのでなく、最初の一音から息の出だしを曖昧にしない方法を勧めます。
Q. 編集で低音を足せば、薄い声は改善できますか?
編集で低音を足しても、息漏れの多い発声そのものは補いきれません。薄さが気になる場合は、話し始めの「は」「さ」で空気を出しすぎていないかを先に見直してください。
Q. 録画した自分の声が細く感じるとき、発声を変えるべきですか?
録画の自分の声が普段より細く感じても、骨伝導で聞く自分の声との差が影響している場合があります。すぐに作り声へ変えず、内容が聞き取れるかを基準に調整していきましょう。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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