·プレゼンの声

プレゼンで声が震える原因と対策。メンタルではなく筋肉から整える方法

プレゼンで声が震える原因は、メンタルではなく筋肉です。本番3分前にできる対策2つから、前日・1週間かけてやる本格対策まで、ボイストレーナーが時間軸別に整理しました。

奥津ユキ

役員会議の最終プレゼンで数字の効果を語る場面になると、声が震える人がいます。震えそのものを気合いで止めようとしがちですが、震えは緊張を感じた瞬間に息を止めてしまう体の反応です。止めようとするほど喉に力が入り、震えはかえって増幅します。

提案の一文を録音して、震えの出どころを聞きます

次の一文を、実際に立って話す時と同じ姿勢で録音してください。

「この提案の想定効果は、年間で950万円のコスト削減です」

これを緊張して息を止めたまま出そうとすると、最初の音から震えが乗ります。反対に、最初の音の前に短く息を吐き、「950万円」の前で少し待てて、最後の語尾まで息が残っていると、多少の震えがあっても内容はきちんと伝わります。聞く場所は三つです。最初の音が震えて小さく入っていないか。「950万円」の前に間があるか。「削減です」の語尾まで息が保たれているか。震えを完全にゼロにする必要はなく、聞き手が気にするのは震えそのものより、声が止まる、急に早口になる、語尾が消えることのほうです。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

震えて聞こえる声も、生まれ持った性質だけで固定されているわけではありません。息の流し方、喉の力み具合、体の構え、語尾の残し方、間の置き方——ひとつずつ整えるだけで、相手に伝わる印象は変えられます。

震えは気持ちの弱さではなく、息の止まり方に出ます

声の震えは気持ちの弱さの表れだと思われがちですが、実際はそうとも言い切れません。同じくらい緊張していても、声帯を締め気味に使う人と、伸ばすように使う人とでは震え方がまるで違います。私がレッスンで見ているのは性格ではなく、息の出し方と喉まわりの筋肉の使い方のほうです。

もちろん、声量や声色がまったく関係ないわけではありません。ただ、震えを気合いで直そうとすると、喉で押した声になりやすいです。強く出したつもりでも、聞き手には硬い、無理をしている、余裕がない声として届くことがあります。私なら、震えを消すことより、震えても第一声を短く置くことを先に見ます。声を出す前に息が止まっていないか。最初の一音を喉で押していないか。「950万円」の前で吸い直して力んでいないか。語尾の前で息が終わっていないか。この四つのどこかが崩れると、声はさらに震えて聞こえます。性格の弱さの問題にする前に、体で起きていることを分けて見てください。

堂々と振る舞う直し方は、かえって震えを目立たせます

役員会議で声が震える場面でやりがちな失敗は、震えを根性で消そうとすることです。無理に大きな声を出して堂々と振る舞おうとすると、それが自分へのプレッシャーになり、虚勢を張ることで結局また震えが出てしまいます。声を張って自信があるように装う必要はなく、そこまで無理をする必要もありません。

意識してゆっくり話すことで震えをごまかそうとする人もいますが、これも逆効果になりやすいです。ゆっくり話すほど一音一音が伸びて、震えている時間そのものが長く聞こえてしまいます。むしろ、要点の言葉だけは少しテンポよく話したほうが、震えは目立ちにくくなります。低く作って落ち着いて見せる、明るく作って余裕を演じる。どちらも一時的には震えが隠れたように感じますが、体の準備が変わっていないと、緊張度が上がった瞬間にまた戻ります。役員会議で必要なのは、震えを隠す声ではなく、震えても相手が受け取るべき数字を必要な順番で届ける声です。

本番3分前は、震えを止めるより30秒だけ息を整えます

本番直前に発声練習を長々と行うと、かえって喉が緊張でこわばることがあります。直前にやるべきことは、ごくわずかで十分です。私がよく伝えるのは、利き手でそっと顎の下に触れておくことです。緊張すると顎が上がって喉が締まりやすくなるので、指先で軽く触れているだけで、顎が浮いていないかを自分で確かめられます。

はじめに、口を閉じたまま息を一度吐き切ります。続けて、肩をすくめないよう気をつけながら、短く息を吸い込みます。そのうえで、声には出さず「この提案の想定効果は、年間で950万円のコスト削減です」と口の形だけ動かしてみます。仕上げに、小さな音量で一度だけ実際に声にします。ここで確かめたいのは、震えが完全に消えたかどうかではありません。最初の音が抜け落ちていないか、喉で無理に押していないか、語尾まで息がもっているか。この三点だけを見ます。

腹圧を保つと、緊張の中でも声がぶれにくくなります

声が震えやすい人には、お腹を常に張ったまま話す準備が効きます。吐く時だけでなく、吸う時にもお腹の圧を抜かないようにすると、緊張で喉が締まっても声そのものは支えられたままになります。横隔膜のあたりを前へ細くつまみ出すような感覚を保っておくと、長く話す場面でも息が続きやすくなります。

震えが強く出やすい人には、いきなり地声を張るより、ウィスパーに近い息多めの発声で長めに慣らしてから、少しずつ声量を戻す練習が向いています。無理な張り上げを避けたまま体を慣らすほうが、本番の震えは抑えやすくなります。腹圧をかける準備は、当日いきなり意識しても間に合いにくいものです。前日までの数日、椅子に座った状態で息を吸う時も吐く時もお腹の張りを緩めない練習を短時間繰り返しておくと、本番でその感覚を呼び戻しやすくなります。

震える体のチェックは、喉だけでは足りません。足の裏がしっかり床に接しているか。会場にいる大勢の視線を意識しすぎて、胸まわりが縮こまっていないか。顎が前に出たり、首の前側が固まったりしていないか。この三か所も、喉と合わせて確認してください。

震えたまま話す例と、震えても届く例を比べます

震えたまま話す例は、先ほどの一文を一息で押し切る話し方です。このように語尾で息が切れると、震えを我慢して話し切っても、最後だけ落ち着きのない印象が残ります。声を張っても、語尾の手前で息が尽きていれば結果は変わりません。

震えても届く例は、震えを消すことではありません。同じ一文の前に短く息を入れます。「950万円」の前でほんの少し待ちます。最後の音まで息を残します。やることはそれだけです。震えを完璧に消す必要はなく、聞き手が受け取るべき数字を、置く場所に置く。役員会議で声が震える場面では、この感覚が大切です。本番中に震えが強くなっても、その場で完全に立て直そうとしなくて構いません。話している一文を短く区切り、語尾まで言い切り、それでも収まらなければ次の文へ移る前にひと呼吸分の間を置きます。この間は黙り込むこととは違い、聞き手に言葉を受け止めてもらうための時間です。

週単位の練習は、目の前の一文から積み上げます

毎日たくさんの時間を練習に充てる必要はありません。今日の本番で実際に使う一文をひとつだけ選び、まず普段のまま録音します。聞き取る場所は、最初の音、「950万円」の手前、そして語尾の三箇所です。続けて同じ一文をもう一度録音し、今度は震えが出やすい最初の一音だけを短く整えることに意識を絞ります。三回目の録音では、語尾を残すことだけに集中します。

本番で使う言い回しも、あらかじめ三つだけ用意しておくと安心です。提案の効果を切り出す言葉、根拠に触れる言葉、判断を仰ぐ言葉。この三つを短く決めておけば、話しながらその場で次の言葉を探して呼吸が止まる場面が減ります。長い言い回しほど緊張した瞬間に震えて崩れやすく、短い言い回しのほうが本番中でも立て直しやすくなります。声を鍛える目的は震えを完全に消し去ることではなく、役員会議のような場面でも自分の言葉をきちんと届けられるようにすることです。

950万円の一文は、今日の一拍から届き方が変わります

役員会議で本当に必要なのは、緊張を完全にゼロへ持っていくことではありません。相手が聞き返す必要のない、そのまま受け取れる声です。冒頭で何を発するか、どこに一拍を挟むか、どの数字を相手の記憶に残すか。この並びさえ決まっていれば、多少の震えが残っていても声は無理なく落ち着きます。今日録音した一文を、次にその場に立つ前にもう一度思い出してみてください。震えを敵視するのをやめた分だけ、本番で声を前へ出す余裕が生まれます。

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よくある質問

Q. プレゼンで声が震える原因は緊張だけですか
緊張だけではありません。息が止まる、喉で押す、原稿を一息で読もうとするなど、体の使い方も大きく関係します。
Q. プレゼン前に一番練習すべき一文は何ですか
「本日は、3点に分けてお話しします」のような冒頭の定型文です。最初の一文が安定すると、その後の流れも作りやすくなります。
Q. 声の震えは聞き手にバレますか
多少の震えより、止まる、早口になる、語尾が消えることのほうが伝わり方に影響します。震えを消すより声を前に進めることが大切です。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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