声が上ずる原因。緊張して高くなる声を落ち着かせる方法

緊張すると声が上ずる人へ。声が上ずる原因は、高い声そのものではなく、息が止まり喉で支えようとすることにあります。 プレゼン、面接、会議、電話で聞かれる声を、第一声・息・区切り・語尾・録音チェックから整える方法を解説します。

奥津ユキ

声が上ずったと感じた時、私はまず生徒さんの性格を疑いません。見るのは、名前を呼ばれてから最初の一言を出すまでの数秒間に、息と喉と体がどう動いていたかです。

面接官の前で、最初の一言を録音してみます

ノックをして入室し、面接官が手元の履歴書からふと顔を上げ、「では自己紹介をお願いします」と言われた直後の数秒。ここで最初の一言が上ずる人が一番多く、私はまずこの数秒だけを録音してもらいます。相手がペンを構えたまま待っている沈黙は、実際の時間より長く感じられるものです。

次の一文を、実際に面接で話す速さで一度だけ録音してください。

「前職では、法人営業を三年ほど担当しておりました」

聞き返すときに上手いかどうかは判定しないでください。見る場所は三つだけです。出だしの「前職」が小さく沈んでいないか。「法人営業」という重要な語の手前にわずかでも間があるか。急ぐと、いちばん伝えたい経歴の言葉ほど流れてしまいます。そして語尾の「おりました」が消えていないか。強く言い切る必要はなく、最後の一音まで息が残っていれば十分です。

低く作るほど、喉は締まっていきます

声が上ずると、多くの人はとっさに低い声を作ろうとします。ですが、緊張で喉が締まっているところへさらに低さを足そうとすると、声帯は平行に締まったまま高い音を出そうとする形になり、かえって震えたり裏返ったりします。私が生徒さんに伝えているのは、締める感覚ではなく、声帯を前へ少し伸ばす(斜めにする)感覚に持ち替えることです。

低く作る、明るく作る、大きく張る、ゆっくり読む。面接前にこの手のことを試す人は多いのですが、どれも体の準備という土台が変わっていなければ、質問に答え始めた瞬間に元の状態へ戻ってしまいます。声が上ずると自信がない人だと思われがちですが、実際は緊張がそのまま体に出ているだけということがほとんどです。

もう一つ見落とされがちなのが、声帯の締め方には二つの寄り方があるという点です。締めすぎて上ずる人がいる一方で、逆に力が抜けて息漏れ気味になり、頼りない声に聞こえる人もいます。どちらに寄っているかは人によって違うので、闇雲に「もっと力を入れる」「もっと力を抜く」と自己判断すると、かえって遠回りになることがあります。まずは自分がどちら寄りかを、録音した声の硬さで確かめてみてください。

見るべきなのは声質ではなく、話し始める前に息が止まっていないか、出だしの一音を喉で押していないか、重要な語の前で吸い直せているか、語尾の前で息が尽きていないかの四点です。この四か所のどこかが崩れると、声は上ずって聞こえます。

上ずりは気持ちの弱さだと思われがちですが、私の実感では筋肉の使い方の問題です。緊張すると喉まわりの筋肉がこわばりやすくなるのは事実ですが、こわばった状態でも声帯を伸ばす感覚さえ保てれば、気持ちが落ち着いていなくてもほぼ同じ高さの声が出せます。だからこそ、面接直前の数分でメンタルを整えようとするより、体の使い方を一点だけ決めておくほうが再現性があります。

腹に圧をかけたまま話すと、震えは収まります

面接官の視線を感じた瞬間、多くの人は無意識にお腹の力を抜いてしまいます。力が抜けると喉だけで声を支える形になり、そこへ緊張が乗ると上ずりや震えが出やすくなります。お腹を膨らませたりへこませたりする呼吸法ではなく、吐くときも吸うときも軽い圧をかけ続けたまま話す。これだけで喉の負担はかなり減ります。

自宅で試すなら、手で軽く顎の下を押さえ、顎が上がらないようにしながら先ほどの一文を声に出してみてください。顎が上がると喉が締まりやすくなるので、顎を固定したままお腹に圧をかけて話すと、喉の締まりが抜けた状態を体で覚えられます。

もう一つ体感しやすいのが、横隔膜のあたりを前へ軽くつまむような感覚を保つ方法です。息を吐くときだけでなく吸うときもこの感覚を抜かないでおくと、長く話し続けても喉だけで支えずに済み、逆質問への回答のように答えが長くなる場面でも声が持ちこたえやすくなります。

集団面接や逆質問でも、同じ数秒が勝負です

一対一の面接だけでなく、複数の応募者が並ぶ集団面接や、最後に「何か質問はありますか」と振られる逆質問の場面でも、上ずりやすいのは話し始めの数秒であることに変わりはありません。他の応募者の受け答えを聞いている間に息が浅くなり、自分の番が回ってきた瞬間に息を止めたまま声を出してしまう人が多いのです。

順番を待っている間にできることは一つだけです。自分の番の少し前で、一度だけ口を閉じて息を吐き切っておいてください。話す内容を頭の中で組み立てるより、この一呼吸を確保するほうが、実際の声の上ずりには効きます。

面接室に入る前の30秒

入室直前にみっちり練習を詰め込むと、かえって気持ちがそわそわします。直前にやることは少なくて十分です。口を閉じたまま息を一度吐き切り、肩を上げないよう気をつけながら短く吸い直します。それから、声を出さずに自己紹介の第一声を口の形だけ動かし、最後に小さな声で一度だけ実際に言ってみます。

ここで確かめるのは声の大きさではなく、出だしが欠けていないか、喉に力が入っていないか、語尾まで息が届いているかという三点です。控室に鏡があれば、口を大きく開けようとするより、口角を軽く上げるだけにしてください。無理に口を大きく動かそうとすると顎に余計な力が入り、かえって出だしの音が硬くなります。

質問に答えている途中で上ずったら、その場でこう戻します

面接は自己紹介だけで終わりません。志望動機や逆質問への回答中に声が上ずっても、すべてを一度に直そうとしないでください。まず話していた一言を短く区切り、語尾まで言い切ります。それでも整わないなら、次の一言の前にひと呼吸分の間を置いてください。この間は沈黙の失敗ではなく、面接官へ言葉を渡すための時間です。焦って次を重ねるほど、声はさらに浅くなっていきます。区切る、語尾を残す、間を置く。用意しておくのはこの三つだけです。

足元と胸の向きも、声の入り口です

声が弱いと感じると、つい喉に手を加えたくなります。ただ、喉に力を込めても声は安定しません。面接室の椅子に浅く座ると、足裏が床から浮きやすくなります。まず足裏がしっかり床に乗っているかを確かめてください。体が浮いていると、息も一緒に浮いてしまいます。

次に胸の向きです。面接官の資料や視線に気を取られると胸が閉じ、声が前へ向かいにくくなります。最後に顎と首の状態です。顎が前に出たり首の前側がこわばったりすると、出だしの音を喉で押しやすくなります。高さを整えるには、喉単体ではなく体の向きと息の入口の両方に手を入れる必要があります。

椅子に座る前、控室で一度だけ立ったまま姿勢を確かめておくのも有効です。座った状態では自分の姿勢の崩れに気づきにくいので、立っているうちに足裏と胸の感覚を覚えておき、着席後もその感覚を保つよう意識してください。

同じ一言を、面接前夜にもう一度だけ録音します

「前職では、法人営業を三年ほど担当しておりました」

先ほどの一文を、今度は出だしの音だけを少しはっきり入れることを意識してもう一度録音してみてください。ほかは変えません。次に語尾だけを意識してもう一度話します。全体を良くしようとするより早く、上ずりやすい場面で使う声そのものが変わっていきます。仕事の声は理屈だけの発声練習では本番に移りにくく、実際に使う言葉で整えるからこそ現場で出せる声になります。

録音を聞き返すときに、自分の声そのものを好き嫌いで判定しないでください。頭の中で鳴っている声と、実際に相手へ届いている声はそもそも違うものです。判定材料にするのではなく、出だしの一音・重要語の前の間・語尾という三か所だけを、地図を確認するように聞いてください。

上ずりは性格の癖ではなく、名前を呼ばれてから最初の一言を出すまでの数秒間にある息の癖です。面接室のドアを開ける前に、今日決めた一言だけを整えておいてください。

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よくある質問

Q. 声が上ずるのは緊張のせいですか
緊張そのものより、緊張で息が止まり喉が締まることが直接の原因です。喉が締まると声帯が引き上げられ、意図しない高さに上がります。
Q. 低い声を作れば上ずりは直りますか
喉で低い声を作るのは逆効果です。作った低さは長く続かず、崩れるとさらに上ずります。高さを操作するより、息を流して喉の締まりを外すほうが先です。
Q. 本番前に何をすればいいですか
口を閉じたまま息を一度吐き切り、肩を上げずに短く吸い直してください。最初の一文を小さな声で一度だけ出しておくと、本番の第一声が上ずりにくくなります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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