動画ナレーションの声。説明が単調に聞こえない話し方

ビジネス動画や教材動画のナレーションで声が単調、聞きにくい人へ。録音で内容が伝わる声色、間、重要語の置き方を解説します。

奥津ユキ

動画ナレーションの声で聞き手が離脱しやすい人は、収録した音源をそのまま聞き返してみてください。声質や話し方の性格ではなく、操作手順を説明する一文の前後で息・喉・体・語尾が崩れていることがほとんどです。

ナレーションの印象は、収録前の30秒で決まります

画面を見ながら台本を読むナレーション収録は、対面の会話と違って相手の反応が返ってきません。だからこそ、自分の声だけで理解の速さが決まります。第一声の前の息、喉の力み、モニターに向く体の向き、語尾の残り方がそのまま視聴者の聞きやすさになります。

まず、この場で確かめてください。スマホで次の一文を録音します。

「この動画では、操作手順を説明します」

一回目は台本読みの勢いのまま流します。二回目は、話し始める前に短く息を吐いてから同じ文を読みます。聞き比べると、一回目は内容まで軽く扱われているように聞こえ、二回目は出だしの一音がきちんと入り、同じ原稿でも受け取り方が変わっているのに気づきます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声の説得力は生まれ持った声質だけで決まりません。収録前の息の使い方と、語尾の置き方で聞かれ方は変わります。

台本を正確に読むことは、意味を届けることと同じではありません

動画ナレーションでよくあるつまずきは、台本を間違えずに読み上げることをゴールにしてしまうことです。もちろん声色や滑舌もゼロではありませんが、そこから直そうとして声を張ると、喉で押した音になりがちです。本人は力を入れたつもりでも、視聴者には硬く余裕のない声として届きます。

私が収録前に見るのは、声を出す前に息が止まっていないか、最初の一音を喉で押していないか、伝えたい語の手前で呼吸を吸い直していないか、語尾の手前で息が尽きていないか、この四点です。このどれかが崩れると、声は薄く弱く聞こえます。台本のせいにする前に、収録直前の体の準備をここで分けて確認してください。

在宅でヘッドセットマイクを使う収録では、画面に近づきすぎて前かがみになる人が多く、その姿勢のまま長く話すと胸が閉じ、語尾から先に息が尽きていきます。モニターとの距離を一定に保ち、椅子に深く座り直すだけでも、四点のうち息と語尾の崩れはかなり減ります。

録音は、この四点だけを聞き分けます

さきほど録音した音源を、うまく読めたかどうかでは判断しないでください。聞く場所は先ほどの四点と同じです。出だしの音が小さく入っていないか。重要語の手前にわずかな間があるか。急いで読むと、いちばん残したい言葉ほど流れてしまいます。重要な語だけ急に声を張り上げれば注目される、と思われがちですが、私の感覚ではそこだけ音量を上げると視聴者が驚くだけで、内容はかえって残りません。声の大きさより、その手前の間と高さの変化で気づかせるほうが自然です。そして語尾です。「です」「ます」「します」が消えると、内容は正しくても頼りない印象になります。

崩れた読みは、一文を一息で流してしまう話し方です。内容は合っていても、語尾の手前で息が尽きていれば印象は弱いままです。整った読みは全部を強く読むことではなく、一文の前に短く息を入れ、重要語の手前でほんの少し待ち、最後の音まで息を残すことです。大げさに演じる必要はなく、視聴者が受け取るべき言葉を、置くべき場所に置く。ナレーションではこの感覚がすべてです。

収録した自分の声には最初は違和感があります。自分の頭の中で響く声と、マイクを通して相手に届く声が違うからです。でも録音は嫌な声を責めるための道具ではなく、直す場所を切り分けるために使います。好きな声かどうかを判断し始めると、練習が止まります。

ナレーションでやってはいけない直し方

声だけを作り込む直し方は避けてください。低く作った声も、明るく作った声も、大きく張った声も、わざとゆっくり読んで整えたつもりの声も、収録の瞬間だけは変わったように感じますが、収録前の準備が変わっていないと本番の途中で元に戻ります。とくに喉で低く作った声、押して張った声、遠慮して小さくした声は、語尾が真っ先に消えます。動画ナレーションに必要なのは作った声ではなく、視聴者が受け取るべき言葉を、必要な順番で届ける声です。

喉に力が入りやすい人ほど、収録前に「喉を開けよう」と喉ぼとけを下げにいきますが、これは私の実感では逆効果です。下げるほど声帯がたわんで、かえって声が詰まりやすくなります。開けたいのは喉ぼとけではなく、口の奥の上側、軟口蓋のほうです。上を軽く持ち上げるつもりで声を出すと、同じ息の量でも通る声になります。そのために、最初の一文を短く区切り、重要語の手前で一拍置き、最後の音まで息を残します。これだけで収録した声の印象はかなり変わります。

本番前は、30秒だけ整えます

収録直前に長く発声練習をすると、かえって焦りが出ることがあります。直前にやることは少なくて十分です。マイクの前で一度だけ、息を吐き切ってから短く吸い直し、声には出さず冒頭の一文を口の形だけでなぞり、控えめな声量で実際に一度声にしてみてください。ここで確かめるのは声の大きさではなく、出だしの音が欠けていないか、喉で押していないか、語尾まで息が残っているかの三点だけです。

体の準備は、マイクの前でも同じです

声が弱いと、つい喉を直したくなります。けれど喉に力を入れても声は安定しません。まず、椅子に座っていても足裏が床についているかを見ます。体が浮くと息も浮きます。次に、胸の向きです。資料や画面、台本の文字に意識が向くと胸が閉じ、声は前に出にくくなります。最後に、顎と首です。顎が前に出たり首の前側が固まったりすると、出だしの一音を喉で押しやすくなります。重要語や間の扱いを整えるには、喉だけでなく体の向きと息の入り口を整える必要があります。

収録の崩れは、決まって三つ重なります

動画ナレーションの声が崩れる時、原因は一つだけではなく、たいてい三つが重なっています。話し始める前に息が止まること。伝えたい言葉ほど間を取るのが怖くなり、結果として本来強調したい部分が一番早口になること。そして原稿を言い終えた安心から、最後の「です」「ます」が小さくなることです。この三つは性格の弱さではなく、出だし、息、喉、体の向き、語尾を順に見れば修正できます。

収録中に声が崩れたら、全部をやり直そうとする必要はありません。まず一文を短く切り、語尾まではっきり言い切ります。それでも整わないときは、次の文へ移る前にひと呼吸だけ間を空けてください。この間は沈黙ではなく、視聴者へ言葉を渡すための時間です。焦って次の文を重ねてしまうほど、声はかえって浅くなっていきます。崩れた瞬間に立て直す方法を持っているだけで、収録本番の安心感が変わります。

今日収録する一文から、練習を始めます

毎日長く練習する必要はありません。今日収録する一文を一つだけ選び、これを一回録音します。聞く場所は出だしの音、重要語、語尾です。次に同じ一文をもう一度録音し、二回目は出だしの音だけを少しはっきり入れます。三回目は語尾だけを残すことに意識を集中します。抽象的な発声練習だけでは本番に移りにくく、実際に使う一文で整えるからこそ現場で出せる声になります。

収録で声が崩れる人は、話しながらその場で言葉を探していることが多く、言葉を探しながら話すと息が止まり、声は喉に集まります。そこで、冒頭で使う言い回し、要点を示す言い回し、次の画面に移る言い回しの三つだけを、あらかじめ台本の脇に書き添えておきます。「このあと、画面の切り替えに合わせて説明します」「ここは、あとで見返してほしい部分です」「次の画面に進みます」。この三つが手元にあれば、声を出す前に話の流れが決まっている状態になります。

収録の最後にもう一度、次の一文を録音して聞き直してください。

「この動画では、操作手順を説明します」

出だしの音が入る、重要語の手前で一拍置ける、語尾が消えない。このうちどれか一つが達成できれば、声の印象はそれだけで変わります。視聴者に必要な言葉を過不足なく渡せる状態を、収録のたびにこの一文で作ってください。

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よくある質問

Q. 動画 ナレーション 声で最初に確認することは何ですか
声量ではなく、話し始める前の息、重要語の前の間、語尾まで声が残っているかを確認してください。
Q. 強く話せば印象は良くなりますか
強く押すと喉が固まり、かえって聞き取りにくくなることがあります。息と間を整えることが先です。
Q. 本番前にできる練習はありますか
実際に使う一文を録音し、出だし、間、語尾の三つだけを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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