·プレゼンの声

ウェビナーの声。画面越しに飽きられず聞かれる話し方

ウェビナーで声が単調になる人へ。画面越しでも飽きられず聞かれるための声色・間・重要語の置き方を解説します。

奥津ユキ

「ウェビナーで話していると、声がだんだん平らになっていく気がする」というご相談を、配信を担当する方からよくいただきます。原因は話術の不足ではなく、参加者の反応が返ってこない画面の前で、体がどう構えているかにあります。

開始直後の一言を録音して、聞き手の前でどう響くか確かめます

長い原稿を丸ごと確かめる必要はありません。配信の冒頭で必ず口にする、次の一文だけを録音してください。

「本日は最後まで、ぜひご視聴ください」

聞き直すときに、うまい下手は気にしないでください。見る場所は三つです。出だしの「本日」が小さく沈んでいないか。「最後まで」に入る手前でひと呼吸置けているか。急ぐと、いちばん伝えたい言葉ほど流れてしまいます。そして語尾の「ください」が息切れして消えていないか。以降、この三点を出だし・間・語尾と呼びます。

配信の開始直後は、参加者の人数が画面の隅に表示されるだけで、顔も相槌も見えません。ギャラリー表示を切っている参加者も多く、話し手の画面に残っているのは進行中のスライドと、自分の小さなカメラ映像だけということも珍しくありません。挨拶のこの一文がいちばん聞き取られにくいのは、話し手が知らないうちに、反応を探して声を宙に浮かせてしまうからです。

反応が見えない配信で、声はなぜ平らになっていくのか

対面の説明会なら、うなずきや前のめりの姿勢が声の強弱を決めるヒントになります。ウェビナーではそのヒントがまるごと消えます。うなずきも、退屈そうな表情も、身を乗り出す気配も、画面越しには届きません。

手がかりを失うと、話し手は「ここは強めに」「ここは少し落として」という判断基準そのものを失い、全体を同じ調子で押し流すようになります。声量が足りないのではなく、声に強弱をつける根拠が見当たらなくなっている状態です。三十分程度の短い配信でも、開始から数分でこの傾向は始まります。長く話し続けて喉が疲れるという話とは別に、反応が見えないという条件だけで、声はすぐに平らになっていきます。資料の枚数が多い配信ほど、話し手はスライドを送る作業に意識を取られ、声への注意はさらに後回しになりがちです。

声色より先に、体の状態を三点だけ切り分けます

配信中によくある失敗は、聞き手の反応が見えないもどかしさを、声色や抑揚をあれこれ作り込むことで埋め合わせようとすることです。声の表情がまったく関係ないとは言いませんが、そこだけを頑張ろうとすると喉に頼った声になり、聞き手には硬さや余裕のなさとして伝わってしまいます。

私がまず点検してもらうのは、息を止めていないか、喉で音を押し出していないか、語尾まで声が残っているかという三点です。声を出す前に呼吸が止まっていないか。重要語に差し掛かる手前で余分に力んでいないか。文の終わりに届くまでに息が尽きていないか。このどこかが崩れると声は弱く平たく響きます。手応えのなさを声だけで補おうとする前に、体の状態としてこの三点に分けて見てください。

高さのレンジを広げる音読で、抑揚の土台を作ります

抑揚は間の取り方や言葉選びといった話し方のテクニックを鍛えれば身につくと思われがちですが、実際にはまず声の土台を整えるほうが近道です。その一つとして私が配信前によくすすめているのは、桃太郎のような昔話を、大きさでなく高さのレンジを意識して抑揚をつけながら音読する練習です。強く言おうとするのではなく、声が上下する幅を少しだけ広げるつもりで読みます。この感覚のまま冒頭の一文を読み直すと、抑揚を作り込まなくても平坦さが薄れていきます。

見えない反応への不安を、声のテクニックだけでどうにかしようとするのは避けてください。低く沈めて重みを出す、明るさを演出する、声量で押し切る、ゆっくり読んで間を稼ぐ。どの手段も一時しのぎにはなりますが、体の土台が変わっていなければ配信が進むうちに元通りになります。とりわけ手探りで作った抑揚、力任せの声、焦りを隠すための早口は語尾から崩れやすくなります。

配信直前、30秒でできる声の準備

本番前に長時間の発声練習を挟むと、かえって緊張が増すことがあります。直前に必要なのはごく小さな準備だけです。口を閉じたまま一度息を吐き切り、肩を持ち上げずに短く息を吸い、声には出さず先ほど録音した一文の口の動きだけをなぞり、最後に小さな声量で一度だけ実際に発声してみてください。

ここで見極めるのは音量の大小ではなく、最初の音が抜け落ちていないか、喉に頼っていないか、語尾まで息が保たれているかという三点です。座ったまま配信する人は、足の裏が床にきちんとついているかもあわせて確かめてください。体が浮くと、それにつられて息も浮ついてしまいます。

配信中に声が乱れても、直す場所はひとつに絞ります

配信の途中で声が乱れても、すべてを一気に立て直そうとしないでください。まずは今話している一文を短く区切ります。続けて語尾まで言い切ります。それでも整わない時は、次の文へ移る前にひと呼吸だけ間を挟みます。この間合いは沈黙ではなく、聞き手へ言葉を手渡す時間です。慌てて言葉を重ねるほど、声はいっそう浅くなっていきます。

崩れ方には決まったパターンがあります。話し出す前に息を止めてしまうこと、重要語の手前で急いでしまうこと、語尾のあたりで気持ちがほどけてしまうこと。この三つはたいてい同時に起きます。性格の弱さではなく、話し出す前のひと呼吸、重要語の手前の間、話し終えたあとの姿勢を見直せば直せる崩れ方です。乱れた瞬間にどう立て直すかを知っているだけで、配信中の落ち着きは大きく変わります。

参加者からの質問を読み上げる瞬間ほど、声の高さが揺れます

ウェビナーでは、チャットに届いた質問をその場で読み上げてから答える場面があります。「〇〇についてはどうですか、というご質問ですね」と切り出す瞬間、声のトーンが不自然に上がったり、逆に急に小さくなったりする人を見かけます。あらかじめ準備していた説明とは違い、その場で言葉を組み立てながら声を出すことになるからです。

読み上げの語尾が消えると、質問した参加者は自分の言葉が届いたのかどうか分からないまま次を待つことになります。対処はシンプルです。質問を読み上げる一文は、説明本編よりもさらにゆっくり短く区切り、語尾まで言い切ってから次の言葉に移ってください。それでも声が上ずったままなら、答え始める前にひと呼吸だけ間を置きます。この間は迷いの沈黙ではなく、聞き手へ「質問を受け止めた」と伝える合図になります。

画面の向こうまで残る声は、音量ではなく組み立てで決まります

自分の録音を聞くと、最初のうちはどうしても違和感が残ります。頭の中に響く声と、相手の耳に届く声はそもそも別物だからです。ただし録音の役割は声を採点することではなく、反応の見えない状況で自分がどこから崩れやすいかを洗い出すことにあります。耳を傾けるべきは、最初の音、重要語の手前の間、語尾、そして息が途切れる箇所の四つに絞ってください。

今日の配信で実際に使う一文をひとつだけ選んでください。

「本日は最後まで、ぜひご視聴ください」

まず一回そのまま録音します。次にもう一度録音し、二回目は最初の音をやや際立たせます。三回目は語尾だけを丁寧に残します。声全体を底上げしようとするより、この一文で調整するほうが、配信で使う声そのものが早く変わっていきます。

配信の場で必要なのは、舞台役者のような張り上げた声ではありません。姿の見えない相手にも、聞き手が聞き返さずに受け取れる声です。何から話し始めるか、どこで間を作るか、どの語を相手の記憶に置くか。この組み立てが定まれば、声を無理に作らずとも自然に安定していきます。聞き手が画面の前で最後まで残るかどうかは、資料の出来より先に、この組み立てで決まっています。配信ボタンを押す前の一文から、届き方は変わっていきます。

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よくある質問

Q. ウェビナー 声で最初に確認することは何ですか
声量ではなく、話し始める前に息が止まっていないか、最初の一音が詰まっていないか、語尾まで声が残っているかを確認してください。
Q. 大きな声を出せば改善しますか
大きく出そうとして喉で押すと、声が詰まったり軽く聞こえたりすることがあります。息の流れと語尾を整えることが先です。
Q. 本番前にできる練習はありますか
実際に使う一文をスマートフォンで録音し、出だし、間、語尾の三つだけを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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