·プレゼンの声

Zoomプレゼンの声。画面越しでも説得力が落ちない話し方

Zoomプレゼンで声が軽く聞こえる人へ。画面共有中の姿勢・第一声・語尾を整え、説得力を落とさない話し方を解説します。

奥津ユキ

画面共有のボタンを押した瞬間、話し手の姿は小さな枠に収まり、声だけが相手の手がかりになります。それなのに多くの人は資料の中身にばかり気を取られ、声そのものへの注意が薄れていきます。

共有ボタンを押した直後の一言を録音して、輪郭を確かめます

共有前は普通に話せていたのに、共有ボタンを押した瞬間から声が軽くなる。これはめずらしい現象ではありません。視線が資料に向くぶん、話し手自身も自分の声への意識を手放しやすくなるからです。

次の一文を、共有ボタンを押す直前のつもりで録音してください。

「それでは、資料を画面共有いたします」

聞き直すときに確かめる場所は三つです。出だしの「それでは」が小さく沈んでいないか。「画面共有」に入る手前でひと呼吸置けているか。語尾の「いたします」が息切れして消えていないか。資料に気を取られたまま急いで言うと、この一文は中身まで軽く聞こえます。息をひとすじ通してから言葉を乗せると、同じ一文でも輪郭がはっきりします。

資料に気を取られるほど、声への意識は薄れていきます

Zoomのプレゼンでは、聞き手の視線も自分の視線も、話し手の顔より先に資料へ向かいます。カーソルの位置、次のスライドへ切り替えるタイミング、数字の読み間違い。気にすることが増えるほど、声は後回しになります。画面共有中は自分の顔が小さなサムネイルに切り替わり、資料だけが大きく前面に出ます。話し手自身も、自分の声が今どう届いているかを確かめる手段をほとんど失った状態で話し続けることになります。

説得力は資料の完成度だけで決まるものではありません。声を出す前の息の流れと、語尾の残し方に、伝わり方は左右されます。マイクの性能を疑う前に、共有ボタンを押す前後のわずかな準備を見直してください。

マイクを疑う前に、言葉を置く感覚を見直します

Zoomで声が届かないと感じる人がまず疑うのはマイクの性能です。ただ、機材だけを直そうとしても、声の輪郭が変わらなければ聞こえ方は変わりません。マイクに声が乗らないなら口を近づけるか声を張るしかないと思われがちですが、実際は近づけすぎたり張り上げたりするとかえって音が割れ、聞き取りにくさが増すことがあります。

私が見ているのは距離よりも、話しながら顎が独立して揺れていないかという点です。顎が揺れるほどマイク越しの音は濁ります。顎の位置を動かさないまま、口の両端だけをわずかに動かして言葉を置く感覚に変えると、同じマイクでも輪郭がはっきりしてきます。ノートパソコンの内蔵マイクでも、外付けのヘッドセットでも、この顎の使い方そのものは変わりません。機材を買い替える前に、今の環境のまま顎を止めた状態と、いつも通り動かした状態を録り比べてみてください。差ははっきり分かるはずです。

先に確かめたいのは、共有に切り替わる前に息はすでに動いているか、伝えたい語の手前で息を吸い直さずに待てているか、文の終わりまで息が切れずに続いているかの三点です。

声を張っても解決しない、Zoom発表でありがちな応急処置

説得力が足りないと感じたとき、ついやってしまう対処があります。低めのトーンで重みを演出する。明るいトーンで親しみを出す。声量を上げて存在感を出す。一語ずつ区切ってゆっくり話す。どれも直後は多少変わったように感じられます。

ただしこれらは体の準備を変えないままの上塗りです。特に声量だけで押し切ろうとすると、語尾のあたりから真っ先に力尽きていきます。緊張が強い本番ほど、応急処置は元の状態へ引き戻されます。社内の少人数ミーティングでは気にならなかった小さな崩れも、参加人数の多いクライアント向けのZoomでは目立ちやすくなります。代わりに整えたいのは、言葉を置く順番そのものです。一文はできるだけ短く切る。伝えたい語の直前でひと息分の余白を作る。文末まで音を絶やさない。この並びが整えば、声色を作り込まなくても十分に届きます。

発表直前の三十秒でできる、体の準備

会議室へ入る前と同じで、Zoom発表の直前にもまとまった練習時間は取れないものです。手順は三段階だけです。唇を閉じたまま息をゆっくり吐き切ります。肩を持ち上げずに短く吸い直します。声を出さず、先ほど録音した一文の口の形だけをなぞり、最後に一度だけ小声で発音してみます。

見るのは声量ではありません。出だしの音が抜けていないか、そして語尾まで息が保たれているか。この二点さえ確認できれば十分です。座って発表する人は、足の裏が床から浮いていないかもあわせて見てください。画面をのぞき込む姿勢が続くと、体が浮いた状態のまま話し始めることになり、声もつられて浮ついてしまいます。

資料を切り替える瞬間ほど、語尾が消えやすくなります

次のスライドに移る操作をしながら話すと、意識がカーソルの動きに引っ張られ、直前の一文の語尾が置き去りになります。「以上が前半の内容です」の「です」が消えたまま画面が切り替わると、聞き手には話がまだ途中のように聞こえ、資料の変化にも気づきにくくなります。

対処は、切り替え操作と発声の順番を分けることです。まず語尾まで言い切ってから、クリックする。同時にやろうとするほど、どちらも中途半端になります。特に質疑応答から本編に戻る場面や、複数の資料を行き来する場面では、この切り替えと発声のタイミングがずれやすくなります。それでも発表中に声が崩れたと感じたら、話している一文を短く切り上げ、語尾までしっかり言い切ってください。それでも落ち着かなければ、次の一文へ移る前に半拍だけ止まります。この半拍は失敗の沈黙ではなく、聞き手が言葉を受け取るための余白です。崩れた瞬間にどう戻るかを一つ持っているだけで、資料の説明そのものへ集中し直しやすくなります。

通信の遅延を見越して、間は気持ち長めに取ります

対面の会議と違い、Zoomでは通信の遅延や相手の反応の見えづらさが重なります。だからこそ、伝えたい語の手前で取る間は、対面のときより気持ち長めを意識するとちょうどよく届きます。短すぎる間は、画面越しでは相手に届く前に次の言葉が重なって聞こえてしまうことがあります。

話す速度そのものを落とす必要はありません。要所要所の間だけを少し長めに取る。これだけで、資料と声の両方が、聞き手の頭の中で無理なくそろって届きやすくなります。参加人数が多い日ほど、この余裕が画面の向こうにいる一人ひとりの反応を待つ時間になります。海外拠点をつなぐなど回線が不安定になりやすい相手が参加している日は、いつもより気持ち長めの間を、あらかじめ自分の中で決めておくと安心です。

画面越しの説得力は、音量ではなく言葉の置き方で決まります

自分の声を聞き返すと違和感を覚える人がほとんどです。頭の骨を通して聞こえる声と、画面越しに相手が受け取る声とは、そもそも成り立ちが違う音だからです。その違和感を「声が嫌いだ」という判断に使ってしまうと、練習はそこで足踏みします。録音の役目は好き嫌いを決めることではなく、崩れている位置を描き出すことです。出だしの位置、間の有無、語尾の残量。見る場所はこの三つに絞ってください。

今日実際に使う一文をひとつだけ選びます。

「それでは、資料を画面共有いたします」

一回目はいつも通りに録音します。二回目は出だしの音だけを少しはっきり置くよう意識します。三回目は語尾を最後まで残すことだけに集中します。この三通りを聞き比べると、声全体を漠然と良くしようとするより早く、画面越しで届く声の変化が見えてきます。

資料をどれだけ作り込んでも、共有ボタンを押した瞬間の声が軽ければ、説得力はそこで削られます。聞き手が資料の中身を信頼できるかどうかは、スライドの完成度より先に、声の輪郭ひとつで決まっていることが少なくありません。次にボタンを押す前の一文から、伝わり方は変わっていきます。

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よくある質問

Q. Zoom プレゼン 声で最初に確認することは何ですか
声量ではなく、話し始める前に息が止まっていないか、最初の一音が詰まっていないか、語尾まで声が残っているかを確認してください。
Q. 大きな声を出せば改善しますか
大きく出そうとして喉で押すと、声が詰まったり軽く聞こえたりすることがあります。息の流れと語尾を整えることが先です。
Q. 本番前にできる練習はありますか
実際に使う一文をスマートフォンで録音し、出だし、間、語尾の三つだけを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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