·会議の声

オンライン会議で声がこもる原因。マイクより先に整えるべき声の出し方

Zoomやオンライン会議で声がこもる、聞き返される、存在感が薄くなる原因を、マイク設定だけでなく姿勢・息・第一声から解説します。

奥津ユキ

Zoomの会議で発言のたびに聞き返される人ほど、まずマイクを買い替えようとします。ですが実際に起きているのは、ミュートを解除してから声を出すまでの数秒でのつまずきであることが大半です。

朝会でミュートを解除した瞬間を録音してみます

週次定例や朝会で、司会に名前を呼ばれ、ミュートを解除して声を出すまでの数秒。ここでこもる人が一番多く、私はまずこの数秒だけを録音してもらいます。画面には自分の顔が小さく映り、他の参加者の視線が並んでいるように見える瞬間でもあります。

次の一文を、実際の会議で話す速さで一度だけ録音してください。

「本日は、私から進捗を共有します」

聞き直すときは、上手いかどうかの判定はいったん脇に置きます。見る場所は三つです。出だしの「本日は」が小さく始まっていないか。「進捗」という要点の手前にわずかでも間があるか。急ぐと、本当に伝えたい中身ほど押し流されます。そして語尾の「共有します」の「します」が途中で消えていないか。強く言い切る必要はなく、最後の一音まで息を残せば十分です。

こもりの正体は、マイクではなく発言直前にあります

声がこもると、多くの人はまずマイクや音量設定を疑います。機材を見直すこと自体は無駄ではありませんが、そこにばかり手をかけると、こもりの原因が発声そのものにある可能性を見落とします。マイクに顔を近づけて声を張ると、かえって圧の強い余裕のない声として届いてしまうこともあります。

低く沈めてこもりを補う、逆に明るく張る、ゆっくり話して間を稼ぐ。どれも試している間だけは手応えがありますが、体の準備そのものは変わっていないので、通信が一瞬詰まったり他の人の発言と重なったりすると、すぐに元の癖へ戻ります。オンラインだと聞こえにくいのはマイクのせいだと思われがちですが、電波や機材の性能以前に、発声そのものがぼんやりしていると、良い機材を使っても聞こえ方はいまいちのままです。

先に点検したいのは、声にする直前に呼吸を止めていないか、出だしの一音を喉の力任せに押し出していないか、要点の手前で息継ぎができずに詰まっていないか、語尾に届く前に息切れしていないかの四点です。このどれか一つが崩れるだけで、声はこもって聞こえてしまいます。

こもりを性格の問題だと捉えている人もいますが、私の実感ではほとんどが筋肉の使い方の癖です。声を出す瞬間にこわばりやすい人でも、声帯を伸ばす感覚さえ保てれば、緊張したままでもマイクへ届く声の輪郭はほとんど変わりません。だからこそ、話す内容を練り直すより先に、体の使い方を一点だけ決めておくほうが会議本番では効きます。

口角を上げると、声は自然に鼻へ乗ります

私が実際にすすめているのは、意図的に鼻にかけようとするのではなく、口角を軽く上げることです。口先だけでもごもご喋ると声はこもりますが、口角を上げるだけで声が自然に鼻腔の方へ乗り、画面越しでも輪郭がはっきりしてきます。

もう一つ効くのが、顎を固定したまま横に「い」の形で開けておく練習です。マイクのりが悪い人の多くは、話しながら顎を下にパカパカ動かしています。顎を止め、横に開いた状態のまま先ほどの一文を言ってみてください。縦に大きく開けるほどモゴモゴした声になりやすいので、動かすのは口角と舌だけに絞ります。

内蔵マイクとヘッドセットとで声の届き方は変わりますが、どちらを使っていても口角の位置と顎の動かし方は同じように効きます。機材を変える前に、まず今使っているマイクのまま、口角を上げただけの状態と上げていない状態を録り比べてみてください。差がはっきり分かるはずです。

発言ボタンを押す前の数秒

会議に参加する直前にまとまった練習時間は取れません。口を閉じたまま息を吐き切ってから、肩を上げずに短く吸い直します。次に声を出さず、最初に録音した進捗共有の一文の口の形だけをなぞり、最後にごく小さな声で一度だけ実際に発してみます。

ここで見るのは声の大きさではなく、出だしの音が欠けていないか、喉が力んでいないか、語尾まで息が届いているかの三点です。カメラの前で口を大きく開けようとする必要はありません。口角を軽く上げるだけで十分で、むしろ大きく開けようとすると顎に余計な力が入り、出だしの音が硬くなります。

発言が誰かと重なったら、その場でこう戻します

オンライン会議では、話し始めた瞬間に誰かの発言と重なったり、通信が一瞬止まったりすることがあります。そこで慌てて声を張り直すと、かえって喉が締まりこもりが強くなります。まず話していた一言を短く区切り、語尾まで言い切ってください。それでも整わなければ、次に話し出す前に一拍だけ間を置きます。この一拍は失敗の沈黙ではなく、聞き手が言葉を受け取るための時間です。短く切る、語尾まで言う、一拍置く。この三つで十分です。回線が不安定な参加者がいる会議では、あえて一拍を長めに取るくらいのほうが、結果として聞き取りやすくなります。

画面越しでも、姿勢と胸の向きが声の入り口です

声がこもると、多くの人はまず喉かマイクを疑います。しかし喉に力を込めるだけでは声は安定しません。ノートパソコンの画面を見下ろす姿勢を続けていると、座ったまま足の裏が床から浮きやすくなります。土台が浮いていると息も浮いた状態になります。

次に胸の向きです。画面やチャットの通知に気を取られていると胸が内側に閉じ、声がマイクの前で前へ出づらくなります。最後に顎と首です。顎が前に出たり首の前側がこわばったりすると、出だしの音を喉の力で押しがちになります。体の構えと息の通り道を戻さない限り、喉だけを整えても効果は限られます。

在宅勤務で椅子や机の高さが仕事用に整っていない環境も少なくありません。画面の位置が低すぎると、無意識に首を前へ伸ばして覗き込む姿勢になり、喉の通り道が狭くなります。可能であればノートパソコンの下に台を置き、画面をまっすぐ見られる高さに調整するだけでも、発言時の息の通りは変わってきます。

複数人が同時に話す場面でも、同じ数秒が勝負です

一対一の通話だけでなく、複数人が参加するオンライン会議では、誰かの発言が終わった直後の一瞬に声を差し込む場面が頻繁にあります。譲り合って言葉が重なったり、逆に誰も話さない沈黙が続いたりすると、そこで声を出す人は息を止めたまま発言しがちです。

対処はシンプルです。自分が発言する直前に、一度だけ短く息を吐き切っておいてください。話す内容を頭の中で組み立て直すより、この一呼吸を確保するほうが、実際のこもりには効きます。チャット欄に「発言します」と一言添えてから話し始めるのも、息を整える数秒を意図的に作る手段として使えます。声を出す前に手元で一度だけ深く息を吐いておくと、画面には映らない準備動作として毎回使えます。

同じ一言を、会議前にもう一度だけ録音します

「本日は、私から進捗を共有します」

出だしの音を意識して録り直したものと、語尾だけを意識して録り直したもの。二回目・三回目はこの二本だけで構いません。会議で使う一文はすでに決まっているので、あとは録るたびにどちらか一点だけを変えて聞き比べれば、こもりが減っていく過程が耳で分かります。抽象的な発声練習を積むより、実際にその日使う言葉で確かめるほうが、画面越しの声には近道です。

録音を聞き返すときは、声そのものの好き嫌いで判定しないでください。頭の中で鳴っている声と、マイクを通して相手に届く声はそもそも違う音です。判定材料にするのではなく、出だしの一音・要点の前の間・語尾という三か所だけを、地図を確かめるように聞いてください。

こもりは性格の癖ではなく、ミュートを解除してから最初の一言を出すまでの数秒間にある息の癖です。次の会議で発言する前に、今日決めた一言だけを整えておいてください。

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よくある質問

Q. オンライン会議で声がこもるのはマイクのせいですか
マイクが原因のこともありますが、姿勢、首の位置、息の弱さ、語尾落ちでも声はこもります。機材の前に声の入口を確認してください。
Q. Zoomで聞き返されない声にするには何をすればいいですか
話す前に背中を起こし、息を前に出してから第一声を置きます。特に「私から共有します」など短い入口を安定させると聞かれ方が変わります。
Q. 外付けマイクは必要ですか
必要な場面はあります。ただし、声がこもったままだと良いマイクはこもった声をきれいに拾うだけなので、姿勢と息も同時に整えるのが効果的です。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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