話し方の間を作る練習。声が急がず届くようにする

話すと早口になる、間が怖い人へ。沈黙ではなく、聞き手が受け取るための間を声で作ります。

奥津ユキ

短い説明文を一つ選び、立ったまま音読をしてみてください。一度目は両手を体の横に置いたまま読み、二度目は各文末で両手の指先を一度だけ合わせてから次の文を始めてみてください。声の速さと大きさはそろえるようにしてみてください。二度目で次の文の出だしを慌てずに用意できたなら、間は空白を増やす操作ではなく、準備が終わったと体へ知らせる合図です。差が出なければ、次に言う内容を決めないまま話し始めている別の原因を確かめるようにしてみてください。

間は沈黙の長さではなく準備の完了である

話し方の間を作ろうとすると、何秒黙るか、どのくらいゆっくり言うかに注意が向きます。 しかし、長さだけを決めた間は、話の流れから独立した空白になりやすくなります。 次の言葉が決まっていないまま黙ると、聞き手には考え込んでいる時間として届きます。 反対に、次の情報の形が整った後に短く止まると、聞き手は前の情報を受け取り、次を待つ余地を持てます。 間は、言葉を抜くことではなく、次の情報を出す準備が終わったことを示す合図として扱うと安定します。 たとえば「予定を変更します。 理由は会場の都合です」と話す場面では、最初の文を言い終えた時点で、次に理由を出すと決まっています。 このときの間は、内容を思い出すための空白ではありません。 「変更します」を受け取らせ、理由へ移る扉を開く区間です。 準備ができていれば、間を長く見せる必要はありません。 口を閉じる、指先を合わせる、視線を一度だけ正面へ戻すといった小さな動作だけで、前の文が閉じたことを自分にも相手にも示せます。 私がこの場面でまず確認したいのは、間の直後に出る最初の語が、間に入る前から決まっているかどうかです。 「ええと」のようなつなぎを置きたくなるときは、間が足りないのではなく、次の情報がまだ選ばれていないことがあります。

次の一語を決めてから文を閉じる

話の途中で間が消える人は、今言っている文が終わる前に、次の文を追いかけ始めていることがあります。 頭の中では次の内容が動いているため、口は文末をきちんと閉じる前に次の語へ移ります。 その結果、文と文の境目がなくなり、聞き手はどこまでが一つの情報だったのかを処理しにくくなります。 間を作るには、文末で急に止まるのではなく、次に出す一語を先に決め、そのうえで今の文を終える順番が必要です。 練習には、「変更します。 理由を説明します」のような二文を使えます。 一度目は普段どおり続けて話し、二度目は最初の文を言い終える前に、次の最初の語である「理由」を紙の端に指で一度触れてから話してみてください。 触れる動作は、次の語を準備できたことを確認するためのものです。 声の速さ、目線、姿勢を変えずに比べると、二度目では「変更します」を最後まで閉じやすくなります。 次の語を忘れないために急ぐ必要がなくなるからです。 差が出なければ、二文の関係が曖昧で、理由ではなく別の情報を続けたい状態かもしれません。 次の一語は、必ずしも一語だけの単語でなくても構いません。 「次に」「理由は」「具体的には」のように、話の方向を示す短い言い出しを決めます。 ただし、言い出しだけを決めて中身が空では、間の後にまた探す時間が生まれます。

一つの間に一つの役割を持たせる

同じように見える間にも、役割の違いがあります。 話題を切り替える前の間、数字を出す前の間、結論を言い終えた後の間は、聞き手が受け取る内容が異なります。 すべての箇所で同じ長さ、同じ姿勢、同じ口の閉じ方を使うと、間が記号のように並び、かえって話の階層が見えなくなります。 一つの間には一つの役割を持たせます。 役割を決めれば、必要な準備も決まります。 話題を切り替える前なら、次の主題を短く言える状態を作ります。 数字を出す前なら、数字と単位を確認して口の形を用意します。 結論の後なら、次に説明を足すのか、相手の反応を待つのかを決めます。 これらをすべて「間を空ける」とまとめないことが重要です。 たとえば「参加者は十二名です。 次に役割を共有します」と言うなら、「十二名」の前は数字の準備、「です」の後は話題転換の準備です。 二つの間に同じ働きを求めないため、体の操作も分けられます。 一度目は「参加者は十二名です。 次に役割を共有します」を続けて話してみてください。 二度目は「十二名」の直前で右手の親指と人差し指を一度だけ合わせ、「です」の後で両足の重さを左右均等に置き直してから次へ進んでみてください。 二つの物理的な操作は役割の違いを確認するためのもので、声の大きさや表情は変えません。

文末で止まる前に結論を言い切る

間を意識し始めると、文末の直前で息を止めるような話し方になることがあります。 これでは、結論の語が聞き手へ届く前に、口が止まる準備へ入ってしまいます。 間は文を途中で切るためにあるのではありません。 前の情報を最後まで出し終えた後に、次の情報を準備できたと示すためにあります。 特に依頼、報告、判断を述べる文では、述語を言い切ってから間へ入ることが必要です。 「資料は午後に共有します」と話すなら、「共有します」までを一つの到着点にします。 「共有」の後で間を作ると、何をするのかが途中で浮きます。 文末に向かうときは、次の文を気にして声を細くしないように、口の中で最後の助動詞まで形を準備しておきます。 話す前に、述語の最後の音まで指でなぞってから発声すると、結論の途中で止まりにくくなります。 これは語尾を長くする操作ではなく、文の最後まで出す範囲をあらかじめ決める操作です。 試すときは、一度目に「資料は午後に共有します。 確認をお願いします」と続けて話してみてください。 二度目は最初の文の最後の「ます」を言い切った後にだけ、下唇を上唇へ軽く触れてから次の文を始めてみてください。 唇を触れる場所を文末の後へ置くことだけを変えます。 二度目で依頼の前に落ち着きが出るなら、間は結論を終えた後へ置けています。

話題転換の前には次の見出しを用意する

短い説明が長く感じられるとき、情報量が多いだけでなく、話題の転換が見えないことがあります。 話す人の中では次の内容へ進んでいても、聞き手は前の話を処理している途中かもしれません。 転換の前に間を置く目的は、聞き手へ休憩を与えることだけではありません。 次に何の話をするかという見出しを準備し、前の情報と混ざらない形で出すためです。 間の後にいきなり細部を言い始めると、聞き手は新しい束の始まりをつかめません。 「ここまでが日程です。 次に担当を説明します」と言う場合、「次に担当を」が見出しになります。 見出しを先に決めておけば、「日程です」の後に入る間は、担当という新しい話題を出す準備の区間になります。 そこで長く黙る必要はありません。 言い終えた後に肩を一度だけ下げ、目線を正面に戻してから「次に担当を」と始めるだけで、体は前の話題を閉じ、次を用意できます。 肩を下げること以外を変えずに、動作ありとなしを比べてみてください。 動作ありで言い出しが整うなら、間は準備の合図として機能しています。 見出しは「次に」だけでも使えますが、何を出すかが続かなければ役に立ちません。 「次に、対応です」「次に、期限です」のように、聞き手が分類をつかめる名詞を添えます。

間が長くなる原因を時間以外で探す

間が長いと感じると、間そのものを削りたくなります。 しかし、長くなる原因は時間感覚だけではありません。 次の内容を選べない、数字を思い出せない、相手の反応を見てから言い方を決めたい、といった準備不足が間に現れることがあります。 この場合、急いで話し始めても準備が終わるわけではなく、つなぎの言葉や言い直しが増えます。 間を短縮するのではなく、間に入る前に何を準備し終えるかを明確にします。 原因を分けるには、話す内容を一つずつ短い札のように並べます。 たとえば「結論」「理由」「期限」「依頼」の四つだけを紙に書き、話す直前に次の札へ指を移してから話します。 一度目は指を移さずに四つを順に話し、二度目は各文末で次の札に指を移してから続けてみてください。 変えるのは指を移す操作だけです。 二度目に間が短くなったなら、話す最中に次の内容を探していたことが分かります。 差が出なければ、札の順序自体が目的に合っていない、または各項目の中身が多すぎる別の原因を見ます。 「考える時間があるから間が長い」と責める必要はありません。 考える工程を話す前へ少し移せばよいのです。 短い共有なら、次の文を丸ごと作る必要もありません。 次に言う情報の種類と、最初の一語だけを決めます。 喉の痛みや声枯れが続く場合は、間を作るために息を止めたり声を押し出したりせず、耳鼻咽喉科へ相談してください。

短い話を準備・発話・接続に分ける

間を安定させるには、話す行為を一つの連続した流れとして扱いすぎないことが役立ちます。 短い共有は、次の情報を選ぶ準備、選んだ情報を文として出す発話、次へ移る接続の三つに分けられます。 間は三つ目の接続にありますが、準備が未完了なら接続は始まりません。 発話が未完了なら、接続は文を切るだけになります。 どの段階で詰まっているかを分けて見ると、間を増やすか減らすかだけの問題ではなくなります。 一つのテーマについて、「結論は何か」「理由は何か」「次に何をしてほしいか」を一文ずつ用意します。 結論を言い、文末で一度口を閉じます。 次に理由の最初の語を心の中で確認してから言い、文末で次の依頼を確認します。 この手順で、間に入る前には必ず次の一語が決まっています。 練習では、結論を言い終えた後に右足のつま先を床へ一度触れ、理由を言い終えた後に左足のつま先を一度触れてみてください。 足を触れる左右だけを変えることで、二つの接続を区別します。 体の小さな合図が、次の情報を準備する順番を支えます。 話の流れが崩れたら、同じ文を急いで繰り返すのではなく、今詰まったのが準備、発話、接続のどこかを判断します。 次の語が出なければ準備へ戻り、文末が消えたなら発話を最後まで出し、話題が混ざったなら接続で見出しを用意します。

よくある質問

Q. 話している途中の沈黙が怖く、言葉を詰め込んでしまいます。どう練習しますか?
沈黙を失敗と決めつけると、接続詞で埋め続けることがあります。私は一文を言い切った後、次の内容を頭で選ぶ時間として短く止まり、聞き手に意味が届く余白を作ります。
Q. 話の区切りで間を取るなら、文末と文頭のどちらがよいですか?
まずは文末で取る方が、内容のまとまりが伝わりやすいです。私は語尾を急いで飲み込まず、言い切ってから一拍置きます。文頭の間は、話題を切り替える時に使うと意図が明確になります。
Q. 間を作ると息が続かなくなります。呼吸はどこで取ればよいですか?
言葉が尽きてから慌てて吸うのではなく、意味のまとまりの終わりで静かに吸います。私は吸う時に肩を持ち上げず、腹圧を急に抜かないようにすると、次の文へ入りやすいと考えます。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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