プレゼンの間の取り方。沈黙が怖くならない話し方

プレゼンで間が怖い、早口になる、聞き手がついてこない人へ。沈黙ではなく理解を作る間の取り方を解説します。

奥津ユキ

プレゼンで黙るのが怖くて、つい言葉で埋めて早口になってしまう。二分で終わる実験から始めます。

説明の途中に空白を残す

二文続きの説明を紙に書き、余白が見える明るさで置いてみてください。白い帯は紙の下へ沈めず、二度目が終わるまで同じ向きにしてください。「申請は木曜に締め切ります。結果は金曜に共有します。」が適しています。紙の二文の間へ、幅一センチほどの白い帯を置きます。白い帯の位置だけを変えてみてください。帯を置かずに一度言ってみてください。二度目は、その帯を見たまま同じ二文を言います。声量、速さ、高さ、語句、立ち位置、視線の位置、手の位置はそろえ、変えるのは二文の間に置く白い帯だけです。

一度目と二度目で比べるのは、一文目の「ます」の後に、口が「あの」「ええと」などの形をつくらず、上下の唇が次の「結」の直前まで動かないかです。二度目に白い帯のところで口元の動きが止まり、二文目の最初の子音から再開すれば、説明中の空所へ言葉を足していません。帯の幅以外の紙の置き方は変えず、二度とも一文目の句点まで同じ行を見ます。差が出なかった場合は、別の原因として、一文目の終わりで紙の端を見失っていないかを確認してください。紙から目が外れると、帯の有無とは別に語が増えることがあります。

間を置くことに慣れていないと、無音の長さを実際より長く感じます。二度目に自分が耐えられたかではなく、聞き手が資料へ視線を落としたか、うなずいたかという外側の動きで判断してください。沈黙の体感時間は話し手と聞き手で一致しません。

沈黙が怖いのではなく、止まった時の息が不安定なだけです

「長く黙れば効果的な間になる」という思い込みがあると、間はかえって取れなくなります。長さだけを意識すると、止まる手前で喉に力が入り、止まったあとに出す声が硬くなるからです。聞き手には、それが気まずい空白として届きます。

私が先に見るのは、間そのものの長さではなく、間の前後で息が動いているかどうかです。

声を出す前に、息が止まっていないか。

最初の一音を、喉で押し込んでいないか。

大事な語の手前で、息を吸い直して力んでいないか。

語尾の手前で、息がすでに切れていないか。

このどれかが崩れると、せっかく取った間が空白に変わります。沈黙への恐怖を性格の問題だと決めつける前に、止まっている数秒に体で起きていることを分けて見てください。

間を演出として作り込むと、詰まったように見えます

プレゼンの本を読み込んだ人ほど、間を演出で作ろうとします。

わざと長く黙る。

声を低くして重々しく見せる。

間の前だけ大きく張る。

どれも一時的には効いたように感じられます。ただ、体の準備が変わっていないと、本番の緊張で元に戻ります。演出として作った沈黙は、聞き手には「言葉に詰まった」ようにも受け取られます。

もう一つ注意したいのが、緊張対策としての減速です。声が震えそうな時にあえてゆっくり話せばごまかせると思われがちですが、実際はゆっくり話すほど震えが目立ちやすくなります。テンポを保ったまま一文を短く進める方が、震えは気づかれにくいです。全体の速度を落とすことと、大事な語の手前で一拍置くことは、別の技術です。

崩れ方には順番があり、支えているのは喉ではなく体です

間が崩れる時は、たいてい三つのずれが重なります。

ひとつ目は、話し始める前に息が止まることです。止めたまま声を出すと最初の音の立ち上がりが遅れ、聞き手には途中から会話に入ってきたように聞こえます。

ふたつ目は、大事な語の手前を急ぐことです。残したい言葉ほど、その手前で待つのが怖くなります。

みっつ目は、語尾の手前で気持ちが先に終わることです。言い切った安心感から締めの音がしぼみ、そこだけが自信のない言い切りとして残ります。

そして、この三か所を支えているのは喉ではありません。まず足裏です。演台で踵が浮いていると、呼吸まで浮つきます。次に胸の向きです。手元の資料やスクリーンばかり見ていると胸郭が内側にすぼまり、止まったあとの一音が前へ出にくくなります。最後に顎と首まわりです。顎が前に突き出ていると、間のあとの声をどうしても喉頼みで出すことになります。

登壇直前の三十秒と、本番中に崩れた時の戻し方

本番前に長く発声練習をすると、かえって焦ることがあります。直前にやることはこれだけで十分です。

まず、口を閉じたまま息を一度吐き切ります。次に、肩を上げずに短く息を入れます。続いて、声を出さずに先ほどの一文を口だけで動かし、大事な語の手前で止まる感覚だけを確かめます。最後に、小さな声のまま一度だけ言ってみます。見るのは、手前で止まれているか、その間に喉が力んでいないか、語尾まで息が残っているか。この三点です。

本番の途中で間の感覚を見失っても、そこで全部をやり直す必要はありません。まず話している一文を思い切って短く区切り直します。続けて、語尾までをきちんと言い切ります。それでも呼吸が整わない時は、次の文へ移る前に、意識してひと呼吸だけ挟みます。このひと呼吸は黙り込むためのものではなく、聞き手に言葉を渡すための時間です。焦って言葉を継ぎ足すほど、間は消え、声はますます浅くなっていきます。

沈黙を埋める言葉を探す前に、進める言い回しを決めておきます

本番で間を怖がる人ほど、沈黙を埋めるための言葉をその場しのぎで探しがちです。言葉を探しながら話すと呼吸が止まり、間はかえって取りにくくなります。

そこで、進行の言い回しをあらかじめ三つだけ決めておきます。最初に入る言葉は、冒頭で録音した一文。要点へ進む言葉は「ここで重要なのは一点です」。締めくくる言葉は「詳細は資料の三ページにまとめています」。

選ぶ基準は、洗練ではなく口なじみです。口になじんでいて語尾まで無理なく届く短い一文なら、緊張した瞬間に崩れても立て直せます。長く凝った言葉ほど、本番の間を壊します。この三つが手元にあると、沈黙を埋める前に話の道筋ができ、道筋があると間も自然に取りやすくなります。

練習は今日の一文と、昔話の音読で足ります

毎日長く練習する必要はありません。次の登壇で実際に使う一文をひとつ選び、三回録音します。一回目は普段どおりに。二回目は、大事な語の手前の一拍だけを少し長めに。三回目は、語尾だけを残して。聞く場所は、最初の音、大事な語の手前、語尾の三か所に絞ります。抽象的な発声トレーニングだけを積んでも本番で再現しにくいのは、体が覚える対象が広すぎるからです。実際に使う一文に絞って整えるから、現場で出せる間になります。

間のあとの一言が単調に沈みやすい人は、練習に物語の音読を混ぜてください。昔話などを、抑揚を大きさでなく高さで上下させながら読みます。声の高さのレンジが広がると、止まったあとの一言も単調にならず、間そのものが生きて聞こえます。

仕上げに、冒頭の一文をもう一度だけ録音して確かめます。

「本日お伝えしたい結果は、この数字です」

大事な語の手前で待てて、語尾まで息が届いていれば、今日の練習はそこで終えて構いません。本番でこの三か所を毎回そろえられなくても大丈夫です。出だしの音が乗った日、手前で待てた日、語尾だけ落とさなかった日。そのどれかひとつが叶えば、聞こえ方は確実に変わります。

スライドを送る指を、半拍だけ遅らせてください

プレゼンの間は、舞台俳優のような大きな沈黙ではありません。聞き手が聞き返さずに結論を受け取れる、短い一拍です。聞き手はスクリーンの数字を目で追いながら、あなたの言葉を耳で追っています。指し示した先を見る時間を渡さずに次へ進めば、目も耳も中途半端なまま置き去りになります。

次のスライドへ進みたくなった瞬間に、リモコンを持つ指を半拍だけ止める。その半拍が、直前の言葉を聞き手の手元に残します。沈黙は、埋めるものではなく渡すものです。

関連して読む記事

プレゼンで声の印象が崩れる場面は、間だけではありません。あわせて次の記事も参考にしてください。

よくある質問

Q. プレゼン中の沈黙が気まずくならない間は、どこに入れますか?
私は結論の直後ではなく、聞き手に新しい条件や図表を渡した直後に間を置きます。沈黙を失敗として埋めず、視線をスライドや相手へ向けたまま待つと、情報を受け取る時間になります。
Q. 言い直した後の間は、どう扱えばよいですか?
言い直しの直後に慌てて続けると、話し手自身の焦りが目立ちます。私は修正した言葉を一度だけ言い切り、次の文の頭を急がないようにします。間は取り消しではなく、話を立て直す境目になります。
Q. 文末ごとに止まる話し方は、間の取り過ぎですか?
すべての文末で同じ長さに止まると、内容のつながりが切れて聞こえることがあります。私は話の段落が変わる所だけ間を長くし、列挙や因果関係の途中は音をつないで意味の流れを保ちます。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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