·歌の声

サイレン発声練習。声区の境目をなめらかにする方法

サイレン練習で声がひっくり返る、喉が締まる人へ。音をつなぐ前に息と喉を整えます。

奥津ユキ

サイレン発声で低い音から高い音へ移ると、途中だけ声が割れたり、急に細くなったりします。高い所まで押し切る前に、境目での声帯閉鎖の加減を調べます。

楽な低さから少し高い所まで「ウー」と一度上がり、同じ音域、速さ、母音のまま、二度目だけ声量を半分ほどにします。変えるのは声量だけです。二度目で段差が細い音のつながりに変わるかを比べてください。小さい方だけつながるなら閉めすぎを先に疑い、両方とも息だけになって消えるなら閉鎖の緩さを疑います。差がなく両方とも同じ場所で止まる場合は繰り返さず、後半の顎と音域幅の判定へ進みます。両方とも滑らかなら、現在の範囲では境目が主な課題ではないため、短い状態確認だけで終えます。

声を乗せる時刻で移行点を探る

鏡の前で、低い「う」から無理のない範囲で高い「う」まで二秒かけて上がり、同じ二秒で戻る動きをしてみてください。一度目は、息を出し始める瞬間に声を重ねます。二度目は、同じ量の息を〇・五秒だけ無声で出してから、同じ動きを始めます。上がる幅、下がる幅、全体の長さ、声量、口の開きは両方でそろえてください。

鏡では、上下の途中で首の前面に縦の線が急に濃くなる時点、または口の開きが一瞬止まる時点を見ます。声が移る途中で切れたように感じる時点と、その見た目の変化が重なるかを比べます。一度目だけに変化が集まるなら、問題は上がる音程そのものより、声を乗せる早さにあります。上がる途中だけでなく、下がる途中でも同じ箇所に線や停止が出るかを見れば、上行と下行のどちらで切れ目が生じるかを分けられます。声が切れる感覚があっても見た目に変化がなければ、口の動きではなく息の出方が変わっている可能性があります。二度目の無声部分は〇・五秒より長くも短くもせず、声が鳴り始める位置だけを上がる動きの中でそろえます。両方で同じなら、別の原因として上下させる幅、母音の種類、息の流れ方を調べてください。喉に痛みや強い乾きが出た場合は、その場で中止します。

大きいサイレンだけ割れるなら、押し合う力が残っています

冒頭で小さい声だけがつながった人は、高さそのものより、音量を保とうとした閉めすぎが境目を作った可能性があります。上へ行くほど同じ太さを残そうとすると、首が固まり、喉仏も必要以上に上がりやすくなります。声が裏返るのを隠そうとして、さらに音を厚くするほど段差は深くなります。

ここで「喉が締まるなら、全部開けばよい」とは考えません。高い音にも声帯の接触は要ります。力を抜けば抜くほど出るわけではなく、必要な閉鎖を残しながら、過剰な押し合いを減らすという順序です。閉鎖にはオンとオフしかないのではなく、中間があります。

一方、普通の声量でも半分の声量でも、境目の前から「ウー」が「フー」に近い息音へ変わるなら、閉鎖が緩い側かもしれません。閉めすぎ用の脱力練習をそのまま当てると、音の芯まで失います。自分の耳と感覚だけで声帯の状態を断定はできないため、ここでは練習方向を選ぶ目安として扱ってください。

半分の声量で、太さを持ち上げない経路を作ります

閉めすぎ側では、広い音域を一気に通りません。話し声に近い「ウー」から始め、少し高い音へ上がり、元の高さへ戻ります。上昇と下降を一組にし、声量は冒頭でつながった小さい方にそろえます。観察するのは最高音ではなく、上りで首が硬くならず、下りで急に大声へ戻らないかです。

次に、唇を軽く合わせてリップロールで同じ幅を通ります。これはサイレンと同時に音域を広げるためではなく、唇の振動が止まらない程度の息を探す補助です。リップロールだけ滑らかで「ウー」に戻すと段差が出るなら、息を増やすより、母音へ戻した瞬間の押し込みを減らします。

音量を半分にしたままつながったら、次の日に少しだけ音量を戻します。その日に音域と速さまで変えないでください。一度に一つを動かせば、閉鎖の加減で変わったのか、勢いで通過しただけなのかを分けられます。

息に消える人は、短い接触を作ってから上がります

閉鎖が緩い側では、小さくするほど良いとは限りません。息漏れの多い声をさらに弱めると、声帯が触れ合う前に空気を使い切ります。そこで、低い楽な高さで「あ゛」とごく短いエッジボイスを一度出し、すぐ普通の「ウー」へ移ります。長く鳴らしたり、濁った音を大きくしたりする練習ではありません。

比較は、エッジボイスを入れない「ウー」と、直前に一度だけ入れた「ウー」の二つです。高さ、声量、上がる幅はそろえ、変えるのは直前の短い接触だけにします。二つ目で境目の前まで息音にならずに進めれば、閉鎖を少し補う方向が合う可能性があります。変化がなければ回数を増やさず、顎が上を探していないかを見ます。

裏声は声帯の間を少し開けて使うため、低音と同じ閉鎖量のまま上まで固定しません。エッジボイスの感触を最高音まで握り続けると、今度は閉めすぎへ移ります。入口を整えたら、上昇中は細い音への変化を許すことが大切です。

差がないときは、顎の動きと音域幅を別々に判定します

二つの声量で同じように止まり、息漏れ側の比較でも変化がないなら、閉鎖だけを原因にして練習量を増やしません。次に私が確認したいのは、高音を首で取りに行く動きです。

壁に背を向け、かかとではなく後頭部だけを軽く壁へ触れさせます。一度目は壁から離れて「ウー」と上がり、二度目は後頭部の接触だけを加えて同じ幅を通ります。変えるのは頭の支えだけです。二度目で顎が上へ跳ねず境目を越えられるなら、閉鎖より先に首の動きを整える余地があります。押し付けて首を反らさないでください。

それでも同じなら、開始音を変えず、折り返す高さだけを手前にします。狭い幅では滑らかなのに、広げた瞬間に止まるなら、今の可動域を越えている可能性があります。これは同じ失敗を再試行するのではなく、原因を閉鎖から姿勢、さらに音域設定へ切り分ける判定です。

上りと下りを分けると、崩れる場所が見えます

サイレンは往復を一つの音として行えますが、上りと下りでは崩れ方が違います。上りだけ割れる人は、低音側の太さを運びすぎているかもしれません。下りで急に大きくなる人は、高音側の軽さから話し声へ戻るときに閉鎖を一気に強めている可能性があります。

最初は「ウー」で上がった所で一度止め、息を継いでから下ります。往復を分けても両方向が滑らかになったら、間を短くしてつなげます。速さは、境目を隠せる速さではなく、細くなる瞬間を自分で把握できる速さにします。ゆっくり固定が正解という意味でもありません。

練習の記録には、高さの数字より「上りだけ段差」「下りで急に太い」「両方とも息へ消える」のどれだったかを残す方が、次に変える一項目を選びやすくなります。録音を使う段階では、聞く対象を語尾へ広げず、声区の継ぎ目一か所に絞ります。

三分の練習では、一日に一項目だけ動かします

短い練習でも、閉鎖の方向が合っていれば判断材料は得られます。日ごとに次のように分けると、全部を同時に直そうとせずに済みます。

変える項目固定するもの観察すること
一日目声量音域・速さ・母音境目の段差が細くなるか
二日目折り返す高さ声量・速さ・母音どの幅から音が止まるか
三日目上がる速さ声量・音域・母音境目が隠れずにつながるか

毎日大きい声で限界まで上がる必要はありません。筋肉は使い方と可動域を少しずつ覚えます。三日とも結果が違うなら、うまい日だけを採用するのではなく、どの変数で再現したかを見ます。閉鎖の加減を学ぶ練習は、成功回数を稼ぐ競技ではなく、段差を作った条件を減らす作業です。

朝の声を測るなら、狭いサイレンで足ります

仕事前のウォームアップとして使うなら、会議室やオンライン通話で必要な話し声の周辺を小さく往復するだけで十分です。サイレンを毎朝の義務にせず、その日の閉鎖が強すぎるか、息へ逃げすぎるかを知るチェックにします。高音の記録を更新してから出勤する練習ではありません。

最後に、冒頭と同じ範囲を普通の声量で一度だけ上がります。小さい声で作ったつながりを保ったまま音量を戻せるか、境目の前で顎が跳ねないかを見ます。崩れたらその場で反復せず、閉めすぎ、緩みすぎ、首の動き、音域幅のどこへ戻るかを選んで終えます。

痛み、枯れ、異物感が続くときは、サイレンで原因を確定しようとせず、練習を止めて医師などの専門家へ相談してください。目指すのは、途切れを力で隠す声ではなく、必要な閉鎖量へ静かに移れる声です。

よくある質問

Q. サイレンで高音へ行く途中だけ声が裏返るのは、音域が狭いからですか?
音域の広さだけではありません。私は、境目で声を太く保とうとして喉を閉めすぎていないかを見ます。小さめの音量で音を途切れさせず前へ流すと、切り替わりがなめらかになります。
Q. サイレン練習で「ウー」と「ンー」はどちらから始めればよいですか?
最初は唇を軽く閉じた「ンー」から始めると、息を押し込みにくくなります。私は響きが前へ集まったまま上下できてから、「ウー」に移す順番を勧めます。
Q. 下から上へ上がると喉が詰まるとき、音を止めるべきですか?
止める前に、上がる速さと音量を下げてみてください。私は喉で押し上げる感覚が出たら、低い位置へ戻して息の流れを整えます。苦しさや痛みが出る練習は続けません。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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