力まず歌う方法。喉で頑張らず声を安定させる

歌うと力む、喉が苦しい人へ。息、体、録音で力みを分けて整えます。

奥津ユキ

一曲歌い終わると、肩が上がって首まで疲れている。楽しいはずの歌が、体力を削る作業になっている。よくある悩みです。気合いを入れて歌うことと、力んで歌うことは別物です。息、喉、体、録音の順番で見てください。肩が上がる、喉で押す、音を当てようとして固まる。この三つが重なると、歌うたびに体が消耗します。

一曲で疲れ切る時こそ、力を足す癖を先に見ます

力まない歌は弱く歌うことだと思うほど、実は不要な力を足していることに気づきにくくなります。声を出す前から体に力を入れる準備ができていると、練習した分だけ力む癖が強まることがあります。

次の一文で試してみます。

「力を足さず、息を流して、楽に出る音域から録音します。」

書き出しで力を足すと、声はそこで固まります。息を流す部分を急ぐと、力みが抜けきりません。楽な音域で出せているかどうかは、感覚だけではなかなか分かりません。録音で確かめます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声は生まれつきの力の入りやすさで決まるものではありません。息、喉、体、録音を見直すと、力の抜き方は変えられます。

「力まない=弱く歌う」という思い込みが、練習を止めます

力まず歌いたいという相談で多いのが、この誤解です。力を抜こうとするほど、逆に声が弱々しくなるのではと不安になります。

ただ、喉に力を入れた声を繰り返しても、それだけで安定感は育ちません。むしろ固まる癖が強くなり、疲れやすさは残ったままです。伸びやかな声も高音も、まず楽に出る声を確認してからでないと、力を抜いた分だけ声が弱くなるという感覚が、なかなか拭えません。

見る順番は、息、喉、体、録音です。息が流れているか。喉で押していないか。肩や顎が固まっていないか。録音で聞いて楽な状態を再現できるか。この順番で見ると、力みの発生源が絞れます。

力む原因を、三つに分けて見ます

肩が上がる、喉で押す、音を当てようとして固まる——この三つには、それぞれ息、喉、体が関わっています。

一つ目は息です。息が止まると、その分を補おうとして体全体に力が入ります。ここで腹式呼吸をきちんと習得すれば解決すると思われがちですが、私の実感では腹式呼吸そのものを覚える必要はありません。お腹を大きく膨らませて凹ませる動きより、吐くときも吸うときも軽く圧をかけ続けたままにしておくことの方が、脱力にはよほど効きます。真面目に膨らませ凹ませをやり込んで、結局喉で支える癖がついてしまった人も見てきました。

二つ目は喉です。喉で音を当てにいこうとすると、周りの筋肉まで固まります。

三つ目は体です。肩や顎が上がると、息の通り道が狭くなり、また喉に頼る癖が出ます。

歌い始めてすぐは楽でも、サビに入った瞬間から肩が上がる人は多くいます。曲の途中で一度、肩の高さと顎の角度だけを確認する癖をつけると、力みに気づきやすくなります。もう一つ、力む人に共通するのが一音を長く伸ばしすぎることです。長く伸ばすほど気持ちが込もって聞こえると思われがちですが、実際は上手い人ほど一音は短く切れています。伸ばしすぎるとブレスの入る隙間がなくなり、その分を喉だけで粘って支えることになるからです。一文の中で音を少し短く切ってみるだけでも、力みが抜けることがあります。

練習は、力を足さない準備から始めます

一つ目は、無声の呼吸練習です。声を出さず、短く吐きます。力を入れず、吐く息が前に流れる感覚をつかみます。

二つ目は、無理のない音量で力みの有無を確かめる段階です。ここではまだ音域を広げず、喉や肩が押されていないかだけを見ます。

三つ目は、実際の歌詞を乗せて録音する段階です。単音では力まずに出せても、言葉を乗せた瞬間に肩へ力が戻ることがあるため、必ずこの段階まで確認してください。

ステップ内容見る場所
1声を出さず、肩の力を抜いて吐く肩や顎が固まっていないか
2楽な音量で力みを確認する喉で押していないか
3一文を録音する力を足さずに出せているか

疲れが気になる時ほど、音量を下げます

力を入れて乗り切りたい時ほど、声量で押し切りたくなります。喉で押している状態のまま音量を上げても、疲れが増えるだけです。まずは、押し切ろうとする力を抜いてください。

音量を落とすと、力みがどこに残っているか見えやすくなります。息が止まっているか。喉で押しているか。肩や顎に力が入っていないか。小さい声で力むものは、大きい声にしても力んだままです。

楽な声で力を足さない書き出しが出せるか。息を流す途中につなげられるか。楽な音域まで保てるか。小さい声で確認してから、少しずつ音量を上げます。

脱力を急ぐ前に、喉の状態を確かめます

力を抜く練習中でも、もともとの力みが強い人は喉に痛みが残ることがあります。かすれが休んでも取れない場合は、練習量を減らすだけでなく、専門家の診察を受けてください。

喉を守ることは弱い練習ではありません。長く歌い続けるための技術です。一回だけ力強く出せることより、毎回楽に出せる状態を保つことの方が意味があります。

録音で確認するのは、力強さそのものではありません

自分の録音を聞くと、迫力が足りないと感じることがあります。けれど録音で見るべきは、迫力ではなく再現性です。

昨日より力を足さない書き出しが楽だったか。息を流す途中で止まらなかったか。楽な音域まで保てたか。この三点だけを見ます。

録音を使うと、感覚ではなく音で確認できます。歌っている最中に自分で感じる力み具合と、外に届いている声は別物です。外に届く楽な声を整えるために、毎回同じ条件で録音を使います。

カラオケで長時間歌い続ける予定がある人ほど、序盤から力を抜く練習をしておく価値があります。最初の一曲目から力んでいると、後半になるほど疲労が蓄積していきます。

一週間は、同じ一文で十分です

歌う曲を日によって変えると、力みが抜けてきたのかどうか比較がしづらくなります。最初の一週間だけは、曲を増やさず同じ一文に絞ってください。

「力を足さず、息を流して、楽に出る音域から録音します。」

これを毎日録音します。力を込める日ではなく、息の流れを見る日。喉の力みを見る日。肩の力を見る日。一日一テーマに絞ります。

一週間続けると、自分がどこで力を足しているかが見えてきます。そこから練習を広げれば、疲れを増やさずに済みます。

力みが取れない時は、気合いより先に息と体を戻します

もっと気合いを入れて乗り切りたくなる気持ちは分かります。ですが脱力を目指して力を抜こうとするより、息と体の順番を先に整えるほうが、結果的に力みは取れていきます。

最初に戻すのは息です。息が止まったまま声を出すと、喉と体が代わりに力もうとします。次に戻すのは体です。肩や顎が固まると、息が流れにくくなります。最後に戻すのが声そのものです。息と体が整ってから、楽に出る声を確認します。

録音では、三つの場所だけを聞きます

録音を聞く時、力強さだけで採点しないでください。見る場所は三つだけです。

一つ目は書き出し。力を足して固まっていないか。

二つ目は途中。息が止まって体に力が入っていないか。

三つ目は語尾。楽な状態のまま終えられているか。

三か所のうちどれか一つでも力が抜けていれば、それは前進です。一曲まるごと完全に脱力できることを最初の目標にしないでください。力みは、部分ごとに抜けた状態を再現できる回数の積み重ねで取れていきます。

一回で抜こうとしない方が、結局早く変わります

早く楽になりたい気持ちが強いほど、一回の練習で手応えを求めたくなります。強い手応えを求めるほど、逆に力を入れる癖が出やすくなります。

最初は楽に出せる範囲だけで十分です。高い音も長いフレーズも、まず楽な状態があってから広げます。楽な範囲を飛ばすと、かえって力みやすくなります。

一日目は息の流れだけを見る。二日目は喉の力みだけを見る。三日目は録音で肩や顎だけを見る。喉に違和感が残っている日は、声量を上げる練習は控え、肩や顎の力み具合だけを軽く確認します。

仕上げは、鏡を見ながら肩の高さで比べます

練習の締めくくりは、鏡で肩の高さを確認しながら同じ一文を録音します。声だけでなく、肩がどれだけ上がっているかを目で見て比べられるようにします。

昨日より楽に出せたか。喉が押されていなかったか。肩や顎の力が抜けていたか。この三点を、鏡で見た肩の高さとあわせて確認します。

練習後に残す判断基準

その日の練習を、迫力のある一回だけで評価しないでください。歌い終わった直後に肩をゆっくり回してみて、引っかかりや張りが残っていないかを確かめます。

首筋や顎の付け根に力みが残っている感覚があれば、その日はそこで切り上げます。翌朝に肩や喉が重く感じない練習だけを、積み重ねる価値のある一回として扱ってください。

まとめ

一曲で疲れ切る場面では、「力まない=弱く歌う」と考える前に、息、喉、体、録音の順番で見てください。力を足さない書き出し、息を流す途中、楽な音域までの録音確認。この三点を整えるだけでも、歌の練習は変わります。

力を抜くことは、喉で頑張ることの反対ではありません。楽に出せる状態を、曲の最初から最後まで、何度歌っても体で再現できるようにすることです。

よくある質問

Q. 力まず歌う 方法では何から始めるべきですか
最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
Q. 毎日練習した方がいいですか
短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
Q. 録音は必要ですか
必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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