舌ったらずな話し方を大人が直すには。舌先と母音の整え方

大人になっても舌ったらずな話し方が抜けない人へ。歯並びのせいではなく、舌先の位置と母音の丸さの癖として直す練習を紹介します。

奥津ユキ

発言すると、内容より先に「幼く聞こえる」と言われる。「さしすせそ」がどこか"しゃしゅしょ"寄りに丸まる。舌ったらずは一つの音の癖ではなく、舌先の位置と母音の作り方、二つが重なって起きています。ラ行や特定の一音だけが引っかかるのとは違い、複数の音がまとめて甘くなるのがこの話し方の特徴です。

最初に、「さしすせそ」だけを聞き比べます

スマホで「さしすせそ」を普通の速さで一度だけ言って録音してください。再生して聞く場所は一つです。"さ"や"す"が、こもって"しゃ""しゅ"寄りに近づいていないか。近づいて聞こえるなら、舌先が上の歯茎から少し奥にこもったまま音を作っている状態です。良い声かどうかはここでは関係ありません。

舌ったらずは、舌先の高さと母音の丸さ、二つの癖の重なりです

サ行やタ行、ラ行は、いずれも舌先が上の歯や歯茎の近くで一瞬だけ狭くなったり触れたりして生まれる音です。舌先が奥にこもったまま動くと、狭くなる場所も触れる場所もぼやけ、音全体が丸くにじみます。加えて、母音をすべて同じ丸さのまま話していると、単語ごとの輪郭がさらに消えます。多くの人はどちらか一方だけを直そうとしますが、舌ったらずに聞こえる声は、この二つが同時に起きていることがほとんどです。滑舌は口をどれだけ大きく動かすかより、舌がどう動いているかで決まります。舌ったらずの場合も同じで、口の開け方を作り込むより先に、舌先という一箇所だけを見直す方が、変化に気づきやすくなります。

歯並びのせいだと思われがちですが、多くは舌の使い方の癖です

サ行やタ行が言いにくいのは歯並びのせいだとよく言われますが、私が見てきた範囲では、歯並びというよりは舌の使い方の癖であることの方が多いです。歯列矯正をして歯並びが整っても、話し方の癖そのものはそのまま残っている人を何人も見てきました。歯の並びを疑う前に、舌先がどこにあるか、どう動いているかを確かめる方が近道になります。舌が短い、いわゆる舌小帯が関係している場合もゼロではありませんが、それだけがすべての原因になっていることはまれで、唇の動きや口周りの筋肉の使い方も合わせて関わっています。歯並びという一つの理由に決めつけず、いくつかの可能性を分けて見ていく方が、実際の練習にはつながりやすいです。

舌先が奥にこもったままだと、サ行・タ行・ラ行がまとめて甘くなります

普段、口を閉じているときの舌先がどこにあるか、意識したことがある人は多くありません。舌全体が下の歯の裏に沈んだまま動かない癖がついていると、話し出す瞬間に舌先を上の歯茎近くまで持ち上げる距離が長くなり、間に合わないまま音を出すことになります。結果として、サ行はこもり、タ行は輪郭を失い、ラ行は舌先の跳ね返りが浅くなります。三つの音が別々に悪いのではなく、根っこは同じ、舌先の置き場所です。口を大きく動かす練習を重ねても、この置き場所自体は変わりません。話していない時間の舌の位置を変えておくと、話し出す瞬間の距離が短くなります。デスクで作業しているとき、電車を待っているとき、口を閉じたまま舌先を上の歯茎の裏あたりに軽く置く習慣をつけておくと、本番で持ち上げる距離そのものが短くなり、間に合わずにこもる回数が減っていきます。

母音がすべて同じ丸さで出ていると、内容より先に幼く聞こえます

舌先の癖と並んで見落とされがちなのが、母音の作り方です。「あ」も「い」も「う」も、口の中の広さを変えずに同じ丸さのまま発音していると、単語と単語の境目がぼやけ、全体がふわっとした印象になります。先の丸まった鉛筆で書いた文字が、太さは出てもどこか輪郭がにじむのと同じです。鉛筆の先を尖らせるように、母音ごとに口の中の広さを少しだけ変えてやるだけで、同じ舌先の動きでも言葉の輪郭がはっきりしてきます。「整理」の"い"と「来週」の"あ"が同じ広さで出ていないか、聞き比べてみてください。違いがほとんどなければ、それが輪郭のにじみの正体です。母音は大きく口を開けて作るものではなく、狭さと広さの差をつけて作るものだと考えると、力の入れどころが変わります。

部下や後輩に指示を出す場面ほど、聞こえ方が信頼感を左右します

チームに指示を出す、進め方を伝えるという場面では、話の内容そのものより先に、話し方の印象で受け取られ方が決まってしまうことがあります。舌ったらずな話し方は、内容が的確であっても、聞き手に「頼りない」「軽い」という印象を先に持たせてしまうことがあります。年齢や経験とは関係のない、舌先と母音という体の使い方の話ですが、指示を出す立場になるほど、この印象の差は無視できなくなります。急いで早口になった瞬間ほどこの癖は強く出やすいので、指示を出す一言目だけは少し速さを落とし、舌先が歯茎に触れる間を作ってから続けるようにしてみてください。

同じことは、年下の相手に注意やお願いをする場面でも起きます。内容が正しくても、言い方が舌ったらずに聞こえると、相手が本気度を測りかねて聞き流してしまうことがあります。伝える言葉の正しさより先に、伝わる音の輪郭を整えておく方が、結果として話が通りやすくなります。

「その件は、来週の会議までに私の方で整理しておきます」で確かめます

次の一文を録音してください。「その件は、来週の会議までに私の方で整理しておきます。」一回目はいつも通りに読みます。二回目は、サ行とタ行が来るたびに、舌先を上の歯茎に軽く触れさせてから離すつもりで読みます。三回目は、母音を一つずつ少しだけ大きく開くつもりで、ゆっくりでなく同じ速さのまま読みます。三回を聞き比べると、舌先を意識した二回目と、母音を意識した三回目とで、輪郭の変わり方が違うことに気づくはずです。どちらが自分に強く効くかを知ることが、この先の練習の的を絞る手がかりになります。

一度にすべてを直そうとしなくて構いません。今日は舌先だけ、明日は母音だけというように、聞く場所と直す場所を一つに絞ってください。全部を同時に変えようとすると、話し方そのものが不自然に作り込まれた印象になり、聞き手にはかえって違和感として伝わります。短い一文で変化が感じられたら、次は「恐れ入りますが、資料をご確認いただけますでしょうか」のような別の一文でも同じ二点を試してみてください。使う言葉が変わっても、見る場所は舌先と母音の二つだけで十分です。

長年の癖ほど、直った時の差ははっきり出ます

大人になってからでは、話し方の癖はもう変えられないと思われがちですが、私の実感ではむしろ逆です。長年同じ動かし方で話してきたからこそ、舌先の位置を一つ変えたときの変化がはっきり出やすくなります。子どものうちに直さないと一生このままだと決めつける必要はありません。何十年も同じ舌の動かし方で話してきた人ほど、正しい動きを一度知った瞬間の差が大きく感じられることのほうが、私の実感では多いです。

ただし、練習を続けても特定の音だけがずっと変わらない、聞き取りにも不安があるといった場合は、自己流で抱え込まず、医師や言語聴覚士など発音の仕組みに詳しい専門家に相談する道も考えてください。舌の長さや動かしにくさが関わっていることもあり、それも含めて見立てを一度もらう価値はあります。有資格者でなくても、発音の仕組みに詳しい人に聞いてもらうだけで見えてくることもあります。少しずつでも聞こえ方が変わってきているなら練習を続ける価値がありますが、何年やっても手応えが一切ないと感じるなら、それは根性の問題ではなく、見立てそのものを変える合図です。

"さしすせそ"の輪郭が変わると、指示の一言から変わります

舌ったらずな話し方は、性格でも幼さの表れでもありません。舌先がどこにあるか、母音をどれだけ開いているか。その二つを知っているかどうかの差です。次に指示や説明をする場面が来たら、声を張る前に、舌先の位置と母音の開き方をひとつずつ思い出してみてください。何年も気にしてきた話し方の癖が、今日録音した一文から少しずつ動き始めることがあります。焦って全部を変えようとせず、舌先と母音、どちらか手応えのあった方から続けていけば十分です。声そのものを作り変える必要はなく、いつもの声のまま、舌先と母音という二つの置き場所だけを変えればいいのです。

よくある質問

Q. 舌ったらずな話し方は歯並びが原因ですか
歯並びよりも、舌先をどこに置いて動かしているかの癖であることが多いです。歯列矯正をしても話し方の癖自体は残ることがあります。
Q. 大人になってから舌ったらずな話し方は直せますか
直せます。長年の癖であるほど、舌先の位置を変えたときの聞こえ方の差ははっきり出やすくなります。子どものうちに直さないと固定されるというのは思い込みです。
Q. 母音を意識するだけで舌ったらずな印象は変わりますか
変わります。舌先の動きだけでなく、母音がすべて同じ丸さで出ていると幼い印象が残ります。語ごとに母音の開き方を変えるだけでも輪郭がはっきりします。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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