音読が棒読みになる原因。声に抑揚を足す前に整える息と間

音読が棒読みになる、感情が乗らない、聞き手に届かない原因を、抑揚の付け方だけでなく息と間から整理します。

奥津ユキ

原稿は正しく読めているのに「棒読みですね」と言われる。感情を込めようとしても、余計にわざとらしくなる。抑揚の付け方を調べる前に、スマホのボイスメモで確かめてほしいことが一つあります。用意するのは一分と、短い一文だけです。

目線の使い方だけを変えて、二回録ってみてください

次の一文を、二通りの読み方で録音します。

「次に、今日の流れを三つに分けてお伝えします。」

一回目は、この文の先にまだ原稿が続いているつもりで、目線を先の文字へ走らせながら一息で読みます。二回目は、読点と句点のところで目線をいったん止め、止めた場所で小さく息を通してから続きを読みます。

再生して聞き比べると、声の高さは何も変えていないのに、二回目のほうが棒読みの平らさが薄れているはずです。棒読みの正体は感情の不足ではなく、目が先へ急ぐことで息の区切りと間が消えることだと、この二回だけで体感できます。抑揚を足す練習は、この土台ができてからで十分間に合います。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

抑揚は声色を変える技術ではありません。読み始めの一拍、息の量、語尾の残り方がそろうと、同じ文章でも聞き手に届く量が変わります。

棒読みに足りないのは感情ではなく、高さを動かす技術です

棒読みは気持ちが入っていないから起きると思われがちですが、私の実感では、足りないのは感情の量ではなく声の高さを動かす技術です。ここで声量を足そうとしたり、感情を込めようと語尾だけ持ち上げたりすると、喉に力が入り、次の文がかえって出しにくくなります。

高さのレンジを広げる練習には、昔話の音読が向いています。私は「ももたろう」のような誰でも知っている話を使い、大きさは変えずに声の高さだけを上下させて読みます。「おはようございます」くらいの短い一言でも、音の高さを段々と上げ下げするつもりで口にするだけで、平板さがゆるんでいく感覚がつかめます。

読み上げで実際に見るべきなのは、一文ごとの最初の音です。最初の音が喉の奥で鳴ると、その先の言葉も奥にこもったまま進みます。最初の音が息の流れに乗ってから出ると、文全体が前に出やすくなります。派手に読もうとするのではなく、始まりだけを小さく整えます。

助詞ばかりが立つ時は、山を一つに絞ります

棒読みに悩む人の録音を聞くと、「は」「を」「に」といった助詞が妙に強く、肝心の言葉のほうが平らに流れていることがよくあります。文字を等間隔で追っているため、すべての音に同じ力がかかり、結果として意味の薄い音だけが目立ってしまうのです。

直し方は単純です。一文の中で、聞き手に一番受け取ってほしい言葉を一つだけ決めます。そして、その言葉だけ気持ち高めに置き、残りは平らなままで構わないと決めてしまいます。山を二つ三つ作ろうとすると、今度は文全体が波打って聞こえ、かえって不自然になります。一文に山は一つ。原稿の段階で丸を付けておくと、読んでいる最中に迷わずに済みます。

文字を目で追う読み方が、声を出す前の一拍を消します

先の文字を目で捉えたまま読むと、声は喉の浅いところから飛び出しやすくなります。目線が先へ進み、息が声の速さに追いつかないまま音だけを出そうとするからです。黙って読んでいる間は気づかない小さな癖でも、声に出した瞬間に聞き手へそのまま伝わります。

文の頭でいったん目線を止め、声より先に短く息だけを通し、その息の続きに言葉を乗せる。この三つを分けて意識すると、声が喉だけで作られているのか、息の上に乗っているのかの違いに自分で気づけます。特に大勢の前で読み上げる場面では、途中で細かく調整する余地がありません。だからこそ、抑揚をどう付けるかより先に、声を出す前の状態を整えておくほうが近道になります。

読む前に、息・喉・体の順で整えます

一つ目は息です。文字を追う前に息が止まっていると、読み始めの音は硬くなります。深く吸い込むより、短く吐く流れを先に作っておきます。吸うことを意識しすぎると胸や肩が上がり、体ごと固まりやすくなります。

二つ目は喉です。喉で押して出す声は一瞬強く聞こえても、文章が長く続くと保ちません。まず喉の奥を固めずに出せる小さな声で一文を読んでみます。小さい声で詰まるなら、大きくしても負担が増えるだけです。

三つ目は体の使い方です。首や肩、あごや舌の付け根に力みが残っていると、息の流れがあっても声は聞き手のところまで運ばれていきません。特別な姿勢作りは不要で、足裏で床を感じ、首筋の緊張をゆるめてから読み出すだけで、喉だけを頼りにしていた癖が浮かび上がります。

同じ一文のまま、条件を一つずつ変えて聞き比べます

読み比べに使うのは、最初に録った一文だけで構いません。別の文章に変えると、声が変わったのか文章が変わっただけなのか分からなくなります。同じ一文を繰り返す不便さのほうが、実は上達の近道です。

一回目はいつも通りに読みます。二回目は読む前に短く息を通します。三回目は最後の一音まで息を切らさず読みます。三つを並べて聞くと、声を張らなくても届き方が変わる場所が具体的に見つかります。聞き分けるのは、声の入り、息の続き方、語尾の残り方の三つだけです。うまいかどうかを採点し始めると、他の要素まで一度に直したくなり、逆に不自然な読み方になります。

崩れの多くは、読んでいる最中ではなく読み始める前にもう起きています。文字を急いで追っている。息を止めている。肩が上がっている。この状態のまま声を出すと、後からの微調整では間に合いません。

長い原稿を練習する時も、頭から通して読み直すのではなく、録音を聞いて平らになった一文だけを抜き出してください。抜き出した一文で読み始めの一拍と語尾を整え、整った状態のままその前後の文とつなげ直す。この順番のほうが、通し読みを何度も繰り返すより早く原稿全体が変わります。

変化を感じない時は、声ではなく読む条件を疑います

練習しても印象が変わらない時、原因はたいてい才能ではなく、その日の条件のずれです。文字を急いで追っている。息を吸いすぎて胸が固まっている。声を高く作ろうとして喉が上がっている。語尾を聞き切らずに次へ進んでいる。

完成した読み方をいきなり求めるより、一文だけで喉の軽さと息の続き方を録音で確かめるほうが近道です。調子の良い日にまとめて練習するのではなく、短時間を同じやり方で積み重ねるほうが定着します。

喉が痛む日、強い違和感がある日は、読む本数を欲張らないでください。こまめな水分補給、休む勇気、声量を抑える判断も、立派な調整のひとつです。声を良くしたい気持ちがあっても、喉の不調に蓋をして読み続けるのは避けてください。

本番前の数十秒と、読み終えた後の静けさ

本番前に長々と発声練習を重ねる必要はありません。むしろ効くのは、控室や袖でできる程度の短い確認です。呼吸の通り道がふさがっていないか、あごや肩が緊張でこわばっていないかを、ひとつずつ見ていきます。読み始めの一音は、この数十秒の状態に大きく左右されます。声量を上げようと意気込むより、聞き手のすぐ手前あたりに言葉を置くつもりで話すと、張らずとも通る声になっていきます。

そしてもう一つ、読み終えた直後にも耳を向けてください。文末を言い切った後、あえて半拍だけ黙ってみます。その静けさの中で、喉がまだ楽な状態か、息が完全に尽きていないか、肩の力が抜けているかを感じ取ります。一文の後に聞き手が意味を受け止める間があるかどうかで、伝わり方は大きく変わります。

棒読みは、読み方より読む前で決まっています

慣れてきたら、「失礼します」「よろしくお願いします」のような普段よく口にする短い挨拶でも試してください。短い言葉は、読み始めと語尾の癖がそのまま出やすいからです。

仕上げには「次に、今日の流れを三つに分けてお伝えします。」をもう一度録音し、最初の実験の一回目と聞き比べます。目線が止まり、息が通り、語尾が残っていれば、高さの練習を足さなくても、すでに棒読みからは離れ始めています。

音読の声は、一度の気合ではなく積み重ねで育ちます。うまく読めた日の感覚を覚えておくより、うまくいかなかった日の条件を記録しておくほうが、次の練習の手がかりになります。読む前の一拍さえ守れれば、同じ原稿でも言葉の重みは自然に変わっていきます。

よくある質問

Q. 音読 棒読み 直し方の原因は何ですか
声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
Q. すぐできる練習はありますか
短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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