ラ行の滑舌トレーニング。舌が回らない声を仕事で聞き取れる形にする
ラ行で舌が回らない、言葉がもつれる人へ。ラリルレロの連打ではなく、言葉の頭、母音、息の流れで整えます。
奥津ユキ
ラ行が引っかかる人ほど、ラリルレロを速く言えるように舌先だけを鍛えようとします。ただ、舌を速く動かすほど言葉がもつれることがあります。練習メニューを増やす前に、スマホの録音一つで、もつれの本当の出どころを確かめてみてください。一分で終わります。
もつれの正体は、ラ行の一つ手前にあります
次の一文を、二通りで録音します。
「来週の連絡事項を整理して、午前中に共有します。」
一回目は、普段の報告の速さでそのまま読みます。二回目は、読み出す前に口を閉じたまま短く息を吐き、その流れが切れないうちに読み始めます。舌の動かし方は、どちらも一切変えないでください。
再生したら、ラ行の音そのものではなく、「ら」や「れ」の一つ手前で息が止まっていないかだけを聞きます。もつれて聞こえる箇所は、たいていその直前で息の流れが途切れています。舌の速さを変えていないのに二回目のほうが引っかからないなら、鍛える場所は舌先ではなく、息の流れと母音の支えです。
二回とも同じようにもつれた場合も、手がかりは録音の中にあります。もつれた箇所だけを何度か聞き返し、直前の音が短く詰まっていないかを確かめてください。ラ行の一つ前の母音が痩せていれば、それが崩れの起点です。この一分の聞き分けができるだけで、やみくもな反復練習から抜け出せます。
ラリルレロの連打だけでは、舌に力が入りすぎます
舌がもつれると感じた時、ラリルレロを繰り返し発音する練習に飛びつく人がいます。ただ、その練習だけに頼ると、舌先に力が入りすぎて、かえって喉の負担が増えることがあります。
強く話そうとするほど最初の一音だけが張って、後半で息切れします。落ち着かせようとして声を低く作ると、今度は語尾が力なく沈みます。丁寧さを意識して一文を長く続けると、聞き手はどこに注目すればいいのか見失います。
見る順番は声量ではありません。まず息が動いているか、次に言葉の頭が入っているか、重要語の前で少し待てるか、最後に語尾まで息が残っているか。この順番で見ると、舌を酷使しなくても整えられます。
崩れには順番があり、始まりはいつも息です
ラ行の遅れ、言葉の頭の曖昧さ、後半での息切れは、別々の症状に見えて、実は起きる順番が決まっています。録音で聞き返すと、最初に息が動きを止め、続いて言葉の頭が引っ込み、そのあと重要語を早口で通過し、最後に語尾が力を失う、という流れになっていることがほとんどです。
話すのが苦手だと感じている人ほど、この現象を性格のせいにしたくなります。ですが、緊張はまず体を固めます。肩が持ち上がる、背中の動きが止まる、息を吸い込んだまま話し出す、最初の音を喉で押し出す。どれか一つでも起きると、舌は同じ速さで動いていても、音の輪郭だけが崩れます。
先に短い息を流してから話し始めれば、この連鎖は入り口で止められます。息が流れ、母音が支えられていれば、ラ行だけが浮いて聞こえることはなくなっていきます。
録音は、入り・間・語尾の三箇所だけ聞き分けます
先ほどの一文を聞き返す時、声が好きか嫌いかは判断しないでください。見る場所は三つです。
一つ目は最初の音です。「来週の連絡事項」の入りが小さいと、聞き手は最初の情報を取りこぼします。叩く必要はなく、息が先に流れ、その上に言葉が乗っているかを聞きます。
二つ目は重要語の前です。「整理して」の手前で、ほんの少し待てているかを確認します。長く取る必要はなく、急いで飲み込まず相手が受け取る余白を残します。
三つ目は語尾です。「共有します」の最後が消えると、内容は合っていても自信が弱く聞こえます。押すのではなく、最後の一音まで息を残します。
実際に使う短い三文で仕上げます
難しい発声練習よりも、実際に使う言葉を短く整えるほうが効果的です。次の三文を、声を張らずに録音してください。
| 練習文 | 聞く場所 |
|---|---|
| 「来週の連絡事項です」 | 最初の音が小さく消えていないか |
| 「整理して共有します」 | 重要語の前で急いでいないか |
| 「ご連絡お待ちしております」 | 語尾まで息が残っているか |
一回目は普通に読み、二回目は各文の前に一度だけ息を吐いてから読み、三回目は語尾を最後まで置くことだけを意識します。三文目はラ行が三つ続くぶん、息が細るとすぐに音が潰れます。潰れた時は速さを落とすのではなく、直前の息から作り直してください。三文すべてを毎日やる必要はなく、その日の仕事で実際に口にしそうな一文だけ選べば続けやすくなります。
きれいな声を目指す必要はありません。録音で聞くべきなのは声色ではなく、入り・間・語尾です。
仕事の言葉は、ラ行の連続でできています
連絡、履歴、料金、利益、理由、了承。仕事で毎日使う言葉には、ラ行が驚くほど多く含まれています。さらに敬語になると「来られますか」「戻られました」のようにラ行が続けて現れ、一つがもつれると後ろまで連鎖します。ラ行の練習が仕事の声に直結するのは、このためです。
連続するラ行を一音ずつ叩こうとすると、舌は必ず遅れます。意識するのは音の粒ではなく、母音の列です。「連絡」なら「えんあく」という母音のつながりが先にあり、その流れの上に舌先が軽く触れていく。母音の川が流れていれば、舌は浮き石を踏むように軽く渡れます。川が止まった状態で石だけ踏もうとするから、足がもつれるのです。
電話ではこの差がさらに広がります。口元が見えないぶん、対面なら口の動きで補われていた音の輪郭を、耳だけで判別されるからです。電話で聞き返されやすい人は、ラ行を含む単語の直前だけ、ほんのわずか息を先に流す意識を持ってみてください。
直す順番は、姿勢・息・言葉の頭・語尾です
一番目は姿勢です。胸だけを張ろうとすると肩が持ち上がり、かえって息が浅くなります。足裏全体を床につけ、みぞおちを固めすぎない状態で、吐く息が前へ流れる姿勢を探してください。
二番目は息です。話す直前に大きく息を吸う癖がある人ほど、第一声が硬くなりがちです。吸うより先に、短く吐く動作を作ってください。息がわずかに動いてから声を出すと、最初の音を喉で押しにくくなります。
三番目は言葉の頭です。出だしを強く叩くのではなく、相手が聞き取り始められる位置に静かに置く感覚を持ちます。四番目は語尾です。力を込める必要はなく、最後の一音まで息を残しておくだけで十分です。語尾まで届くと、聞き手はそこで内容を区切って理解できます。
速さは最後に戻します。まず意味のまとまりごとに区切って読み、次に声量を変えずに読み、最後に本番に近い速さで読む。急ぐ段階になっても、語尾だけは切り捨てないでください。急ぐ場面ほど、最後の一言にその人の印象が出ます。
顎を止めると、母音の支えが安定します
ラ行を良くしようと、口を縦にも横にも大きく開けて話す人がいますが、実際に効くのは口の大きさではありません。縦に大きく開ける必要はそれほどなく、横の動かし方のほうが大事で、しかもとにかく大きく動かせばいいわけでもありません。
私が普段見ているのは、話している間に顎が上下に暴れていないかどうかです。顎が動くたびに母音の形が変わり、支えを失った母音の上でラ行だけが浮きます。試しに、奥歯を軽く合わせるくらいのつもりで顎の上下を止め、横に「い」の口の形を保ちながら五十音をひと通り言ってみてください。ラ行だけでなく、言葉の頭全体の輪郭がはっきりするのが分かります。舌先を忙しく動かすより、母音の土台を動かさないことのほうが、ラ行の安定には効きます。
次の報告の一文から、ラ行は整い始めます
仕上げに「来週の連絡事項を整理して、午前中に共有します。」をもう一度録音し、最初の実験の一回目と聞き比べてください。入りが置けて、重要語の前で待てて、語尾まで息が残っていれば、ラ行の音は特別な訓練をしなくても浮かなくなっているはずです。
報告や説明で使う声は、根性や話術のトレーニングだけで変わるものではありません。もつれた箇所を責めるのではなく、その一つ手前の息を見る。この見方さえ持てば、ラ行の練習は舌の特訓ではなく、月曜の報告をそのまま使った一分の確認に変わります。
よくある質問
- Q. 報告、説明、プレゼンで声が弱く聞こえる原因は何ですか
- ラ行で舌が遅れる、言葉の頭が曖昧になる、後半で息が切れるなどで、息・喉・体・語尾・間のどこかが崩れていることが多いです。
- Q. 大きな声を出せば報告、説明、プレゼンの印象は良くなりますか
- 声量だけでは安定しません。最初の音、重要語の前の間、語尾まで息を残すことを先に整えます。
- Q. 本番前に何を練習すればいいですか
- 本番で使う一文を録音し、入り、間、語尾の三点だけを確認してください。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →滑舌を良くする方法。仕事で聞き返されない話し方の整え方
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