カラオケや練習で音を外すと、耳が悪いのだと考えがちです。けれど、音を当てにいく瞬間に喉が締まっていたり、息が声より先に途切れていたりすると、耳では正しい高さが分かっていても、体がその高さへ声を運べません。頭の中では正しい音が鳴っているのに、口から出た瞬間だけずれるという感覚を持つ人ほど、耳より先に体の使い方を疑ってみる価値があります。
耳を疑う前に、音を当てる直前の一瞬を聞き直します
次の一文で確認します。
「音程を当てる前に、息の強さと喉の力みを録音で確認します。」
この一文を録音して聞くと、三つの場所で崩れが見えることがあります。「音程を当てる前に」で声が出る前から喉が力んでいないか。「息の強さと喉の力みを」の途中で息が声より先に止まっていないか。「録音で確認します」の最後まで、音の芯が保たれているか。耳で高さを判断する前に、この三か所を体の使い方として分けて聞いてください。
高く強く出そうとするほど、音は外れやすくなります
音程が合わない時、多くの人はもっと大きく、もっとはっきり当てようとします。ですが、当てにいく瞬間に喉で押すと、声は目標の高さより先に硬くなり、かえって外れやすくなります。強さで解決しようとする前に、まず楽に出せる音量で同じ高さに触れられるかを確認してください。
見る順番を、息、喉、体、録音の四つに分けます
音を当てる前に息が動いているか。当てにいく瞬間、喉で押していないか。肩や顎が固まって声の通り道を狭めていないか。そして録音で聞いた時、同じ高さを毎回同じように再現できるか。この四つを順番に確認すると、耳の良し悪しではなく、体のどこで崩れているかが見えてきます。
高い音と低い音では、外れ方の癖が違います
高い音を当てにいく時は、当たる直前に喉が締まり、音がわずかに低いまま止まってしまうことがあります。これは音を怖がって喉で支えようとするために起きます。反対に低い音では、息の勢いが落ちて声が痩せ、音の輪郭がぼやけて聞こえることがあります。どちらも喉や声帯そのものの限界というより、その音に向かう直前の準備の違いです。高い音の前では喉を締めるのではなく息を先に流し、低い音の前では息を弱めすぎず一定の勢いを保つ。この違いを意識するだけで、当たり方は変わってきます。
音をしゃくり上げる癖も、同じ原因から起きます
目標の音に届く前に、少し低い音から滑らせるように声を出す癖がある人もいます。この癖は、当てにいく瞬間に息が足りず、喉が音を探りながら追いかけているために起きやすいです。息を先に流してから声を出す練習を重ねると、探る動きが減り、最初から目的の高さへ声が乗りやすくなります。しゃくりを直そうとして音程だけを意識するより、息の準備を先に整える方が結果は早く出ます。
練習は、当てにいく前の準備から始めます
最初に、声を出さず息だけを短く吐きます。当てようとする力を抜き、息が先に流れる感覚を作ります。
次に、高さを狙わず楽な音量で声を出します。当てにいく力を抜いたまま、喉が押されていない状態を確認します。
最後に、練習文を録音します。「音程を当てる前に、息の強さと喉の力みを録音で確認します。」を、音階としてではなく言葉として読みます。歌の中の音程は、発声練習の音階だけでなく、言葉になった時にどう響くかでも変わります。
音量を上げる前に、下げて確認します
音が外れる時ほど、声を張って当てにいきたくなります。けれど喉で押している状態のまま音量を上げると、外れ方はむしろ強まります。まず音量を下げて、小さな声で同じ高さに触れられるかを確認してください。
小さい声で不安定な音程は、大きい声にしても安定しません。「音程を当てる前に」を楽に出せるか、「息の強さと喉の力みを」の途中で息が切れていないか、「録音で確認します」まで音が残っているか。小さい声のまま少しずつ音量を戻していきます。
喉に違和感がある日は、音を追いかけません
痛みがある、強いかすれがある、休んでも戻らない違和感がある時は、音程を合わせる練習を無理に続けないでください。喉を守ることは練習をさぼることではなく、長く歌える声を保つための判断です。違和感がある日は、高い音も低い音も攻めず、息と短い一文だけを確認します。
録音を聞いた時の違和感は、耳の判断が狂っているからではありません
自分の歌声を録音で聞くと、頭の中で聞こえていた声と違って感じられ、音程まで不安定に思えることがあります。これは、話している間は骨を伝って聞こえる音と、外に出て空気を伝って聞こえる音の両方が混ざって聞こえているためです。録音された声は空気を伝った音だけなので、普段の感覚と違って当然です。この違和感を音程が悪い証拠だと捉えず、相手に届いている音を確認するための材料として使ってください。
同じ一文を、毎日同じ条件で聞きます
毎日違う音階やフレーズで練習すると、何が変わったのかが分かりにくくなります。「音程を当てる前に、息の強さと喉の力みを録音で確認します。」を一週間、同じ条件で録音してください。今日は息が流れたか。喉が押されなかったか。昨日より音が楽に当たったか。日ごとに見る場所を一つに決めると、小さな変化に気づきやすくなります。
一週間続けると、自分がどの言葉の頭で崩れやすいか、どの音の変わり目で喉が力むかが見えてきます。そこが分かれば、闇雲に音階練習を増やす必要はなくなります。変化が小さくても、同じ条件で聞き比べられていること自体が、耳ではなく体で確認できている証拠です。
速い曲と遅い曲では、当てる前の準備の時間が違います
テンポの速い曲では、次の音に向かう準備の時間がほとんどありません。息を吸い直す間もなく次の音へ移ろうとすると、喉だけで高さを合わせにいくことになり、外れやすくなります。テンポの遅い曲で同じフレーズを一度ゆっくり歌い、息を先に流してから音に入る感覚を体に覚えさせてから、元のテンポに戻す方が、闇雲に速い曲だけを繰り返すより早く安定します。
人前で外すことへの身構えが、喉の力みを強くします
人前で音を外すと恥ずかしいという気持ちが強いほど、次に歌う時は無意識に喉を固めて音を支えようとしてしまいます。この力みは気持ちの問題として片づけず、体に起きている反応として扱ってください。喉を固めるほど息の流れは邪魔され、結果としてさらに外れやすくなります。人前で歌う前ほど、当てにいく強さではなく、息を先に流す準備に意識を戻す方が安定します。
音程はコツより、筋肉量の話であることが多いです
音程が安定しない人を見ていると、一つのコツを教えれば直るという話ではないことがほとんどです。地声側を支える筋肉と、高い方を支える筋肉の両方に、同じくらいの張力を保てているかという、筋肉量の問題であることが多いのです。ある生徒は、カラオケで60点台が続くところから、8ヶ月かけて同じ曲の歌詞に当てる箇所を細かく書き込みながら確認し続け、94.5点まで音程を安定させました。当てにいく感覚を一度で掴もうとするより、同じ曲で当てる練習を積み重ねるほうが、結果として近道になることがあります。
自分の声がちゃんと耳に届いていないから音程が外れる、と考える人もいますが、私の実感では、正解の音程はすでに聞こえていて、まだそれが正解だとわかっていない、あるいは聞こうとしていないだけということのほうが多いです。耳を疑う前に、鳴っている音のどれが正解かを体に覚えさせる作業のほうが近道です。
それでも当たらない時は、文と音を短くします
音程が安定しない時、フレーズを難しくする必要はありません。まず一音、次に短い一文というように区切りを短くしてください。長いフレーズほど息は足りなくなり、足りない分を喉の力みで補おうとして、音がさらに外れやすくなります。短く楽に当たる音を先に増やし、そこから少しずつ長さを広げていく方が、結果として安定した音程に近づきます。
カラオケのマイクは、練習の確認道具にもなります
カラオケでマイクを持つと、機材のエコーで音が良く聞こえ、外れていることに気づきにくくなります。練習として使うなら、エコーを弱くするか切った状態で、狙った音に対して自分の声がどの位置にあるかを聞いてみてください。エコーがかかった状態の耳の感覚のまま普段の練習をすると、素の声で歌う場面とのずれに後から気づくことになります。
音が跳ぶ場所ほど、崩れやすくなります
隣り合う音へ移る時よりも、大きく跳んで音を取りにいく時の方が外れやすいのは自然なことです。跳ぶ直前に息が止まっていると、喉が瞬間的に高さを探ることになり、結果として少し外れた音から入ってしまいます。跳ぶ直前にだけ意識して息を軽く流しておくと、探る動きが減り、跳んだ先の音にまっすぐ入りやすくなります。曲全体を均等に練習するより、跳躍が多い箇所だけを抜き出して確認する方が、効率よく崩れる場所を減らせます。
まとめ
音程が取れない原因を耳だけに求める前に、息、喉、体、録音の順番で声を出す前の状態を見てください。「音程を当てる前に」の入り、「息の強さと喉の力みを」の途中、「録音で確認します」の語尾を分けて聞くだけでも、練習の見え方は変わります。
音を当てることは、喉で頑張ることではありません。息の流れに乗せた声を、狙った高さまで無理なく運べるようにすることです。耳の良し悪しを気にするより、当てにいく直前の準備を毎回同じように整えられるかどうかを見てください。それができれば、音程は少しずつ安定していきます。
よくある質問
- Q. 音程が取れない 原因では何から始めるべきですか
- 最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
- Q. 毎日練習した方がいいですか
- 短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
- Q. 録音は必要ですか
- 必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →歌が上手くなる声の出し方。音程の前に整える息と響き
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音を外すことは、耳の性能の問題だけではありません。声を出す直前の息と喉の状態が、当てられる音の範囲を決めています。