口呼吸と声。喉が乾きやすい人の発声ケア

口呼吸で喉が乾く、声がかすれる人へ。呼吸の癖と声の使い方を分けて整えます。

奥津ユキ

口呼吸の癖がある方のレッスンで多いのは、「喉が乾くから声が出しにくい」という相談です。乾きそのものを止めることはできませんが、乾いた喉にどう声を乗せるかは練習で変えられます。まず見るのは声の高さや大きさではなく、息、喉、体、録音の四か所です。

朝の喉の乾きが、その日一日の声に影響します

寝ている間や長い会話の途中で口が開いたままになると、喉の粘膜が乾き、そこに声を通そうとして押す癖がつきやすくなります。乾いた状態で無理に声を出すと、擦れた音になったり、途中で引っかかったりします。これは性格や才能の問題ではなく、喉の状態と声の出し方が噛み合っていないだけです。

練習に使う一文はこちらです。

「乾きを無視せず、息を整えて、短い声で状態を確認します。」

冒頭の「乾きを無視せず」の入りが硬いと、声はそのまま喉から始まってしまいます。「息を整えて」を急ぐと、息と声が分かれたまま進みます。「状態を確認します」まで録音で確かめないと、変化はただの感覚のまま残ってしまいます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声は、生まれつきだけで決まるものではありません。息が先に流れて声が乗ること、喉で押さないこと、体の使い方を整えることで、乾きやすい喉でも出し方は変えられます。

音量を上げる前に、乾きの扱い方を変えます

口呼吸が続いている方に共通するのが、喉の違和感を音量でごまかそうとする傾向です。大きく出せば乾きも紛れるように感じますが、実際には負担が増えるだけで乾きそのものは残ります。

私がレッスンで最初にお伝えするのは、「強さ」と「安定」は別物だということです。乾いた喉のまま押した声を繰り返すほど、その癖はかえって根を張ります。高い声も低い声も大きな声も、まずは楽に出せる範囲の声が確認できてから広げるものです。

体の状態を見る時は、息が止まっていないか、喉で押していないか、体のどこかが固まっていないか、そして録音した音が昨日と同じように再現できるかという流れで確かめてください。乾きに気を取られて力んでしまう癖は、この確認だけで距離を置きやすくなります。

乾き・浅い息・押す声を、一つの原因にまとめません

口呼吸で声が乾く場面でうまくいかない時ほど、原因を一つに決めつけたくなります。ですが、乾き、浅い息、押す声はそれぞれ別の場所で起きている現象です。

口呼吸が習慣になっていると、話す直前の息がまず浅くなり、声に乗せる流れそのものが不足します。そのぶんを喉だけで補おうとすると、乾いた粘膜にさらに負担がかかります。響きも高音も地声も滑舌も、喉頼みで作ろうとするほど不安定になっていきます。加えて、肩が上がったり胸が固まったり顎が上がったりすると、息の流れが変わり、体の固まりが喉の代償を招きます。

練習メニューは、声を出す前の準備を含めて三段階です

段階を分けて練習することをおすすめします。最初は、声を出さずに短く吐く準備だけです。大きく吸い込むのではなく、吐く息が前へ流れる感覚を先につかんでください。ここで軽くハミングをはさむのもおすすめです。口呼吸の癖がある方は鼻から響かせる感覚が薄れがちなので、無理に張らないハミングで鼻腔を通る道筋を思い出しておくと、そのあとの発声が乾いた喉にも負担をかけにくくなります。

次は、楽な音量で出す小さな声です。大きく出す必要はなく、喉が押されていないかどうかだけを確かめます。

最後は、実際の一文を使った録音です。発声練習だけで終わらせず、言葉として声がどう届くかまで確認してください。声は歌や音階だけのものではなく、言葉になった瞬間にどう聞こえるかがすべてです。

短く吐く段階では体が固まっていないかを、楽な声を出す段階では喉で押していないかを、一文を録音する段階では入り・息・語尾が残っているかを、それぞれの目的として意識してください。

声が出づらい朝ほど、音量を先に下げます

喉が乾いていると感じる朝ほど、声を張って様子を見たくなるものです。ですが、喉で押している状態のまま音量を上げると、乾いた粘膜への負担が増えるだけです。まずは音量を下げてください。

音量を下げると、自分の癖がかえって見えやすくなります。息が止まっているか、喉で押しているか、語尾が消えているか。小さい声で安定しないものは、音量を上げても安定しません。

「乾きを無視せず」を楽に出せるか。「息を整えて」で息を止めずにつなげられるか。「状態を確認します」まで息が残るか。小さい声で一つずつ確認してから、少しずつ音量を上げていってください。

喉を守る判断も、練習に含まれます

喉に違和感を覚えている時、無理をして練習量を保つ必要はありません。痛みを感じる、かすれが強い、休んでも回復しないといった状態が続くようなら、練習で乗り切ろうとせず、専門の医療機関に相談するという選択肢も持っておいてください。

声を守ることは怠けることではなく、声を長く使い続けるための技術です。強い声を一回出すことより、必要な声を安定して出せることの方が価値があります。喉のケアというと、のど飴をこまめに舐めることが一番大事だと思われがちですが、実際には水分をきちんと取った方が喉は潤います。のど飴は悪くありませんが、優先するのは水分補給のほうです。乾きが強い日は、水分を取ってから短い一文を確認する程度にとどめてください。

録音の目的は、好き嫌いの判定ではありません

録音を聞くと、かすれた自分の声が嫌に感じることがあります。ですが、録音で確かめるべきは好みではなく、再現できるかどうかです。

昨日より「乾きを無視せず」が楽に入ったか。「息を整えて」で息が止まらなかったか。「状態を確認します」まで声が残ったか。この三点だけに絞って聞いてください。

自分の中で響いて聞こえる声と、外の相手に届いている声は別物です。録音は、その差を音として確かめるための手段として使ってください。

迷ったら、練習項目を増やさず減らします

声が変わらない時ほど、練習を追加したくなるものです。ただ、項目を増やすほど、何が効いたのか見分けがつかなくなります。迷った時は、思い切って項目を減らしてください。

ある日は息だけに注目し、別の日は喉の力みだけに注目し、また別の日は録音で語尾だけに注目する。そのくらい絞った方が、変化はよほどはっきり見えてきます。

最初の一週間は、同じ一文だけで様子を見ます

毎日違う練習を試すと、何が効果を生んだのか分かりにくくなります。最初の一週間は、次の一文だけで十分です。

「乾きを無視せず、息を整えて、短い声で状態を確認します。」

この一文を毎日録音してください。声量を上げる日を作るのではなく、息に注目する日、喉に注目する日、語尾に注目する日というふうに、日替わりでテーマを一つだけ決めてください。

一週間続けると、自分がどの場面で崩れやすいかが自然と見えてきます。そこから練習量を増やせば、遠回りを避けられます。

声そのものより先に、手順を元へ戻します

声がうまく出ない時、多くの方はすぐに声自体を直そうとします。もっと大きく、もっと高く、もっと響かせる、もっとはっきりと。ただ、乾いた喉のままでは、声を触る前に手順を戻す方がよほど安定します。

最初に戻すべきは息です。息が止まったまま声を出すと、喉が先に働いてしまいます。次に戻すのは体の姿勢です。肩や顎が固まると、息の流れが妨げられます。声そのものに手をつけるのは、息と体が整ってからです。

この手順を守るだけで、練習の結果はかなり変わります。声を直接よくしようとするより、声が出やすい状態を先につくる方が、乾いた喉への負担も少なく済みます。

録音チェックは、三つの視点にとどめます

録音を聞く際に、全体としての上手さを判断しないでください。全体を聞くと、好き嫌いや恥ずかしさに引っ張られてしまいます。視点は三つだけに絞ります。

声の立ち上がりが喉から押し出されていないか。話の途中で息が止まったり急に強くなったりしていないか。そして、語尾や音の終わりまで息が残っているか。

このどこかに少しでも変化があれば、練習は前進しています。大きな変化だけを成果と見なさないでください。声は、小さな再現性を積み重ねて変わっていくものです。

一回で仕上げようとしない方が、乾いた喉には合っています

声を変えたい気持ちが強いほど、一回の練習で手応えを求めたくなります。ただ、強い手応えを追うほど、乾いた喉のまま頑張ってしまいがちです。

まずは楽に出せる範囲だけで十分です。高い音も低い音も大きな声も、楽な声が確認できてから範囲を広げてください。楽な範囲を飛ばして難しい音へ進むと、声はかえって不安定になります。

一日目は息だけ、二日目は喉の力みだけ、三日目は録音で最後の音だけというふうに日を分けると、何が変わったのかが見えやすくなります。

違和感がある時は、練習量そのものを軽くします

喉に違和感がある時は、練習を続けるかどうかをまず判断してください。痛みを感じる、かすれが強い、休んでも戻らない状態が続く場合は、発声練習で無理に押し切ろうとしないでください。

負荷を落とす日の目安は、音量を上げないこと、高音域を狙わないこと、音を長く伸ばさないこと。この三つを避けて、息を流しながら短い一文を一回だけ録音する程度にとどめます。

声を守ることは練習の手抜きではなく、安定して声を使い続けられる状態を残すためのケアの一部です。

仕上げの確認は、条件をそろえて比べます

練習の最後は、同じ一文を、同じ音量、同じ距離で一度だけ録音してください。毎回条件を変えて比べると、何が変化したのか分かりにくくなります。

確認する項目は固定します。声の立ち上がりで喉が押されていないか、話す途中で息が止まっていないか、最後の音までしっかり残っているか、そして昨日より楽に出せたかどうか。この四点があれば足ります。

声を変えるというのは、別人の声になることではありません。乾きやすい自分の声を、相手に届く形で安定して再現できるようにすることです。

まとめ

口呼吸で声が乾く場面では、乾きを声量でごまかそうとする前に、息、喉、体、録音の順で状態を見てください。「乾きを無視せず」の入り方、「息を整えて」の息の流し方、「状態を確認します」の録音確認、この三か所を整えるだけで練習全体の質は変わっていきます。

声を変えるというのは、喉を頑張らせることではありません。乾きやすい体のまま、相手にきちんと届く声を再現できる状態をつくることです。

よくある質問

Q. 口呼吸 声では何から始めるべきですか
最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
Q. 毎日練習した方がいいですか
短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
Q. 録音は必要ですか
必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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