話すと喉が乾く人へ。水分だけでなく発声の負担も見る

話していると喉が乾く、声が出しにくくなる人へ。水分補給に加えて、喉で押す癖、息の浅さ、語尾の使い方を見直します。

奥津ユキ

問い合わせ窓口や電話対応が続く仕事では、午後に差しかかるあたりから喉がひりつき、声がかすれてくることがあります。水を飲んでもすぐにまた渇き、後半になるほど声を喉で押し出すようになる。話の中身は変わっていなくても、相手には弱々しく、急いでいて、頼りない声として伝わってしまいます。原因を水分不足だけで片づけてしまうと、次の電話でも同じ場所に負担がかかり続けます。一件ごとに姿勢を正し直す余裕もないまま次の呼び出し音が鳴る、その繰り返しが喉を追い込んでいきます。

スマホ一台で分かる、渇きの正体

まず、今日実際に使う言い回しで試してみます。

「お問い合わせいただいた内容について、確認しながらお答えします。」

一回目は普段どおりに録音します。二回目は、話し出す前に息を軽く吐いてから同じ一文を読みます。三回目は、「お答えします」の語尾だけを、押さずに最後の一音まで置く意識で読みます。

聞き比べるときに見る場所は三つだけです。

確認する場所聞くポイント
お問い合わせいただいた内容について出だしの音が小さく消えていないか
確認しながら重要語の手前で急いでいないか
お答えします語尾まで息が残っているか

一回目は出だしが硬く、語尾が急に切れて聞こえることが多いはずです。二回目、三回目と進むにつれて、同じ声量のままでも余裕のある聞こえ方に変わっていれば、喉が渇きやすい人の癖はこの二箇所に出ているということです。声そのものを作り直す前に、まずこの違いを自分の耳で確認してください。三回とも同じ文なのに聞こえ方が変わる、という事実そのものが、渇きの原因が声質ではなく使い方にあることの証拠になります。

渇きは、喉で止めた息から始まる

問い合わせの電話を何本も受けていると、途中から息を止めたまま話し始めることが増えます。受話器を取った瞬間、相手の言葉を待ちながら身構えてしまい、声を出す直前に呼吸そのものが止まっているのです。息が止まった状態で声を出すと、最初の音を喉の力だけで押し出す羽目になり、これが一日のうちに何十回も積み重なって渇きとして残ります。

私が声の小ささを相談されたとき、まず見るのは声量ではなく息のスピードです。「大きな声で」と伝えると、たいていの人は喉で押した声になり、渇きも余計に強まります。ところが「話す前に短く吐き切ってください」と伝えるだけで、声量はあとから自然に上がってきます。渇きやすい人ほど、吸うことにばかり意識が向き、吐く流れを作れていません。次の電話に出る前に、まず一度短く吐く。それだけで喉にかかる負担は変わります。

呼び出し音が鳴ってから受話器を取るまでの一秒に満たない時間、そこで息を吐けているかどうかが、その一件全体の喉への負担を左右します。急いで出ようとするほど、この一秒は削られやすくなります。

大きい声を求めるほど、渇きは強くなる

聞き取りにくいと指摘されると、多くの人はまず声を張ろうとします。しかし声量だけを上げても、喉で押す発声のままなら相手には硬く届き、渇きもかえって強くなります。仕事で使う声の役割は大きさだけで決まるものではなく、相手が聞き取り、判断し、次の会話へ進められる状態を作ることにあります。声を張った直後は伝わった手応えがあっても、それが積み重なった結果として喉の渇きが残るのだとしたら、その方法は長続きしません。

声量より先に見直すべきは、息の置き場所です。話し出す直前に息が止まっていると、最初の音を喉の力だけで押し出すしかありません。逆に、短く吐く息が前へ向かって流れていれば、声は自然と立ち上がります。聞こえないほど小さい場合は声量を足すことも必要ですが、それ以外の場面ではまず息の流れを疑ってください。相手から「もう一度お願いします」と言われるたびに声を張り増していくと、渇きは加速度的に強くなっていきます。

長時間の電話でも喉が枯れない人がやっていること

電話対応が続く仕事で喉が持つ人と持たない人の差は、声帯の強さではなく体の支え方にあります。同じ件数をこなしていても、夕方になっても声が保っている人と、午前中から掠れ始める人がいるのはこの差です。私が伝えているのは、横隔膜のあたりを前へそっとつまむような感覚を、話している間ずっと保っておくことです。喉で締めて支えるのではなく、この感覚があるだけで、同じ声量でも喉への負担がまるで違ってきます。

もうひとつ意識してほしいのが、お腹の圧です。話す前に息を吸う瞬間、お腹の力を抜いてしまう人がいますが、吸うときも圧を抜かないようにしてください。吐くときだけ支えるつもりでいると、次の一言でまた喉に頼ることになります。この二つは同時にやろうとすると難しく感じますが、まずは横隔膜のつまむ感覚だけを、電話を一本受けている間だけ試してみるところから始めれば十分です。

慣れるまでは、通話の合間にほんの数秒だけこの感覚を意識するだけで構いません。一日中続けようとすると気疲れしてしまうので、件数の多い時間帯だけ試すくらいがちょうどよい負荷です。

受話器を取る前に、体はすでに固まっている

喉が渇きやすい人は、話し出す前からすでに体が固まっていることが多いです。肩が持ち上がる。胸だけで浅く息を吸う。背中が止まる。みぞおちがこわばる。この状態で声を出すと、実際には喉で押した声になりやすく、渇きも強く出てしまいます。パソコンの画面を見ながら次の対応を考えているとき、この固まりは特に起きやすくなります。

姿勢を大きく作り直す必要はありません。椅子に座ったまま足の裏を床に置き直し、電話を取る前に短く息を吐く。これだけでも、声の出口が変わってきます。体の準備が整うと、出だしがきちんと入り、重要語の手前で間が取れて、語尾も残りやすくなります。渇きを感じる日ほど、このひと手間が喉への負担を減らしてくれます。前の対応で嫌な思いをした直後ほど、この固まりは強く残りやすいので、次に出る前の数秒はとくに意識してください。

取次ぎの合間、三十秒でできる確認

次の電話に出る前、長い発声練習は不要です。水を一口含んだら、次の一文をもう一度だけ声にしてみてください。

「お問い合わせいただいた内容について、確認しながらお答えします。」

見る場所は先ほどと同じ三つです。出だしが小さく消えていないか。重要語の手前で急いでいないか。語尾まで息が残っているか。渇きを感じる日ほど、確認項目を増やさず、この三つだけに絞ります。三十秒あれば足りる確認ですが、忙しい日ほど省略されやすいので、水を含むタイミングと一緒に習慣にしてしまうのがおすすめです。件数が落ち着く時間帯を見つけて、そこだけ確認の時間に充てるという決め方でも十分に効果は出ます。

後半で声が重くなったら、切る前に一呼吸

件数をこなすほど、次の電話へ急いで移りたくなります。ですが受話器を置いた直後に息を止めたまま次を取ると、渇きも力みも積み重なっていきます。午前中は軽く感じられた声が、午後になるほど重くなるのはこのためです。

一件終えたら、置く前ではなく置いた直後に短く息を吐いてください。この一呼吸は仕事を遅らせるためのものではなく、喉に溜まった力を逃がすための時間です。忙しい時間帯ほど、この数秒を削らないようにしてください。数秒の差が、一日の終わりの喉の状態を大きく変えます。件数を追う気持ちが強いほど、この一呼吸は無駄に感じられますが、結果的には次の対応の質を保つための時間になります。

声を作り直すより先に、渇きの出どころを聞き分ける

話すほど喉が乾く声は、水分補給だけで整うものではありません。出だしの入り方、重要語の手前の呼吸、語尾の残り方。この三箇所のどこで力んでいるかを聞き分けられれば、対処の仕方は見えてきます。

次に電話を取るときは、声の良し悪しを判断する前に、まず一件分だけ録音してみてください。渇きを感じた場所がそのまま、直すべき場所です。声を大きくしようとするのではなく、崩れている場所を一つずつ見つけていくほうが、結果として喉への負担は軽くなっていきます。水を一口飲むのと同じくらいの手間で、出だし・重要語の手前・語尾のどこかを毎日一つだけ確かめる。それだけの積み重ねが、渇きにくい話し方を作っていきます。

よくある質問

Q. 長い会議や電話で声が弱く聞こえる原因は何ですか
話すほど喉が乾く、声がざらつく、後半で声を押すなどで、息・喉・体・語尾・間のどこかが崩れていることが多いです。
Q. 長い会議や電話では大きな声を出せば解決しますか
声量だけでは安定しません。最初の音、重要語の前の間、語尾まで息を残すことを先に整えます。
Q. 本番前に何を練習すればいいですか
本番で使う一文を録音し、入り、間、語尾の三点だけを確認してください。
無料動画講座

声が変わると、人生が変わる。

通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。

登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
関連記事