朝いちばんに電話をかける仕事の人は、受話器を取ってから最初のひと言が出るまでの数秒に、その日いちばん緊張します。声が低く沈み、喉の奥から重く出てくる感覚があるなら、直すのは長い発声練習ではなく、電話をかける前の一文です。
出勤前に、電話の一言をその場で録音して比べます
電話をかける前に言うつもりで、次の一文を声に出してください。
「もしもし、いつもお世話になっております。」
まずは起きたままの声で一度録音します。次に、小さく「ん」と十秒ほどハミングしてから、声を出す直前に短く息を一度だけ吐き、同じ一文をもう一度録音します。二つを聞き比べると、後者のほうが「もしもし」の出だしが軽く、語尾の「ります」まで声が沈まずに残っていることに気づきます。この差を生んでいるのは声量ではなく、声を出す前にどれだけ体を起こしておけたかです。
デスクに座ってイヤホンを着けるまでの短い時間でも試せます。特別な場所は要りません。周りに聞こえるかどうかを気にするより、まず自分の耳で二つの録音を聞き比べることを優先してください。
原因は声量不足ではなく、一文の入り方の崩れです
朝一番の声が低く、喉の奥から出て重く聞こえる時、多くの人は声量を足そうとします。朝の声出しというと、毎日大きな声を出して喉を鍛えるものだと思われがちですが、実際は毎日大きな声を出し続けるのはおすすめできません。寝起きに声量で喉を起こそうとすると、力みが喉の奥にたまり、続く言葉がかえって重くなります。
確認したいのは音量ではなく、第一声の始まり方です。「もしもし」の一音目が喉の奥で立ち上がると、後に続く「お世話になっております」も同じ場所に沈んだままになります。相手にとっては、内容より先に「今日は機嫌が悪いのだろうか」という印象が残ってしまいます。
もう一つ関わっているのが、息を吐き出すスピードです。ゆっくり丁寧に話そうとするほど息の流れは遅くなり、かえって喉に負担がかかります。反対に、短く速く吐き出すつもりで声を乗せると、同じ強さで出しているつもりでも声は軽く前に出ます。朝は特にこの感覚がつかみにくいので、ゆっくり話そうとする意識を一度手放してみてください。
出勤前の1分でできるウォームアップ
長い発声練習は要りません。まず30秒、声を出さずに息だけを流します。眠っていた体に大きく吸い込ませるより、短く吐く方が先です。肩が持ち上がるような吸い方はしません。
続く30秒は、小さく「ん」とハミングします。朝一番から響きを作り込もうとせず、寝起きの喉の奥を押していないかだけを確かめます。ハミングの延長で「もしもし」を鼻から抜けた息の流れにそっと置くくらいの気持ちで声にすると、喉で押し出す感覚とは違う入り方になります。
デスクに着いてから受話器を取るまでの数十秒しかない朝でも、この1分は電話の前の椅子に座ったままでできます。声を出さない30秒と、ハミングの30秒。周りに気づかれるほどの大きさは必要なく、隣の席に聞こえない程度で十分です。
息・喉・体の順で、一文を出す前に見ます
一文を出す前に確認する場所は、いつも同じ三つです。
- 息。朝は話し出す前に息が止まりがちです。止まったまま出す第一声は硬くなります。深く吸い直すより、短く吐いて流れを作ってから声を乗せます。
- 喉。「もしもし」の最初の音を喉で押して出すと、一瞬は張った声に聞こえても、そのあとの「お世話になっております」まで保ちません。小さな声で出しても喉が詰まる場合は、声量を上げても負担が増えるだけです。
- 体。朝はとくに首、肩、顎、舌の根元がこわばったままのことが多く、息が流れていても声が前に出ません。足の裏を床につけ、首の後ろを軽く伸ばしてから声を出すと、喉だけで支えていた癖に気づきやすくなります。
録音の自分の声に違和感があるのは、声が悪いからではありません
朝の練習で録音を聞き返すと、多くの人が自分の声に違和感を持ちます。これは声そのものが悪いからではありません。自分の声は骨を通して低く聞こえていて、外に出て相手に届く声とは、そもそも聞こえ方が違う音だからです。実際には、自分が思っているより高く軽い声を出している人がほとんどです。
その違和感を理由に録音をやめないでください。録音は嫌な部分を突きつける道具ではなく、朝の声がどこで沈んでいるかを一つずつ絞り込むための道具です。繰り返し聞いているうちに耳が慣れ、無理に低く作ろうとする力みも自然に抜けていきます。
はじめのうちは、聞き返すたびに気になる箇所が変わるかもしれません。ある日は出だし、次の日は語尾というように、注目する場所が定まらないのは自然なことです。一週間ほど同じ一文で聞き比べていると、自分の朝の声がどこで沈みやすいか、傾向が見えてきます。
電話でも対面でも、その日最初に確認する場所は同じです
朝の声の重さは、相手や場面によって違って聞こえます。電話では低く沈んで聞こえる。画面越しの会議では暗く見える。対面の挨拶では小さく消える。けれど、その日最初に確認する場所は変わりません。息が先に動いているか、喉で押し出していないか、語尾まで質感がひと続きに残っているかの三つです。
場面ごとに違う直し方を増やす必要はありません。その日最初に使う一言で、この三つを確かめれば十分です。電話をかける仕事の日はここまでの電話の一言で、会議から始まる日は会議の冒頭の一言で、同じ三つを確認するだけで足ります。
朝いちばんの相手が誰であっても、声を出す前の体の状態は同じです。電話の相手には表情が見えない分、声の印象がそのまま伝わります。逆に言えば、電話の一言で整えた声は、対面や画面越しの場面にもそのまま持ち込めます。
電話の一言を三段階で最終確認します
出勤直前の仕上げに、次の一文を条件を変えて三回だけ録音します。
「もしもし、いつもお世話になっております。」
一回目は起きたままの声で。二回目はハミングと短い息のあとで。三回目は「おります」の最後の一音まで声を置いたまま終える意識で。三つを聞き比べれば、その朝いちばん声が変わる瞬間がどこかがはっきりします。回数を重ねるより、同じ条件で聞き比べることの方が手がかりになります。
三回目でしっくりきた感覚は、そのまま覚えておく必要はありません。受話器を取る直前にもう一度同じ手順を繰り返せば、練習した感覚は自然に戻ってきます。毎朝同じ流れを踏むこと自体が、声を整える合図になります。
出勤直前は、短い言葉から本番の声に移します
整えた声を、そのまま長い説明や込み入った電話に持ち込もうとすると、途中で崩れやすくなります。最初にならすのは短い言葉で足りていて、先ほどの挨拶や「かしこまりました」「よろしくお願いいたします」といったひと言で入り方・息・語尾を確かめてから、本番の長さに移ります。
短い言葉で声が整えば、そのあとの長い説明にも移しやすくなります。反対に、短い言葉ですでに喉が詰まる朝は、電話の本題に入ってからさらに負担が出やすくなります。出勤直前にできることは多くありません。だからこそ、複雑な発声練習ではなく、この一文だけを使います。
一つずつ確かめる余裕がない朝は、挨拶のひと言だけでも構いません。一言でも喉が詰まらずに出せれば、その日の電話は最初の一言で崩れずに済みます。始業と同時に着信が鳴るような朝ほど、この割り切りが効きます。
朝の一文は、その日の声の基準になります
朝は、声がまだ起きていないことがあります。いきなり長く話すと、喉だけで声を出しやすくなります。だからこそ、一文だけで声の基準を作る練習が役立ちます。使う文は、その日いちばん最初に交わす言葉が向いています。電話をかける人は電話の一言を、会議から一日が始まる人は会議冒頭の一言を選びます。
録音は一回で十分です。上手く話せたかではなく、声が喉に引っかかっていないか、語尾が沈んでいないかを聞きます。うまくいかなかった朝は、息・喉・体のうち崩れていた場所だけを次の朝に持ち越してください。同じ一文を同じ手順で繰り返すことが、長い発声練習よりも先に、その日の話し始めを整えます。
声出しの成果は、派手な変化として現れるものではありません。受話器を取った瞬間、いつもより喉が軽いと感じられれば、その朝の一文は役目を果たしています。
よくある質問
- Q. 朝 声出し 一文 練習の原因は何ですか
- 声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
- Q. すぐできる練習はありますか
- 短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
- Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
- 痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
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詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
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