ヘッドボイスと裏声の違い。軽さと芯を録音で分ける

ヘッドボイスと裏声の違いが分からない人へ。息漏れ、響き、喉の負担を分けて確認します。

奥津ユキ

ヘッドボイスと裏声の境目が分からない時、多くの人は声質そのものを比べようとします。ですが実際に手がかりになるのは、練習量ではなく息の量です。息漏れが多いまま芯を出そうとして喉が締まる、録音で二つの違いを聞き分けていない。この状態が続くと、声区を切り替える感覚はいつまでも曖昧なままです。

ヘッドボイスと裏声は、息の量の違いで聞き分けます

たとえば、次の一文です。

「軽い声を出し、息漏れと響きの残り方を録音で確認します。」

「軽い声を出し」の出だしに力が入ると、その時点で声は喉から始まってしまいます。「息漏れと響き」の部分を急いで通り過ぎると、息と声の関係がずれます。「録音で確認します」まで実際に聞き取らないうちは、変化は感覚上の思い込みにとどまります。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

ヘッドボイスと裏声の違いは、生まれ持った声区の才能で決まるものではありません。息の量をわずかに変えて聞き比べると、その境目は誰でも確認できます。

ヘッドボイスは裏声を強くしただけではありません

二つを混同しやすい人がやりがちなのは、ヘッドボイスを「裏声を強くしたもの」だと考えることです。違いをはっきりさせたいほど、喉に力を込めて響きを足したくなります。

けれど裏声は息が多く混じって薄く聞こえる声で、ヘッドボイスは同じ高さでも息漏れが少なく、芯が響きとして残る声です。この差は喉を締める強さではなく、息の量をわずかに調整することで確かめられます。

裏声が出ないのは声帯の閉め方が弱いから、と思われがちですが、実際は喉仏の角度と、声帯の間をわずかに開けておく使い方の問題です。強く閉じようとするほど、かえって裏声の軽さから遠ざかってしまいます。

確かめる順番は、息、喉、体、録音です。息が途中で止まっていないか。喉に力が入っていないか。体が固まっていないか。そして録音で同じ状態を再現できるか。この順で見ると、練習の方向が定まりやすくなります。

違いが出ない原因は、三つに分けて探ります

ヘッドボイスと裏声を比べてもうまく違いが出ない時、原因を一つに絞り込まないでください。息漏れが多い、喉で芯を作ろうとする、録音で違いを聞き分けていない。この背景には息、喉、体の三つが関わっています。

一つ目は息です。息が多すぎると裏声のまま薄く残ります。絞りすぎると芯は出ても喉が締まります。大切なのは、息漏れをほんの少しだけ減らす加減です。私の実感では、この加減は締めすぎでも緩すぎでも声が弱くなり、しかも人によってどちらに寄りやすいかが逆になります。自分がどちら寄りかを知らないまま独学で加減を探ると、遠回りになりやすいところです。息漏れが多く薄いままの人には、「あ゛ぁ゛」と喉の奥を軽く鳴らすエッジボイスで、声帯が閉じる感覚を先につかんでもらうこともあります。

二つ目は喉です。喉に力を入れて結果を出そうとすると、声は硬くなります。響きも芯も、喉だけで作ろうとすれば不安定になります。

三つ目は体です。肩が上がる、胸が固まる、顎が上がる。これらは息の流れを変え、体がこわばった分だけ喉で補う癖が出てきます。

練習は、同じ高さのまま息の量だけを変えます

最初の段階は、息だけの準備です。声を出さず、短く吐く感覚をつかみます。大きく吸い込むより、吐く息が前に流れていくことを優先します。

次の段階は、軽い声です。大きく出す必要はなく、いつもの裏声に近い軽さで、喉が押されていないかを確かめます。

最後の段階は、一文の録音です。「軽い声を出し、息漏れと響きの残り方を録音で確認します。」を録ってください。声の強さではなく、入り・息・語尾の三点を聞きます。

ステップやること確認ポイント
はじめ声を出さずに短く息だけ吐く肩や胸がこわばっていないか
いつもより軽い声で出してみる喉に余計な力が入っていないか
仕上げ決めた一文を録音する出だし・息の流れ・語尾の三点

録音で見るのは、どちらが上手いかではありません

録音を聞くと、どちらの声区に近いかを声の印象だけで判定したくなります。ですが録音で確かめるべきは好みではなく、同じ状態を再現できるかどうかです。

昨日より「軽い声を出し」がやわらかく入ったか。「息漏れと響き」の途中で息が止まらなかったか。「録音で確認します」まで声が残ったか。見るのはこの三点だけです。

録音を挟むことで、思い込みではなく実際の音で確認できます。自分の頭の中で鳴っている響きと、マイクを通して相手に届く響きとは、そもそも別の音だと考えてください。両者のずれを埋める手段として、録音を毎回のチェックに組み込んでおきます。

その日の喉の調子も、練習メニューを決める材料にします

喉に痛みや強いかすれがあり、休息を挟んでも戻らない時は、練習量で乗り切ろうとせず、専門家への相談を検討する段階だと考えてください。

そうした日に切り替える基準は具体的です。声量を上げない、高音域を狙わない、息漏れを一気に絞ろうとしない。この三つを守りながら、短い一文だけを軽く録音する程度にとどめます。休むことは怠けではなく、声を長く使い続けるための判断です。

仕上げは、同じ一文で聞き比べます

練習の最後には、必ず同じ一文を録音してください。毎回違う文を使うと、何が変わったのか分かりにくくなります。同じ一文であれば、息漏れの量と響きの違いが耳で聞き取りやすくなります。

昨日より息漏れが減って響きが残ったか。昨日より喉の力みが取れたか。昨日より最後の音が残っているか。この三点だけで十分です。目指しているのは別人のような声ではなく、いまの自分の声を相手に届く形で何度でも再現できるようにすることです。

迷ったら、確認する項目を減らします

声の違いがはっきりしないと感じるほど、あれこれ確認したくなります。ですが項目を増やすほど、どれが効いているのか見えなくなります。迷った時は、むしろ項目を一つ減らしてください。

ある日は息の量だけを見る。次の日は喉の力みだけを見る。その次は録音での響きだけを見る。一つずつ確認するほうが、違いははっきり分かります。

響きが体のどこで感じられるかも手がかりになります

裏声は、喉の高い位置だけで薄く響いている感覚が中心になりやすいです。一方でヘッドボイスは、同じ高さでも、喉より少し上の鼻の奥や頭の中で響きが続いている感覚が残ります。どちらが正しいという話ではなく、この感覚の違いも、二つを聞き分ける手がかりになります。

感覚だけで判断すると、思い込みで変わったつもりになりがちです。体で感じた違いは、必ず録音でも確認してください。感覚と音の両方が一致した時だけ、その状態を「再現できるもの」として練習に残します。

疲れている時ほど、無理に芯を出そうとしないでください

声を長く使った後や、寝起きなど喉が温まっていない時は、ヘッドボイスの芯を出そうとすると、いつもより強く喉に力が入りやすくなります。疲れている時は、無理に芯を作ろうとせず、裏声のまま軽く出すだけの日があってもかまいません。

芯のある響きを毎回同じように求めるより、その日の喉の状態に合わせて、裏声とヘッドボイスのどちらで練習するかを選ぶほうが、長い目で見て喉に負担をかけずに続けられます。

録音を聞き比べる時は、同じ環境で録ります

裏声とヘッドボイスの違いを録音で聞き比べる時、録音する部屋やマイクとの距離が毎回違うと、響きの違いが機材のせいなのか声のせいなのか分からなくなります。できるだけ同じ部屋、同じ距離、同じ音量設定で録るようにしてください。

環境をそろえておくと、聞こえ方の変化が自分の声そのものの変化だと確信を持って判断できます。判断が曖昧なまま練習を続けると、効いている工夫と効いていない工夫の区別がつかなくなります。

曲の中では、切り替える理由も一緒に確認します

同じ高さの音でも、曲の中で裏声を選ぶ場面と、ヘッドボイスを選ぶ場面があります。柔らかく歌いたい部分では裏声の軽さがそのまま表現になりますし、芯を持たせて伸ばしたい部分ではヘッドボイスが合います。

どちらが正しいという練習ではなく、その部分で何を伝えたいかによって選び分けるものだと考えてください。録音を聞く時も、技術としてどちらが出せているかだけでなく、その部分に合った声を選べているかを一緒に確認すると、練習の目的がぶれにくくなります。

違いが分かりにくい時は、一音だけで比べます

一文の中で裏声とヘッドボイスを切り替えようとすると、どこで何が変わったのか分かりにくくなります。まずは同じ高さの音を一つだけ選び、裏声で伸ばした録音と、息漏れを少し減らして伸ばした録音を、続けて聞き比べてください。

一音だけの比較なら、響きの違いがはっきり聞こえます。違いが耳で分かるようになってから、一文、そして曲のフレーズへと範囲を広げていくと、遠回りに見えて確実に進みます。

話し声にも、同じ聞き分け方が応用できます

裏声とヘッドボイスの違いは、歌だけの話ではありません。普段の話し声でも、息が多く抜けて薄く聞こえる声と、息漏れが少なく芯が残って聞こえる声があります。緊張している時や小声で話す時ほど、話し声も息漏れの多い状態に寄りやすくなります。

歌の練習で身につけた「録音で息漏れと響きを分けて聞く」という耳の使い方は、そのまま話し声を整える時にも使えます。歌でも会話でも、見る場所は同じだと考えておくと、練習の成果を日常にも生かしやすくなります。歌のための練習だと切り離さずに、日々の会話の中でも同じ耳で自分の声を聞く習慣を持っておくと、変化に気づきやすくなります。

まとめ

ヘッドボイスと裏声を比べる時は、強くしただけの声だと考える前に、息、喉、体、録音の順番で状態を確かめてください。「軽い声を出し」の入り方、「息漏れと響き」での息の使い方、「録音で確認します」までの確認。この三点を整えるだけでも、聞き分ける耳は変わっていきます。

目指す先は、喉に力をためて芯らしい響きを作ることではありません。今の自分の声のまま、必要な場面で同じ状態を何度でも呼び出せるようにしておくことです。裏声とヘッドボイスのどちらが上か決めようとせず、そのフレーズで何を伝えたいかで選び分けられる状態を目標にしてください。

よくある質問

Q. ヘッドボイス 裏声 違いでは何から始めるべきですか
最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
Q. 毎日練習した方がいいですか
短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
Q. 録音は必要ですか
必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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