クレーム電話で声が震えるとき、気持ちを落ち着かせようとしても、体が先に緊張していることがあります。震えを意志の弱さとして扱わず、どの筋肉の動きが声に影響しているかを分けて考えることが大切です。
体感実験として、「ご不便をおかけし、申し訳ありません。状況を確認します」と言いながら、片手でメモを取ってください。次に、手を止めて同じ言葉を言います。一度目/二度目で、声の揺れ方、息を吸う位置、言葉の速さを比べます。変えるのは、片手でメモを取るか手を止めるかだけです。差が出なかった場合は、手の動きではなく、足裏が床から浮いていないか、肩が上がっていないかを原因として確認してください。
声の震えは、気持ちだけで決まるものではありません
クレーム電話では、相手の強い言葉を受けながら、事実を聞き取り、謝意を伝え、必要な対応につなげます。頭では冷静にしようとしていても、息が浅くなり、首や顎が固まり、声を出す筋肉の動きが細かく乱れることがあります。これが声の震えとして表れることがあります。
私は、震えを「緊張しないように」と抑え込むより、筋肉の使い方として扱うほうが実際的だと考えています。気持ちの整理がまだ追いついていなくても、足裏、下腹部、肩、顎、舌の動きを整えることはできます。体に支えが戻ると、震えが完全に消えなくても、言葉の順番と語尾を保ちやすくなります。
大切なのは、落ち着いて聞こえる声を演じることではありません。相手の話を受け止めるために、こちらの声の土台を確保することです。声が少し震えていても、短く、聞き取れる言葉を置ければ、会話を次の確認へ進められます。
メモを取る手が、息と顎を急がせることがあります
電話中にメモを取ることは必要です。ただ、相手が速く話しているとき、書き漏らしたくない気持ちから手が急ぎ、その緊張が肩、腕、首へ連動することがあります。ペンを強く握ると、顎まで固まり、口が十分に動かなくなることもあります。手の動きと声を別々のものとして扱うと、気づきにくい連動です。
体感実験で片手を止めたときに声が少し安定したなら、問題はメモを取る行為そのものではなく、書く速度と握る強さにあります。通話中に筆記をやめる必要はありません。相手が一文話し終えるまで待ち、要点だけを短く書く。ペンを親指と人差し指で押し潰さず、手首を机に軽く預ける。この小さな変更で、肩が上がるのを防げます。
手を止めても差が出なかったなら、書くことを原因にし続けないでください。両足が床に着いているか、背中が椅子から離れすぎていないか、受話器を肩で挟んでいないかを確認します。声の震えは一つの原因だけで決めません。動作を一つずつ分けると、今の自分に関係する要素が見つかります。
受け止めの第一声は、短くして場を整えます
相手の不満を聞いた直後、丁寧に答えようとして長い謝罪を始めると、息が続かず、声の震えが目立ちやすくなります。第一声は、説明を完成させる場所ではありません。相手の言葉を受け取ったことを示し、次に確認する時間を作る入口です。
「ご不便をおかけし、申し訳ありません」「状況を確認させてください」のように、一文を短くします。二つ続けて言うなら、一文目を置いてから短く吸い、二文目に入ります。謝罪の言葉を急いでつなげないことで、喉を締めずに次の行動へ進めます。仕事の第一声は、声の強さではなく、相手に届く順番で場を取ります。
ここでの「申し訳ありません」は、低く重く言う必要はありません。必要以上に低い声を作ろうとすると、喉の奥を押し下げ、震えが増えることがあります。自分の自然な高さのまま、言葉の最後まで息を前へ運びます。語尾を小さくしても消さないことが、受け止めた事実を相手に渡す助けになります。
震えたときは、息を止めず、短く吸って支えを残します
声が震え始めると、揺れを隠そうとして息を止めることがあります。しかし、止めた後の一言には勢いがつき、喉を締めて押し出しやすくなります。大きく深呼吸する必要はありません。相手が話す間に、鼻から短く吸い、下腹部が急にゆるまない状態を作ります。
次に返すときは、「確認いたします」のように短い文で始めます。息をたくさん吐き切るのではなく、最初の「か」から最後の「す」まで、同じ程度の支えを残します。腹式呼吸の形を作ることより、吸うときも吐くときも圧を抜かないことが重要です。下腹部に強く力を入れず、ベルトの内側に軽い張りを保つように感じてください。
息のスピードも役立ちます。声を大きくして相手を制しようとすると、震えが強まりやすくなります。音量は変えず、口元へ進む息のスピードを少しだけ上げます。すると、声を喉の奥で抱え込まず、言葉の前に運びやすくなります。受け止める言葉は、強く言い切るためでなく、相手に聞こえる位置へ置くために出します。
事実確認は、一問ずつに分けると声も整います
クレーム電話では、確認したいことが多いほど、質問を重ねてしまいがちです。「いつ、どの商品で、どのような状況だったでしょうか」と一息で尋ねると、聞く側も話す側も急ぎます。声が震えているときは、情報を一度に回収しようとしないことが、発声の助けにもなります。
「発生したのはいつでしょうか」「商品名を教えていただけますか」「そのときの状況をもう少し伺えますか」と、一問ずつ置きます。質問の後には相手の答えを書く時間があり、その間にこちらは肩を下げ、息を整えられます。質問を区切ることは、対応を遅くするためではなく、聞き間違いを減らすための手順です。
相手の言葉を確認するときは、「つまり、到着時に破損があったということですね」のように、聞き取った事実を短く返します。この言葉は、感情を評価せず、内容を正確に受け止めるためのものです。長い説明よりも、事実を一つずつ返すほうが、声が揺れていても会話の軸を保ちやすくなります。
謝罪と対応の言葉は、語尾まで渡して終えます
クレーム対応では、謝罪の言葉だけでなく、「確認します」「担当へ共有します」「折り返します」といった対応の言葉が重要です。ここで語尾が息に消えると、約束が弱く聞こえることがあります。強い口調にするのではなく、最後の音を置いてから次の動作に移ります。
「担当部署へ確認し、本日中にご連絡します」と言うなら、「確認し」で急がず、「本日中にご連絡します」を一つのかたまりとして伝えます。間に短く息を入れ、下腹部の支えを残したまま語尾へ進みます。終わりの「す」が小さくても、音として残れば、相手は言葉が完了したことを受け取れます。
私がこの場面でまず確認したいのは、謝罪を丁寧に言おうとして、語尾へ近づくほど顎が閉じていないかです。顎を固めたままでは、最後の子音が出にくくなります。唇は動かしても、歯を噛み合わせない。首の前側を押さない。こうした身体の余白が、約束の言葉を最後まで運びます。
声が震えるときに、無理に落ち着いた声を作らない
震えを隠そうとして、普段よりゆっくり低く話すと、かえって不自然な緊張が声に乗ることがあります。必要なのは、感情を消した声ではなく、情報が伝わる声です。短く謝る、一問ずつ尋ねる、事実を言い換えて確認する、対応を語尾まで伝える。この順番があれば、声の揺れが少し残っていても、通話は前へ進みます。
声の震えが強い日は、通話前に座り直し、足裏を床につけ、ペンを軽く持つだけでも構いません。完璧に整えてから受話器を取ろうとしないでください。体を支える部分を一つ整え、第一声を短く置く。その積み重ねが、次の言葉を出しやすくします。
声の震えに加えて痛みがある、声のかすれが長引く、日常の会話でも出しにくさが続く場合は、発声練習だけで判断せず、耳鼻咽喉科など専門の医療機関へ相談してください。
受け止める声は、揺れを消すより土台を戻す声です
クレーム電話で求められるのは、感情を一切見せない声ではありません。相手の言葉を聞き、必要な事実を確認し、次の対応を約束するための声です。メモを取る手、足裏、肩、顎、下腹部の支えを分けて見れば、震えを大きな不安として扱わずに済みます。
受話器の向こうにいる相手に届けるのは、完璧な低音でも、強い音量でもありません。「受け止めました」「確認します」「連絡します」という言葉を、短く最後まで渡すことです。体の土台を戻して出す一言は、揺れが残る場面でも、会話を次の対応へつなげてくれます。
よくある質問
- Q. クレーム電話で最初の一言が震えるとき、何から整えますか?
- 私は謝罪の言葉を急いで重く出そうとせず、吐く息に軽く腹圧を残して「お電話ありがとうございます」と短く置きます。声帯を締め込むより、息の流れを前へ保つほうが震えを増やしにくいです。
- Q. 相手の強い口調につられて声が高くなるのは、どう防げますか?
- 私は相手の音量へ張り合う前に、文頭の息を少し速くして、高さではなく言葉の輪郭を出します。喉を下げて低く作ろうとすると詰まりやすいため、軟口蓋が上がる感覚を優先します。
- Q. クレーム内容を復唱するときに、冷たく聞こえない声はありますか?
- 私なら復唱の終わりを投げず、要点ごとに小さく区切ります。「〇〇の件でご不便をおかけしたのですね」と、息漏れを増やしすぎずに言うと、受け止める姿勢と言葉が結びつきやすいです。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
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