表彰式で名前を呼ばれた直後、話す前に息を整える方法
名前を呼ばれ壇上へ歩く数秒で声が硬くなる人へ。話し出す直前の息の乱れを整え、震えず一言目を届ける方法をまとめます。
奥津ユキ
社内表彰式で名前を呼ばれ、拍手の中を壇上まで歩く。その数秒の間に息が浅くなり、マイクの前に立った瞬間、最初の一言が震えたりうわずったりした経験はありませんか。原因は気持ちの弱さではなく、歩きながら息を止めてしまっていることがほとんどです。これは、いまこの場で確かめられます。
立って数歩歩いてから、スマホに録音してみてください
スマホのボイスメモを用意して、椅子から立ち上がり、部屋の中を数歩だけ歩いてください。立ち止まったらすぐに「この度は身に余る評価をいただき、ありがとうございます」と声に出して録音します。次にもう一度、同じように数歩歩いたあと、今度は口を閉じて肺にある息を軽く吐き切り、自然に入ってくる息を受け取ってから、同じ一文を録音します。
二つを聞き比べてください。一回目は出だしが硬く、語尾が細くなりやすいはずです。二回目は同じ言葉なのに、声の乗り方が変わっています。違いを作ったのは声の出し方ではなく、話す前の息だけです。表彰式の壇上で起きていることは、いまの数歩の縮図です。
名前を呼ばれてから話すまでの数秒に、何が起きているか
表彰式や朝礼での指名は、話す内容の準備はできていても、話す直前の体の準備が抜け落ちやすい場面です。名前を呼ばれた瞬間に体がこわばり、拍手の音の中を歩く間、無意識に息を止めてしまいます。マイクの前に立った時にはすでに息が浅く、そこに声を乗せようとするため、最初の一言が喉から絞り出す形になります。
息が止まったまま話し始めると、先ほどの一文の出だしが硬くなり、語尾まで息が持たずに声が細くなります。声質の問題ではなく、話す前の息がすでに乱れているだけです。
一方で、聞いている側は、あなたが歩きながら息を整えているかどうかを見ていません。会場に届くのは、マイクの前で出た最初の一言だけです。だからこそ、歩いている数秒は、誰にも気づかれないまま準備をやり直せる時間でもあります。
震え・上ずりは、メンタルよりも息の使い方の問題です
声が震える原因をメンタルの弱さだと考える人は多いです。緊張が影響していないとは言いませんが、それがすべてではありません。息の出し方や声帯まわりの筋肉の使い方が大きく関わっていて、メンタルだけで説明できる話ではないというのが私の見立てです。
緊張すると声が高くなるのも仕方がないと諦められがちですが、トレーニングによって、その上がり幅は少し緩和できます。壇上に立つ回数が増えるほど平気になっていくのも、慣れの効果だけでなく、体の使い方が定着していくからです。
拍手の中を歩きながら、息をどう入れ直すか
歩きながらできることは多くありません。ですができることが一つあります。歩く間、肺にある息を一度軽く吐き切ることです。大きく吸おうとするより、吐き切ってから入ってくる息を受け取るほうが、喉に力が入りにくくなります。
歩きながら浅く息を吸い足すよりも、いったん吐き切ってから、いつもより少し速く吸い直すほうが、マイクの前に立った時に声が乗りやすくなります。ゆっくり弱く吸おうとするほど息は喉の手前で止まりやすく、逆に短く速く吸い直したほうが、体の奥まで息が届いて声の支えになります。
肩を上げて大きく吸おうとする必要はありません。肩が上がると胸が上がり、その分喉が締まりやすくなります。お腹のあたりに軽く圧をかけたまま、吸うときもその圧を抜かないでください。拍手が鳴っている間は周囲の音が大きく、あなたが息を吐き切っていることに気づく人はいません。歩きながらの吐き切りは、人前でも堂々と使える準備です。
深呼吸をすれば落ち着くという考え方について
緊張をほぐすには深呼吸が一番だと言われることがあります。深く息を吸うこと自体は否定しません。ただ、吸うことだけに意識が向くと、肩が上がり胸が浮いた状態になり、かえって喉が締まりやすくなることがあります。
私が見る順番は逆です。まず吐き切る。それから自然に入ってくる息を受け取る。吸う量を増やそうとするより、吐き切れているかどうかを先に確認したほうが、壇上での一言目は安定しやすくなります。深呼吸そのものを否定しているのではなく、吸う前にひと手間を挟むだけで、同じ深呼吸でも喉への負担が変わるということです。
歩く姿勢と、賞状を受け取る動作も息に影響します
名前を呼ばれた瞬間、多くの人は次の言葉ばかり考えて、歩き方まで意識が回りません。ですが、うつむいたまま早足で歩くと胸が閉じ、その分だけ息の通り道も狭くなります。反対に、視線を少し上げて胸を開いたまま歩くと、同じ緊張の中でも息が入りやすくなります。
顎が前に出た状態で立ってしまうと、喉に余計な力が入りやすくなります。マイクの高さを合わせる瞬間に、顎を軽く引き直すだけでも、最初の一言の硬さは変わります。
表彰式では、賞状を両手で受け取ってから一言を求められることもあります。賞状を胸の高さで持とうとすると、腕に力が入って肩ごと持ち上がり、そのまま話し始めると声の通り道が狭いままになります。受け取ったら一度だけ持ち直して、肘を軽く下ろしてから口を開く。この一拍が、歩いてきた勢いのまま喉だけで声を出してしまう癖を断ち切ってくれます。壇上に着いてすぐ話し始めず、足の裏で床を踏む感覚を確かめてから声を出すのも同じ理由です。
もう一つ、当日の服装も息に関わります。表彰式ではスーツのボタンを留め、背筋を伸ばして立つことが多くなります。練習を部屋着だけで済ませていると、当日は胸まわりの窮屈さの分だけ息の入り方が変わります。練習のうち一回は、当日に近い服装で録音しておくと、本番とのずれが小さくなります。
一週間前の録音が、本番後の答え合わせになります
本番の直前だけでなく、表彰式が決まった時点から準備しておくと、当日の負担は減ります。使う一文を先に決め、その一文だけを繰り返し録音しておく方法です。
「この度は身に余る評価をいただき、ありがとうございます」
この一文を、歩く動作をつけずに座って録音する日、実際に歩いてから録音する日というふうに、条件を分けて何度か試しておきます。座って言うときは滑らかでも、歩いてからだと息が乱れる、という差に気づけるのが一週間前からの準備の効果です。差に気づいた時点で、吐き切ってから吸うという手順をもう一度意識して繰り返せば、本番での崩れ方は小さくなります。
そして表彰式が終わった後、その場の記憶だけで判断するのはもったいないです。可能であれば本番の様子を録音か録画で残しておき、自宅で練習した時の録音と聞き比べてください。聞くのは出来栄えの採点ではなく、出だしが練習と同じ軽さで入っていたか、語尾まで息が保っていたか、この二点だけです。本番特有の乱れがあれば、次に同じ場面が来る前に、歩き方や吸うタイミングを微調整できます。表彰式のような機会は年に何度もあるものではないからこそ、一回分の経験を漠然とした感想で終わらせず、次に使える具体的な手がかりとして残しておく価値があります。
拍手の数秒は、息を止める時間ではなく入れ直す時間です
一度うまくいったからといって、次も同じようにいくとは限りません。会場の広さ、拍手の長さ、名前を呼ばれてから歩く距離は毎回違います。ですが、吐き切ってから吸う、お腹の圧を抜かない、実際に使う一文で出だしと語尾だけを確認するという手順そのものは、場所が変わっても同じように使えます。
緊張をゼロにすることを目指すより、緊張したままでも同じ手順を踏めることのほうが、実際の壇上では役に立ちます。壇上で求められているのはスピーチの巧みさではなく、短い御礼の一言です。そしてその一言の質は、話している最中ではなく、話す前の息で決まります。次に名前を呼ばれて壇上へ向かう時は、拍手の中で一度だけ、息を吐き切ってみてください。マイクの前に立った時の一言目が、それだけで変わります。
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よくある質問
- Q. 名前を呼ばれてから話し出すまでの数秒で、何をすればいいですか
- 大きく吸い込もうとせず、いま肺にある息を軽く吐き切ってから、自然に入ってくる息を受け取ります。吸う量より、吐き切れているかを見てください。
- Q. 緊張で声が震えるのはメンタルの弱さですか
- メンタルだけではありません。息の出し方や喉周りの筋肉の使い方が大きく関わっているので、体の使い方を整えるほうが効果的です。
- Q. 深呼吸すれば落ち着くと聞きますが本当ですか
- 深く吸うこと自体は有効ですが、吸うことだけに気を取られると胸が上がり喉が締まることがあります。吐き切ってから吸う順番を意識してください。
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詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
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