YouTube撮影・配信で聞き取りやすい声。マイク乗りとこもりを直す

YouTube撮影で声がこもる、聞き取りにくいと言われる人へ。台本読みとフリートークの違い、テイク重ねの喉消耗から整えます。

奥津ユキ

配信に使うマイクの前で、「今日のテーマを一つずつ説明します」と一度言ってみてください。そのまま声の大きさも口とマイクの距離も変えず、口とマイクの間に立てていた手のひらだけを外し、同じ文を二度目に言ってみてください。二度目で口元の前が開いた感じが変わったなら、こもりは機材ではなく間にあるものを点検する余地があります。差が出なければ、手以外の別の原因として、マイクの向きや端末側の設定を確認してみてください。

こもった声は、マイクの性能だけでは決まらない

YouTubeや配信で「声がこもる」と感じると、マイクを高価なものへ替えることを考えやすくなります。もちろん機材には得意な音域や設定がありますが、声がマイクへ届くまでの短い空間には、機材以外の要素が多くあります。唇の前にある手、マイクに巻いた布、口元へ上がった襟、マイクの正面を横切るケーブル、顔の前へ出た台本、机に置いたままのスマートフォン。こうしたものは、音を完全に止めなくても、言葉の輪郭が入る経路を狭めます。その結果、低い成分だけが残ったように感じられ、声全体が箱の中にあるように聞こえるということが起こります。私がこの場面でまず確認したいのは、口とマイクの間が一本の空いた通路になっているかです。マイクの前に何もない状態を作ると、問題の場所を機材設定だけに限定せずに済みます。こもりを直すために声を明るく出そうとする前に、物理的に何が間へ入っているかを見てください。音質は、話し手の口からマイクまでの空間も含めて作られます。

見えにくい障害物ほど、配信中に増えやすいものです。考えながら口元へ指を置く、コメントを読むために端末を上げる、といった動きは一瞬でも通路を変えます。開始前だけでなく、話している最中にも口の前を空ける基準を持つことが重要です。

口とマイクの間には、見落としやすい障害物がある

障害物と聞くと、大きな板や机を思い浮かべるかもしれません。しかし配信で問題になりやすいのは、もっと小さく、本人が無意識に動かすものです。話しながら口元に手を近づける癖、原稿をマイクの正面に掲げる癖、考えるときに顔を下げてパーカーの襟へ口を近づける姿勢などです。とくに配信では、画面に映る顔を気にして、マイクを口の真下や顔の真正面へ置きたくなります。その位置にポップガード、スマートフォン、手元の資料が重なると、声の出口と収音部の間に層が増えます。マイク周辺を整えるときは、横から見てください。口、空間、マイクの順に、途中へ物が入っていないかを目で確認します。正面からきれいに見える配置でも、横からは口の前に物が並んでいることがあります。必要なら資料はマイクの横へ置き、視線だけを移します。手でマイクを持つなら、手のひらが収音部を覆わない位置を保ちます。こもりを言葉で解決しようとせず、まず音が通る空間を一つにしてください。

障害物を探すときは、マイクの前面だけでなく側面も見ます。小型の機器やケーブルが口と収音部の間へ斜めに入ることがあります。横から一度確認すれば、正面の画角だけでは分からない遮りを見つけやすくなり、配置の修正も具体的になります。

マイクを口の正面から少し外す意味

マイクを口の真正面に置くことだけが、聞き取りやすさにつながるわけではありません。真正面は言葉の輪郭を拾いやすい一方で、息が直接当たりやすく、破裂音や呼気の強い成分まで入りやすくなります。それを避けようとしてマイクを極端に横へ逃がすと、今度は口から出る音の中心が外れ、輪郭が薄くなることがあります。そこで、口角の前方から少し横へ外し、マイクの軸を口元へ向ける配置を試します。こうすると、口とマイクの間の通路を空けながら、息の直撃を減らしやすくなります。大切なのは、配置を頻繁に変え続けないことです。話すたびに顔が動き、マイクだけが固定されていれば、通路の形が文ごとに変わります。机上のマイクなら、口の高さに近い位置へ上げ、首だけを前へ出して合わせないようにします。アームを使う場合も、口の真正面に物を重ねない位置を優先します。私がこの場面でまず確認したいのは、マイクの種類より、口から出た音が何にも遮られずに収音部の近くまで来られる配置です。

画面に映る見た目を優先して、顔とマイクを遠ざける必要はありません。口元から少し外した位置なら、顔の前を空けつつ収音の通路を保てます。カメラ用の見え方と音用の通路を、同じ正面に重ねないことが、配信の配置を安定させます。

こもりと近すぎる音を、同じ問題にしない

声がこもるとき、マイクとの距離を詰めればよいとは限りません。近づくことで小さい音まで拾いやすくなる反面、息、唇の動き、低い響きが前へ出すぎ、別の重さを作ることがあります。反対に遠ざけすぎると、部屋の反射音や生活音が混じり、言葉の輪郭が後ろへ下がります。ここで距離だけを追いかけると、こもりの原因が空間の遮りなのか、近接による重さなのか、周囲の反射なのかが分からなくなります。最初にすべきなのは、一定の距離を仮に決め、その間にある物を取り除くことです。その状態で、マイクの正面が口元へ向いているか、手や原稿が前に出ていないかを確認します。音質の問題を一度に複数変数で直そうとしないことが重要です。マイクの位置、口との距離、障害物、設定を同時に動かせば、何が効いたのか残りません。こもりを改善する作業は、音を豪華にすることではなく、言葉が通る短い通路を保つことから始まります。

一定の距離を決める際は、腕や首を無理に固定するのではなく、椅子、机、アームの位置で再現できる形にします。身体で毎回距離を作ろうとすると、話す内容に集中した途端に崩れます。道具の配置で通路を守るほうが、音の差を小さくできます。

その区別があれば、配置を直す順番を取り違えません。

原稿とスマートフォンを、口元の前に置かない

配信中に読む原稿やコメント欄は必要なものですが、その置き場所が口とマイクの間に入ると、音の問題だけでなく姿勢の問題も生みます。文字を見ようとして紙を顔の正面に持ち上げると、紙が声の行き先を遮り、視線を下げると口が胸元へ向きやすくなります。スマートフォンをマイクの前に立てる場合も、画面とマイクが近いほど、見えない壁が口元の前へできます。資料は、マイクの左右どちらかに置き、口の前には空間を残してください。文字が見づらいなら、紙を大きくする、画面を近づける、表示を整えるなど、資料側を動かします。口を資料へ近づけて解決しないことが大切です。コメントを確認するときも、顔だけを大きく横へ振るのではなく、マイクと口の関係が外れない角度で視線を移します。話す場所は、カメラに映る画面の中央だけではありません。音が通る空間まで含めて、自分の前を設計してください。聞きやすい音は、話している間ずっと口の前に余計な層が増えないことで保たれます。

文字を読む必要があるときは、資料を口の前へ上げる代わりに、左右どちらかで見える位置を作ります。視線が少し動いても、口とマイクのあいだが空いていれば、言葉の輪郭は保ちやすくなります。資料の都合で通路を塞がない配置を選んでください。

設定を触る前に、配置を一つずつ固定する

音が気になると、ゲイン、ノイズ抑制、イコライザーなどの設定をすぐに変えたくなります。ただ、配置が毎回違うまま設定を触っても、原因と結果の関係がつかみにくくなります。今日は口の前に原稿があり、明日はマイクの角度が違い、別の日には部屋のドアが開いている。この状態では、設定が悪いのか、通路が塞がれたのかを判別できません。そこで、口とマイクの距離、マイクの向き、原稿の場所、手の置き場を一度決め、数回の配信で同じ形を保ちます。そのうえで問題が残るなら、設定を一項目だけ動かします。声を耳で評価し続けるより、横から見た配置を毎回同じにするほうが、音の変化を説明しやすくなります。もし口元の通路が空いていても、声が出しにくい、痛みがある、枯れが続く場合は、機材や話し方で押し切らず耳鼻咽喉科を受診してください。音質の問題と身体の状態は、別の入口から扱う必要があります。

一つずつ固定する作業は、機材を増やさずに原因を整理する方法でもあります。設定を変えた後に音の印象が変わったなら、その変化を配置の影響と混同せずに考えられます。改善を急ぐほど、変える項目を一つにする価値が大きくなります。

固定した基準があるからこそ、後から加える調整の意味も判断できます。

聞き取りやすさは、空いた通路からつくられる

配信のこもりを直すとき、最初に見直すのはマイクの値段ではなく、口とマイクの間です。そこに手、原稿、スマートフォン、衣服、マイクを覆う部品が重なっていないかを確かめ、口元から収音部まで空いた通路を作ります。次に、マイクを口の真正面から少し外し、息を直撃させずに言葉の輪郭が届く位置を決めます。その配置を固定してから、必要に応じて設定を一つずつ扱います。この順番にすると、聞き取りやすさを自分の声質だけの問題にしなくて済みます。マイク乗りは、機材の性能と話し手の間にある空間の共同作業です。声を変えようとする前に、物の位置を変える。口とマイクの間を余計なもので塞がない。配信のたびにその通路を作り直すことが、こもりを繰り返さないための土台になります。

配信の準備では、口元の前に何も置かれていない横からの形を、開始前の基準にしてください。そこから必要な機材や資料を足す場合も、通路を横切らない場所へ置きます。空いた短い経路を守ることが、言葉の明瞭さを保つ最も具体的な操作です。

話すたびにこの形へ戻れるようにしておけば、内容に集中していても、音の経路は大きくぶれません。小さな空間を守ることが、配信の声を安定させます。

よくある質問

Q. YouTube撮影で声がこもるのはマイクのせいですか
機材だけが原因とは限りません。カメラに一人で向かって話すことで、口の開け方や顎の動かし方が普段と変わっていることがよくあります。
Q. 撮り直しを何度もすると声が疲れるのはなぜですか
同じテンションを毎回作り直そうとして喉で押してしまうためです。テイクごとに力を入れ直すより、体の支えを保ったまま繰り返す方が疲れにくくなります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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