自分の声が幼いと感じる人へ。仕事で信頼される声の整え方

自分の声が幼く聞こえる人へ。声が幼く聞こえる原因は、声の高さだけではありません。語尾、息の浅さ、早口、重要語の置き方で印象が変わります。 会議、商談、プレゼン、録音で聞かれる声を、第一声・息・区切り・語尾・録音チェックから整える方法を解説します。

奥津ユキ

自分の声が幼いと感じて悩む人の多くは、声そのものより先に、話し始める前の一瞬を見落としています。会議で発言する瞬間、上司に相談する瞬間、資料を画面共有しながら数字を読み上げる瞬間。その一文の直前で息が止まり、体が固まっていることに、本人はなかなか気づけません。

会議の一言を録音して、三つの通過点を聞きます

長い原稿を用意する必要はありません。会議の冒頭で使う一文を、そのままスマートフォンで録音してください。

「結論からお伝えします」

一度録音したら、うまいか下手かは採点せず、次の三か所だけを聞き分けます。ひとつは入り口。話し始める前に、息がすでに流れているか。ふたつめは中間。伝えたい語の手前に、ほんの小さな間があるか。みっつめは出口。文の最後の音まで、息の続きが残っているか。

通過点確認すること
入り口最初の「け」が小さく埋もれていないか
中間「お伝えします」の手前に一瞬の間があるか
出口「します」の最後まで音が途切れず続くか

高さそのものより、この三か所のどこで音が落ちているかを見つけるほうが、次の練習に直結します。以降はこの三点を「入り口・中間・出口」と呼びます。

低くしようとする前に、響きの深さを疑います

声が幼いと悩む人がまず試したくなるのは、意識してトーンを下げることです。低く出せば大人びて聞こえる気がするからです。ですが喉の奥を押さえつけて作った低さは、聞き手には硬さや余裕のなさとして伝わりやすく、緊張した場面ほど長続きしません。

明るさは高さだけで決まるわけではなく、響かせる場所の深さでも変わります。鼻先に寄せた響きは軽やかで明るく聞こえやすい一方、そこへほんの少しだけ胸のあたりへ響きを寄せる意識を足すと、高さはそのままでも落ち着いた深みが加わります。無理にトーンを下げるのではなく、響く場所をわずかに移す感覚です。

入り口・中間・出口のどれかが崩れていると、いくら響きを整えても幼く軽い印象が先に立ちます。響きの調整とこの三点の確認は、切り離さずに一緒に見ていく必要があります。

やりがちな四つの作り込みと、その落とし穴

声を大人びさせようとするとき、多くの人は次のどれかを試します。声を意識的に沈める。語尾を長めに伸ばして貫禄を出す。お腹から声を張る。一語ずつ区切ってゆっくり話す。

一時的には効果があるように感じられても、体の準備が整わないままこれらを重ねると、緊張した瞬間に元の話し方へ戻ってしまいます。とくに沈めた声と張った声は、出口で息切れを起こしやすいという共通点があります。

必要なのは作り込んだ声ではなく、伝えたい順番のとおりに言葉を置いていく声です。一文を短く区切り、伝えたい語の手前にひと呼吸分の余白を作り、最後の音まで息を残して終える。触るのは入り口・中間・出口の三か所だけで足ります。

会議・相談・資料説明、それぞれの一言で試します

仕事の中で声が幼く響きやすい場面は、ひとつではありません。週次会議で名前を呼ばれて発言する瞬間、退勤前に上司へ「少しご相談したいことがあるのですが」と切り出す瞬間、画面共有をしながら「こちらの資料をご覧ください」と数字を読み上げ始める瞬間。どの場面でも、最初に出す言葉は短く、失敗しにくいものを選んでおくと安心です。

前者は語尾の「が」で息が抜けやすく、後者は出だしの「こ」で喉が詰まりやすい一文です。場面ごとに崩れやすい場所は違っても、見るのは同じ入り口・中間・出口の三点です。共通の物差しを持っておけば、場面が変わるたびに新しい練習を覚え直す必要はありません。

商談に入る前は、三つの手順だけ踏みます

商談室のドアを開ける直前に、時間をかけて発声練習をする余裕はまずありません。私が現場で勧めているのは、次のごく短い手順です。

唇を閉じたまま静かに息を吐き切る。肩を上げないよう気をつけながら短く吸い直す。実際には声を出さず、使う一文の口の形だけをなぞる。仕上げに、ごく小さな声量で一度だけ声に出してみる。

ここで見ているのは音量の大小ではなく、入り口の音が欠落していないか、出口まで息の道が保たれているかの二点です。

体の向きも合わせて点検してください。足の裏が床にきちんと接地しているか、資料をのぞき込んで胸が内側に丸まっていないか、顎が前に突き出て首の前側が硬くなっていないか。喉に力を込めるほど声はむしろ不安定になるので、まず体の向きから戻すほうが近道です。座ったまま話す商談では、椅子に浅く腰かけて背中が丸まりがちなので、足の裏の接地だけは意識して確かめてください。

資料を読み上げる番になると、口はさらに小さくなります

画面共有でカーソルを追いながら数字を読み上げると、目線は画面に固定されたまま、口の動きだけが省略されていきます。口を大きく開けなくても言葉はいちおう形になるため、本人は気づかないまま、入り口の音がどんどん小さくなっていきます。

私が資料説明の練習でまず直すのは、口の大きさより顎の固定です。顎を上下にパカパカ動かして開け閉めするのではなく、顎を軽く固定したまま横に「い」の形を保って話すと、同じ声量でも輪郭がはっきりします。資料説明の一言の出だしの一音を、顎を動かさずに出せるかどうか、指先で顎の下を軽く押さえながら確かめてみてください。指先に力が伝わってこなければ、その一音は喉に頼らず出せています。

上司への相談も同じ考え方で整えられます。先ほどの相談の一言を切り出す前、多くの人は言葉を選びながら話し始めるため、入り口で息がすでに浅くなっています。話す内容を決めてから声に出すのではなく、まず短く息を通してから言葉に乗せる。その順番を変えるだけで、同じ相談でも受け取られ方が変わります。

崩れた声と整えた声を、同じ一文で比べます

うまくいっていない例は、語尾が力なくだらんと垂れて、内容自体は合っていても自信のなさのほうが先に相手へ伝わってしまう話し方です。声量を足しても、垂れ下がった出口が変わらない限り印象は同じです。

整った例は、声を張り上げて作るものではありません。

「結論からお伝えします」

この一文に入る前にひとすじだけ息を通しておく。伝えたい語の手前でわずかに間を取る。最後の一音まで息を保ったまま置く。触るのは入り口・中間・出口の三か所だけで足ります。凝った技巧は不要で、伝えたい言葉を伝えたい場所にそのまま置くだけです。

会議の途中で声が乱れても、話全体を立て直そうと焦る必要はありません。今話している一文を短く区切り直し、その出口だけはっきり言い切る。それでも落ち着かないときは、次の文に入る前にほんのわずかだけ間を挟む。このわずかな間は失敗の証ではなく、聞き手が言葉を受け止めるための余白です。

一週間後、もう一度録音を聞き直します

今日の会議で使う一文をひとつだけ選び、三回録音してみてください。一回目はいつも通りに。二回目は入り口の音を少しはっきり置くことだけに集中します。三回目は出口まで息を残すことだけに集中します。この三回を聞き比べると、声を根本から作り替えるより早く、実際に使える変化がどこにあるか見えてきます。

一週間ほど続けたら、初日の録音と最新の録音を並べて聞いてみてください。上達を競う必要はなく、変わった一点だけを探します。入り口の音が以前より小さく入っているか、待てるようになった間があるか、出口の残り方が違うか。どれかひとつでも見つかれば、その練習は前に進んでいます。

会議の場だけで確認しようとすると、緊張のせいで判断が難しくなります。自宅で一人のときに、静かな声で試してみるほうが、体の変化には気づきやすいものです。声が幼く聞こえるという悩みは、性格の証明ではなく、体の使い方の記録にすぎません。今日の記録と一週間後の記録を比べるだけで、次に発言する一言から少しずつ書き換えられていきます。

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この記事で紹介した通過点を、別の角度からも確認したい方は次の記事もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 声が幼いのは声質のせいですか
生まれつきの声質だけでは決まりません。響きが浅い、語尾が上がる、音が流れて輪郭がぼやける、といった使い方の癖が幼い印象を作っていることが多いです。
Q. 低い声を作れば大人っぽく聞こえますか
喉で作った低い声は不自然になり、続きません。幼く聞こえる原因は高さより響きの浅さと語尾にあるので、息の流れと言い切りを整えるほうが近道です。
Q. 仕事で信頼される声にするには何を直せばいいですか
まず語尾です。文末が消えたり上がったりすると、内容が正しくても頼りなく聞こえます。語尾まで息を残して言い切るだけで、落ち着いた印象に変わります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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